2019年1月31日木曜日

小型密閉式スピーカーという物

先日作った12AU7-PP机上用アンプに関連して、小型のスピーカーの話を。


 ずいぶん前に作ったスピーカーの事を想いだしたのは去年の今ころ、。当時の知人の発案に従って作った物で、普通のスピーカーボックスの設計から見ると全くの異端。

 低音をきちんと出すにはある程度以上の大きさの板に付けるか箱に入れる必要があります。平面の板は、大きくなければ背面の振動が回り込みます。遮音するために背面を閉じると、箱の中の空気がバネのように振舞って、スピーカーの動きに影響します。
 バスレフは、背面から出る音を共振を利用して位相反転して出すという発想です。これによって低音を増強して、小型の箱でも低音を出せるのですが、それより低い音が急激にカットされたような感じになります。また、小容量の箱では特有の癖のある音になり、音像がぼやけて隠った音になりがちで、個人的にはあまり好みではありません。

100φの塩ビ管の曲がりとキャップ。使用ユニットは8cm。


 彼の発案は『小型で強力なユニットをごく小容量の箱に入れて、その中に綿などを空所が無いほどに詰める』という物。これでは当然のように低音は絶対的に不足します。しかし(それほど大きくない音で鳴らす限り)ダラダラとレベルは低下しながらも、ずいぶん低い音までしっかり鳴っているように聞こえるのです。

 どうやら、このような聞こえ方をするにはいくつか条件がある事がわかりました。
  • 大きさの割に大出力の、磁気回路が強力なユニットを使う。
  • 内容積が極端に小さくなければならない。箱の共振点はスピーカ自体よりかなり高いところ。
  • 箱内にほとんど空所が無いぐらいに綿など軽い物を入れる。(吸音よりも空気バネとしての共振を鈍らせる、ダンパのように働くのではないかと思われます。)
  • これらと関係するので、使用するユニットが大口径ではうまく行かない。
  • ユニットはしっかり取り付けて、空気漏れしないように隙間を塞ぐ。
  • 箱自体が丈夫で振動しにくくなければならない。
ネットであれこれ見ているうちに、これに合った感じのユニットが安く出ているのを見つけ、昨年春に東京へ出かけた際に購入して帰りました。これを使っていろいろ検証した後、塩ビ管を使用してスピーカーに仕立てました。

 昔に実験した時の物よりひとまわり大きいですが、出てくる音の傾向は同じ感じになりました。全体には完全にハイ寄りなのですが、中域からなだらかに下がってゆき、レベルは低いものの重低音まで綺麗に出ています。
 全体に制動がかかる感じなのでしょうか、スピーカの能率は低くなります。それでも(大音量が必要ではないので)ボリウムのツマミを少し余分に回せばカバーできる程度。
 一方、このスピーカーは逆起電力が大きくインピーダンスがでこぼこなはずです。おそらくこのためでしょうか、たいへんアンプを選ぶことが判りました。プッシュプルであればそれほど問題無いのですが、どちらかというと3極管が適していて、シングルは3極管でも5極管でも全然ダメでした。いずれもNFがかかっていて、数値的なダンピングファクタはそこそこ低いはずなのですが。(おそらくNFの少ないアンプだと破綻するでしょう。)

 妙に音の粒立ちが良く、ステレオにするときっちり分離します。ほとんどバッフルが無い形状のためでしょうか、スピーカーの軸をはずれても音に違いが少ないです。音量を上げすぎなければ、たいへんすっきり聴きやすい音です。 そして、レベルが下がる低域をイコライザで少し持ち上げると、小さなスピーカーとは思えない音になります。

2019年1月11日金曜日

12AU7-PP 上カバーを作る

机上でパソコン使用時のBGM用に使います。真空管がむき出しではまずいです。

 [製作した12AU7-PPアンプの詳細はこちら]

 棚の中に収まっているアンプと違って不用意に何かがあたる危険が多いです。上部のカバーは必須です。置き場所を考慮すると長手を奥行き方向にして、スイッチとボリウムが前に付きます。少ないとは言え、真空管の発熱がありますから、上蓋に通気穴が無いといけません。この条件でケースを探したのですが、良い物がありませんでした。そこで、汎用のアルミシャシーにパネルを付けて、カバーを製作して被せることにしました。

 全体の発熱が多くないので、適度の通気が確保できれば、ボンネットケースのような物でなくても済みます。昔のラジオやテレビは木製のキャビネットでした。このイメージで、上部カバーは合板を接着して作り、ニスで塗りました。側面に通気のための穴を開けました。 背面上部は開いています。底面はアルミのパンチングです。

合板を張り合わせて作りました
 
 ボリウムとスイッチを付ける前パネルは残材のカラーアルミ板で作りました。文字入れは、透明ビニルシートにパソコンで裏刷りした物を貼り付けました。裏刷りなので手で擦れて消えることはありません。 ツマミは、ずいぶん前に買い込んであった処分品。やっと使ってやれました。

2019年1月9日水曜日

試運転 12AU7-PP

ドライバ段の試験をするには電源が必要。電源部を作るためにシャシーなどを加工して。結局ほとんどの作業が進んでしまいました。

[製作した12AU7-PPアンプの詳細はこちら]

 置き場所を考えたら、奥行きを長手方向に使うことになります。縦横の大きさを基準に選んだシャシーは、深さが5cmもあります。そこでこれを利用して、シャシーの上下に部品を盛り分けることにしました。上にカバーを被せて前面にパネルを付けますから、上面の部品に触れてしまう心配はありません。

 出力トランスも電源トランスもバンド型で、特に電源トランスはカバー無しです。ハム防止のためには鉄心の軸方向を直交させたいです。それには電源トランスを横倒しに取り付けるのが良い。そのためにL字型の金具を作る。
  通気の点で、真空管はサブパネルに付けることにしました。シャシーの深さが大きいのでかなり深く沈めることになり、これに合わせるためにドライバ段の基板も高いスペーサを介して取り付けます。
 スイッチは前パネルに付けるので、パネルの加工が必要です。スイッチの位置がシャシーと中途半端に重なるので、その部分はシャシーを切り欠きます。

 結局、筐体はずいぶん複雑な構造になりました。
 
一応回路部分は完成 シャシー下面
  ヒーターとオペアンプ用と、真空管用に、電源トランスが2個に分かれています。シャシー自体をシールドに使うように、上下で高圧と低圧に分けます。
 ドライバに関係する部分はすべてシャシー下面で完結しています。動作チェックをするには、ここの部分を完成さるのが早道。しかしそれには筐体加工を完了させておかなきゃ。

一応回路部分は完成 シャシー上面
  ここまで来ると、出力段関係を作ればほとんど完成してしまいます。高圧側の電源回路は簡単です。これに出力トランスの1次側を通してプレートに繋ぐだけ。この配線の引き回しは、シャシー自体をシールドのように使って、上面を這わせています。

 入力に発振機の信号を入れて、出力波形を確認。それらしい波形は出たけれど、NFをかけようとすると・・・何か変。ていねいにチェックすると、左右チャンネルの配線の一部を取り違えるという恥ずかしいミスでした。修正してあらためてチェック。
 問題無さそうなので、出力にスピーカを繋いでみると、ちゃんとピーと音が出ます。そこで今度は音楽を入力に。予想以上にすっきり聴きやすい音です。高音はけっこう硬く鳴り、低音はゆったり伸びやかに響きます。

 買い忘れて、代用品でしのいでる部品が数個。これを正規の部品に交換して、上部カバーを製作したら完成です。このまましばらく慣熟運転です。

2019年1月7日月曜日

位相反転回路のチェック 12AU7-PP

ドライバ段の試験をするには、電源が必要。電源部を作るにはシャシー加工が必要・・・
 
 電源は仮組でも良かったのだけど、どうせ作らなきゃいけない物。スボラして後で手戻りするのは得にならない。この際だから、ちゃんと作っておこう。
 工程を途中で止めておくのは無駄だし、後から加工する部分が多ければそれだけ手間が増える。最低シャシーの背面の加工は必要。トランスを付ける金具を作って、トランスの位置を決めなければ。スイッチを付けるんだから、前パネルも作ってしまおう。
 ここまで進めると真空管の位置が決まってきます。切削屑が散りますから、金属加工はまとめてやるのが吉です。あれこれ考えて、結局筐体関係の加工はすべてやってしまう事になりました。

低圧電源とドライバ段までを配線した状態


 スイッチはパネルの前側からの取り付けです。だからスイッチに配線してから取り付ける方が楽です。ボリウムもパネルと一緒に取り付けますから、先に配線しておくのが楽です。 結局、シャシー内側に関係した配線はほんんどを済ませてしまいました。

 まずは、電源の確認。なんと、マイナスの電圧が出ていない。3端子レギギユレータまわりの問題かと思ったのですが、古い買い置きのダイオードが1個不良でした。未使用だったのですが。これを交換したら、あとは問題なし。オペアンプを差し込んで、いちばん心配だったオフセット電圧の確認。数個で差し替えてチェックしたけれど、いずれも支障無い程度でした。

位相反転回路の出力を確認

 そこで入力に発振器を、出力にシンクロを繋いで、出力のレベルと波形の確認。ちゃんと逆位相で同じレベルの信号が出ています。信号レベルを上げて振幅も確認しました。オペアンプ使った位相反転回路はちゃんと動作しています。


2019年1月2日水曜日

オペアンプで位相反転回路 12AU7-PP

 部品がだいたい揃った(はずの)12AU7-PPアンプ。ぼちぼち製作開始。

 おそらく私自身の最後の新規製作になる物。初心に返ってゆっくりやってます。まずは、オペアンプによる位相反転回路の部分。これを盛りつける基板は、用途廃止したデジタル物の基板の余りの部分を活用。

手持ちの余剰部品の活用のため、彩りが賑やかです

 オペアンプ以外にも、今回は特に手もとの余剰部品の使用を意識しています。ここで使われなければ廃棄される可能性が高い物たち。

 抵抗は、いわゆる「無駄な抵抗」をなるべく多く使えるように値を決めました。そのためメーカーなどまちまちです。コンデンサも、けっこう昔に取り込んだ物が混じってます。オペアンプを差し替えて遊べるようにソケットにしました。

 抵抗は立実装にしました。デジタル物の手法で、部品の足は基板面から少し出して切断し、導線で繋ぎました。ここには余り物のラッピングワイヤーを剥いて利用。配線は無理に裏面で引き回さずに表にジャンパを飛ばしました。

 このあと電源回路を作って、ちゃんと動作するか実験しなきゃ。

[製作した12AU7-PPアンプの詳細はこちら]