2014年11月2日日曜日

レコードをかける

私室のアンプは雑食です。CDは当然、TVや映画のDVDの音声もありますし、パソからはMP3とかも。でも普段はレコードをかけることはありません。

 というのは、私室にはレコードプレーヤーが居着く場所が無いから。レコードプレーヤーは居間に常駐しているのですが、それがこの連休中は私室へ出張しています。作業机の上を片付けて、そこに載っています。プリアンプを通してパソの1台に繋げて、古いLPのデジタル化作業です。
 レコード盤は接触読み出し。何度も再生するうちに音質が低下しますし、取り扱いに際してキズを付けるリスクもあります。レコード針のこととかもありますから、いわゆる愛聴盤から少しづつパソに取り込んでCD-Rに焼いてきました。それでも、まだ少し残っています。古いアルバムの場合、有名歌手の主な曲はベストアルバムとかで聴くことができる場合もありますし、有名な盤はCDで出ることがあります。しかし古いアルバムの中には聴き覚えた収録曲があります。マイナーで終わった歌手の場合は余程何かなければCD化は期待できません。こういうものこそ、オンデマンドで販売して欲しいのですが、DRMがらみでかえって難しくなってしまったように感じています。

カートリッジたち
という事で、レコードをきれいに拭いて、ターンテーブルに載せて、パソのソフトを起動して。レコードプレーヤーが所謂フルオートなので、スタートはレバーを引くだけ。トーンアームが自動的に動いて針が盤に降ります。片面づつ取り込んで、ソフトで1曲づつ切り出して、wavファイルにします。
 作業の合間にカメラを出して、レコードプレーヤーとカートリッジの写真を撮りました。カートリッジはいずれも古い物ですが、ぎりぎり現役の頃に予備の交換針を買っていた物があり、作業にはそれらを使います。 ついでに押し入れの中に残っていた他のカートリッジも取り出ししまた。長く使っていない物。今でも使えるかしら? 写真は私自身のオーディオ歴の記録の意味で、webページにしました。

[追記]
 再生音と録音の確認のため、普通に聴く場合よりもかなり音量を上げます。普段はあまりかけないようなジャンルのレコード盤もあります。最初は"なりゆき"で出たままの6SN7プッシュプルアンプで鳴らしていたのですが、ピアノとかバーカッションとかアタックでアタマが詰まったように感じることが何度か。やはり出力不足かと思って、とりあえず6BM8シングルに繋ぎ替えてみました。どうやら、この1Wと2Wの僅かの(聴感上は)差が微妙なところで効くようです。逆に言えば、音量をガンガン上げて鳴らすのでなければ、1Wクラスでも全然問題無い(もっと少なくても支障無いかも)ことが確認できたことになります。私室で働くミニアンプは結局5台になりましたがもうち3台が1Wクラスで2台が2Wクラスです。

2014年10月5日日曜日

6BM8 Single : 真空管の背丈

アンプづくりにはいろんな作業が要ります。普通は金属製のシャシーに組みますから、金属加工は避けにくいもの。

 特別な道具を出して来たり、屑が散らかるような作業はまとめてやる方が能率的です。アルミ板を加工するついでに少し前から考えていた作業を実施。
 春に作った6BM8シングルアンプ。回路はひとひねりしましたが、部品配置はごく普通。外観は完全に「初歩のラジオの制作」という感じになりましたが、美観という点ではいまふたつぐらいバランスが良く無いです。問題は6BM8の背が高いこと。太さは普通の9ピンMTなのですが背丈が1cmほど高く、広いシャシーの上に2本だけ立つと余計にひょろっとして見えます。

真空管を1cm下げました

 6BX7ほどではありませんが、6BM8もけっこう熱くなる管です。熱対策には通気が有効。6BX7アンプでは管のまわりに通気穴をあけましたが、真空管ソケットを別パネルに取り付けてシャシーとの間に隙間を設ける方法もあります。後者の場合、段差の分だけ管が低くなります。熱対策とあわせて、管を低くすることを考えました。
 管を下げると、その分だけ内部は窮屈になります。全体の部品配置はあまりいじれないので、真空管まわりの部品の取り付けだけでカバーしなければなりません。ソケットと重なる位置に平ラグ板を置いていましたが、当然これは無理。ソケットの両脇にラグを立てるしか無さそうです。スペースの節約と作業効率の点ではラグもパネルに立てるのがよさそう。手もとには昔にジャンク屋で入手したタイトラグがあります。その中で比較的背の低い物を利用することにしました。パネルは1cm下げられます。
 パネルは残材を活用しました。厚さ1.2mmの黒色アルマイト。アンプは真空管まわりだけ解体して、元のMT管ソケットの位置にGT管サイズの穴をシャシーパンチで開けました。元のネジ穴が見えてしまうのは仕方無いです。回路自体は同じなので部品はすべて再利用です。

 管が1cm下がると電源トランスとほぼ同じ高さになりました。管の周囲の穴も見た目のアクセントになっています。 手間はかかりましたが、それ以上の効果がありました。捨てずに残してあったタイトラグも活用できましたし。

2014年7月12日土曜日

6BX7 PP : 抵抗コンデンサを交換

真空管もトランスも無理な使い方をしなければけっこう長寿なもの。劣化した部品をうまく交換してやれれば、アンプ自体はずいぶん長く使えます。

 古い真空管を使って新しいアンプをいくつか作りました。真空管アンプの製作はしばらくぶりで、手もとに主要部品はほとんど無し。出力トランスは6CA7用に持ち置いていた物以外は新規購入。抵抗器や一部のコンデンサに手持ちを利用しましたが、主なものはやはり新しく買うことになりました。
 数十年の時間を挟んで見ると、コンデンサの進化が激しいです。小型化して特性が良くなり信頼性も向上しました。その進化は一様ではなく、波状に何度も起こりました。

 私室の常用アンプは1990年代の製作。すでに真空管は特殊な趣味の世界でした。テレビなどはトランジスタから機能ICに移行する時期、電源もシリーズからスイッチングへ替わり、インバータも増えて来ていました。デジタルもマイコンからパソコンへと一気に規模と速度が増大したのもこの頃。だから中身は当時の普通の半導体機器用。今回の手直しでは、(出力トランスの交換という大事もありましたが) 回路の見直しに関連した抵抗値の変更のほかは電解コンデンサを交換した程度。

タイトラグを利用したハシゴ状の配線は部品交換が楽です

 ひと続きのアンプ製作の締めくくりという気持ちで、居間の常用アンプも部品更新しました。このアンプは、真空管の終焉の時期の製作。真空管時代の思い出の意味もあって、内部はタイトラグを使って梯子状の配線にしました。抵抗やコンデンサは、トランジスタテレビなどの部品を中心に、新しい世代の金属皮膜抵抗やフィルム系コンデンサと古い真空管世代のMPコンデンサとか巻線抵抗とかが混用されていました。その後10年ほどのうちに、コンデンサや抵抗の多くを交換しました。金属皮膜抵抗が一気に安価になり、フィルム系コンデンサの種類が増えたのを受けて、古い世代の部品をほとんど排除されました。
 それからしばらく経ちました。この間、電気系の製作からほぼ完全に遠ざかっていたので最近の部品事情にはすっかり疎くなっていました。あらためて調べてみると、電解コンデンサが驚くほど進化していました。フィルム系コンデンサも一段小型化して信頼性が上がったようです。
 前回交換した部品のうち、信頼性が劣ったり耐圧に余裕が無かったコンデンサは交換しました。ブロックコンデンサは前回に交換していますが、残っていた電解コンザンサは今回105度の物に交換しました。残っていた初期のフィルムコンデンサも交換しました。これによって、最初の製作時部品はほとんど無くなりました

 タイトラグを使った梯子型配線の利点で、部品の交換は簡単に済みます。チューブラ型のケミコンが立型になったので取り付けが少し不自然になりましたが、サイズがぐっと小さくなったので、その分で他の部品の配置が楽になりました。次の部品交換があるかどうか判りませんが、劣化が予想されそうな部品が交換しやすいように一応配慮しました。
 作業は数時間で完了。念のため各部の電圧を測って動作チェック。その後はスピーカと入力を繋いで私室で聴き慣れた音楽をかけてしばらく様子見。音質には微妙な違いが感じられますが、差はごく僅か。初段の動作を少し変えたことによるものか信号が通るコンデンサが変わったことによる影響でしょうか。もうしばらく鳴らしてから居間へ戻します。

2014年6月29日日曜日

6BX7 Single : 製作しました

ひと区切りの区切りまで一気に進みました。若干の不手際はありましたが、おおむね順調な航海。このあとはゆっくり休息。

 筐体加工から内部の配線と部品の取り付けと、ほぼ2日で一気に進みました。通電して各部の電圧を測って、とりあえず信号を入れて出力を確認。今回は何のヒネリも無い回路で、NFかけても安定動作。そのまま馴らし運転。[このアンプの詳細はこちら]

 同じシャシーの加工が4台続きました。部品配置はそれぞれ大幅に違いますが、いろいろ知恵が働くものです。今回のがいちばん手間な加工なのですが、それでも半日ほどでできました。部品の配置とか、休止の間にぽちぽち考えていたのも効いています。やはり走り出す前の準備が大切です。
 出力管の6BX7は熱くなることで知られた管。ソケットの周囲に通気穴を開けました。シャシーが薄いので、この部分は裏側に2tの板を重ねて加工。手間がかかりましたが、けっこう丈夫になりました。それ以外は特別な加工は無しです。

大小の管が1本づつ

 トランスはすべて新品ですが、あちこちに手持ちの余剰部品や外し物の部品を活用しています。この後はおそらく電気ものの大物の製作は無いでしょうから、ここで使ってやらなきゃ、結局廃棄されることになるでしょう。
 内部の配線は、今回はタイトラグを利用した架空配線。昔はメーカー製の通信機や計測器に使われていた方式です。本来は部品交換のしやすさが特徴の方法で、配線のひきまわしとか先にきちんと計画しなければなりません。学生時代に6BX7-PPアンプを作る際にこの方式を採りました。その時の事など思いだしながら、さらにひと工夫加えました。

 6BX7-PPアンプは、一部の部品交換だけで長く活躍しています。当時は真空管が終焉を迎える時期。予備のつもりで何本か買い込んで、さらにジャンクの管も数本。若干余裕のある動作にした事と、私室用の小型アンプができてからは稼働時間が減ったこともあって、今でも最初にセットした管が健在です。この分だと買い置きの真空管たちに出番が来るかしら。
 6BX7は双3極管で、1本でプッシュプルなのですが、2ユニットの特性が揃っていて、ステレオなら2本あるのが望ましいです。ジャンクで片ユニットがへたりぎみの管とか、1本だけとか、シングルアンプでなければ出番が巡って来ないところでした。


2014年6月25日水曜日

6BX7 Single : トランスを購入しました

昨年から真空管アンプをいくつか作って来ました。予定した物があとひとつ。そろそろまた作業再開です。


 春からお花の時期はあちこちお出かけする所があります。でもそれも一段落。夏の旅の時期までしばらくまたお部屋でごそごそします。まずは、準備しかかって中断していた真空管アンプ製作のつづきです。
 順番的には6BM8シングルより先に作るべきだと思ったけど、部品の揃い具合で後回しになってしまっていた6BX7のシングルアンプ。やっと部品が揃いました。

部品が揃いました


 最後になったのは電源トランス。電圧と電流がちょうど良さそうで小型であまり高価でない物という規準で探して、選択したのは「東栄変成器」のP-70という物。ヒーターが3Aと2AでB巻線が220Vの70mA。 6SN7-PPアンプに使っている物と定格は同じですが、縦横高さともひとまわり大きく、これなら容量いっぱい取り出しても大丈夫そうです。
 入手が遅くなったのは、東京のお店へ行って買ったから。ネット時代の恩恵で商品情報は簡単に得られても、実体物の入手はまた別。ネットショップでカード払いだと簡単なのですが、そうでない所もあります。特にこの東栄変成器は実店舗販売が中心で、通販は電話で問い合わせとかなり面倒。送金料と送料も考えて、東京へ行く用事のついでに買って帰ることにしたのです。ちなみに、出力トランスはイチカワ製ですが、こちらは店舗販売は無しで通販のみのようです。

※ その後東栄変成器もネットから通販できるようになりました。

※ イチカワは真空管用トランスの製造販売を2022年1月で終了しました。

2014年5月12日月曜日

真空管のウォームアップ

真空管の動作は熱電子によるもの。だから熱くならなきゃ動作しない。スイッチを入れて暖まるまでの時間は真空管らしいひととき。

  真空管にはウォームアップタイムというものがあります。スイッチを入れてヒーターが点灯して、カソードが暖まって電子が出る。それまでの時間がウォームアップタイム。
 オーディオアンプの場合、スイッチを入れて少し待つと、微かに音が出だして、だんだんそれが大きく聞こえだします。逆にスイッチを切ると、しだいに音が弱まってかすれて消えてゆきます。 真空管時代のテレビでは、暗い絵が出て、だんだん明るくなるとか、真ん中に小さく(あるいは細長く)絵が出て、これが画面いっぱいに拡がるとか。

注意:トランスレス用でない真空管のヒーターを直列にしてはいけません。起動時の温度のばらつきでヒーター断線の危険が増します。

 真空管式のテレビでは、(磁界で輝線が揺れるのを嫌って)トランスレスが普通でした。ヒーターは直列にして100Vで点火します。直列にするのでトランスレス用の真空管は暖まり方が規定されていました。普通のレス用は11秒となっています。正確にはヒーターの温度が上がるまでの時間で、定常動作に至る時間ではありません。

 うちのアンプの真空管たちはと見ると、12BH7Aがテレビ用です。12BH7のウォームアップタイムを調節したのが12BH7Aです。ドライバの6BL8は元々は欧州のテレビ用の管で、姉妹の4BL8や9A8はレス用です。6BM8も原型はテレビ用のレス管です(6BM8はレス用ではない)。
  6SN7-GTに対して6SN7-GTBはウォームアップタイムが規定されていますが、名前程度の違いしか無いのかもしれません。差し替えて比べてみるとどちらも大差無い時間で音が出てきます。

石アンプ : アンプ部と保護回路部

  トランジスタアンプはヒーターがありませんから、スイッチを入れるとすぐに動作を始めます。前段が安定動作する前にいきなり出力段がオンになった場合、スピーカーからボコっと音がでる事があります。逆に電源が切れた瞬間に不安定になる事もあります。アンプが大出力になるほどこの問題は深刻になります。ひとつの解決方法が「保護回路」。スイッチ・オン後しばらくたってからスピーカーをつなぎ、電源喪失時にはすみやかに切り離す。
 出力回路自体の工夫でこの働きをさせる方法もありますが、いちばん簡単確実なのは電磁リレーで物理的に切断すること。自作の石アンプでは異常動作で出力にDCが漏れるような場合も切断するようにしてあります。アンプ部はオペアンプICのμA749を使っていますが、保護回路はすべてディスクリートで作りました。まだこの頃はICを信用していなかったためです。

2014年3月27日木曜日

12BH7A PP : 真空管の寿命

真空管って消耗品と言われます。でもその寿命はかなり差があるようです。

 真空管の動作は完全に金属電極の間の物理的な物。使ううちに徐々に状態が変化します。徐々に消耗してゆき、特性が劣化してゆきます。テレビでは、偏向回路とかでは同期がかからなくなったり振幅がたりなくなったりと限界が"見える"場合もありますが、ノイズとか輝度とか我慢すればどうにかなる場合もあります。オーディオ用のは場合も、どこまで使うか判断が難しいです。
 定格内でも劣化が早い管もあればいつまでも変わらずに働く管もあります。無理な使い方でもある程度耐える管もあれば、すぐに弱る管もあります。同じ管でも使い方によってずいぶん寿命が違うようです。12BH7Aはテレビの偏向回路ではかなり無理な使い方をされていたようです。現役当時は劣化の心配がある管でしたが、どうやらかなりしんどい使い方をされていたようです。中古の管を見ると片ユニットだけへたっている物がかなりありました。

12BH7A と 6BL8 どちらもテレビと縁のある管です

 ふりかえって見ると、このアンプは20年ほど働いています。私室でBGMをかけたり、DTMのモニタとしても働き、ビデオやテレビの音声もここから出していました。休日は朝から晩まで点けっぱなしの事も多く、時には切り忘れたりも。普通の家庭のテレビよりも稼働時間の割合は多いかもしれません。ややA級に近い動作で、無信号でもけっこう発熱しています。それでも管はずいぶん長持ちしました。12BH7Aはすべてテレビなどの中古の管で、この管で3代目。6BL8は2代目。これらは新品も含めて手持ちがかなりありますから、管が無くなって使えなくなる心配は無いでしょう。

2014年3月23日日曜日

6Z-P1 Single : 真空管アンプの熱さ

真空管アンプの音って何でしょうか。居間の6BX7-PPアンプは、製作当時は真空管アンプ愛好の方にはトランジスタっぽい音がすると言われました。その後造ったトランジスタアンプは、DCアンプ絶対派の方には真空管っぽいと言われました。

 引き続きアンプの外観のお化粧をしながら、もうしばらくアンプの鳴らし比べ。これが終わったら晩秋から続いていた電気工作もひと休みの予定。それまでに見直す所とか無いかもう一度チェック。あわせてwebコンテンツも整備して、灯のともった真空管の姿を写真に撮って。
 真空管の灯りの写真はデジ一眼レフだから撮れるもの。真空管のヒーターの光は案外弱いです。ヒーターの照り返しで管やまわりがほんのり赤く見えるように撮るには露出と照明のバランスが悩ましいです。カメラは3脚に固定して、構図を整え、暗くした部屋の中で、アンプに弱い照明を当てて、長時間シャッターで撮ります。デジでは撮ってすぐに結果が確認できます。それをもとに照明の位置や明るさを変えてもう1枚と。まあ、一種のカットアンドトライです。ずいぶんアナログちっくです。

少し青色のグローが出ています

 私室の小型アンプたちの定位置は書棚の中。同じ大きさの入力セレクターと重なって、繋いだらそのまましばらく働きます。上は上の棚板に守られて横の空間も確保されています。使用中はボンネットカバー無しでも全然支障無いです。危ないのはつなぎ替えとかの作業時ぐらい。使用したシャシーが同じなので設置スペースは同じですが、高さが違います。いちばん背が高いのがこの6Z-P1。つるんとした頭と上の棚板の間はけっこう接近します。幸い真空管の発熱が少ないので、真夏でも上の板が熱くなって困ることは無いでしょう。総発熱量は(製作予定を含む)5台の中ではいちばん小さいです。
 居間のアンプは、イザ音楽を聴くぞ、とか映画を見るぞという時しかスイッチが入りません。対して私室のアンプは雑食です。テレビの音声からパソの音声まで、音楽も動画もなんでもあり。朝から晩まで通電しっぱなしの事も多いです。製作時に発熱や管の消耗を気にしたのはそのためもあります。ぎりぎりの性能を発揮させてやるのもひとつの行き方でしょうけど、倹約&貧乏性には向いてないですから。

2014年3月17日月曜日

6BM8 Single : 慣熟運転中

出発点へ戻る航海。当初の思惑と順序は逆になりましたが、第一行程は順風の中で終了。残りはまた潮時を待ってから。

6BM8のアンプは無事に完成。聴き慣れた音楽をかけながら慣らし運転を継続中。中古の真空管もひととおり動作チェック。かなり酷使されたのか、足のあたりが黒ずんだ管もありますが、全部支障なく動作しています。

 やや控え目の動作ですが真空管はかなり熱くなります。電源トランスは余裕があるので、暖かくなるという程度。出力トランスがカバー無しなので漏洩磁束の影響を心配したのですが、ハムもノイズも出ずに済みました。外観の問題だけです。しばらく鳴らしているうちに新品のトランスも馴染んできたようです。全体としては普通の真空管アンプという感じの音に落ち着いて来ました。けっこう音量感のある鳴り方で、ゆったり雰囲気で聴くにはいい感じです。

古いオペアンプたち 8ピン1回路入り


 オペアンプもいろいろ差し替えてみました。特性に差はありますが、ゲインは低いし振幅も小さいです。いずれも出力アンプ部よりも広帯域で、最終的な出力では全然差がありません。低雑音でない品種でもノイズが聞こえることは無いです。上の写真は手元に残っていたオペアンプたち。それぞれ数個あります。

 左側の缶入りとその下の3個は汎用オペアンプの元祖フェアチャイルドのμA741とその互換品。日本のメーカーも互換品を作っていました。NPNのエミッタフォロワでインピーダンスを稼いで、カスコードにカレントミラーと縦積みにしてゲインを稼ぐ構成。
 LM307はLM301に位相補正コンデンサを内蔵して741に対抗したような品種。これはモトローラ製の互換品。入力部は良く似た構成ですが、出力段は準コンプリという変則構成。
 これらの次の世代は入力部がPNPになっています。上右のNE5534は低雑音広帯域を謳っていますが、用途が難しいです(要位相補償)。これはテキサス製の互換品。
 その下は入力部がJ-FETになったテキサスのシリーズのひとつ。用途を選ばない使い易いICと思っていましたが、今回の使用で意外とドライブ力が無いことが判明。
 CA3140はRCAの製品で入力部はMOS-FETです。次段以降も変な回路で、出力部はSEPPですら無いというユニークさ。RCAの製品ではCMOS出力のCA3130も持っているのですが、残念ながらこれは耐圧の問題で使えません。

2014年3月14日金曜日

6BM8 Single : 製作開始

主要部品が揃ったので、上げ潮に乗って進むことにしました。6BM8シングルアンプの製作を開始。ふりだしに戻る航海です。

 子ども時代の事とか考えると、これを最後に持ってくるべきだとは思うけれど、なりゆきでトランスが先に揃ってしまったので、6BM8のアンプの製作を開始しました。
 子ども時代は廃棄物のテレビなどの解体部品でずいぶん遊びました。レスの管を活用する知恵は無かったので、真空管は新品を買いました。トランス類などジャンク屋で外し物も買いました。今度は、管は中古ですがその他は新品です。
 おそらく、まとまった電気ものの製作はこれが最後。出番が無かったものや試作に使った物、短期間で解体した残渣など、手もとに残った部品をなるべく多く使うことにしました。適材適所とは行かなくても、そのまま捨てられるよりは良いでしょう。そのつもりで回路の方も微調整。

ケミコン シャシーに立つ
  ラグ板配線の良い所は、少しづつ作業ができること。筐体がらみの部品は全部揃いました。中身の抵抗やコンデンサはいくつかが欠けていますが、大きさの取り合いが必要な物は無いので、時間のあるうちにシャシー加工をやってしまうことにしました。シャシー加工をすると、アルミの削りクズが散らかりますから、この工程は一気にやってしまうのが吉。
 部品配置は先にいろいろ検討しましたから、作業は一気に進みます。大物の穴を開けたら仮組みして確認し、ラグ板などの位置を微調整してネジ穴開け。そのままネジ止めまでやってしまいました。中身はカラですが、外側はすっかりそれらしい雰囲気。真空管を挿してみました。
 6BM8は背丈が高い分細く見えます。真空管はこの2本だけですから、シャシー上面は広々として見えます。ちょっとボリュームのある電源トランスの前にはケミコンが2本並びました。昔からの馴染みの光景。これが無いと全然サマになりません。本来は基板付け用のコンデンサですが、こうして足を付けるといい感じです。
 

2014年3月9日日曜日

6BM8 Single : 出力段の検討

実際の物作りはまとまった時間が必要。でも、準備は合間に少しづつ進めておくのが良いです。

 大物の6CA7-PPアンプが意外とすんなり出来たのも、振り返って見れば、構想を長い間暖めてきたのが大きかったように思えます。まあ、ちょっと以上に長すぎましたが。

 今回の一件のからみでやり残したような感じなのがもうひとつ。なんとなく集まった中古の6BM8を活用すること。本数はあってもあまり状態の良くない中古ばかり。プッシュプルにするのは無理。大出力も要らないので、やはりシングルでしょう・・・・・という事で、いろいろ考えてみました。
 回路は教科書的なシンプルな2段増幅を考えます。3極部はμ=70ですから、5結にしてもNFをかけると微妙にゲインが足りません。 無理にゲインを稼ごうとせずに、前置アンプで補うことにします。そうすると(感度が低くても良いので)ULやK-NFにする余裕が出て来ます。6BM8は子ども時代に使った管です。最初はラジオを作り、ひととおり遊んだあとはアンプに作り替えて、NFをかけたり3結にしたりしました。しかし出力トランスが怪しいジャンク物で、ULはできませんでした。今度作るならULをやってみたいです。

 そこで、6BM8に合いそうでULタップが出ているトランスを探しました。あまり高価で無いのが好ましいです。選んだのは、ノグチトランスの PFM-5WSという物。カバー無しのバンド止めの廉価タイプ。リード線が下出しなので、感電の心配は無いですが、漏洩磁束の影響はどうでしょうか。

 6BM8の原型のPCL82は元々は欧州のトランスレステレビ用です。250V以上かけている作例が多いですが、本来はあまり高い電圧で使う物では無さそうです。特性図を眺めていると、200Vぐらいが良さそうです。そうなると電源トランスが問題。必要な電流を取れそうなトランスで電圧の低い物は既製品には見あたりませんでした。無ければ作る??
 6CA7-PPアンプの電源トランスを特注した春日無線に頼むとして、試しに容量を計算してみると、既製品の2割増しぐらいの価格になりました。高圧巻線はブリッジ整流にし、後での使い回しも考慮して普通程度の電圧の端子も設けました。オペアンプの電源用に使うため、ヒーター巻線のひとつは12.6V(CT付き)にしました。

 これで大物はだいたい揃いました。 実際の作業は梅雨の頃かしら。それまで、まだしばらく考える時間はあります。

2014年2月28日金曜日

12BH7A PP : 出力トランス

しばらくぶりの電気工作。やっているうちにちょっとはカンが戻って来たようです。その調子でもうひと作業。

 しばらく前にはほとんど絶滅していた真空管アンプ関係の部品がまた作られるようになっているのはちょっと驚きでした。
 私室のヌシに収まっていた12BH7A-PPアンプは1990年代に作った物。この頃はもう小型アンプ用の出力トランスなどは絶滅していました。そこで怪しい試みをする事になりました。電源トランスは出力トランスに使えるか?? なりゆきで、1次側の中点タップを出したトランスをカットコアに巻いて貰うことになりました。実物を測ってみると、本式のオーディオ用には全然及ばないものの、ラジオ少年御用達あたりよりはマシな感じでした。そのまま無理は覚悟でアンプにしたら、案外聴きやすい物ができてしまって、そのまま長年働いて来ました。

 懸案の6CA7プッシュプルアンプ製作の流れで、2つのミニアンプを作ってしまいまいた。デザインも機能も12BH7Aのアンプと対になる物なのですが、さすがに繋ぎ替えて聴くと格差が目立ちます。SPICEも活用して動作を見直して、抵抗とコンデンサをいくつか交換して、いくらかマシになったものの、高音も低音もいまひとつ伸びが無い感じ。やはりトランスの特性が足をひっぱっている感じです。ならば、トランス交換するしかない。幸い今なら良さそうなトランスがあります。


 全体を作り替えるのではなくトランスだけ載せ替えることにしました。サイズ的にうまく載りそうな物から春日無線のトランスを選びました。イチカワの物よりひとまわり大きなコアが縦になって幅が抑えられています。定格の10Wはおそらくぎりぎりの容量と思われますが、このアンプには余裕たっぷりです。
 トランスを載せ替えて鳴らしてみると・・・やはり低音も高音もくっきりたっぷりと。このあたり、イマ風の出力トランスの作りなのでしょうか。 あれ??ちょっとキラキラしすぎ。オシロでチェックすると、やはり矩形波の角がギンギンに立ってました。元のトランスが早い所からダラダラ下がっていたのに対して、このトランスはぎりぎり高域まで頑張っているようです。そこで位相補正のコンデンサを変更したら、あっさりと綺麗に収まりました。慣らし運転のまま棚の中に居着いていた6SN7-PPアンプと交替して、昨晩はそのまましばらく私室で音楽をかけて様子見。音はずいぶん変わりましたが、適度な音量感はそのままです。

 私室の棚には12BH7アンプが戻って来たので、6SN7-PPアンプは居間に出張です。ある程度は予想したけれど、カッチリ気合いの入った音です。でも、ちょっと音を大きくしてじっくり聴くには良いけれど、気楽に聴き流す雰囲気では無いし、なによりすっきりしすぎて音量感が足りないです。日中はメインのスピーカーをだいぶ大き目の音で鳴らしていました。やはり、音量感がなんか違います。スピーカーの前では常用の6BX7-PPアンプより音が小さくきこえますが、離れると大きな音で鳴っているのに驚きます。やはりドライブ段の回路の違いと関係があるのでしょうか。

2014年2月24日月曜日

6BX7 Single : 電源とコンデンサ

もうひと航海する前にできる準備は少しづつやっておきましょう。

 6BX7のシングルアンプを作るつもりで、ゆっくり部品の準備です。押し入れの片付けは終わりました。修理や保守に使用しそうな物は残して、アンプか関連小物でも作るのに使えそうな物も残して、たぶん使わないような部品は思い切って廃棄処分。
 6BX7アンプに関して、必要そうな部品はひととおり拾い出しました。多少不似合いだったり過不足があっても使える物は活用するつもりで検討しました。あとは見つけた時が縁でぼちぼち揃えるつもりです。 

 ネットで見つけて通販したコンデンサが届きました。直径25mmの中から背の高さで選びました。ひと昔前なら220μなんてけっこう大きかったのですが、これはMT管よりひとまわり大きいぐらい。それでも手持ちの足(コンデンサバンド)を付けて見るとけっこういい感じに見えます。

手持ちのバンドに合う 直径25mmのコンデンサ

  6BX7のシングルアンプを作るとなると、確かめておく事があります。比較的安価な既成のトランスを使う場合、オペアンプの電源をヒーター用の6.3V巻線から作らなければなりません。半波の倍電圧整流を上下に重ねれば、±15Vぐらいが得られるはずです。原理的には問題無いはずですが、やはり先に確認。電流は小さいですが、リップルが逆相になりますから、念のため12Vの3端子レギュレータを入れます。
 
 という事で、前置アンプと合わせて基板に組みました。電源部もアンプ部も手持ちの部品をやりくりして済ませました。
  手持ちのヒータートランスを繋いで電圧を加えると、ちゃんと倍電圧の直流が出ます。そこで手持ちのオペアンプのひとつ挿して動作チェック。音声信号を入力して、出力をアンプへ入れると、ちゃんと普通の音が出ました。どうやら、このコースで進んで大丈夫そうです。

2014年2月11日火曜日

古い部品と設計の手法

長年の懸案だった6CA7プッシュプルアンプは当初の予想よりもすんなり完成しました。その課程でいろいろ振り返って考えることがありしまた。

 すんなり進んだのは、今までに身につけた知識や技術もあるけれど、大仕事と思っていろいろ検討して用心深く進めたから。まあ、その用心深さこそが経験の賜物なんだろうけど。
 いろいろ振り返って見るあいだに考えたこと。その中に微妙にし残したような物もあります。まあ、これも急ぐことではなし。時期が来たらゆっくりやればよし。


 真空管以上に無駄にたくさん残っていた古い半導体。初期にはたいへん高価だったけど、すぐに値崩れ状態になりました。真空管は数を少なくうまく使うのが工夫のしどころだったのですが、トランジスタは数個をうまく組み合わせて使うのが工夫。
 今回の6CA7プッシュプルアンプは出力管も含めて8球。双3極管を使っているので、ユニットとしては12ユニットです。これは真空管アンプとしては比較的多い方です。しかしトランジスタアンプなら、簡単な物でももっと多いのが普通。そのうえ小物とか作ると同じ物を何本も使いますから、使い易い物は多少多目に買っていたりしました。部品屋もお徳用の袋入りで売ってましたし。今回もミスなどで破損する事も見越してトランジスタ類は余分に買いました。幸いすべて無事に作動したので、余分の分はそのままストックになりました。

8本足の缶入りオペアンプ 登場時は火星人襲来のような衝撃でした

 初期には真空管に似た感じだったのが集積回路。特にオペアンプは単独の素子というよりも機能部品。○○用○○管という雰囲気。高性能の物は価格も高くて入手も難しくて、汎用の物でも安くはなかったです。それでもジャンクを解体したり特売を買ったりしてあれこれ入手して、いろいろ遊びました。709は制約が多くて使いにくかったです。301は(当時としては)高性能ですが、ひと癖ありました。741はぐっと使い易くなって値段も下がりました。この741や741の類似品はどれも比較的安定していて、オーディオ用や小物製作に気軽に使える物でした。
 初期のオペアンプの多くはこの写真のような金属のケース入りでした。セラミックのDIPに封止された物もありました。種々の機能のアナログICはプラパッケージが普通だったのですから、考えてみるとちょっと不思議です。しかしプラ封止のデジタルICが普通になると、いつまでも缶入りでは不便。だんだんオペアンプもプラ製DIPが普通になりました。 今は面実装が多くなってちびっこくふぺったんこのパッケージが多くなっています。

2014年2月9日日曜日

ハンダごてと工具

アンプ製作もひと区切り。ちょっと大き目の音で音楽を聴きながら、使った道具はお片付け。

 実際に物作りするには道具が要ります。部品は当然ですが、必要な道具を買いそろえる所からやるとなると大ごとになるでしょう。ネジ回しとかドリルとかもともと汎用の工具もありますし、ヤスリとか金ノコとかいろいろ使い道のある物もありますが、シャシーパンチとかニブラーとかけっこう専用っぽい物もあります。これら、長い間に集まった物たち。しばらくぶりの出番だったのが多いです。

今回使用した道具たち ハンダ付け関係

  実はハンダごてはけっこう持っています。さすがに子ども時代の物は残っていませんが、ここに写っている物はかなりの古参です。30Wの方は確か70年代から使っている物。なりゆきで同じ物をもう1本持っています。簡素な構造ですがすごく丈夫です。ちょっと容量の大きなハンダ付けにも使えるので重宝しています。わが家の真空管アンプのすべてと関わっています。今回のアンプたちの製作でもこれが主役を務めました。コテ台も(さすがにスポンジは何回か買い換えましたが)この頃からの物。ずいぶん長い縁です。
 このコテはトランジスタ物の製作にも活躍したのですが、さすがにICピッチのハンダ付けには大きすぎで、かわりに購入したのがもう1本の方。マイコン関係の製作をしていた頃はこちらが主役でした。朝から晩まで通電しっぱなしという事も多かったですが、ここ数年はまったく出番がありませんでした。今回の6SN7アンプの穴開き基板の作業ではひさしぶりの活躍。これも丈夫な物のようで、全然支障無く使えました。
 この他板金工作用に150Wのでっかいのが1本と少し前に閉店処分で買った60Wのが1本ありますが、これらは今回のアンプ製作には使っていません。

 ハンダ吸い取り機はこれが3本目。やはり軽くて反動が少なくて吸引量が多いのはプラスチック製。そのかわり繰り返しの力と衝撃で傷むらしく、突然パキっと折れたり。実はこれも今回の使用中にバネを掛ける部分が折れてしまいました。しかしこれから新しく買い直してもどれだけ使うか判らないので、なんとか応急修理しました。

 ラジペンとニッパーもけっこう古参です。昔はけっこう無理な使い方もしたからでしょうか、けっこう傷んで買い換えていましたが、これらは80年頃から使い続けている物。手に馴染んでいます。鉗子は3本持っています。部品の足を保持したり、狭い所で配線を整えたり、ビニル紐を括ったり。2本は電気とは無関係の工作用に買ったのですが、1本は70年代から使っている物。もちろん、電気もの以外の工作にも大活躍しています。

 ハンダは一応は消耗品なんだろうけど、けっこう長く持っています。子ども時代はもう少し太い物(1.2mm?)を使っていましたが、その小さな巻きを使い切るまでにけっこうかかりました。太すぎると感じて70年代半ばに買ったのが0.8mmの巻き。特売に釣られて1Kg巻きを買ったのですが、まだまだたくさん残っています。おそらく一生使い切れないでしょう。IC関係なら良いのですが、端子まわりとか少し太い配線には0.8mmではハンダの量が足りません。そこで買ったのが1.0mmの巻き。反省の意味で500g巻きにしましたが、やはりけっこう残っています。今回のアンプ製作では(穴開き基板の部分を除いて)これを使いましたが、ほとんど減ったように見えません。世間は鉛離れしているようですが、これだけあれば無くなって困ることは無さそう。

2014年2月7日金曜日

6SN7 PP : 試運転

最後にちゃんと接岸してタラップ下ろすまでが航海。予定よりも少し先まで進みましたが、ここで一度停泊。

 穴開き基板使うのはホントにひさしぶりです。初期の頃、オーディオ関係ではエッチングして基板作る事が多く穴開き基板は補助的な小物以外あまり使いませんでした。その後、マイクロコンピュータで遊んでいた間はけっこう使ったのですが、それもずいぶん前の事。

 しばらくぶりだから、すっかりカンが鈍っています。 基板にバランス良く見栄えよく部品を盛り付けるのも大変。部品の大きさの感覚がすっかり無くなっています。何度か微調整しました。電圧のかかる部品とか熱くなる部品とか、絶縁が気になる物とか、短いイラックスを通して基板から少し浮かせたり。
 増幅は1段ですが、カスコードで石が2個並びます。これが差動で2組あって、ステレオでその2倍。石が8個一直線に並んだ姿はちょっと奇妙です。使ったFETの足の順番で騙されるところでした。2SK362の足配置は2SK30と逆です。

 今日はハンダ付け作業。先の細いハンダこてを出して来て、ハンダも0.8mmの細い物を。マイコン関係に比べると配線の量は全然少ないです。しかし配線がなるべく交錯しないように引き回さなければなりません。特に今回はインピーダンスも高いし電圧も高い。コテ先のあて具合とハンダを供給するスピードの感覚を完全に忘れているのにびっくり。目も指先も衰えているので、細かな所に集中する気合いが持続できません。急ぐことはないので、少しづつゆっくり作業。誤配線が何より怖いですから。


 ひととおり配線したら、念のためテスタでチェック。やはり1箇所配線忘れがありました。電源部は先に組み立てて電圧が出ることは確認済みです。ここに繋いで各部の電圧チェック。なんか変。おかしな所のあたりを調べると、ハンダがちゃんと付いていない所がありました。部品が破損するような誤りでなかったのが幸い。修正して信号を入れると、ちゃんと増幅して出てくるようです。思い切って、真空管のグリッドへ繋いで、管を挿して。一応チェックして発振していない事を確かめてから、実験用のスピーカーを接続。あれ?左チャンネルだけ音が小さい?? 基板をそっと裏返して確認。ハンダのひげが接触していました。電圧のかかる所でなかったのでチェックが甘かった。

 しばらくぶりと言っても言い訳にならないです。かなり恥ずかしいミスが続発したけれど、なんとか音が出ました。 仮配線だった所をきちんと付け直して、しばらく様子見。その間に部屋を掃除して道具は片付け。特に熱くなったりする部分も無く音も正常なので、正規のスピーカーに繋ぎ替え。予想(昔に仮で試した時の印象)とは全然違う音。出力トランスが良いのでしょうか、低音がすごくゆったり響きます。高域は明るく、小さな音がくっきり聞こえます。あとしばらく鳴らしてみます。

2014年2月6日木曜日

真空管と整流回路

今回の主役の6CA7アンプ。回路上のかなめは電源です。正負あわせて3つの整流回路。

 安くて丈夫で扱い易いシリコンダイオードのおかげです。この電源部を真空管で作らなければならないとしたら、すごく面倒な事になっていたでしょう。昔の一般的なアンプは、単一の整流回路で、出力管から前へと次々電圧を下げながら供給する。あとは固定バイアス用に負の電圧を作るぐらい。
 この伝統的な回路構成は、長い間アンプ設計の標準的手法であったと思います。トランジスタ時代になっても、初期には同様の考え方の回路がけっこうありました。

 標準的なデジタルICの電圧は5Vです。初期のCPUの8080は面倒な仕様で、+5,+12,-5Vの3種類の電圧が必要でした。-5Vは電流が小さかった(1mA)ので、なんとか他の電圧から作ろうとする工夫がされました。後継の8085や機能的に上位互換のZ80は5V単一動作になったので、ロジック部の電源は5Vひとつで済むようになったのですが、周辺回路などで仕様上別の電圧が必要な部分は存在しました。その筆頭がモデムなどのシリアル通信。 RS232Cは(できれば)±12Vが欲しいです。メモリ関係はかなり後まで+12が必要な物が残っていました。これらのために電源回路を複雑にするのを避けたいので(電池で動かしたい事もありますし) +5からなんとかして作る工夫がありました。最後にはそのためのICまで登場しました。(これらがアナログ回路に使えるかは不明です。)

デュアル 倍電圧整流回路 オペアンプに良さそうです


 トランジスタと真空管のコンボを考えると電源がポイントになります。製作中の6SN7-GTアンプは差動段を下へ引くマイナスとバイアス用のプラスが要ります。これをどこから作るか。電流は数mAですから、B電源の巻線から取れますが、高い耐圧の部品が要りましすし、電圧のほとんどを無駄に捨ててしまうことになります。幸いどちらも電圧は5~10V程度あれば良いので、ひとつ余ったヒーター巻線 6.3Vを正負に半派整流して得ることにしました。π型にフィルタを入れても電圧は足ります。

 前置するフラットアンプにオペアンプを使おうとすると、このための電源が要ります。中点から吊って単一電源で済ませる手もありますが、できれば正負の電圧が欲しいです。振幅が要りますから、あまり低い電圧では困ります。
 電圧が足りなければ、倍電圧整流という手があります。真空管時代のテレビは、電源トランスを使用せず(磁界で輝線が揺れるのを避けられる)電灯線の100Vを倍電圧整流してB電圧にしていました。電源ラインが宙に浮く(ヒーターの電位が揺れる)のを嫌って片側を接地した半波倍電圧整流です。
 この回路を利用します。ヒーター巻線の6.3Vを半波倍電圧整流。これを上下に積み重ねて正負を作る。リップルが気になるのできちんとフィルターを入るとして、これなら±12Vぐらいは確保できます。(半派を上下で使うので、トランスから見ると両派になります。)

2014年2月5日水曜日

真空管と出力トランス

そろそろ季節が春になって来ました。暖かくなって、その後は暑くなる。

 しかし真夏に大型管のヒータの熱はけっこううっとおしいでが、寒い部屋では赤いヒーターの灯りの暖かさが気持ちよいです。暖房をかけた部屋で真空管アンプで音楽を聴き、春のお出かけの予定とか考えながら、引き続きパズルゲーム。

 手もちの6BM8はすべて中古です。来歴もさまざまでプッシュプルでは使いにくいです。6BM8で遊ぶことを考えました。6BM8は私が子ども時代に作っていじって遊んだもの。あらためてアンプを作ってもいいんじゃないか。3結でも良いけど、子ども時代にはULはやっていませんでした。K-NFといった知恵も無かったです。やりたくても使えるトランスがありませんでした。しかし今なら小型で良質なトランスが新品購入できます。再来した真空管人気がいつまで続くか判りません。作るなら、今でしょ?
6BM8 いろいろ

  当時の6BM8は定番の6AR5よりは高性能で立派(価格も高かった)でしたが、6BQ5とかに比べると格下扱いでした。メーカー製アンプ等にも使われていましたが、システムアンプとかレシーバーとか電蓄とかやや価格を抑えた家庭用が主でした。6BM8の元々の用途から考えれば、電圧200Vぐらいで使うのが良さそうです。軽く使って2Wぐらいの出力。できればULかK-NFにしてみたい。ほど良いトランスが見つかるか。

 トランジスタ以前の時代、アンプには出力トランスが必須でした。当時のラジオ少年の知る上物のトランスは「タムラ」を筆頭に「ラックス」「サンスイ」「タンゴ」といったところ。雑誌の作例はこれらを使っていました。SEL(菅野電機)やATOM(浅川電機)も雑誌広告に載っていました。部品屋へ行くと INSTANT(大阪高波)とか格下っぽい銘柄もありました。そして無銘のおそらくテレビか電蓄かの余剰品。子どもが小遣いで買えたのはちょっと怪しい安物だけ。

 家庭用のラジオがトランジスタになり、電蓄やステレオもトランジスタになり、最後にテレビがトランジスタになって。真空管が使われなくなればトランスも不要になります。気づけばほとんどのメーカーが(特別な高級品や大型の物を除いて) 製造を止めていました。在庫品が売り尽くされジャンク物もじきに枯渇しました。しかし、その真空管用のトランスが最近また新しく作られています。
 トランスという物自体は電源用とか需要がありますし、材料や基本的な技術は共通です。もう少し空白期間が長ければ(すでに適した機械など廃棄されたり経験ある技術者が退職された会社も多いようです。)難しかったかもしれませんが、細くて高圧のかかる線を巻く機械と技術を持った人材があれば(適切な設計が必要ですが)少量生産が可能です。

 幸い今はネット情報の時代です。量販するほどの需要は無くても、少量づつ作って通販や直販で売れば求める人はいます。6Z-P1アンプで使ったのは「春日無線変圧器」製、今度の6SN7-GTのは「(株)イチカワ」製です。このほか、「ノグチトランス」とか、「東栄変成器」とか比較的小型の出力トランスを出しています。かっては専業中堅メーカーが得意にしていた分野ですが、今は一種の隙間市場です。(もっとも、これらがいつまで続くかは判りません。)

追記:ノグチランスは2018年9月で廃業。販売は「ゼネラルトランス」で継続されていますが、この後は不透明です。

メモ : 6BM8のヒーターはグランドに落とすなら4ピン側と書かれた資料がありました。理由は書かれていませんでしたが、グリッドへの管内の配線が4ピン側に近いからでしょう。

2014年2月4日火曜日

3極管シングルアンプ

こだわりも大切だけど柔軟さも大切。思いつきを小ネタにするにはパソは便利です。

 6SN7-GTのアンプは製作途中だけど、カラクタ整理は継続中。このアンプが完成すると、3極管のプッシュプルアンプが3台になります。出力はそれぞれ2倍づつの関係ですが、どれも実用的でちゃんと聴けるアンプ(になる予定)。そうなると手薄?なのが3極管のシングルアンプ。小ネタではなくちゃんとした物を作れるかしら。

 1W程度以上のステレオアンプが目標。条件として、実用的な感度と音質。管や部品に無理をかけないこと。安定重視。手持ちで候補となる管は、12BH7Aのパラレル、6BX7を片方づつ。意表を突いて6BM8か6AQ5の3結か。
 手持ちの6BX7の中には、新品で購入した物のほか中古を買い込んだ物もあります。中古の中にはへたり具合で2ユニットの特性に違いが目立つ物があります。これらはプッシュプルのステレオアンプでは使いにくいです。片ユニットづつシングルアンプにすればこれらも活躍できるのではないかしら。という事で、またパズルゲームの始まり。

 あらためて6BX7の特性図を眺めてみました。6SN7とは対照的です。電流はドバっと流れますが、電流の少ない所ではカーブしています。このへん、12BH7Aよりも癖が悪いです。しかしたっぷり電流を流そうとするとプレート損失を越えてしまいます。このあたりも6SN7とは対照的。電圧を下げて低く寝たロードラインを引くと、出力は減りますが、歪みが減って案外いい感じになりそうです。

 200Vで27mA。負荷が7KΩぐらいで、P-P24Vほどの入力で出力は0.7Wぐらいでしょうか。これは8ΩでP-P6.6Vぐらい。電圧利得は0.27ほどです。出力重視だと、250Vで負荷が5KΩ。入力約30Vで出力が約1.1W。8ΩでP-P8.3Vで利得はやはり0.27ぐらいでしょう。やはり感度が低いです。ほど良くNFをかけて仕上がりを16倍ほどにするにはドライバ段の裸利得が200倍ほど必要です。3極管の1段では無理。一方、6BX7は入力容量の大きな3極管。高インピーダンスでは苦しいです。
Dual Operational Amplifiers / 2回路入りオペアンプたち

 これはパズルです。とりあえず難しい条件をひとつ外してみます。メインアンプの感度が足りなければ前のアンプが頑張れば良いのです。真空管全盛の頃のメインアンプには感度が低い物もありました。それを補うためかプリアンプの最大出力も高く設計されていた気がします。居間で常用している真空管プリには、NF量を減らしてゲインを+6dBするスイッ チを付けてあります。1つの増幅回路ではなく、ゲインが低いパワーアンプとゲインのあるフラットアンプの2つに分けて考えます。

 パワーアンプはシンプルな真空管アンプ。これをフルスイングするには±3Vほどの入力が必要です。この程度なら汎用のオペアンプでも簡単です。この方式は案外うまく行くんじゃないかしら。

2014年2月2日日曜日

6SN7 PP : 製作中 真空管まわり

主要部品が揃ったので、そのまま前進します。

[製作した6SN7-PPアンプの詳細]

 少し前に作った6Z-P1アンプも半導体をドライバ段に使ったハイブリッド構成でしたが、これは6CA7アンプの習作の意味もありましたから、平ラグ板に部品を盛り付けました。今回は部品点数が多くなり、正負の電源が入り組みます。シャシー内も狭いです。コンパクトにまとめるにはやはりプリント基板がBEST。私の電子工作の復習という意味ではこれも良さそう。

 という事でエッチング基板も考えましたが、あらためてやるとなると液やらいろいろ買わなきゃいけないので、ぐっと後退して穴開き基板を使うことにしました。デジタル時代にはけっこう使いましたが、この場合はせいぜい12Vぐらいの電圧。今度はその10倍以上で、回路のインピーダンスも高いです。この点、ちょっと不安はあります。

 6SN7をプッシュプルで使って約1.2Wの出力です。8Ωで3.1Vだから、P-Pでは約8.6Vになります。入力が約22V(P-P) だから ゲインは0.4倍。仕上がりゲインを18倍とすると、ドライブ段のゲインは約45倍。NFを12dBとすると200倍近いゲインが必要です。2SK362のgmは真空管に比べるとかなり高いので、負荷抵抗をあまり大きくしなくても必要なゲインが得られます。ゲインが200倍ぐらいになるように調節すると82kΩで済みます。カスコードは等値的な内部抵抗が高いですから、負荷抵抗を低くできるのは好都合です。次が3極管なので入力容量が大きいためハイ落ちが懸念されますが、(SPICEで見ると)この程度ならそれほど酷くならずに済みそうです。
 トランジスタ回路部分はあとまわしにして、調子が出ているうちに真空管アンプ工作の部分をやってしまうことにしました。今回は使い残しや外し物やジャンク部品もなるべく活用するつもりです。電源トランスのほか、真空管ソケット、スイッチ、ヘッドホンジャック・・・・ ネジはすべて買い置きでまかなえます。配線も使い残しをやりくりします。アルミシャシーに穴を開けて、いろいろネジ止めして、ビニル線を引き回して。電源部は平ラグ板に盛り付けました。出力管のカソードまわりはソケットに直付けです。
 ドライバ段の基板は出力トランスの下に置きます。この部分に1tのアルミ板(残材)でシールドを設けました。基板はこの上にビス留めします。こうしておけば、将来的にドライバ回路を別の物に作り替えることがあっても対応しやすくなります。

 ここまでできれば、あとは小さいハンダごてに持ち替えての作業です。さて、穴開き基板でアナログ物の作業は何年ぶりかしら。

2014年1月31日金曜日

6SN7 PP : 部品集め

目的の6CA7アンプは、当初の予想よりずっと早くスムーズに完成しました。この勢いでもう少し進むことにしました。

[製作した6SN7-PPアンプの詳細]

 長年の懸案だったアンプを作る。子ども時代からいろいろ電気モノと触れあって来た想いの集大成でもあります。あらためて昔の雑誌の記事とかも読みなおしました。昔に収集した資料とかメモとかも出てきました。そして、買い置きや取り置きしてあった昔の部品とか。

 押し入れの奥にしまいこんであった箱の中に、古い真空管がけっこうたくさん溜まっていました。現在稼働可能なアンプの予備の分以外は、このままではおそらく使う事は無さそう。その中で、比較的簡単にアンプとか作って遊べそうな物がいくつかありました。その中で、ちょっと面白そうなのが6SN7。今回の6CA7アンプのドライバ段に使った6FQ7の原型となったGT管です。
 6SN7は6BX7-PPアンプに差し込んで鳴らしてみたことがあります。不適切な動作点であったにもかかわらずたいへん良い音でした。あらためて特性図から負荷を求めると、どうやら18KΩぐらいが良さそう。これで出力が1.2Wぐらい。練習と実験がてら作った6Z-P1シングルアンプと同じぐらいの出力です。ネットで見つけたページに定格3Wで16KΩのトランスがありました。小ネタが一気に現実的になって来ました。

名門の生まれ / NECと東芝の真空管と半導体


 メーカーのサイトには 5KΩと8KΩは価格が載っていて、16KΩは問い合わせとなっていました。問い合わせると、 どうやらある程度注文がまとまるごとに生産している感じでした。案外価格が安かったので注文しました。届くまで回路を考えたり部品の用意をしたりして待ちました。

 電源トランスは買い置きのジャンク物を使います。シャシーは私室のアンプたちと揃えて、薄いアルミの箱にします。ヒータ電力と管の大きさを考えると、ドライバ段は半導体の方が良さそうです。先日検討した「FET-Trカスコードで差動1段」回路で作ることにしました。手持ちの2SK30ではgmが足りませんから、ネット通販で見つけた2SK362を購入しました。案外安いので上に積むトランジスタも一緒に購入しました。2SC2688はNEC製で、これもテレビのクロマアンプ用。トランジスタを通販で買うのはほぼ40年ぶり。ただし、昔は最新品種を、今は廃品種を。
 調達に困ったのが電源のブロックコンデンサ。無いことは無いけれど大げさで高価です。基板付け用のコンデンサで耐圧と容量の合う物が比較的安価にありました。シャシー内に入れ込んでしまえばこれでも良いのですが、やはりシャシー上にすっくと立つブロックコンの姿は外観の点で重要。探すうちに、この細い外径に合うバンドが見つかりました。結局これも通販。単価は安いけれど送料込みだと微妙でした。

※ イチカワは真空管用トランスの製造販売を2022年1月で終了しました。

 

2014年1月27日月曜日

6BM8で遊ぶ計画

片付けをすると、そのうち使いそうと取り込んであった物がいろいろ出て来ます。

 昔に取り込んであった真空管がいろいろ出て来ました。何かに使えそうとか、ちょっと面白そうとか、単に出会った縁とか。

 特性的に面白そうな管でも本数が半端だと使いにくいです。手間をかけてしっかりした物を作っても消耗が怖いと実用にできません。ステレオにして片方が切れてしまったりしたら・・・・ しかしある程度まとまった本数が出てきた真空管もあります。

 6BM8は私が最初に使った管。最初はラジオを作ってアンプに改造して。

 6BM8は元々は欧州のテレビ用の管で、μ70の3極部と5 極出力部の複合管。ラジオに使えば1本で音声回路を構成できます。電蓄ぐらいなら2本でステレオに。出力部は、昔のラジオ少年の標準の6AR5と比べて低い電圧で高い出力が得られます。内部抵抗も低くて感度も高いです。3極部はオーディオ用としては中途半端です。電流は取れますが、少し感度を高くしようとしたり多目にNFをかけようとするとゲインが微妙に足りません。

 まず、プッシュプルにする場合を考えてみました。いちばん簡単に済ますならアルテック型でしょう。ステレオで4球。しかし3極部のμは70。1段ではどうやっても単体のアンプとしてはゲイン不足。前に1段置くならばミュラード型という手があります。初段に双3極管を片方づつ使ってステレオで5球になります。半導体とのコラボなら・・・と考えながらSPICEで遊んでいるうちに、2段差動回路ができました。

図中の数値は適当です

 2段目でけっこうゲインを取れますから、初段で振幅を稼ぐ必要がありません。FETに高い電圧をかける必要がなくなります。この程度なら出力管のバイアス回路用巻線から作れるでしょう。2段目は(差動入力なので)自己バイアスで済ませました。管にかかる電圧が低くなりますが、振幅が足りなくなるほどではありません。差動入力なのでそれほど深く下に引かなくてもバランスします。部品点数も少なくて簡単に作れそうな回路です。

 しかし6BM8をプッシュプルで使うと7~9Wの出力が出ます。普段使うには大きすぎです。やはりシングルで使って3Wぐらいが手頃でしょう。その場合3極部をどう使うか。このゲームはけっこう難しいです。

2014年1月24日金曜日

12BH7A PP : 回路を見直しました

わが家でアンプよりも変化があったのがスピーカー。スヒーカーとアンプって悩ましい関係です。

 昨日は大阪市内に出る用事があったついでに日本橋へ足を伸ばしました。抵抗数個とコンデンサ数個の買い物。交通費を加算するとけっこう高価になりますが、やはり目で見て買う方が安心です。特にコンデンサは種類が多く寸法形状も注意が要ります。

 相性というよりも資質の違いでしょう。何が相手でも無難にあしらうやつと、良いも悪いも個性を際立たせるやつと。昔はメーカー製の中型3way密閉型スピーカーを使っていました。一時期はやや小型の2way密閉型と小型の1wayバスレフを併用していて、以後は居間のスピーカーは中型3wayバスレフ、私室は小型の2wayバスレフという体制が長く続きました。どちらもAV機器である程度実績のあるメーカーの製品で、何が相手でもそれなりに無難に鳴るスピーカーです。
 居間のスピーカーに変化はありませんが、私室には箱を自作したスピーカーが加わりました。ちょっと工夫した箱で、10cmのユニット1個をやや大容量のダンプトバスレフ箱に付けた物。周波数特性はあまり平坦ではなく、インピーダンスの暴れも大きいと考えられます。音楽を選びますし、試聴位置によっても音像が変化します。いろいろ癖が悪いです。音はくっきり鮮やかですが、時には音楽ソースのあら探しのようになってしまいます。それでも慣れてしまうと、その緊張感がちょっと心地よく感じてしまったり。

 どうやら、このスピーカー。アンプにとってもずいぶん厳しいようです。アンプを繋ぎ替えると音がずいぶん違って聞こえる曲があります。トランジスタアンプが大出力化した時期の小容量バスレフ箱用の重いユニットを変則的な箱に入れた。おそらくインピーダンスの暴れに加えて逆起電力とかいろいろあるのでしょう。これが小型のモニタスピーカーでは目立たなかった欠陥を露わにしたのでしょう。そして新しい6CA7アンプから常用の12BH7Aに戻した時にこれに気づいた。
 先日の聴き比べで露見した12BH7A常用アンプの問題点。回路定数をSPICEに入れてみると、けっこう難ありの動作でした。ある程度きちんと計算した値が元でも、電圧や利得とか調整するためにあちこち増やしたり減らしたりしているうちに良くない方向にずれ込んでいたようです。昔のアマチュアの製作ではありがちな事でしたが、組んでみてそれらしく音が出たのでそれ以上は追求しませんでした。
 SPICEでのシミュレーションでは、カットアンドトライも速いです。電圧や電流を見て抵抗値をE24で加減して様子を見る。お茶を飲みながら何回か繰り返しても時間はしれています。どうやら抵抗数本とコンデンサ数個の変更でかなり改善しそうでした。そこで、今度はSPICEの検証。お告げのとおり部品を替えて音が変わるか。

 一時期のBGM用として作った物で、当初はこんなに長く活躍するとは思っていませんでした。平ラグ板の配線ですが、部品交換とか全然考えていませんでした。部品は縦横にぎっちり付いていて、その両側から配線が出てます。狭い所で邪魔な線を外したりしながら部品交換。けっこう時間がかかりました。
 で、鳴らして見ると、気になった「もっさり感」は無くなっていました。 SPICEってけっこう良く効くようです。

2014年1月20日月曜日

6CA7 PP : ドライバ段の回路

昔よく聴いた曲とかかけながら使った資料など片付けています。

 製作した6CA7アンプのドライバの2段差動はかなり初期から考えていたものです。出力トランスを譲り受けた頃の回路案の走り書きが出てきました。一応は計算したらしく、抵抗値が入っています。選球は常識的?に12AX7と12AU7です。深いマイナスを使うのではなく、1段目は-40Vと中途半端な電圧から引いていますが、バイアス回路用のマイナスを流用しようと考えたようです。直結は避けて2段目は自己バイアスにしています。
 2段目に300Vがかかっていましたから、出力段は350V程度加えて約40Wぐらいの出力という普通の動作を考えていたようです。この時のドライブは片側30Vぐらい(60VP-P)になるはずです。(この動作ではSW30-6は使えません。)
初期に考えていた差動2段ドライブ回路 2段目が自己バイアス

 トランジスタアンプでは当時でも差動回路はほとんど常識でした。しかし真空管アンプの回路としては特殊な部類で、初段に双3極管を使っても2ユニットをパラというのが一般的でした。2段差動は位相反転回路としては理想的で、全体では部品点数も多くないのに、あまりにももったいない。深いマイナス電源が要るから? それなら自己バイアスという手もあります。(2段目は差動入力なので自己バイアスでも影響は少ない)

 遊びついでにSPICEに入れてみました。組んだまま電源を入れる感じで、そのまま実行。あっさり動いてしまいました。ゲインは約250倍。振幅もじゅうぶん取れています。抵抗値を見ると、ゲインが高くなりすぎるのを抑えようとしたようです。意外としっかり考えていたようです。もっとも、この回路は裸では歪みが多い感じです。動作点もゲイン配分も詰めがあまいですが、初段をあまりマイナスに引けていないので、初段の平衡度が低くて歪みの打ち消しが効いてません。

 (注:ムラード型の原型は段間が直結でなかったらしいです。)

2014年1月19日日曜日

6CA7 PP : 慣熟運転中

しばらく鳴らして、真空管も部品もすっかり馴染んだようですが・・・

 最初は高音も低音もバラバラの印象でしたが、しばらく鳴らしているうちになんとなく落ち着いた感じになってきました。本当は定格ぐらいの音量で鳴らしてみたいのですが、狭い家では当然無理。dしかし、毎日この新しいアンプの音を聴いているのだから、こっちの耳の方が馴染んだという事もあり得ます。あらためて私室で常用している12BH7Aプッシュのアンプに繋ぎ替えました。
 やはりかなり音楽の印象が違って聞こえます。長く聴き慣れたアンプは(当時の製作意図でもあったのですが)ごく普通でぼんやり聴いてちょうど良いぐらいのの音。まったり癒し系とも言えるれど、新しいアンプの気合いの入ったの音と比べるとずいぶん「もっさり」して聞こえます。
 思いついて、先日作った6Z-P1のアンプも引っ張り出しました。意外なことに、小さな音ではいちばん貧弱な6Z-P1のアンプと大型の6CA7アンプの音が良く似ています。どちらも5極管ですが、それ以外は全然似てもにつかないアンプ。あと共通点があるとすれば、回路の設計の詰めにSPICEを使った事ぐらい。そこで、物は試しと、12BH7Aアンプのドライバ段までの回路をSPICEに入れてみることにしました。幸い6BL8のパラメータもありました。グラフを描かせて見ると、あまり良くない動作になっていました。このアンプを作ったのはもう20年以上前。その時には、前に6BX7アンプを作った時の計算書きを基に適当に値を加減した(テヌキした!)ように記憶しています。当時はまだマイコンがパソコンになったばかりの頃で、シミュレータはアマチュアが使えるようなものではありませんでした。そして、その6BX7アンプを作った70年代半ばは電卓の時代。
 アンプの設計と言っても昔はけっこういいかげんでした。アマチュアの製作では、メーカ公表の動作例そのままとか、略算式で計算したままというのが普通でした。理屈は抜きでここは○倍とか×Ωぐらいという慣習も多く、雑誌の製作記事でもそういった手法が解説されていました。入出力の容量やインピーダンスとかは都合良く忘れて、時定数はとんぶり勘定。さすがにトランジスタの時代になるとこの手は通じなくなりました。オペアンプなんて癖の悪い物も出て来て、丁寧に計算して確認しなければいけなくなりました。一時の徒花に終わりましたが、4chステレオなんてのもありました。先の6BX7アンプ製作の際には、当時の手法で真空管回路を見直そうとしました。今ならパソのSPICEで数秒もかかりませんが、計算尺(まだ関数電卓は持っていなかった)と集計用紙を使って夜な夜な計算を繰り返しました。

 という事で、居間のアンプも持って来ました。繋ぎ替えて、同様にちょっと大き目の音で鳴らし比べ。やはり設計した時代からでしょうか、帯域の取り方が狭い感じで、低音や高音の響きが少し物足りないですが、気になっいた「もっさり」感はありません。中域は新しい6CA7アンプと良く似ていますが、ボーカルの生々しさでは若干こっちが上。何事も細部まで気配りして丁寧にやらなきゃダメという事のようです。
 SPICEに入れた回路の定数をあちこち加減して、それなりにバランスの良さそうな値が求められました。計算も速いし、画面で波形を見ながら電圧配分とか考えられるのはたいへん楽です。回路はそのままで、抵抗やコンデンサをいくつか交換すればかなり改善しそうです。はたしてSPICEの効き目がどのぐらいなのか、やってみなきゃいけなくなりました。


2014年1月18日土曜日

余剰部品の始末

目的の6CA7アンプ製作は一段落しましたが、勢いが残っているうちにもう少し遊びます。

 このあと、修理などを除くと、おそらく電子系の工作をすることはほとんど無くなるでしょう。今までに溜まった半端物の部品がいろいろ出て来ましたが、おそらくほとんど使い道が無くなりそう。そして、なんとなく使うつもりで買い置きした真空管も。

あらためて部品箱とか残り物入れとかひっぱり出して整理。6CA7アンプ計画では基本的に受動部品は新規調達するつもりでしたから、このあたりはほとんど手を付けていませんでした。思い出してみると、今までにいろんな物に手を出したこと。それらの残渣がたくさん。古いトランジスタ、古いリニアIC、古いオペアンプ、古いTTL、古いマイコン周辺LSI。振り返ってみると、デジタル時代以降は特に変化が早かった気がします。能動素子は当然だけど、それらとのからみで存在意義があった部品群。トランジスタソケットやICソケットって、今では真空管ソケットよりも存在意義が薄い感じ。DINコネクタとかアンフェノールとかD-SUBコネクタとか、今後復活して何かに使われる可能性はほとんど皆無でしょう。今までにかなり廃棄して来たけれど、探すとまだあちこち隙間から沸いて出て来ます。

いわゆる「無駄な抵抗」というやつ

 抵抗器は、作る物によっては同時に同じ値を何本か使います。ステレオならたいていは2本単位。厳密な値が欲しい事もありますが、数倍違っても大差無い箇所も。その時々で適当そうな値を使ってます。SPICEで遊んでいる時もたいていはおおまかななカンでE24から選んで入れ替えてます。途中の計画変更もありますが、使いそうな値だと余分目に買っていたりもしました。あらためて集めてみると、けっこうな本数です。ただし、あらためて見るといずれもトランジスタやICで遊んでいた頃の物で、値の範囲がかなり偏ってます。残念ながら真空管モノには使えそうにないのが多いです。

 冬の部屋では暖かく感じますが、やはり大きなアンプは夏向きではありません。部屋で常用するにはちびっこいアンプでじゅうぶん。手持ちの出力管は6AQ5と6BM8がありますが、どちらもプッシュプルで使うとけっこう立派なアンプになってしまいます。電圧増幅管ですが、6SN7ならうまく使えば1Wあまりの出力になり、6Z-P1のシングルアンプと同格になります。残り物の半端部品がいくらかでも活用されるかしら。幸い都合の良さそうな出力トランスが現行品にあります。これは追い風? 買い足す部品がけっこうありそうですが、今度はきちんと拾い出して、余分な買い物はなるべく控えなきゃ。

2014年1月17日金曜日

6CA7 PP : 試運転とネジの交換


組み上がったアンプは安定して動作しているようです。しばらく部屋で鳴らしています。

 ちょっと大き目の音で聴き慣れた音楽を次々とかけながら、その合間に動作チェックしたりしながら webページ用の写真を撮ったりしています。
 シャシーに付いてきた部品のうちのいくつかは再利用しています。入力のピンジャックも元の物を使いました。清掃してチェックして支障無いと判断したのですが、やはり接触不良が起きるようです。若干加工するだけで嵌る物があったので、これに交換しました。その際にシールド板を供締め固定していた出力トランスの止めネジを緩めました。すると、ちょっと回すだけでポロっと外れました。ネジが短すぎで、やはりこれはマズい。

 で、いろいろ用事をしがてら日本橋へ。日本橋には老舗のネジ屋さんがあります。今回のお目当てはここ『ナニワネジ』。たいへんたくさんの種類のネジを小袋で売ってます。太さや長さの違うネジが材質ごとに区分して陳列されています。ナットや座金とかも形や材質がいろいろ揃っています。小ネジの類はひと袋50本とか100本ですが、単価で見ればかなり割安。ホームセンターで20本買うならナニワネジで100本買うという具合で、昔からこちらのお世話になってます。まあ、その結果使い残しのネジが膨大な量溜まっているのですが。(今回の使用した小ネジはすべてこういった買い置きです) 

真空管の灯り / 6CA7の中が高温なので青白く見えてます

 ネジって悩ましいです。規格品で太さが合えば締め合わせできます。一般的な径と長さならホームセンターとかでも売ってますが、材質や頭の形とかちょっと条件が付くと揃わなかったりしますし、もうひといき長い物とかもありません。御近所で少量か買えるのは便利ですが、大物の製作などで小ネジがたくさん要る場合は案外高く付きます。ネジ会社へ行くといろいろあって単価は安いのですが、キロ単位で量り売りとか。最近は少量か購入できる通販もありますが、一度に何種類も頼むのでなければ送金料と送料が代金の数倍にもなってしまいます。この点、小袋販売してくれるネジ専門店というのはたいへん有り難いです。

 使用したMQ-60のシャシーは鉄板の上にアルミ板が重ねてあって、普通のシャシーより厚さがあります。電源トランスの取り付けの際には、上下にワッシャを入れるとネジが届きませんでした。しかたなく、少し長いネジに交換しました。ごく一般的な4mmのネジなのですが、5cmを越えると置いている店は限られます。やはり御近所のホームセンターを回っても無くて、結局ネジ屋さんへ行くことになりました。
 ネジは規格品ですが、過去に規格が変更されています。このため古い製品を修理したり古い部品を利用したりしようとすると古い規格のネジが必要になる事があります。今回使用した部品のうち、出力トランスはこの切り替わりの時期の直前頃の製品で旧JISネジが使われています。取り付けネジの径は4mmですが、現行のISOネジとはピッチが違います。元々のトランスに付いてきたネジがあったので、これを使って取り付けたのですが、長さが微妙に足りていませんでした。前述のシールド板を供締めしているネジはその分余計に長さ不足が影響したようです。
 旧ネジなんて、絶対にホームセンターなんかには置いていません。最悪はネット通販も考えて、とりあえず日本橋のネジ屋へ。さすがに専門店です。材質はユニクロしかありませんでしたが、いろいろな長さの旧ネジがありました。使用量が少ないのに合わせたのでしょう。1袋10本入りですから、所要本数の8本にちょうど良かったです。(単価で見ると現行ネジよりかなりお高いですが。)

2014年1月16日木曜日

6CA7 PP : 試運転中

最後は一気に進んで予定よりもすんなり完成しました。

 ここ毎晩聴き慣れた音楽をかけています。最初は妙に低音と高音が目立って聴こえてしましたが、だんだん落ち着いてきました。低音は柔らかく響く感じですが、高音はくっきりちょっと硬く聞こえます。パソからmp3を再生すると、同じデータでもパソによって音に違いがありす。以前から気になっていたのですが、このアンプではその差が目立って感じられます。そして、大出力アンプの余裕という事なのか、多少ボリウムを上げてもあまり音量が増した感じがしません。
 各部の電圧を再確認しました。ドライバ段の真空管はすべて取り置きしてあった中古から適当に選んだ物ですが、支障なく作動しています。出力管も安定して動いているようです。バイアス電流を正規に調整しなおしました。バイアス電圧の調整範囲がかなり偏っていたので、抵抗1本を交換して修正しました。その後、内部の配線を整理してビニル紐で括り直しました。これでひとまず完成です。中古部品を使った電源部のブロックコンも支障なく使えています。これは適当な物に巡り会ったら交換したいと思います。

配線を整理して括りなおしました

 シャシーの通気が良いうえに定格からかなり抑えた動作という事もありますが、真空管まわりはあまり熱くならずにすんでます。冬に部屋で使うにはほどよい程度。大きくて重いので扱いが大変ですが、しばらくの間このまま鳴らそうと思います。まあ、押し入れを整理しないと片付けるスペースが無いという問題もあるのですが。

2014年1月14日火曜日

6SN7 PP : 回路を考えてみる

様子をみながら少し大きめの音で音楽をかけながら、その合間にもうひと遊び。

 しかしSPICEってたいした物です。ササっと回路らしき物を作って、適当に抵抗値とか決めて、とりあえず走らせて、各部の電圧とか電流とかグラフに描かせて 、バランスみながら回路を修正して。本当はもっと緻密な設計に使われる物のはずたけど、とりあえずゲーム感覚で遊べます。なんせ、フリーでソフト代が無料。もちろん試作の部品代も不要。ゴミも出ないし部屋も散らからない。

 アルテック型のポイントは、ゲインも振幅も初段でまかなって、2段目は反転に徹する潔さ。5極3極の複合管なら1本で済みます。 しかし初段は100倍以上のゲインと数十ボルトの振幅が要ります。半導体化しようとすると、単体では難しいけれど、カスコードという合わせ技を使えば2SK30でも可能。反転段は高い電圧に耐えて振幅さえ取れれば何でもよし。という具合でSPICEを使って適当にでっちあげてみました。
 いいかんじで正負の出力が出ます。綺麗にバランスしていてますが、初段から来る歪みが気になります。歪みの点では差動アンプの打ち消しは効果的。半導体なら2段差動にして性能を上げるのは容易。初段のJ-FETはモード変換に徹して、次段のトランジスタで振幅とゲインを稼ぐというのがひと昔前の大出力DCアンプの常套手段。しかしここまで来ると完全に石アンプの設計です。SPICEで試さなくても動くのは判りますし、この道を進んでも「全然おもしろく無さそう」。しかも実際に作るとなると(DCが帰還されないので)ドリフト対策とかSPICEでは追いにくい問題がたくさん出て来るのも判ってます。
差動1段位相反転回路 半導体版

 あらためてカスコード接続2組で差動1段回路を作ってみました。やはり2SK30ではgm不足でゲインが取れません。ネットでメーカーの製品リストを拾って、その中からSPICEのデータが見つかった物を選びました。ネット通販を調べると比較的安価なようです。カスコードにすると、6AU6あたりよりひとクラス高gmの5極管相当になります。所要のゲインと振幅を得るには負荷抵抗は低目で電圧も低くて済みます。カソード(ソース)を深く引けないので、ここは定電流回路を入れて・・・と考えていて気づきました。カスコードアンプ全体では高い電圧で動いていて、バランス上はその分深く下へ引かなければならないようですが・・・FETについては上のトランジスタで低い電圧に抑えられているので、実際はバイアス電圧程度から抵抗で引けばそこそこバランスしそうです。
 電源トランスのあまったヒーター巻き線を整流して正負の電圧を得るものとして、適当に回路を作ってみました。上下のアンバランスは数%で、部品の誤差に吸収される程度。 歪みも少なくて、けっこういいかんじです。

2014年1月13日月曜日

6CA7 PP : 動作チェック

部品を盛り付けたラグ板を配線。ラグ板配線は仕上がりが速いです。

 狭い中で配線のとりまわしに苦労しました。ラジペンとニッパーをてこのように使って被覆を剥くという昔会得した技を駆使して作業。使い慣れた鉗子も大活躍。引き回してあった線のうち、長さが足りなかったのがありましたが、まあだいたい予定どおり。

 念のため、あちこち抵抗とか測って確認。どうやら致命的な間違いは無さそう。という事で、(管は挿さずに)おそるおそる電源を入れました。火花も煙も無し。大急ぎで各部の電圧を確認。なんせ、電源まわりが大がかりですから。ひととおりそれらしい電圧が出ているので、ドライバ段の管を挿しました。直結段が無いので1段づつ確認できます。プレートもカソードもほぼ予定の電圧。ちゃんと動いている? 思い切って初段の管も挿してみます。やはり電圧は予定の範囲内。ACを確認すると・・・何か拾っているのか電圧が出ています。発振か?? 今回は「オシロ」という武器があります。押し入れから引っ張り出して波形を見ると、60Hzの交流波形。ハムを疑ったけど、どうも違うみたい。どうやらどっかから誘導を拾っているらしいです。グリッド付近の線を整理してみると少しレベルが下がります。やはり電源トランスと管が近いのが問題のようです。間のあたりに金属物を入れるとレベルが下がります。シールド板追加も検討。

裸ゲインは約200倍

 とりあえずそのまま発振器を入力に繋いで、レベルを上げてゆくと・・・ドライバの出力に波形が出ます。上下でちゃんと逆相になっています。当たり前なのかもしれ ないけど、拍子抜けするぐらいアッサリと。振幅もじゅうぶん振れます。いきなり動かれると、なんとも不思議な感じです。入力と出力のレベルをオシロの目盛りの読みで比較すると約200倍。SPICEが出した裸ゲインどおり。しかし、SPICEってたいした物です。

 出力段のバイアス電圧が出ていることは確認済み。あとは出力段の動作だけです。その前に、製作したアンプ自体を利用して出力管の選別をおこないました。手元には中古の6CA7が合計9本あります。これに電圧をかけて、電流がちょうど良くなるグリッド電圧を測ります。1本だけ変な値が出ましたが、他はほぼ似た値。その中からほぼ同じ値のペアを作りました。

 イザ、出力管を挿して動作チェック。波は出ています。発振しているような様子はありません。このままいける?? いちど周囲を片付けて、入力に音楽ソースを繋ぎ、用心のため実験用のスピーカーを繋いで、スイッチオン。微かにブーンとザーが聞こえます。ボリウムをゆっくり上げるとちゃんと音が出ます。少しノイジーな感じですが、ちゃんと鳴ってます。ここまで来たらあとは最後の仕上げ。NFの線を繋ぎます。ノイズがすっと消えて静かになりました。念のためDC電圧とAC電圧を確認。発振もしていません。ボリウムを上げると当たり前のように音楽が聞こえます。一応用心のつもりでバイアスを少し深目に調整しました。馴染んでから再調整するのが良いでしょう。

 しばらく様子を見ても異常が無いので、常用のスピーカーにつなぎ替えました。古い真空管がまだ馴染んでないからでしょう。低音も高音もちゃんと鳴っているけど、何かバラバラの感じ。しばらく様子見です。

2014年1月10日金曜日

6SN7 PP : 動作と位相反転回路

足りない部品があります。買い出しに行くまで作業は停滞です。別に急ぐ事ではないので、遊びます。

 で、6SN7でパズルゲームの続き。 8KΩのトランスを強引に2倍で使うのも考えましたが、探すと比較的安価で16KΩというトランスがありました。最近はやりのミニアンプ用でしょうか、3Wというのも手頃です。ゲームにリアリティが出て来ました。

 MT管の6CG7は1ユニット3.5Wで2ユニット計5Wの制限がありますが、バルブが大きい6SN7にはありません。ピーク耐圧が高いので、負荷抵抗を高目にして高目の電圧で使う方が良さそうです。古い規格の管も使うのでB電圧を300Vほどで考えます。6Z-P1アンプに使ったのと同じ中古の電源トランスが1個余っていますから、ちょうど良さそうです。

 カットオフ付近の特性の良い管ですから、AB級でバイアスは深目にしても良いと思います。無難な所で線を引くとバイアスが11Vぐらい。プッシュプルですから、22V-PPのドライブです。これで約1.2Wの出力です。そうなると、出力段のゲインは約1/3倍。さすがに3極管です。
 わが家基準に揃えるとすると、仕上がり利得が約15倍。ドライブ段の設計では振幅よりもゲインが厳しくなります。軽くNFをかけるとすると、ドライブ段で60~90倍ぐらい必要です。 真空管であれば、前が5極管のP-K分割か、3極管-3極管のカソード結合型でしょうか。アンプの規模を大きくしないためには5極-3極複合管でP-K分割でしょう。6BL8は手持ちに余裕がありますが、これを使えば6BX7-PPアンプとまったく同じになってしまいます。全然面白くありません。

 やっててふと思いだした事。普通カソード結合型の位相反転段は3極管ですが、ここは3極管である必然性は無いのです。ただ双3極管が簡単で便利なだ け。5極管を使えば、ゲインが増して平衡度を高く取れます。ここで必要なゲインを稼げれば前段の利得が不要になります。つまり差動1段。片入力の差動アンプなのでゲインが1/2になりますが、ハイゲインの5極管なら足りそう。高価な5極管を使うけど管の数は同じ。差動の打ち消しが働いて歪みも少なくなるはずです。
5極管差動1段ドライブ回路

 そこでSPICEを活用。5極管を2本使って差動アンプにしてみます。差動アンプとして平衡度を上げるには高い抵抗で深いマイナスに引くのがいちばん。とりあえずB電源の1/3ぐらいで引いてみます。真空管に6AU6を選んで抵抗値をちょっといじると、すんなり正負の信号が出ました。ゲインも片側120倍ぐらい得られますから、5極管で10Wクラスのアンプに使えばほど良くNFがかかります。そしてハイゲインの威力で、正負のアンバランスは数%以下に収まりました。けっこういい感じ。

 しかし私室で常用するなら、あまり大げさなのは困ります。前述のトランスを使うとなるとヒーター電力も抑えたいです。やはり半導体とのコラボでしょうか。

2014年1月7日火曜日

6SN7 PP : アンプに必要な出力

足りない部品の代わりに使える物がないかと押し入れの箱を捜索。


 部品の買い忘れがありました。動作を測って値を変更という事もありますから、とりあえず代用しておいて後で付け替えという道もあります。実験に使った余りとか解体物とか無いかともおったけれど、そう都合の良い物はありませんでした。そのかわり、買い込んであった真空管がひとまとめ出て来ました。物は6SN7で、今度の6CA7アンプに使う6CG7の元になったGT管です。

 6SN7は足の接続が6BX7と同じです。興味半分に特性を見たら、自作の6BX7プッシュプルのアンプにそのまま差し込んでも定格内でした。試しに差し替えて鳴らしてみると、あきらかに出力は不足でしたが、それは綺麗な音がしました。当時の知人はこの音を聞いてMT版の6FQ7をパラにしてプッシュプルアンプを製作し、サブアンプとして鳴らしていました。
 これが元で、なんとなく出会った物を買っていたらしいです。6SN7は昔は全然高価な管ではなかったです。あちこちのメーカーの管が2本づつ。せっかくだからこれも活用してやりたい。そうなると、パラでシングルか片側づつ使ったプッシュプルでしょう。これで常用できるアンプになるかしら。

 必要なアンプの出力はスピーカーや聴く距離などで大幅に違って来ます。居間に常駐している6BX7-PPアンプは約5Wの出力。私室で普段働いている12BH7A-PPは約2.5Wですが、先日作った6Z-P1シングルでも不足は感じませんでした。実はお正月を挟む時期、6Z-P1のアンプを居間で鳴らしていました。音質の点では予想以上の大健闘で、普通に聴く分には全然支障無しというか、むしろ気楽に聴ける感じの音でした。ただ、音量がぐっと大きくなる部分ではちょっと詰まって音がダンゴになる感じがしました。やはり1Wあまりの出力では居間では力不足のようです。しかし逆に見れば、私室で普通に聴く分には1Wでも全然支障無いと考えられます

 昔試した時には差し替えて定格を越えない事を確認しただけでした。 あらためて、特性図から出力管として使う場合の動作を探ってみます。許容損失が大きいと言っても元々は電圧増幅管。本物の出力管とは流れる電流が違います。6BX7のアンプは8KΩのトランスですが、これでは小さすぎ。どうやら最適負荷は18KΩぐらいのようです。この場合は1.2Wほどの出力になります。先の知人はパラにして6AQ5用だったと思われるトランス(10KΩ?)を付けていました。単ユニットでは20KΩ相当ですから、これは良い動作点です。単ユニットで無駄なく働かせるにはトランスがカギになりそうです。

2014年1月3日金曜日

6CA7 PP : ボンネット

内部の作業が進む間に新しい展開が。

 ひと昔前の市販の真空管アンプのほとんどは通気性の良いカバーで上面が覆われていました。自作用にボンネットカバー付きのシャシーも売られていました。しかし最近の真空管アンプにはボンネットカバーが無いです。飾って真空管の灯りを眺めるにはそれで良いでしょうけど、部屋で実用しようとすると、万一の事故が怖いです。やはり何かカバーが必要。そう思って探しても現在市販のシャシーでカバー付きというのほとんど無いです。

 ナマのシャシーを買う替わりに入手したLUXのMQ-60のジャンクのシャシー。故障品を解体して使えそうなトランス類など外した残りらしいですが、ボンネットカバーがありませんでした。 MQ-60のシャシーはコンパクトなOY-15トランスにぎりぎり合わせたようなサイズ。ひとまわり大きなトランスなどを載せてボンネットを被せられるか、正直ほとんど無理と思っていました。だから後で管の部分を覆うカバーのような物を自作するしか無いと思っていました。
 実際にシャシーにトランスなどをあてがって見ているうちに、なんとかある程度の余地を取ることができました。内側の支障する部分を削れば、本来のMQ-60用のボンネットを使えそうです。シャシーのジャンクがあるなら、ボンネットのジャンクもあるのではないかしら。パンチング板など使って製作するにしてもそれなりに費用がかかります。思いついて探すと、都合良くボンネットのジャンクも出ていました。

ボンネット被せました 後ろ側の様子

 ボンネットはシャシーの穴に嵌るだけでしっかり固定される構造ではありません。出力トランスと干渉する内側の部分を削りました。外観はまったく変えずにうまく被さるようにできました。しかし微妙な歪みからガタツキがありますし、ボンネットがシャーシー上面に直接当たるのも気分的に良くないので、 薄いゴム片を挟んで少し浮くようにしました。

 背面の部品はほとんど元のまま使っています。電源コードは傷みがあったので新品交換しています。スピーカー端子は、元の物が使いにくいので、手持ちの物と交換しました。30Wを連続で使うには頼りない物ですが、どうせそんな使い方はしませんから使い勝手優先です。この点ではスピーカーのインピーダンス切り替えスイッチはあきらかに容量不足。こちらは交換を考えたのですが、そうすると元のツマミが使えなくなるので当面はこのままです。
 ボンネットは背の高いOY-15(95mm)を覆う高さがあります。本来の6C-A10はずんぐり太短い(高さ83mm)のに対して6CA7は背が高い(98mm)ですが、支障無く収まります。ちなみにSW-30の高さは85mmで、新しい電源トランス(90mm)よりも低いです。

6CA7 PP : 電源回路の配線

電源が真ん中に左右対称の配置。配線の引き回しもこれに従って左右対称。

 出力管のプレートとG2は別電源です。これに差動段のマイナスが加わって、電源回路は3組あります。バイアス回路の電圧はマイナス回路から分圧して作ってます。そしてヒーターバイアスはプラス電源から分圧して。差動段が2段ですから、これに行くプラスが2本とマイナスが2本。繋がる線の数はたいへん多いです。往復で変なループができないように、電源部からアース母線に沿わせて左右へ。
 真空管はドライブ段と出力段が変な形に折れ曲がった配置になっています。このあたりも混み合っています。とにかく狭いです。引き通した線を仮に括ってまとめて、また解いてくくり直して。
(完成後に写真と入れ替えました)

 電源部を配線したので、管は無しで試しに通電。火花も煙も無しでひとまずこの段階はクリア。真空管のソケットまわりを配線。半分ソケットに被さる位置に部品を盛り付けた平ラグ板が付きますから、最後はかなり狭い所での配線作業になります。
 部品配置が左右対称なので、平ラグ板の盛り付けも左右対称になります。これがたいへん面倒。片側を先に作って、それを見ながら反対側を組み立てる。その過程で、頭の中で左右を反転させるのですが、油断するとここで間違えてしまって付け直したり。

 今回は詳細な部品表は作りませんでした。SPICEで試した回路から値を拾って買い出しメモを作ったのですが、やはりいくつか見落としがありました。足りない部品を買いに行くまで、しばらくの間はたいした事はできません。

2014年1月1日水曜日

6CA7 PP : 組み立て開始

配線に必要なラグ板とかネジ類とか揃ったので、組み立て開始です。

 重いトランスなどは後にしたいけれど、これらの止めネジをラグなどの固定に使ってますし、位置関係が決まらないと配線の引き回しも定まりません。利用したMQ-60のシャーシーは、あきらかに見掛け重視の配置です。電源スイッチは出力管の配線と干渉する位置ですし、入力端子とボリウムは出力トランスや出力端子まわりの配線と近すぎます。空所はありますがどうも使いにくい場所。とにかく中が狭いです。
 
 年末に電源トランス取り付けネジを調達するのと併せて部品屋を4軒ハシゴ。1/8Wや1/4Wの抵抗は揃っていても、1/2Wや1W以上の抵抗は値によって無かったりします。熱的な余裕と耐圧の点で、物理的にあまり小さな物は不都合です。1/2Wや1WとかもE24で揃っていて欲しいです。
 探して見つからなかったのが電源部のブロック・ケミコン。出力段用の500V耐圧の物はなんとか見つかりましたが、ドライブ段用の方は適当な物がありませんでした。あとでまたゆっくり探すことにして、とりあえず手持ちの中古品と元のMQ-60のジャンクに付いていた物を使っておくことにしました。念のため容量をチェックしました。

 まず電源の1次側、出力部と配線。真空管ソケットの取り付けネジにタイト端子を付けて、ここを足場にグランド母線を張りました。トランスの取り付けネジを利用して入力端子部分を遮蔽するようにシールド板を設けました。電源トランスの取り付けネジに高ナットを重ねて、ここにバイアス調整用のボリウムを付けました。6CA7のヒーターは1本が1.5Aです。ここは太い線を使いました。

電源の1次側とヒーターの配線をしたので、真空管を挿してテストしました。

 このアンプは電源まわりが複雑なかわり、一部づつチェックしやすいです。電源の1次側も配線したので、まずは無負荷で通電して電圧チェック。異常無しなので、テストかたがた真空管をさし込んでヒーターを点灯してみました。数分間点灯しましたが、それほど熱くはなっていません。