2015年2月13日金曜日

6AQ5 Single : 回路の検討

製作した6AQ5シングルアンプは こちら


なにごとも余裕がかんじん。ゆったり考えると思いつくことはあります。思いつきを形にするにはまた余裕が必要。

 先日の思いつきの、ドライバに6AU6を使う案をSPICEで検討。規格表の小さなグラフ相手に悩むよりも早くて簡単です。これと合わせて、A案の出力段の動作も詳細に検討。

 ビーム管らしく、肩まで使うならロードラインは低く平らに。当然小細工無しで素のビーム管動作。プレート損失を6Wに抑えると、250Vでは24mA。出力トランスに7KΩを使うとして、最適そうな動作点を考えます。振幅が肩まで行かないうちにカットオフぎみになります。プッシユプルならこれでも全然問題無いのですが、今回はシングル。肩まで振ってもカットオフしない程度に電流を流すなら、220V~230Vぐらいまで下げべき。実際のスピーカー負荷では高域ではインピーダンスが上がりぎみになりますが、普通は振幅が大きくなるのは低域。このあたりは微妙です。
 SPICEによると、この時のカソードは約8Vで、G2の電圧は165V。 このG2電圧から前段の電圧を作ります。真空管が暖まるまでの間に前段あたりのコンデンサに高い電圧がかかるのを避けるため、いくらか分流して下に引きます。
 B電圧は240~250Vぐらい。G2電圧は抵抗で落として作りますが、3~4mAほど分流してやれば大出力での低下を5Vぐらいに抑えられそうです。前段が1mAあまり使いますから、分流抵抗には2.5mAぐらい流せば済みます。

6SN7-PPアンプ 位相反転部の出力波形

 次は初段の計算。所要ゲインは約100倍で振幅は±8V。G2の電圧からデカップリングで1割ぐらい落とすとして150Vほど。余裕を見て、G2の電圧を1/3ぐらいにすると、プレート電流が0.9mAほど。所要ゲインからプレート負荷を82KΩとすると、プレート電圧が1/2ぐらいに来ます。けっこういいかんじ。この方向で進めそうです。

[ これをやってて気づいたこと ]
 6AU6って、今まで電圧増幅に使ったことが無かったので動作例とかノーチェックでした。使い慣れた6BL8の5極部が6AU6似と言われてそう思い込んでいたのですが、あらためて見直すとかなり違っていました。もともと出自が違うのですから当然のような気もします。
[ ついでに見つけたこと ]
 6AQ5にはレス玉の5AQ5があり、テレビに使われてるのを見たことがあります。データシートを見ていると、用途に垂直偏向出力が載っていましたが・・・・そのデータは3結にして使う場合。6AQ5はG2が弱いので3結やULは不向きと言われたのをそのまま信じていましたが、ピーク電圧や電流の大きな(そのかわり損失は小さい)偏向回路で使って問題無いなら、やはりこれは発熱が大きな使い方が問題だったのでしょう。

2015年2月3日火曜日

6AQ5 Single : 回路とゲインの検討

先を急ぐ航海ではありません。ゆっくりまわりを見回すことも大切。遊べるところでは遊ばなきゃ。まずは始動。

 使用するトランスの大きさなども関係しますが、ミニアンプのシャシー上にはMT管なら4本載ります。B案は、出力管を4本載せてプッシユプルにするかわりにドライバは半導体というプラン。対してA案は、出力管2本でシングルアンプにして、ドライバに双3極管を1本使って3球というプラン。
 双3極管を使ったのは、こういった小型のシングルアンプは3極管をアタマにした2段アンプという思いこみがあったからです。シングルの3段アンプは、安定性や歪みの点で不利ですから、素直に考えれば2段アンプなのですが、アタマが3極管でなければいけないことは無いのです。

 私室のミニアンプは出力は小さくてもゲインが必要です。3極管の1段ではどうしてもゲインが足りません。6BM8シングルアンプ6BX7シングルアンプでは、前にフラットアンプを置いてゲインを補いました。6BM8は複合管ですから、μ70の3極部を使わなければいけませんでした。6BX7アンプは その製作のきっかけから3極管でドライブするのは必然でした。

 昔のラジオ少年のアンプ製作では、単純で安くて出力が大きいことが大事。仕上がりゲインとかNF量とかはまったく適当でした。昔の製作記事を見直してみると、出力管は定格いっぱいで使って、前段もゲインを高くとり、その上で不安定でない程度に少しNFがかけられたら良いというような設計が多いように感じます。
 トーンコントロールとかを前に置けばここでゲインを取れますから、出力アンプ部の感度は低くて済みます。高価で面倒な5極管よりも単純な3極管。12AX7は2個入りなのでステレオにちょうど良いし、1個で良ければラジオ用でおなじみの6AV6がある。
 入力容量の大きな3極管をドライブするなら3極管という意味もあったかもしれませんが、6AR5や6BQ5ならその心配はありません。だいたい、高抵抗高μの3極管で無理にゲインを稼ぐようではむしろ逆効果のはずなのですが。
6AU6:高周波用なので外側の円筒はシールドです

 実用ラジオはスーパーヘテロダインで、音声増幅の初段は6AV6が普通でした。しかし初歩のラジオ製作の定番は並3や並4。出力管の前は検波増幅の5極管で、古くは6C6が、MT管では6AU6が多く使われていました。6AU6は本来は高周波用ですが、オーディオにも使われた管です。6AU6はちびっこい7ピンMT管で、デザイン的にも不都合は無いです。昔ラジオ少年のアンプ製作としては、前が6AU6というのもアリではないかしら。中古ですが何本か手持ちがありますから、これを使うことを考えてみます。

 6AU6は高gmの5極管です。電圧を上げてしっかり電流を流して使えば高い増幅率が得られますが、今回はそれほどのゲインは要りません。ほど良いゲインになる動作を選べます。出力管のG2の電圧を下げて使いますから、初段の電圧はこれより低くする方が回路が簡単で済みます。そうすると、ほど良いぐらいのゲインになるのではないかしら。とりあえずSPICEで遊ぶネタができました。

2015年2月1日日曜日

6AQ5 : 発熱を抑えて使う

元々多趣味なもので、いろいろゴソゴソしてます。その合間を見てまたゲームの続き。

 B案とC案は、出力段については真空管のプレート損失をどのぐらいに抑えるかの違い。まず、厳しい方のB案から、どのぐらい絞れば良いか検討します。
 現用の12BH7A-PPアンプは、プレートの損失とヒーターを合わせて約28W。対して6AQ5のヒーター4本分で11.3W。差し引き16Wあまり。1本あたりとして約4W。カタログ上の定格の1/3です。
 まず、A級で検討。普通に使うと、プレートとG2を150Vにして27mAぐらいといったところでしょうか。G2を下げて電流を絞る使い方なら、200Vで20mA、250Vで16mAといったところ。たたじ、一応そのまま計算してみると、出力はプッシュプルで2Wあまりというぐらい。かなりAB級に近い使い方をするなら、 出力3Wぐらいになりそうです。これだけ厳しい条件でもそこそこ出力が取れるのは見事ですが、6AQ5本来の意図とはかなり違っていそうな感じ。そして、このへんになるとSPICEもカタログ上の特性図もどこまで実態を示しているかかなり怪しくなります。

立派な紙箱に入っていますが、実は単なるゲルマニュームダイオード。

 C案の場合はプレート損失の制約が緩くなりますから、電流をそれほど厳しく絞らなくても済みます。G2を180Vぐらいまで下げればそのままA級で使えます。AB級にすればプレート電圧をもう少し上げられます。G2の電圧を少し下げて電流を絞っても良さそうです。出力は4W~5Wぐらいになります。感度も高くて能率も高くて、歪みもさほど多くない。このあたりが6AQ5にふさわしい動作のような気がします。G2電圧を下げて電流を絞るなら、プレート電圧を規格いっぱいまで上げるという設計もアリかもしれません(ピーク耐圧がちょっと怖いけど)。
 
 手もとの多極管アンプでは、6CA7のアンプがプッシュブルですが、これは大物で発熱も多いです。C案はこれほどでは無いけれど、常用するには大げさです。稼働率の事を考えると、私室で常時稼使用しているミニアンプにすべきなのかもしれません。そうなるとB案かしら。考えると微妙に悩ましいです。