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2019年2月11日月曜日

カソードNFをかけました 6AQ5-S

キャラ的にどうしても出番が少ない6AQ5シングルアンプ。改造してしっかりとK-NFをかけます。


 改造と言っても、トランスや真空管はそのまま使って筐体もそのまま使います。発熱対策で周囲の通気を良くするため、6AQ5はサブパネルで約4mm沈めて付けてます。この部分もそのまま使います。このため外観はまったく変更無しです。

 インピーダンス確保のためにエミッタフォロワを追加しますが、これは内部のスペースに収まります。ネジ穴も元のをそのまま使いますから、改造するのは内部の回路だけです。
 トランジスタ用の電源はコンデンサ保護の分流抵抗から分けて取りましたから、電源回路は元のままです。
 接地されていた出力管カソードのケミコンは出力トランスの2次側に接続変更します。このため立ラグ板を追加して中継します。このコンデンサは容量を増すために新規購入して交換しました。
 ヒーターバイアスは出力管のカソード電位を利用した簡易な方法でしたが、カソードが出力とともに振られるようになるので、これが使えなくなります。そこでヒーターは片側接地にしました。初段のカソードがコンデンサで接地されるので支障無いと判断しました。初段のG2のバイパスは直接グランドに繋ぎました。 

カソードNFをかける改造をおこないました

 エミッタフォロワーの部分はスルーホール基板の残材を利用して作りました。トランジスタは汎用の小信号用なら何を使っても大差無いです。後で差し替えて遊ぶかもしれないのでソケットにしてあります。
 6AU6の関係の部品は元と同じように平ラグ板に載せます。値の変わる抵抗と位相補正用のコンデンサは交換しました。その他の多くは再利用ですが、回路が大幅に変わるため一旦全部外して付け直しました。このような改造が簡単なのは平ラグ配線の利点です。

 バッファ基板の組み立ても含めて、改造はゆっくりやって半日の作業。それから動作チェック。
 まず何も挿さずに電圧を確認。それから出力管を挿して、カソードNFを付けて発振しないことを確認。トランジスタを挿してバッファの動作を確認。6AU6を挿して、もう一度電圧チェック。それから信号を入れてみます。メージャーNFはかかっていませんが、けっこういい感じの音が出ます。それからNFを接続。
 あらためてスピーカーを繋いでしっかり鳴らします。やはり最初はだいぶ酷い音が出ました。出力トランスの直流磁化が変化したからでしょうか。そのまま鳴らしていると次第に落ち着いて来ました。音の傾向は元とはずいぶん違います。念のため、K-NFを外してみると、以前と同じような鳴り方に戻りますから、この違いはK-NFの効果のようです。記憶にある6V6のULシングルとも違う音です。

 低音がしっかり締まった感じに響くのは同じトランスを使っている6BX7シングルと似た感じです。全体に明るい感じは元と同様ですが、中域も緩さが無くなり、特にボーカルがしっかり聞こえる感じで、これは小音量でも同じ傾向です。思い切って実行した改造ですが、予想以上に効果がありました。

カソードNFをかける方法 6AQ5-S

2015年に製作した6AQ5シングルアンプ。他のアンプと比べると、キャラクタ的にいまひとつ活躍できていません。

 このアンプでは6AQ5を素のビーム管として使用しました。たいへんすっきり聴きやすい音になりましたが、同じ出力トランスを使った6BX7シングルとは対照的。これがビーム管シングルの音なのかもしれませんが、キャラ的には私の好みとは異なります。そしてスピーカーとの相性が出やすい感じで、私室の癖の悪いスピーカ相手では活躍させるのは難しい。
 オーディオアンプで6AQ5シングルの音は覚えがありませんが、原型と言われる6V6は、昔に知人の所で聴いたUL接続シングルアンプの音が印象に残っています。6AQ5もUL接続にしてやれば好ましい音になるのかもしれません。しかしそれにはULタップのある出力トランスが必要です。

 あれこれ考えた結果、もう一度カソードNFを試して見ることにしました。

手もとに使い残った小信号用トランジスタ

 このアンプに使用しているトランスにはNF巻線はありません。2次側が出力管のカソードと同相になるようにするには1次側か2次側のどちらかの接続を逆にしなければなりません。

 巻線を逆接続するのは3段でNFをかけるアンプでは普通におこなう手法です。増幅が3段だと(反転×反転×反転)=逆相ですから、出力トランスを逆接続にして初段のカソードと位相を合わせます。しかし2段アンプでは巻線を逆接続すると初段のカソードに帰還することができなくなります。

 解決策のひとつは、半導体で1段追加するか6AU6を双3極管の2段に換えるなど、3段アンプにしてしまう事。しかしこれは簡単では済まなそう。

 2段増幅の出力トランスを逆接続にすると、全体では反転増幅回路になります。そこで素直にNFをカソードではなくグリッドに返すことにします。でも、そうすると入力インピーダンスが低くなってしまい、オーディオアンプとしては使いにくなります。これを避けるためには前にバッファを置けばよいです。1倍のバッファなら、トランジスタのエミッタフォロワーが簡単です。この部分の電源は、真空管の電源から抵抗で落として作れます。

 この方法なら主要部品はそのまま使えます。筐体もそのまま使えます。期待するような効果が得られなければ元に戻すのも可能です。

 

カソードNFをかける改造 6AQ5-S

5極管と3極管の優劣。特性的な事もあり、製造上の事もある。そしてなにより、使いやすく安い3極管があるのか。

 思い切った方法としては、5極管の3極管接続というのがあります。静特性の上では3極管と同じになりますが、たいがいは大幅な感度低下あるいは出力低下となります。

 UL接続は5結と3結の中間のように説明されます。良いとこ取りという見方もあり、中途半端という意見もあります。G2はその名のようにグリッドであって制御能力がありますから、ここへ帰還しているという考え方が正しいように思います。出力トランスがからんでいるので、実際の動作は解析困難ですが、たいがいは5結とも3結とも異なる雰囲気の音になります。

 6AQ5は背丈は12BH7と同じですが細身です。


 出力トランスがらみで出力段の特性を改善するアイディアは他にもあります。その中で良く知られてるのがカソードNF。トランスの2次側から出力管のカソードに帰還します。このための巻き線を持った出力トランスもあります。

 カソードに戻してNFになるためには、出力管のカソードと同相の電圧が必要です。プッシュプルならば、2次側の4Ωが16Ωの中点である事を利用する方法もありますが、普通のシングル用のトランスを普通に使えば、2次側の出力はプレートと同相ですから、カソードに対しては逆相になります。このためシングルアンプの場合はNF用巻線を持ったトランスを使用します。

 6BM8シングルアンプに使用したトランスは2次側に16Ω端子がありました。製作の際にこれを利用してカソードNFをかける方法を思いつきました、出力トランス全体を上下逆にして、8Ω端子を接地すると16Ω端子には出力と逆相の電圧が(少し)出ます。これを利用(逆相の逆相は同相)してNFをかけたところ、ある程度の効果が確認できました。(最終的には、このアンプは当初の構想どおりUL接続にしました。)
 これをもとに、キャラクタ的に使いにくいと感じていた6AQ5シングルアンプの音質改善を試みました。これはかなり無理やりな方法だったためか、多少改善した面もありましたが、全体としては失敗でした。結局短期間で元に戻してしまいました。

 しかし、カソードNF自体には魅かれるものがあります。あらためて見直しているうちに、出力トランスは普通の使い方をして、きちんとカソードNFをかける方法を思いつきました。

2018年2月12日月曜日

マイクロホニック

真空管は金属電極を雲母板にはめこんで組み立てられています。だから振動にはデリケートです。

 昔はさまざまな機器に真空管が使われていました。家庭のラジオやテレビは木製あるいはプラスチック製の箱の中に回路とスピーカーが一緒に入っていました。テープレコーダーなど、モーターやメカの間に回路が挟まっているような状態でした。
 周囲の振動で管内の電極が振動すれば、電気信号に影響が出ます。真空管がマイクロホンのようになってしまう。ハウリングのようになったり、ゴロゴロ・ゴソゴソ音が混じったり。

 微少信号を扱う回路などでは、 ソケットをバネやゴムで浮かせたり真空管の取り付けにも工夫がありました。また、振動の影響を受けにくいというウリの管もありました。 
手持ちの6AU6はラジオなどの中古です

 製作した真空管アンプを使って部屋で音楽を聴いています。せっかく同じような物が8個もできたのだから、ときどき繋ぎ替えて遊んでいます。ここしばらく寒いので、比較的発熱の多い物を鳴らしています。いずれも基本的には同じ方向性で作った物で実用上は大差無いはずなのですが、繋ぎかえれば多少の差異があります。キャラクタ的な所はそれぞれの存在価値。甲乙付けられるものではありません。しかし比べてみて劣った所に気付くこともあります。そうなれば原因を考えて、時間があればひと手間かけて思いつきを確かめて。

 スピーカーとヘッドホンで適不適があるのか、ちょっと気になって聞き比べ。その際、6AQ5シングルアンプ にヘッドホンを抜き差ししようとしたところヘッドホンに小さな音が。念のためシャシーを指先で叩いてみると、コンコンという。どこか接触不良?? 思いついて真空管の管壁を爪先で弾いてみると・・・片方の6AU6からとカンカンとはっきり音が聞こえました。

 6AU6は小信号増幅にも使われていて、Hi-Fiとか通測用とか書かれた物もありましたが、このアンプに使っているのは何となく集まったラジオなどの中古。ハムは心配したのですが、マイクロホニックは無警戒でした。そこで(先日購入した旧ソ連製の互換管も含めて)手持ちの管を差し替えて確認。幸い、はっきりと鳴るのは1本、少し聴こえるのが1本。それほど悪い成績ではありませんでした。

2016年12月12日月曜日

6AQ5 シングル シャシーを改造して通気を改善する

すっかり冬です。寒いです。真空管の発熱がむしろ心地よいぐらい。

 私室では、小型アンプたちの中でも比較的発熱の大きいアンプを鳴らしています。回路部分の発熱では、12BH7A-PPが最大で、6AQ5-PPはほぼこれに合わせて製作しました。6BX7-S6BM8-S6AQ5-Sの3台のシングルアンプは、これらより少し小さいぐらいで並びます。

 6AQ5-PPは総発熱量を抑える意味で、出力管を定格よりも大幅に絞って使っています。このため管壁の温度は低いです。
 6BX7は直径の大きなGT管ですが、管壁が熱くなる管として知られています。元々オーディオ用ではなく過大なヒーター電力に足を引っ張られているためです。アンプ製作時に管のまわりに通気穴をあけました。これが効いているのか、心配するほどの高温にはならずに済んでいます。
 やはり高温になる管として知られている6BM8。主に外観改善が狙いだったのですが、出力管を10mm下げるようにしたところ、管周りの通気が良くなり、これも心配するほどの温度にはなっていません。

通気を改善するため、サブパネル構造にして6AQ5を4mm下げました。

 問題は6AQ5シングルアンプ。定格よりだいぶ抑えて使っているのですが、6AQ5の管壁がけっこう熱くなります。1本あたりの発熱量は12BH7Aとほぼ同じですから、管形が小さいのが災いしているのはあきらか。管をいたわるという点からも何かしてやりたいです。と言っても、できるのは通気の改善ぐらい。
 幸い6AQ5の真下は空いています。出力管とまわりの抵抗とコンデンサを中継している立ラグ板ごとユニット状にしてサブパネルに載せて、少し下げて取り付けた隙間から管壁に沿って空気が流れるようにしました。併せて配線の引き回しを少し修正。回路も部品も何も変わっていないので音が良くなるはずは無いのですが・・・・ やはり気分でしょう。

2015年6月27日土曜日

6AQ5 PP : 製作 ~ 配線作業 2

一連の私室の小型アンプ群の最終となる6AQ5プッシュプルアンプ。じっくり準備したので、始めれば順調に進みます。

[ 完成したアンプの詳細はこちら ]

 このアンプのドライバ部は半導体の回路です。穴開き基板に組み付けました。万一の間違いがあるといけません。ひと晩置いてから再度チェック。ハンダ付け不良や接触があるといけないので、ところどころテスタも使って調べました。FETがソケット付けなので、この作業は楽です。
 筐体側は、真空管を挿さずに通電チェック。煙も火花も出なくて幸い。高圧も(無負荷なので本来より高く)出ています。ドライバ回路へ行く電圧も正常です。

 基板を筐体内に取り付けて配線を接続。NFの線は繋がないでおきます。真空管のグリッドへの配線は仮付けです。 ここで一応(FET無しで)各部の電圧チェック。異常は無さそう。真空管と違って半導体は少しのことで損傷し、外観では異常の有無が判りません。できる用心はしておくのが吉です。
 FETを挿して、素早く電圧チェック。想定範囲に収まっていました。今度はシンクロを接続してオーディオ信号を入力。ちゃんと逆相の波形が出ています。ここまで来るとひと安心。

完成状態

 真空管を挿して、出力を見ると・・・無事に波形が出ています。思い切ってヘッドホンを接続すると、ちゃんと音が出ます。NFはかかっていませんが、一応それらしい音です。次は位相のチェック。
 音量を絞ってNFの線を付けると・・・やはり正帰還でした。グリッドへの線を入れ替えて、きちんとハンダ付け。今度は出力レベルが下がりました。ヘッドホンを繋ぐとそれらしい音が聞こえます。どうやらちゃんと動作しているようです。あとはスピーカーを繋いでしばらく様子見です。

外観も整えました
出力トランスは新品です。真空管も新品です。しばらく慣らしが必要です。最初の30分ぐらいは音が安定しませんでしたが、その後はだんだん落ち着いて来ました。この間に各部の電圧をチェック。
 一度常用アンプに繋ぎ替えて、耳を馴らします。その合間に矩形波を入れてシンクロで波形チェック。 出力トランスなど実際の特性が判りませんから、位相補正の値は安全方向に推測で決めています。幸い今回も修正の必要はありませんでした。(場合によっては部品を買いだしに行かなければなりませんから)

 一応これで完成という事で外観を整えました。あとしばらくいろんな音楽を鳴らして様子を見ます。

2015年6月26日金曜日

6AQ5 PP : 製作 ~ 配線作業 1

一連の私室の小型アンプ群の最終となる6AQ5プッシュプルアンプ。今までの電子工作の総まとめという気持ちで製作しています。

[ 完成したアンプの詳細はこちら ]

 このアンプは出力段は真空管をごく普通の回路で使っています。ドライバ部の回路は何のひねれもない普通のミュラード型ですが、ここは真空管ではなくFETを使っています。製作の工程は真空管アンプの部分とトランジスタアンプの部分に分けられます。

シャシー内の配線


 外観は真空管アンプそのままですから、シャシーに取り付ける部品の周辺は昔ながらの真空管アンプの手法で製作します。電源スイッチもサイズが小さいだけで昔のスナップスイッチと同じです。
 電源部は平ラグに盛り付けます。コンパクトにまとめられ、部品交換も簡単です。発熱の多い抵抗を電解コンデンサから離す意味もあります。回路の接地点はこの平ラグの下です。
 出力管まわりは立ラグを使った昔風の配線です。使用した立ラグはすべて買い置きの活用です。
真空管ソケットのセンターを結ぶようにアース母線を引いています。カソード抵抗とバイパスのケミコンは真空管ソケットに直接ハンダ付けせずに立ラグで中継しています。真空管の熱が伝わるのを軽減しようという考えです。SGには安全のため直列抵抗を入れました。これも立ラグで中継しています。物理的ストレスで破損することを避けるため、抵抗の足は少し曲げてゆとりを持たせてあります。

 出力トランスはバンド型で、下は広くあいています。ここにドライバ部の基板を取り付けますが、トランズのリード線がここを通るので電界の影響を避けるためにシールド板を設けます。

ドライバ部の基板


 ドライバ部はすべてICピッチの穴開き基板に載せます。今回はちょっと贅沢してスルーホール基板を新規購入しました。スルーホール基板はランドがはがれる心配が無く丈夫です。部品の足を穴にまっすぐ入れて裏からハンダ付けして、先は少し残してすべて切っていまい、細いメッキ線でこの部品の足の先を繋ぐように配線しています。ICを使った回路で良く使う方法で、回路の変更や部品の交換が容易です。
 穴あき基板の配線では、部品の足を折り曲げて回路を作る方法がありますが、この方法では後から部品交換するのが困難になります。


 抵抗は基板から少し浮かせて取り付けてあります。基板と接触してショートする事を防ぐ意味と基板が反った時に破損するのを避けるためです。
 中央の列は電源部です。ここを挟んで左右の回路が対称に載っています。使用したフィルムコンデンサは手持ちの活用です。積層フィルムコンデンサには熱収縮チューブをかけました。FETは直接ハンダ付けせずにソケットを使用しました。

2015年6月25日木曜日

6AQ5 PP : 製作 ~ 部品組み付け

一連の私室の小型アンプ群の最終となる6AQ5プッシュプルアンプ。今までの総まとめとしてゆっくり作業しています。

[ 完成したアンプの詳細はこちら ]

 穴加工が終わったシャシーに部品をねじ止めします。電源スイッチ、ヘッドホンジャック、ボリウムは自身がネジで締め付けて固定する構造です。電源のコード止めははめ合わせです。それ以外はビスナットで止め付けます。
 ひととおり部品を付けて見て、位置を確認し、必要ならば修正するのですが、今回は特に問題はありませんでした。その上で真空管ソケットの脇の立ラグの位置を決め、出力トランスの下のシールド板(兼基板取り付け部)の形を微調整しました。

まずシャシーにネジ止めしてみました。
 
 この中では電源トランスは4mmネジによる固定です。下面にネジの先が出ていて、これをシャシー下側からナットで締め付けます。ナットと平ワッシャは付属していましたが、これに手持ちのスプリングワッシャを挟みました。
 それ以外の部品は3mmのネジを使います。平ラグ板や内部のシールド板はスペーサーを介して取り付けますが、この部分も3mmのネジです。平ワッシャと内歯ワッシャを挟んでいます。ケミコンの足と出力トランスのの取り付け部にはプラワッシャも挟んでいます。ネジやワッシャなどは大阪市内のネジ屋で購入しています。ひと袋50個か100個入りなので、いつのまにか使い残しが溜まります。そして、あれこれ解体した際に発生した使用済みのネジがあります。今回は過去に製作して用途を終えた物たちへのオマージュという意味も含めて、解体品のネジの中から綺麗な物を選って使うことにしました。

経路とかさなりを考えて順に配線してゆきます。


 このシャシーは薄いので、取り付けてからでは配線しにくい部品もあります。後からハンダこてを入れにくい場所の配線は、長さを見て片側だけハンダ付けてしておきます。前面や背面に付く部品は一旦取り外して先に配線をハンダ付けします。逆に真空管ソケットのヒーターなど、部品を付けてからでなければ配線できない所もあります。
 出力トランスの下にドライバ段の基板が付きます。ここには基板の取り付け部材を兼ねたシールド板が被さります。1次側は揃えて真空管ソケットに導きます。2次側の配線は横に引き出して平ラグ板で中継します。

 シヤシーに取り付けた部品の間の配線が一段落したら、ラグ板まわりの配線です。計画性が要りますが、進み出したら早いです。

2015年6月23日火曜日

6AQ5 PP : 製作 ~ シャシー加工

6AQ5プッシュプルアンプ。部品が集まったのそろそろ製作開始。

第一段階はシャシー加工。昔ながらのアルミ板製のシャシー。部品を組み付けるために大小の丸穴と角穴を開けます。穴加工はいろいろ工夫が要ります。

  ここしばらく続けて製作して来た私室の小型アンプの最後。子ども時代から馴染んで来たアルミシャシーに盛り付ける製作も、おそらくこれが最後です。今度は急がずにゆっくり少しづつ丁寧に進めます。買いそろえた道具や身につけたいろんなやり方をたくさん使うつもりです。 

紙を貼って加工する位置を記入しました

 通称弁当箱って、アルミの薄板を曲げて作られた箱状のシャシー。昔は弁当箱はアルミ製が多かったからです。部品の大きさとかネジ穴の位置とか印を付けて加工します。簡単に済ますなら油性ペンなどで直接書く方法がありますが、今回は丁寧にやります。
 紙を貼り付けて、部品の大きさと位置をエンピツで書きます。何度も書いて消して、微妙な位置調節ができます。紙の上からドリルを立てれば、先が滑るのを防げます。

ドリルで穴開けした後、リーマーでシャシーパンチ用に穴を拡げます
 
 シャシーのアルミ板は薄いです。板の厚さの3倍以上の直径の穴は綺麗にあきません。まずすべて3.2mmで穴開けして、その後で太いドリルで開けなおします。
 ドリルより大きい丸穴はテーパリーマーで拡げますが、リーマーで拡げた穴は返りが多くて汚いので、ヤスリで仕上げる必要があります。真空管や電源のコンデンサの大きな丸穴はシャシーパンチで抜きます。シャシーパンチの軸は太いので、この穴もリーマーで拡げておく必要があります。

 切削くずが出ますから、アルミシャシーの加工は一気に進めます。6mm以下の穴はドリルで穴をあけて、それ以上はリーマーで拡げます。ドリルの穴の返りは太いドリルで削ります。リーマーで拡げた穴の酷い返りはヤスリで綺麗に仕上げます。

シャシーパンチはネジのちからで刃を食い込ませて板を抜きます

 シャシーパンチは刃の大きさの穴が開きます。手持ちのシャシーパンチではMT管とST/GT管の穴が開きます。今回使用する電源のケミコンは直径25mmですから、MT管用の21mmの刃で穴を開けます。シャシーパンチは厚い板には使えません。2mmではかなりしんどいですが、このシャシーは1mmなので軽く開きます。返りは少なくて綺麗ですが、穴の縁に少し歪みが出ます。
 
アルミ板は糸のこで切れます。

  面倒なのは大きな穴。アンプのシャシーでいちばん大きな穴は電源トランスです。いろんな加工方法がありますが、今回は糸のこで切ることにしました。電動の糸のこ盤もありますが、これを使うのは大袈裟です。 板の厚さが薄いので手のこぎりを使いました。
 糸のこは直線も曲線も切れます。急カーブを曲がるには幅の細い刃が要りますが、細い刃は折れやすいです。電源トランスの穴は角穴ですから、直線に切れば済みます。幅の広い刃を使えるので手持ちの弓のこでも刃が折れる心配が少ないです。

 角の部分にドリルで穴を開けておいてここへ刃を通して切り進めます。仕上がり線より少し内側を切って、ヤスリできれいに仕上げます。

 前面や背面とか角に近い部分とか、工具が入りにくい所もあります。工具の向きや加工の方法に工夫が要ります。
    このシャシーは深さが薄いです。前面や背面の部分には糸のこが入りません。ここは別の方法が要ります。

ハンドニブラーは角穴を開ける道具

 ハンドニブラーは縁から小さな四角に板を噛みちぎるようにして板を切る工具です。刃の幅で直線状に切り進むことができますが、切断面はあまり綺麗ではありません。厚い板は切れませんし、薄い板は歪みが出ます。少し内側を切ってヤスリで仕上げる方が良いです。
 背面のスピーカー端子は長方形の角穴です。ニブラーの刃はけがき線の側に出したいのですが、シャシーの内側に手を入れて加工するのはほとんど無理なので、外側から加工しています。内側にケガキ線を入れる方法もありますが、どのみちヤスリかけますし、スピーカー端子は外側から嵌めるので多少形が崩れても問題はありません。

穴加工が済みました

 穴加工が済んだら、ケガキした紙をはがします。貼り付けるのにスティック糊を使用したので、シャシーごと水洗いするときれいにとれます。加工した後の返りをヤスリで削って仕上げます。
 私は加工後にステンレスたわしで磨いてヘアライン状に仕上げています。美観の向上と加工の際のキズを隠す効果があり、使用中の汚れ防止にもなります。

 ここまででほぼ半日の作業。シャシーの加工が終わったら、部品をネジ止めしてゆきます。

2015年6月17日水曜日

6AQ5 PP : 部品あつめ

そろそろ梅雨のようです。外出できない日を工作に使えば具合が良いです。それには下準備が要ります。

[ 完成したアンプの詳細はこちら ]

 先週末は東京へ行きました。2日間のイベント参加で東京で1泊。夕方の時間を利用して秋葉原へひとまわり。休日の夕刻で開いていない店もあります。街は人出も多いです。短時間ではあちこち探し歩くことはできません。大阪で入手が難しい部品に絞って購入することにしました。

大物の部品

 回路の設計は完了しています。外観も機能も私室の小型アンプと揃えますから、スイッチとか端子とかは決まっています。回路図から使用する部品を拾い出して、手持ちと照らし合わせ。今までに手持ちの中で使えそうな物から使ってしまいましたから、新たに購入しなければならない物がいろいろあります。目立つものからぽちぽち購入して少しづつ揃えました。
 電源スイッチは未使用の買い置きが見つかりました。ボリウムのツマミも使えそうな物がありました。コンデンサのバンド(足)はジャンク屋で購入しました。入力端子は解体部品を利用しますが、出力端子は新品を購入しました。困ったのはヘッドホンジャック。欲しいタイプは大阪にはありませんでした。電源回路のコンデンサも具合の良い65Vとか35Vの耐圧の物は置いていません。単価は安い物ですから、通販は最後の手段として東京で探します。

 大阪では入手できない部品の筆頭がトランス。今回の6AQ5のプッシュプルアンプに使うトランスはどちらも春日の製品。通販もやってますが、せっ かく東京へ行くのだから店頭で購入することにしました。出発前にメールで在庫を確認して、取り置きしておいていただきました。
 出力トランスは12BH7A-PPアンプの改造の際に使用した物の姉妹品です。電源トランスは6BM8シングルアンプ用に特注した物とはヒーター巻線が違う程度の良く似た物で、外形も大きさもまったく同じです。

 今度は時間の都合を見て日本橋の部品屋巡りです。必要なのは普通の抵抗とコンデンサだけですから、必要な値が欠品していなければ簡単に済みそうです。

2015年5月7日木曜日

6AQ5 PP : トランスの選定

オーディオアンプは音が第一ですが、ルックスも大事。真空管のヒーターの光が橙色に点れば音もなんとなく暖かく感じます。



 銀色のアルミシャシーにあれこれ部品がネジ止めされている姿は昔の電蓄やラジオそのまま。市販品はこの外側を木製かプラ製の箱が覆っていましたが、アマチュア工作ではカバーも何も無しで、ガラスの真空管もむき出しのままというのはあたりまえでした。その点ではこのアンプは伝統的なラジオ少年の工作らしい姿と言えそうです。
 アマチュア工作でいちばん困るのがパネル面の文字入れ。自分で使う物だから、機能が判れば良いという考えもありますが、ちょっとぐらい綺麗に見せたい気もします。手間をかけて中身を作ったならば外観もきちんと仕上げたい。外観がきちんとしていると中身もきちんとしているように見えますから。

 文字入れにはいろいろなやり方がありましたが、12BH7Aアンプは1文字づつインレタを貼り込んでいました。しかし今ではインレタは入手不能です。その後に作った小型アンプたちはパソで刷ったラベルを小プレート状に切って貼りました。その後、対になっている入力セレクタの文字入れの際に、プラシートにパソのプリンターで裏刷りして、スプレー糊で貼る方法を試したところ、 たいへんすっきりした物になりました。これ合わせる形で、小型アンプ群の前面の体裁を揃えました。今回製作した6AQ5シングルアンプもこれと同じ方式で仕上げました。外観で音が変わる訳は無いですが、きっちり文字が入ると一段しっかりした物になった気がします。 

セレクタと合わせてお化粧しました

 6AQ5をプッシュプルにして全体の発熱を常用の12BH7Aアンプと同程度に抑えるには、さらに電流を絞った使い方になります。まず使えそうな出力トランスを探しました。イチカワのITPP-3W型に16KΩの物があり、これは6SN7-PPアンプで使ってたいへん良い感じでしたが、ちょっとインピーダンスが高すぎで容量的にぎりぎりの感じです。春日にKA-14-54という製品があり、これは14KΩで容量の余裕もじゅうぶんあり、姉妹品のKA-8-54P2は12BH7Aアンプに使っています。

 微妙に悩ましいのが電源トランス。B電圧が200Vほどですから、シリコンダイオードでブリッジ整流するとACで170~180Vぐらいでしょう。このぐらいの電圧のトランスは少ないです。昔の整流管なみの抵抗を入れれば電圧が下がりますが、その分発熱します。6BM8シングルアンプでは特注しました。あちこちの製品を調べなおすと、春日の KmB150Fがありました。AC170VでDC95mAとB巻線はちょうど良いのですが、ヒーターは0.9Aの巻線がひとつだけ。
 6AQ5は450mAですから、4本で1.8A。しかし巻線の電圧を子細に見ているうちに解決策を見つけました。ヒーター巻線は0-6.3V-12.6V-14.5V-16Vと多くのタップが出ています。6.3Vのタップを中心に、0V端子と12.6V端子との間を使うとそれぞれ6.3Vの電圧です。6AQ5を2本づつ並列に繋げばそれぞれちょうど0.9A。余裕は全然ありませんが、6CA7アンプで使っている感じから見ると春日の電源トランスは定格いっぱいでも大丈夫そうです。

注意:トランスレス用でない真空管のヒーターを直列にして使ってはいけません。起動特性のばらつきのためにヒーター断線のリスクが大きくなります。

2015年5月2日土曜日

6AQ5 PP : J-FETを測定してペアをつくる

頭も手も冷えて固まってしまうとやっかい。急ぐ予定は無いけれど、時間の余裕を見て少しづつ動かします。

[ 完成したアンプの詳細はこちら ]

 シングルアンプを作ったけれど、6AQ5はまだ残っています。プッシュプルアンプも作るつもりで調査開始。手持ちで出番の無さそうな部品をなるべく活用してやりたいです。

 私室の小型アンプの一員として作ります。シャシーの上にはMT管なら4本載りますが、プッシュプルの出力管4本で目一杯。必然的にドライバは半導体になります。所要ゲインは120~150倍で振幅はP-Pで20Vぐらい。いろんな回路が考えられますが、小型アンプらしく電源部も含めてなるべく簡単な回路にしたいです。

 手もとにあるアンプにはP-K分割(いわゆるアルテック型)が多いです。この回路もそのまま半導体に置き換えできますが、ゲインと振幅を考えるとあまり旨みは無さそう。
 ボスキャラの6CA7-PPアンプは差動2段回路です。6SN7-PPアンプでは高gmのFETをカスコードで使って差動を1段で済ませた回路を使いました。差動増幅回路はシンプルで高性能ですが、電源が面倒です。
 わが家にはミュラード型の回路のアンプはありませんから、これを半導体で作ることを考えてみました。この回路は振幅も比較的大きくとれ、増幅が2段になるのでゲインも高くなります。手持ちの2SK30Aを使うつもりで回路を組んでみました。

 2SK30Aの耐圧は50Vですから、安全を見て電源電圧45Vで考えます。差動の下へ引く分を電源の約1/3としても、P-Pで20Vの振幅はなんとかなります。この電圧では1段ではゲインが不足しますが、2段目のゲインを合わせるとじゅうぶん足ります。FETに流す電流は小さくて済みます。
 電源の45Vは、真空管の回路から抵抗とツェナーダイオードで落とすことにします。ここに流れる電流は出力管のSGの電圧の変動を(僅かですが)抑える効果があります。

FETを測定してペアを作ります

 ミュラード型の説明はいろいろありますが、私は2段目は差動アンプの一種と考えています。差動アンプを1段で安定してバランス良い動作をさせるには2個の電流の差が小さいことが重要。特に今回は電源電圧に対して出力振幅を大きく取る必要がありますから、この点でもばらつきが大きいと困ります。 手もとには2SK30AのYランクの物が14個ありますが、ここから2組のペアが作れるでしょうか。

 FETを選別してペアを作る場合、普通はIDSSを測ります。同種のFETの場合、IDSSの分だけ平行移動した感じで特性のカーブがだいたい重なります。そのため、(特性を外れていなければ)IDSSが同じ個体は同程度のバイアス電圧になるはずです。
 差動アンプの場合は2個を流れる電流は共通抵抗で決まります。この電流の1/2を流すバイアス電圧が揃っていると具合が良いです。IDSSを測るかわりに、一定の電流が流れる時のゲートの電圧を測ることにしました。手持ちの余剰部品や解体部品を使って測定治具を即席バラックで作りました。

  実験用の12Vの電源があります。ゲートをマイナスにしなければならないので、ダイオードを直列に入れてソースを嵩上げします。ボリウムでゲートの電圧を加減します。ドレインに入れた抵抗の電圧からFETを流れる電流が判ります。所定の電流になるようにボリウムを加減して、その時のゲート電圧を測ってペアを作れば、差動アンプに組んだ時にも良く揃うはずです。
 測定すると、14個のうち2個は上下に大はずれで、その他もけっこうバラついていました。それでも中ほどの値で2組のペアが得られました。これで長年寝ていたFETも活躍できそうです。ほかの部品も少しづつ準備を進めます。

2015年4月12日日曜日

6AQ5 Single : 製作しました

ゆっくり準備して来たアンプの製作。おおまかに見れば昔の初歩のラジオ製作っぽいです。動き出せば早いです。

 始動した6AQ5シングルアンプ製作。主要部品は揃いました。回路もじっくり検討しました。そろそろ頃合い。雑事が一段落したのを機会に行動開始。まずは市内に出るついでに、回路図から拾った買い出しリストを持って日本橋へ。もう終着点が近いですから、余分な物は買いません。
 コンデンサは余分に買った物や余りものをかなり活用できましたが、抵抗は数本を除いて新規購入です。今回は入手しやすそうな部品ばかりですが、日本橋の部品屋もわずか4軒だけになって、種類によっては値が揃っていなかったりすることもあります。最悪は数軒ハシゴも覚悟したのですが、幸い1軒目ですべて揃いました。部品の値段よりも交通費がかかり、探して店を巡る時間がかかるというのは子ども時代と同じです。

6AU6 と 6AQ5

 ここしばらくの間に同じようなアンプをいくつか作りました。その中でも今回はごく普通の造りです。前面と背面の部品配置は同じですし、上面も位置の調整ぐらいです。筐体加工はスムーズにできました。入出力端子とかトランスとかネジ止め組み立てまで半日ぐらいの作業。
 内部の部品の取り付けと配線の引き回しについては、実作業の前にゆっくり図上演習しています。じっくり見直したので、組み立て後に回路を変更することはまずないでしょうが、抵抗などを変更しなければならい事はあり得ます。入力部と出力段は立ラグで中継するようにしました。その間の部品は平ラグ板に集中させます。配線を引き回して、部品を盛りつけてと、ちまちま進めて半日ぐらい。

 今回は全体に素直な回路です。気になるのは各部の電圧ぐらい。まずは管を挿さずに通電。真空管モノではこの段階がいちばん緊張します。その後、真空管を挿して各部の電圧チェック。高圧が少し低いですが、おおむね予定の値でした。試しに入力を入れてみると、ちゃんと音が出ました。
 電源トランスは、定格に対してやや軽い使い方ですが、200Vの端子をブリッジ整流して230Vぐらいしか出ません。どうやらこのトランスは電圧降下が大きいようです。

 そのまましばらく音出し。6AQ5は古い新品で、6AU6は長く寝ていた中古。最初は何か発振しているのかと思うほど妙にキンキンした音でしたが、30分ほど鳴らしているうちに落ち着いて来ました。

 今日は少し大き目の音で馴染みの音楽をいろいろかけました。しばらくは低音がだぶついて中音がダンゴになっていましたが、数時間するとなんとなく馴染んで来たようです。まだ本調子では無いでしょうけど、響きが綺麗で音量感もほどよい感じです。このまましばらく鳴らすつもりです。

2015年4月6日月曜日

6AQ5 Single : 部品が揃いました

急ぐ航海ではないけど、あまり停泊しているとフジツボが生えます。そろそろ動き出す準備。

 この6AQ5アンプは予定外の製作。余禄の分はたっぷりと楽しみます。成り行きでやって来た真空管だから、部品も折りをみながら少しづつ集めています。
 シングル用で7kΩのトランスはいろいろあります。その中からイチカワ製の物を選びました。先に6BX7-GTのアンプに使用したのと同じ物です。大きさから見るとかなり余裕を見込んだ定格と思われます。イチカワのトランスはどのみち通販で購入するしかないのですから、時間の合間を見て購入しました。

 これで主な部品は揃いましたから、シャシー加工に向けて部品配置を考えました。使用する電源トランスには静電シールドなど何もありません。出力トランスはこれとなるべく離して置きます。このアンプではMT管4本が載ります。信号や電流の流れは一直線になるのが綺麗ですが、12BH7A-PPアンプでは甘く考えてノイズを拾いましたから、初段の真空管もなるべくトランスから離して置きたいです。
 真空管は6AU6を前6AQ5を後に置いて、信号は前から後ろへ行って90度曲がる流れにしました。6BX7-GTシングルアンプと同様の流れですが、今回は部品を3つにまとめてラグ板に付け、真空管と交互に置くようにします。

主要部品の大きさと配置の確認


 手持ちの部品から使えそうな物を拾い出ししまた。真空管ソケットは黒い樹脂モールドと白いタイト製を2個づつ使います。色違いにしておけば真空管の誤挿入防止になります。放熱の良いタイト製を6AQ5に、寸法精度が高くてかっちりするモールド型を6AU6に充てます。

 ここまでの製作では手持ちの部品をなるべく消費するようにしました。買い置きや計画変更による余剰品のほか、比較的状態の良い解体部品とか。今回も同様ですが、すでに使い切ってしまった物もあります。時間を見て日本橋に買い出しに行かなければなりませんから、足りない物をしっかりと拾い出してリストを作らなければなりません。それまでに、もう一度回路定数の確認です。

※ イチカワは真空管用トランスの製造販売を2022年1月で終了しました。

2015年3月26日木曜日

6AQ5 Single : 進化した電解コンデンサ

あちこち春の花が咲いています。梅雨になるまではまだしばらくありますが、お出かけの合間に時間のかかることを少しづつ。

 6AQ5シングルアンプ。電源トランスに続いて、どのみち必要になる部品の調達を進めています。今度は電源部のケミコンです。
 アルミシャシーに真空管アンプを組みます。昔風のデザインでは、電源トランスの側には足で立つブロックコンデンサが定番。しかし昔のような耐圧の高いブロックコンデンサはほとんど流通しておらず、あってもたいへん高価です。6CA7アンプでは仕方なしにこれを購入しました。
 耐圧と容量の点だけであれば、普通の基板付け用が無いことは無いのですが、見た目があまりに貧弱です。6SN7-PPアンプでは、苦し紛れに基盤付け用コンデンサの中から耐圧と容量がちょうど良さそうな物を購入しました。昔のコンデンサに比べるとすっご く小さいのですが、小型アンプの大きさに合わせて見ると不釣り合いという程ではありません。そこから思いついて探して、これの直径に合う足(バンド)を購入しまし た。シンデレラの物語ではありませんが、うまく合う足を探すのはたいへんでした。単価は安かったですが、通販でけっこう費用がかかりました。

逆シンデレラ物語 : 足に合うコンデンサを探しました


 その後の6BM8アンプの時には、逆に手持ちの足を使うことを考えました。この逆シンデレラ方式はうまく行きました。ネット通販で探すと直径25mmのコンデンサがいくつかあり、その中から見かけを重視してなるべく背の高い物を選びました。スイッチング電源用の自立型のコンデンサで、あとで規格を見ると昔のケミコンとは比較にならない高性能でした。

 今回も 基板付け用コンデンサを使うことにしました。手持ちの足は使い切ってしまっていますが、ジャンク屋で25mm用の足を入手できました。先に使用した品種ではありませんが、同じぐらいの大きさのコンデンサがちょっぴり安く見つかりました。これはスルーホール実装用ですが、端子に直接部品をハンダ付けして使うのでは無いので問題ありません。
 定格の350V220μは12BH7-PPのシャシーに載っているのと同じですが、大きさはずいぶん違います。そして小さくても性能はこちらが遙かに上。電気的特性で音が良くなることは無いでしょうが、耐熱105度で耐リップル550mAで保証寿命8000時間というのはすごく信頼感があります。

2015年2月13日金曜日

6AQ5 Single : 回路の検討

製作した6AQ5シングルアンプは こちら


なにごとも余裕がかんじん。ゆったり考えると思いつくことはあります。思いつきを形にするにはまた余裕が必要。

 先日の思いつきの、ドライバに6AU6を使う案をSPICEで検討。規格表の小さなグラフ相手に悩むよりも早くて簡単です。これと合わせて、A案の出力段の動作も詳細に検討。

 ビーム管らしく、肩まで使うならロードラインは低く平らに。当然小細工無しで素のビーム管動作。プレート損失を6Wに抑えると、250Vでは24mA。出力トランスに7KΩを使うとして、最適そうな動作点を考えます。振幅が肩まで行かないうちにカットオフぎみになります。プッシユプルならこれでも全然問題無いのですが、今回はシングル。肩まで振ってもカットオフしない程度に電流を流すなら、220V~230Vぐらいまで下げべき。実際のスピーカー負荷では高域ではインピーダンスが上がりぎみになりますが、普通は振幅が大きくなるのは低域。このあたりは微妙です。
 SPICEによると、この時のカソードは約8Vで、G2の電圧は165V。 このG2電圧から前段の電圧を作ります。真空管が暖まるまでの間に前段あたりのコンデンサに高い電圧がかかるのを避けるため、いくらか分流して下に引きます。
 B電圧は240~250Vぐらい。G2電圧は抵抗で落として作りますが、3~4mAほど分流してやれば大出力での低下を5Vぐらいに抑えられそうです。前段が1mAあまり使いますから、分流抵抗には2.5mAぐらい流せば済みます。

6SN7-PPアンプ 位相反転部の出力波形

 次は初段の計算。所要ゲインは約100倍で振幅は±8V。G2の電圧からデカップリングで1割ぐらい落とすとして150Vほど。余裕を見て、G2の電圧を1/3ぐらいにすると、プレート電流が0.9mAほど。所要ゲインからプレート負荷を82KΩとすると、プレート電圧が1/2ぐらいに来ます。けっこういいかんじ。この方向で進めそうです。

[ これをやってて気づいたこと ]
 6AU6って、今まで電圧増幅に使ったことが無かったので動作例とかノーチェックでした。使い慣れた6BL8の5極部が6AU6似と言われてそう思い込んでいたのですが、あらためて見直すとかなり違っていました。もともと出自が違うのですから当然のような気もします。
[ ついでに見つけたこと ]
 6AQ5にはレス玉の5AQ5があり、テレビに使われてるのを見たことがあります。データシートを見ていると、用途に垂直偏向出力が載っていましたが・・・・そのデータは3結にして使う場合。6AQ5はG2が弱いので3結やULは不向きと言われたのをそのまま信じていましたが、ピーク電圧や電流の大きな(そのかわり損失は小さい)偏向回路で使って問題無いなら、やはりこれは発熱が大きな使い方が問題だったのでしょう。

2015年2月3日火曜日

6AQ5 Single : 回路とゲインの検討

先を急ぐ航海ではありません。ゆっくりまわりを見回すことも大切。遊べるところでは遊ばなきゃ。まずは始動。

 使用するトランスの大きさなども関係しますが、ミニアンプのシャシー上にはMT管なら4本載ります。B案は、出力管を4本載せてプッシユプルにするかわりにドライバは半導体というプラン。対してA案は、出力管2本でシングルアンプにして、ドライバに双3極管を1本使って3球というプラン。
 双3極管を使ったのは、こういった小型のシングルアンプは3極管をアタマにした2段アンプという思いこみがあったからです。シングルの3段アンプは、安定性や歪みの点で不利ですから、素直に考えれば2段アンプなのですが、アタマが3極管でなければいけないことは無いのです。

 私室のミニアンプは出力は小さくてもゲインが必要です。3極管の1段ではどうしてもゲインが足りません。6BM8シングルアンプ6BX7シングルアンプでは、前にフラットアンプを置いてゲインを補いました。6BM8は複合管ですから、μ70の3極部を使わなければいけませんでした。6BX7アンプは その製作のきっかけから3極管でドライブするのは必然でした。

 昔のラジオ少年のアンプ製作では、単純で安くて出力が大きいことが大事。仕上がりゲインとかNF量とかはまったく適当でした。昔の製作記事を見直してみると、出力管は定格いっぱいで使って、前段もゲインを高くとり、その上で不安定でない程度に少しNFがかけられたら良いというような設計が多いように感じます。
 トーンコントロールとかを前に置けばここでゲインを取れますから、出力アンプ部の感度は低くて済みます。高価で面倒な5極管よりも単純な3極管。12AX7は2個入りなのでステレオにちょうど良いし、1個で良ければラジオ用でおなじみの6AV6がある。
 入力容量の大きな3極管をドライブするなら3極管という意味もあったかもしれませんが、6AR5や6BQ5ならその心配はありません。だいたい、高抵抗高μの3極管で無理にゲインを稼ぐようではむしろ逆効果のはずなのですが。
6AU6:高周波用なので外側の円筒はシールドです

 実用ラジオはスーパーヘテロダインで、音声増幅の初段は6AV6が普通でした。しかし初歩のラジオ製作の定番は並3や並4。出力管の前は検波増幅の5極管で、古くは6C6が、MT管では6AU6が多く使われていました。6AU6は本来は高周波用ですが、オーディオにも使われた管です。6AU6はちびっこい7ピンMT管で、デザイン的にも不都合は無いです。昔ラジオ少年のアンプ製作としては、前が6AU6というのもアリではないかしら。中古ですが何本か手持ちがありますから、これを使うことを考えてみます。

 6AU6は高gmの5極管です。電圧を上げてしっかり電流を流して使えば高い増幅率が得られますが、今回はそれほどのゲインは要りません。ほど良いゲインになる動作を選べます。出力管のG2の電圧を下げて使いますから、初段の電圧はこれより低くする方が回路が簡単で済みます。そうすると、ほど良いぐらいのゲインになるのではないかしら。とりあえずSPICEで遊ぶネタができました。

2015年2月1日日曜日

6AQ5 : 発熱を抑えて使う

元々多趣味なもので、いろいろゴソゴソしてます。その合間を見てまたゲームの続き。

 B案とC案は、出力段については真空管のプレート損失をどのぐらいに抑えるかの違い。まず、厳しい方のB案から、どのぐらい絞れば良いか検討します。
 現用の12BH7A-PPアンプは、プレートの損失とヒーターを合わせて約28W。対して6AQ5のヒーター4本分で11.3W。差し引き16Wあまり。1本あたりとして約4W。カタログ上の定格の1/3です。
 まず、A級で検討。普通に使うと、プレートとG2を150Vにして27mAぐらいといったところでしょうか。G2を下げて電流を絞る使い方なら、200Vで20mA、250Vで16mAといったところ。たたじ、一応そのまま計算してみると、出力はプッシュプルで2Wあまりというぐらい。かなりAB級に近い使い方をするなら、 出力3Wぐらいになりそうです。これだけ厳しい条件でもそこそこ出力が取れるのは見事ですが、6AQ5本来の意図とはかなり違っていそうな感じ。そして、このへんになるとSPICEもカタログ上の特性図もどこまで実態を示しているかかなり怪しくなります。

立派な紙箱に入っていますが、実は単なるゲルマニュームダイオード。

 C案の場合はプレート損失の制約が緩くなりますから、電流をそれほど厳しく絞らなくても済みます。G2を180Vぐらいまで下げればそのままA級で使えます。AB級にすればプレート電圧をもう少し上げられます。G2の電圧を少し下げて電流を絞っても良さそうです。出力は4W~5Wぐらいになります。感度も高くて能率も高くて、歪みもさほど多くない。このあたりが6AQ5にふさわしい動作のような気がします。G2電圧を下げて電流を絞るなら、プレート電圧を規格いっぱいまで上げるという設計もアリかもしれません(ピーク耐圧がちょっと怖いけど)。
 
 手もとの多極管アンプでは、6CA7のアンプがプッシュブルですが、これは大物で発熱も多いです。C案はこれほどでは無いけれど、常用するには大げさです。稼働率の事を考えると、私室で常時稼使用しているミニアンプにすべきなのかもしれません。そうなるとB案かしら。考えると微妙に悩ましいです。

2015年1月12日月曜日

6AQ5 : 真空管の大きさと発熱量

閉め切った部屋で少し大き目の音で音楽聴いています。パソの掃除とか、お部屋でもいろいろする事があります。その合間にゲームの続き。

 かたづけものをしていると、全然関係無い箱の中から見た目かなりくたびれたような真空管が1本出てきました。 25E5は欧州系の水平偏向用ビーム管で、許容損失が12W。国産管の12G-B3なども同じ管形で、ほぼ同じ許容損失です。音声用の6L6-GTはほぼ同じ大きさで損失 がひとまわり大きいです。12G-B3の改良型で許容損失が6L6と同程度の12G-B7はひとまわり管が太くなっています。6V6の許容損失12Wは25E5などと同じですが、管は少し小さいです。ヒーター電力の違いやオーディオ用とテレビ用の違いも考えると、熱的な厳しさはほぼ同じぐらいでしょう。
 こう考えてみると、6AQ5がMT-7ピンの小さな管で12Wというのは相当無理をしていると思えます。おそらく自動車ラジオ用として、寿命よりも小型化を第一に置いたのでしょう。当時は真空管は消耗品であり、振動の大きな使用環境では電気的な寿命よりも機械的な故障が多かったでしょう。
 6AQ5同じ管形の管について見ると、やはりヒーター込みで10Wぐらいのものが多いです。今回の設計では、プレート損失を7W以下に抑えることにします。

古い真空管がみつかりました。25E5はTVの水平偏向用です

  6AQ5のプレート電圧は275Vに抑えられています。狭い管内で耐圧をとれないという事もあるでしょうが、プレート損失の点でこれ以上の電圧は無意味という判断もありそうです。いずれにせよ、今回は無理せずに使います。
 まずゲームとして、A案についてSPICEで試します。プレート損失を抑えるためにG2の電圧を下げて電流を小さくします。6Wに抑えるとすると、250Vの場合は24mAとなり、200Vなら30mAです。この条件のG2の電圧は、それぞれ160Vと185Vで、バイアスが10Vと9V。データシートの動作例ではプレートとG2が180Vでカソードが8.5Vで電流が29mAとなってますから、かなり近い値です。自動車用ラジオ(DC-DCコンバータを使う)のB電圧が200Vぐらいですから、6AQ5をMT7ピンの管に入れたのは妥当という事になります。
 このあたりの動作で見ると、6AQ5って意外と高性能です。出力が2~3Wでゲインは約2/3倍。ラジオ少年定番だった6AR5と比べると、出力は少し大きい程度ですが、感度がぐっと高いです。6BM8だと出力ひとまわり大きいですが感度は同格。悩ましいのは出力トランス。最適なのは6Kぐらいですが、5Kを使うか7Kを使うか。

 かなり感度が高いのですが、わが家規準の入力感度にするとなると、電圧増幅部のゲインが24倍ぐらい要ります。12AX7を無理なく使って約40倍ぐらい、無理して60倍ぐらい。じゅうぶんなNFをかけるには不足です。ここで6BM8アンプの時の手法でK-NFをかけるとすると、ゲインは約1/2倍になります。12dBのNFをかけるとすると電圧増幅部のゲインは120倍ぐらい。
 6Z-P1アンプのように半導体使えば簡単なのですが、広々としたシャシー上にちびっこい管が2本だけでは見掛けが良くないです。やはり電圧増幅部にも管を使わなきゃ。
  • A1案 12AX7を1本使って普通の2段NFアンプとし、不足するゲインを前置アンプで補う。
  • A2案 12AX7の前にFETかトランジスタを1石足して3段NFアンプとする。
  • A3案 12AU7を2本使って3段NFアンプにする。
確実に性能を狙えるのはA1案。楽に作れそうなのはA2案。面白そうなのはA3案でしょうか。A3案は部品配置に苦労しそうです。

2015年1月5日月曜日

6AQ5 : 活用する計画案

考えをまとめるには文字や図にして見るのが有効です。ここは本来はそういう目的で始めたところ。あらためて設計のメモを。

 残った課題は6AQ5のアンプ。元々は6CA7-PPアンプの習作に使おうと思って買い込んであった管ですが、本題の6CA7を一気に作ってしまったので出番が無くなってしまいました。

 あらためて6AQ5の使い方を検討します。今までの真空管アンプ製作と同じ方向で、自宅で実用するアンプを作ることとします。今までの検討をまとめて形にすると、3つの案に集約されます。
  • A案はシングルで使って私室の小型アンプの一員にする。初段に双3極管を置いて3球。ゲインの不足は前置アンプで補う。
  • B案はプッシュプルで使って私室の小型アンプの一員にする。ドライブはすべて半導体にして4球。
  • C案はプッシュプルで使って居間の常用アンプにする。ドライブは双3極管でミユラード型にするとして7球。
共通事項は、損失を抑えて使うこと。G2の電圧を下げて電流を抑える。 プレート電圧も低目で使う。ビーム管らしい肩の特性を利用する。最適な負荷になるような出力トランスを選ぶ。その上で、可能であればK-NFをかけることも考えます。
6AQ5(6005)はずいぶん細身です

 6AQ5の管形は小さいです。カタログ上の定格は大きいですが、単純に管の大きさだけで考えるとヒーター込みで10Wぐらいが上限でしょう。 ヒーターが約3Wですから、プレート損失は7W以下にします。プレートを200Vにすると30mAぐらい、250Vまで加えるなら25mAぐらいでしょうか。それにはG2を180V~150Vぐらいに下げれば良さそうです。
 小型アンプは棚の中で使いますから、総発熱量を抑える必要があります。既存の12BH7A-PPと同程度にするには、B案ではプレート損失を5Wぐらいにしなければならず、この場合はプレート180VでG2が150Vぐらいでしょうか。

 電流を抑えて軽い動作にすると、負荷抵抗は大きくなります。このあたり、目的と手段は逆ですが、6CA7アンプ設計の時と同じ過程です。ほど良い容量でほど良い負荷抵抗の出力トランスがあるかが問題。低い電圧に合う電源トランスも要りますが、こちらは最悪の場合は特注でしょうか。