2015年5月7日木曜日

6AQ5 PP : トランスの選定

オーディオアンプは音が第一ですが、ルックスも大事。真空管のヒーターの光が橙色に点れば音もなんとなく暖かく感じます。



 銀色のアルミシャシーにあれこれ部品がネジ止めされている姿は昔の電蓄やラジオそのまま。市販品はこの外側を木製かプラ製の箱が覆っていましたが、アマチュア工作ではカバーも何も無しで、ガラスの真空管もむき出しのままというのはあたりまえでした。その点ではこのアンプは伝統的なラジオ少年の工作らしい姿と言えそうです。
 アマチュア工作でいちばん困るのがパネル面の文字入れ。自分で使う物だから、機能が判れば良いという考えもありますが、ちょっとぐらい綺麗に見せたい気もします。手間をかけて中身を作ったならば外観もきちんと仕上げたい。外観がきちんとしていると中身もきちんとしているように見えますから。

 文字入れにはいろいろなやり方がありましたが、12BH7Aアンプは1文字づつインレタを貼り込んでいました。しかし今ではインレタは入手不能です。その後に作った小型アンプたちはパソで刷ったラベルを小プレート状に切って貼りました。その後、対になっている入力セレクタの文字入れの際に、プラシートにパソのプリンターで裏刷りして、スプレー糊で貼る方法を試したところ、 たいへんすっきりした物になりました。これ合わせる形で、小型アンプ群の前面の体裁を揃えました。今回製作した6AQ5シングルアンプもこれと同じ方式で仕上げました。外観で音が変わる訳は無いですが、きっちり文字が入ると一段しっかりした物になった気がします。 

セレクタと合わせてお化粧しました

 6AQ5をプッシュプルにして全体の発熱を常用の12BH7Aアンプと同程度に抑えるには、さらに電流を絞った使い方になります。まず使えそうな出力トランスを探しました。イチカワのITPP-3W型に16KΩの物があり、これは6SN7-PPアンプで使ってたいへん良い感じでしたが、ちょっとインピーダンスが高すぎで容量的にぎりぎりの感じです。春日にKA-14-54という製品があり、これは14KΩで容量の余裕もじゅうぶんあり、姉妹品のKA-8-54P2は12BH7Aアンプに使っています。

 微妙に悩ましいのが電源トランス。B電圧が200Vほどですから、シリコンダイオードでブリッジ整流するとACで170~180Vぐらいでしょう。このぐらいの電圧のトランスは少ないです。昔の整流管なみの抵抗を入れれば電圧が下がりますが、その分発熱します。6BM8シングルアンプでは特注しました。あちこちの製品を調べなおすと、春日の KmB150Fがありました。AC170VでDC95mAとB巻線はちょうど良いのですが、ヒーターは0.9Aの巻線がひとつだけ。
 6AQ5は450mAですから、4本で1.8A。しかし巻線の電圧を子細に見ているうちに解決策を見つけました。ヒーター巻線は0-6.3V-12.6V-14.5V-16Vと多くのタップが出ています。6.3Vのタップを中心に、0V端子と12.6V端子との間を使うとそれぞれ6.3Vの電圧です。6AQ5を2本づつ並列に繋げばそれぞれちょうど0.9A。余裕は全然ありませんが、6CA7アンプで使っている感じから見ると春日の電源トランスは定格いっぱいでも大丈夫そうです。

注意:トランスレス用でない真空管のヒーターを直列にして使ってはいけません。起動特性のばらつきのためにヒーター断線のリスクが大きくなります。

2015年5月2日土曜日

6AQ5 PP : J-FETを測定してペアをつくる

頭も手も冷えて固まってしまうとやっかい。急ぐ予定は無いけれど、時間の余裕を見て少しづつ動かします。

[ 完成したアンプの詳細はこちら ]

 シングルアンプを作ったけれど、6AQ5はまだ残っています。プッシュプルアンプも作るつもりで調査開始。手持ちで出番の無さそうな部品をなるべく活用してやりたいです。

 私室の小型アンプの一員として作ります。シャシーの上にはMT管なら4本載りますが、プッシュプルの出力管4本で目一杯。必然的にドライバは半導体になります。所要ゲインは120~150倍で振幅はP-Pで20Vぐらい。いろんな回路が考えられますが、小型アンプらしく電源部も含めてなるべく簡単な回路にしたいです。

 手もとにあるアンプにはP-K分割(いわゆるアルテック型)が多いです。この回路もそのまま半導体に置き換えできますが、ゲインと振幅を考えるとあまり旨みは無さそう。
 ボスキャラの6CA7-PPアンプは差動2段回路です。6SN7-PPアンプでは高gmのFETをカスコードで使って差動を1段で済ませた回路を使いました。差動増幅回路はシンプルで高性能ですが、電源が面倒です。
 わが家にはミュラード型の回路のアンプはありませんから、これを半導体で作ることを考えてみました。この回路は振幅も比較的大きくとれ、増幅が2段になるのでゲインも高くなります。手持ちの2SK30Aを使うつもりで回路を組んでみました。

 2SK30Aの耐圧は50Vですから、安全を見て電源電圧45Vで考えます。差動の下へ引く分を電源の約1/3としても、P-Pで20Vの振幅はなんとかなります。この電圧では1段ではゲインが不足しますが、2段目のゲインを合わせるとじゅうぶん足ります。FETに流す電流は小さくて済みます。
 電源の45Vは、真空管の回路から抵抗とツェナーダイオードで落とすことにします。ここに流れる電流は出力管のSGの電圧の変動を(僅かですが)抑える効果があります。

FETを測定してペアを作ります

 ミュラード型の説明はいろいろありますが、私は2段目は差動アンプの一種と考えています。差動アンプを1段で安定してバランス良い動作をさせるには2個の電流の差が小さいことが重要。特に今回は電源電圧に対して出力振幅を大きく取る必要がありますから、この点でもばらつきが大きいと困ります。 手もとには2SK30AのYランクの物が14個ありますが、ここから2組のペアが作れるでしょうか。

 FETを選別してペアを作る場合、普通はIDSSを測ります。同種のFETの場合、IDSSの分だけ平行移動した感じで特性のカーブがだいたい重なります。そのため、(特性を外れていなければ)IDSSが同じ個体は同程度のバイアス電圧になるはずです。
 差動アンプの場合は2個を流れる電流は共通抵抗で決まります。この電流の1/2を流すバイアス電圧が揃っていると具合が良いです。IDSSを測るかわりに、一定の電流が流れる時のゲートの電圧を測ることにしました。手持ちの余剰部品や解体部品を使って測定治具を即席バラックで作りました。

  実験用の12Vの電源があります。ゲートをマイナスにしなければならないので、ダイオードを直列に入れてソースを嵩上げします。ボリウムでゲートの電圧を加減します。ドレインに入れた抵抗の電圧からFETを流れる電流が判ります。所定の電流になるようにボリウムを加減して、その時のゲート電圧を測ってペアを作れば、差動アンプに組んだ時にも良く揃うはずです。
 測定すると、14個のうち2個は上下に大はずれで、その他もけっこうバラついていました。それでも中ほどの値で2組のペアが得られました。これで長年寝ていたFETも活躍できそうです。ほかの部品も少しづつ準備を進めます。