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2017年1月18日水曜日

ロシアから来た真空管

全盛期には世界のあちこちの国で真空管が作られていました。真空管は消耗品で簡単に差し替えてメンテナンスするイメージでした。そのため、オリジナルのメーカー以外で製造された物も多く流通していました。

 真空管の規格化とそれによる互換品の製造は米国が進んでいました。その後、欧州でも独自の規格が規定されました。これらの真空管の中にはほぼ同じ規格の物もあり、その多くは実質的に同じ(名称違い程度)物で相互に差し替え可能でした。米国型番の管は、6AQ5や6AK6などまだ米国に未使用在庫が多くある物もあります。6CA7/EL34のように欧州型番を持った管の場合、欧州型番で検索した方が多く見つかる場合もあります。

 日本も独自の真空管の規格が作られましたが、日本の真空管メーカーは米国系の型番の真空管を多く作りました。 どちらかと言うと、前者はテレビ用など特定の用途以外にはあまり使われず、一般に多く使われたのは後者でした。結果、日本規格の管は今日ではだいたい入手困難になっています。

旧ソ連製真空管 6BM8,6AU6,6SN7の互換管


 旧東側諸国でも真空管は作られていて、それらは独自の型番を持っています。 その中には欧州と米国の管の関係と同様に、欧州の管とほぼ同じ規格の管もありました。ソビエト崩壊後、これらは比較的容易に入手できるようになりました。現状では価格も安く在庫量も多いです。

 私室用に作った小型アンプの使っている真空管の中には、 かなりくたびれた管が多いものもあります。ふと思いついてこれらの未使用品を入手を検討してみました。その中で、6BM8(ECL82)と6AU6(EF94)は旧ソ連製の相当管があることを知りました。同じ所に6SN7-GTの相当管もありました。

 今回ネット通販で購入したのは、
   EF94 (6AU6) の相当管 6J4P
   ECL82 (6BM8) の相当管   6F3P
   ECC32 (6SN7-GT,) の相当管 6N8S

注意: 6J4Pは6AU6より少し背が高いです。

 まず、6BM8のアンプに 6F3Pを差して鳴らしてみました。3極部のゲインが上がったのでしょうか、交換前のくたびれた管より少しクリアな音がする気がします。

2017/01/21 追記 
 6N8Sを6SN7-PPに差してみました。動作の点でも音質の点でもまったく問題ありません。
 6J4Pを6AQ5-Sアンプの初段の6AU6と差し替えました。使用していた6AU6がだいぶくたびれた中古でgmが低下ぎみだった事もあるのでしょう。全体にこちらの方がすっきり聞こえます。
 これらの旧ソ連規格の管については、実用上差し替えて問題無く使えるものと思います。

2019/02/09 追記
 旧ソ連製の6F1Pを入手しました。規格表で比較しましたが、これはECF80/6BL8の相当管のようです。差し替えて鳴らしてみましたが、支障無く使えました。

2016年8月12日金曜日

6SN7-PP 電源部をつくりかえ

今年の夏は増えたアンプを繋ぎ替える乗り切る算段。依然暑いですが、朝晩にはちょっと涼しさも感じるようになって来ました。

[製作した6SN7-PPアンプの詳細]

 繋ぎ替えると 、ついつい違いが気になって普段以上にじっくり聴いてしまいます。それぞれが理想的な物になっているなら、繋ぎ替えても違いは無いはずです。しかし違いが感じられなければ、それぞれが存在する意味が疑わしくなります。使っていて劣って感じることがあれば問題ですが、そうでなければそれぞれ他に優る点がひとつでもあれば嬉しいです。

 「居間のヌシ」の6BX7-PPアンプや「本命」の6CA7-PPと違って、私室の小型アンプたちはアソビ的な物です。実験であり、興味関心であり、余り物の整理であり、倹約と妥協でもあります。いろんな意味でチープで不十分です。だから、あらためて見直せば改善の余地はあります。
 あらためて聴き比べると気づく違い。その中には、製作時には「この程度なら支障ない」と判断した所もあります。気になればやはり気になるもの。時間のある時にひとつづつ修正。やって効果があれば他にも適用して、また聴き比べ。

6SN7-PPアンプ 電源部をつくりなおしました

 聴こえる音にはあらわれないけど、長く安心して使おうとすると耐久性も気になります。発熱の多い部品と熱に弱い部品が近接していたり。悩ましいのが『ラグ板』。昔からフェノール樹脂の板(いわゆるベークライト)が使われていますが、これは長時間熱が加わると変質し、絶縁低下します。昔はこれしか無かったのですが、往年のテレビにはこれよりも優れた素材が使われるようになっていました。しかしすっかり隙間世界となってしまった「真空管アンプ」に使われるラグ板はいつまでも昔のまま。
 配線整理の関係で12BH7-PPアンプは電源部をつくりなおしました。この時、使える平ラグ板の手持ちが無いので、ガラスエポキシ板とハトメラグを使って代用品を作りました。代用品ですが、耐熱性はこちらの方が良いです。そこであらためて他のアンプも点検して、発熱の多い電源部を見直しました。

アルミ板でブロック化したタイトラグ

 6BM8シングルアンプでは、回路部分がタイトラグに載っているのでこれに合わせる意味もあって、、ひと工夫して余剰品のタイトラグを活用しました。手間はかかりましたが、予想以上に具合良く仕上がりました。そこで、この方法をそのまま適用して、6SN7-PPアンプの電源部も作り直しました。このアンプは発熱的に厳しい訳ではないのですが、電源部が複雑です。このあたりの見かけの改善ももくろんだ訳です。
 タイトラグは2本ならべてアルミ板に付けて、これを元の平ラグの位置に付ける。アルミ板は、留めネジの頭を避けるために凸状に曲げて、ケミコンやトランスの取り付けネジに干渉する部分は切り欠いて、微妙な形です。

2014年5月12日月曜日

真空管のウォームアップ

真空管の動作は熱電子によるもの。だから熱くならなきゃ動作しない。スイッチを入れて暖まるまでの時間は真空管らしいひととき。

  真空管にはウォームアップタイムというものがあります。スイッチを入れてヒーターが点灯して、カソードが暖まって電子が出る。それまでの時間がウォームアップタイム。
 オーディオアンプの場合、スイッチを入れて少し待つと、微かに音が出だして、だんだんそれが大きく聞こえだします。逆にスイッチを切ると、しだいに音が弱まってかすれて消えてゆきます。 真空管時代のテレビでは、暗い絵が出て、だんだん明るくなるとか、真ん中に小さく(あるいは細長く)絵が出て、これが画面いっぱいに拡がるとか。

注意:トランスレス用でない真空管のヒーターを直列にしてはいけません。起動時の温度のばらつきでヒーター断線の危険が増します。

 真空管式のテレビでは、(磁界で輝線が揺れるのを嫌って)トランスレスが普通でした。ヒーターは直列にして100Vで点火します。直列にするのでトランスレス用の真空管は暖まり方が規定されていました。普通のレス用は11秒となっています。正確にはヒーターの温度が上がるまでの時間で、定常動作に至る時間ではありません。

 うちのアンプの真空管たちはと見ると、12BH7Aがテレビ用です。12BH7のウォームアップタイムを調節したのが12BH7Aです。ドライバの6BL8は元々は欧州のテレビ用の管で、姉妹の4BL8や9A8はレス用です。6BM8も原型はテレビ用のレス管です(6BM8はレス用ではない)。
  6SN7-GTに対して6SN7-GTBはウォームアップタイムが規定されていますが、名前程度の違いしか無いのかもしれません。差し替えて比べてみるとどちらも大差無い時間で音が出てきます。

石アンプ : アンプ部と保護回路部

  トランジスタアンプはヒーターがありませんから、スイッチを入れるとすぐに動作を始めます。前段が安定動作する前にいきなり出力段がオンになった場合、スピーカーからボコっと音がでる事があります。逆に電源が切れた瞬間に不安定になる事もあります。アンプが大出力になるほどこの問題は深刻になります。ひとつの解決方法が「保護回路」。スイッチ・オン後しばらくたってからスピーカーをつなぎ、電源喪失時にはすみやかに切り離す。
 出力回路自体の工夫でこの働きをさせる方法もありますが、いちばん簡単確実なのは電磁リレーで物理的に切断すること。自作の石アンプでは異常動作で出力にDCが漏れるような場合も切断するようにしてあります。アンプ部はオペアンプICのμA749を使っていますが、保護回路はすべてディスクリートで作りました。まだこの頃はICを信用していなかったためです。

2014年2月28日金曜日

12BH7A PP : 出力トランス

しばらくぶりの電気工作。やっているうちにちょっとはカンが戻って来たようです。その調子でもうひと作業。

 しばらく前にはほとんど絶滅していた真空管アンプ関係の部品がまた作られるようになっているのはちょっと驚きでした。
 私室のヌシに収まっていた12BH7A-PPアンプは1990年代に作った物。この頃はもう小型アンプ用の出力トランスなどは絶滅していました。そこで怪しい試みをする事になりました。電源トランスは出力トランスに使えるか?? なりゆきで、1次側の中点タップを出したトランスをカットコアに巻いて貰うことになりました。実物を測ってみると、本式のオーディオ用には全然及ばないものの、ラジオ少年御用達あたりよりはマシな感じでした。そのまま無理は覚悟でアンプにしたら、案外聴きやすい物ができてしまって、そのまま長年働いて来ました。

 懸案の6CA7プッシュプルアンプ製作の流れで、2つのミニアンプを作ってしまいまいた。デザインも機能も12BH7Aのアンプと対になる物なのですが、さすがに繋ぎ替えて聴くと格差が目立ちます。SPICEも活用して動作を見直して、抵抗とコンデンサをいくつか交換して、いくらかマシになったものの、高音も低音もいまひとつ伸びが無い感じ。やはりトランスの特性が足をひっぱっている感じです。ならば、トランス交換するしかない。幸い今なら良さそうなトランスがあります。


 全体を作り替えるのではなくトランスだけ載せ替えることにしました。サイズ的にうまく載りそうな物から春日無線のトランスを選びました。イチカワの物よりひとまわり大きなコアが縦になって幅が抑えられています。定格の10Wはおそらくぎりぎりの容量と思われますが、このアンプには余裕たっぷりです。
 トランスを載せ替えて鳴らしてみると・・・やはり低音も高音もくっきりたっぷりと。このあたり、イマ風の出力トランスの作りなのでしょうか。 あれ??ちょっとキラキラしすぎ。オシロでチェックすると、やはり矩形波の角がギンギンに立ってました。元のトランスが早い所からダラダラ下がっていたのに対して、このトランスはぎりぎり高域まで頑張っているようです。そこで位相補正のコンデンサを変更したら、あっさりと綺麗に収まりました。慣らし運転のまま棚の中に居着いていた6SN7-PPアンプと交替して、昨晩はそのまましばらく私室で音楽をかけて様子見。音はずいぶん変わりましたが、適度な音量感はそのままです。

 私室の棚には12BH7アンプが戻って来たので、6SN7-PPアンプは居間に出張です。ある程度は予想したけれど、カッチリ気合いの入った音です。でも、ちょっと音を大きくしてじっくり聴くには良いけれど、気楽に聴き流す雰囲気では無いし、なによりすっきりしすぎて音量感が足りないです。日中はメインのスピーカーをだいぶ大き目の音で鳴らしていました。やはり、音量感がなんか違います。スピーカーの前では常用の6BX7-PPアンプより音が小さくきこえますが、離れると大きな音で鳴っているのに驚きます。やはりドライブ段の回路の違いと関係があるのでしょうか。

2014年2月7日金曜日

6SN7 PP : 試運転

最後にちゃんと接岸してタラップ下ろすまでが航海。予定よりも少し先まで進みましたが、ここで一度停泊。

 穴開き基板使うのはホントにひさしぶりです。初期の頃、オーディオ関係ではエッチングして基板作る事が多く穴開き基板は補助的な小物以外あまり使いませんでした。その後、マイクロコンピュータで遊んでいた間はけっこう使ったのですが、それもずいぶん前の事。

 しばらくぶりだから、すっかりカンが鈍っています。 基板にバランス良く見栄えよく部品を盛り付けるのも大変。部品の大きさの感覚がすっかり無くなっています。何度か微調整しました。電圧のかかる部品とか熱くなる部品とか、絶縁が気になる物とか、短いイラックスを通して基板から少し浮かせたり。
 増幅は1段ですが、カスコードで石が2個並びます。これが差動で2組あって、ステレオでその2倍。石が8個一直線に並んだ姿はちょっと奇妙です。使ったFETの足の順番で騙されるところでした。2SK362の足配置は2SK30と逆です。

 今日はハンダ付け作業。先の細いハンダこてを出して来て、ハンダも0.8mmの細い物を。マイコン関係に比べると配線の量は全然少ないです。しかし配線がなるべく交錯しないように引き回さなければなりません。特に今回はインピーダンスも高いし電圧も高い。コテ先のあて具合とハンダを供給するスピードの感覚を完全に忘れているのにびっくり。目も指先も衰えているので、細かな所に集中する気合いが持続できません。急ぐことはないので、少しづつゆっくり作業。誤配線が何より怖いですから。


 ひととおり配線したら、念のためテスタでチェック。やはり1箇所配線忘れがありました。電源部は先に組み立てて電圧が出ることは確認済みです。ここに繋いで各部の電圧チェック。なんか変。おかしな所のあたりを調べると、ハンダがちゃんと付いていない所がありました。部品が破損するような誤りでなかったのが幸い。修正して信号を入れると、ちゃんと増幅して出てくるようです。思い切って、真空管のグリッドへ繋いで、管を挿して。一応チェックして発振していない事を確かめてから、実験用のスピーカーを接続。あれ?左チャンネルだけ音が小さい?? 基板をそっと裏返して確認。ハンダのひげが接触していました。電圧のかかる所でなかったのでチェックが甘かった。

 しばらくぶりと言っても言い訳にならないです。かなり恥ずかしいミスが続発したけれど、なんとか音が出ました。 仮配線だった所をきちんと付け直して、しばらく様子見。その間に部屋を掃除して道具は片付け。特に熱くなったりする部分も無く音も正常なので、正規のスピーカーに繋ぎ替え。予想(昔に仮で試した時の印象)とは全然違う音。出力トランスが良いのでしょうか、低音がすごくゆったり響きます。高域は明るく、小さな音がくっきり聞こえます。あとしばらく鳴らしてみます。

2014年2月6日木曜日

真空管と整流回路

今回の主役の6CA7アンプ。回路上のかなめは電源です。正負あわせて3つの整流回路。

 安くて丈夫で扱い易いシリコンダイオードのおかげです。この電源部を真空管で作らなければならないとしたら、すごく面倒な事になっていたでしょう。昔の一般的なアンプは、単一の整流回路で、出力管から前へと次々電圧を下げながら供給する。あとは固定バイアス用に負の電圧を作るぐらい。
 この伝統的な回路構成は、長い間アンプ設計の標準的手法であったと思います。トランジスタ時代になっても、初期には同様の考え方の回路がけっこうありました。

 標準的なデジタルICの電圧は5Vです。初期のCPUの8080は面倒な仕様で、+5,+12,-5Vの3種類の電圧が必要でした。-5Vは電流が小さかった(1mA)ので、なんとか他の電圧から作ろうとする工夫がされました。後継の8085や機能的に上位互換のZ80は5V単一動作になったので、ロジック部の電源は5Vひとつで済むようになったのですが、周辺回路などで仕様上別の電圧が必要な部分は存在しました。その筆頭がモデムなどのシリアル通信。 RS232Cは(できれば)±12Vが欲しいです。メモリ関係はかなり後まで+12が必要な物が残っていました。これらのために電源回路を複雑にするのを避けたいので(電池で動かしたい事もありますし) +5からなんとかして作る工夫がありました。最後にはそのためのICまで登場しました。(これらがアナログ回路に使えるかは不明です。)

デュアル 倍電圧整流回路 オペアンプに良さそうです


 トランジスタと真空管のコンボを考えると電源がポイントになります。製作中の6SN7-GTアンプは差動段を下へ引くマイナスとバイアス用のプラスが要ります。これをどこから作るか。電流は数mAですから、B電源の巻線から取れますが、高い耐圧の部品が要りましすし、電圧のほとんどを無駄に捨ててしまうことになります。幸いどちらも電圧は5~10V程度あれば良いので、ひとつ余ったヒーター巻線 6.3Vを正負に半派整流して得ることにしました。π型にフィルタを入れても電圧は足ります。

 前置するフラットアンプにオペアンプを使おうとすると、このための電源が要ります。中点から吊って単一電源で済ませる手もありますが、できれば正負の電圧が欲しいです。振幅が要りますから、あまり低い電圧では困ります。
 電圧が足りなければ、倍電圧整流という手があります。真空管時代のテレビは、電源トランスを使用せず(磁界で輝線が揺れるのを避けられる)電灯線の100Vを倍電圧整流してB電圧にしていました。電源ラインが宙に浮く(ヒーターの電位が揺れる)のを嫌って片側を接地した半波倍電圧整流です。
 この回路を利用します。ヒーター巻線の6.3Vを半波倍電圧整流。これを上下に積み重ねて正負を作る。リップルが気になるのできちんとフィルターを入るとして、これなら±12Vぐらいは確保できます。(半派を上下で使うので、トランスから見ると両派になります。)

2014年2月2日日曜日

6SN7 PP : 製作中 真空管まわり

主要部品が揃ったので、そのまま前進します。

[製作した6SN7-PPアンプの詳細]

 少し前に作った6Z-P1アンプも半導体をドライバ段に使ったハイブリッド構成でしたが、これは6CA7アンプの習作の意味もありましたから、平ラグ板に部品を盛り付けました。今回は部品点数が多くなり、正負の電源が入り組みます。シャシー内も狭いです。コンパクトにまとめるにはやはりプリント基板がBEST。私の電子工作の復習という意味ではこれも良さそう。

 という事でエッチング基板も考えましたが、あらためてやるとなると液やらいろいろ買わなきゃいけないので、ぐっと後退して穴開き基板を使うことにしました。デジタル時代にはけっこう使いましたが、この場合はせいぜい12Vぐらいの電圧。今度はその10倍以上で、回路のインピーダンスも高いです。この点、ちょっと不安はあります。

 6SN7をプッシュプルで使って約1.2Wの出力です。8Ωで3.1Vだから、P-Pでは約8.6Vになります。入力が約22V(P-P) だから ゲインは0.4倍。仕上がりゲインを18倍とすると、ドライブ段のゲインは約45倍。NFを12dBとすると200倍近いゲインが必要です。2SK362のgmは真空管に比べるとかなり高いので、負荷抵抗をあまり大きくしなくても必要なゲインが得られます。ゲインが200倍ぐらいになるように調節すると82kΩで済みます。カスコードは等値的な内部抵抗が高いですから、負荷抵抗を低くできるのは好都合です。次が3極管なので入力容量が大きいためハイ落ちが懸念されますが、(SPICEで見ると)この程度ならそれほど酷くならずに済みそうです。
 トランジスタ回路部分はあとまわしにして、調子が出ているうちに真空管アンプ工作の部分をやってしまうことにしました。今回は使い残しや外し物やジャンク部品もなるべく活用するつもりです。電源トランスのほか、真空管ソケット、スイッチ、ヘッドホンジャック・・・・ ネジはすべて買い置きでまかなえます。配線も使い残しをやりくりします。アルミシャシーに穴を開けて、いろいろネジ止めして、ビニル線を引き回して。電源部は平ラグ板に盛り付けました。出力管のカソードまわりはソケットに直付けです。
 ドライバ段の基板は出力トランスの下に置きます。この部分に1tのアルミ板(残材)でシールドを設けました。基板はこの上にビス留めします。こうしておけば、将来的にドライバ回路を別の物に作り替えることがあっても対応しやすくなります。

 ここまでできれば、あとは小さいハンダごてに持ち替えての作業です。さて、穴開き基板でアナログ物の作業は何年ぶりかしら。

2014年1月31日金曜日

6SN7 PP : 部品集め

目的の6CA7アンプは、当初の予想よりずっと早くスムーズに完成しました。この勢いでもう少し進むことにしました。

[製作した6SN7-PPアンプの詳細]

 長年の懸案だったアンプを作る。子ども時代からいろいろ電気モノと触れあって来た想いの集大成でもあります。あらためて昔の雑誌の記事とかも読みなおしました。昔に収集した資料とかメモとかも出てきました。そして、買い置きや取り置きしてあった昔の部品とか。

 押し入れの奥にしまいこんであった箱の中に、古い真空管がけっこうたくさん溜まっていました。現在稼働可能なアンプの予備の分以外は、このままではおそらく使う事は無さそう。その中で、比較的簡単にアンプとか作って遊べそうな物がいくつかありました。その中で、ちょっと面白そうなのが6SN7。今回の6CA7アンプのドライバ段に使った6FQ7の原型となったGT管です。
 6SN7は6BX7-PPアンプに差し込んで鳴らしてみたことがあります。不適切な動作点であったにもかかわらずたいへん良い音でした。あらためて特性図から負荷を求めると、どうやら18KΩぐらいが良さそう。これで出力が1.2Wぐらい。練習と実験がてら作った6Z-P1シングルアンプと同じぐらいの出力です。ネットで見つけたページに定格3Wで16KΩのトランスがありました。小ネタが一気に現実的になって来ました。

名門の生まれ / NECと東芝の真空管と半導体


 メーカーのサイトには 5KΩと8KΩは価格が載っていて、16KΩは問い合わせとなっていました。問い合わせると、 どうやらある程度注文がまとまるごとに生産している感じでした。案外価格が安かったので注文しました。届くまで回路を考えたり部品の用意をしたりして待ちました。

 電源トランスは買い置きのジャンク物を使います。シャシーは私室のアンプたちと揃えて、薄いアルミの箱にします。ヒータ電力と管の大きさを考えると、ドライバ段は半導体の方が良さそうです。先日検討した「FET-Trカスコードで差動1段」回路で作ることにしました。手持ちの2SK30ではgmが足りませんから、ネット通販で見つけた2SK362を購入しました。案外安いので上に積むトランジスタも一緒に購入しました。2SC2688はNEC製で、これもテレビのクロマアンプ用。トランジスタを通販で買うのはほぼ40年ぶり。ただし、昔は最新品種を、今は廃品種を。
 調達に困ったのが電源のブロックコンデンサ。無いことは無いけれど大げさで高価です。基板付け用のコンデンサで耐圧と容量の合う物が比較的安価にありました。シャシー内に入れ込んでしまえばこれでも良いのですが、やはりシャシー上にすっくと立つブロックコンの姿は外観の点で重要。探すうちに、この細い外径に合うバンドが見つかりました。結局これも通販。単価は安いけれど送料込みだと微妙でした。

※ イチカワは真空管用トランスの製造販売を2022年1月で終了しました。

 

2014年1月18日土曜日

余剰部品の始末

目的の6CA7アンプ製作は一段落しましたが、勢いが残っているうちにもう少し遊びます。

 このあと、修理などを除くと、おそらく電子系の工作をすることはほとんど無くなるでしょう。今までに溜まった半端物の部品がいろいろ出て来ましたが、おそらくほとんど使い道が無くなりそう。そして、なんとなく使うつもりで買い置きした真空管も。

あらためて部品箱とか残り物入れとかひっぱり出して整理。6CA7アンプ計画では基本的に受動部品は新規調達するつもりでしたから、このあたりはほとんど手を付けていませんでした。思い出してみると、今までにいろんな物に手を出したこと。それらの残渣がたくさん。古いトランジスタ、古いリニアIC、古いオペアンプ、古いTTL、古いマイコン周辺LSI。振り返ってみると、デジタル時代以降は特に変化が早かった気がします。能動素子は当然だけど、それらとのからみで存在意義があった部品群。トランジスタソケットやICソケットって、今では真空管ソケットよりも存在意義が薄い感じ。DINコネクタとかアンフェノールとかD-SUBコネクタとか、今後復活して何かに使われる可能性はほとんど皆無でしょう。今までにかなり廃棄して来たけれど、探すとまだあちこち隙間から沸いて出て来ます。

いわゆる「無駄な抵抗」というやつ

 抵抗器は、作る物によっては同時に同じ値を何本か使います。ステレオならたいていは2本単位。厳密な値が欲しい事もありますが、数倍違っても大差無い箇所も。その時々で適当そうな値を使ってます。SPICEで遊んでいる時もたいていはおおまかななカンでE24から選んで入れ替えてます。途中の計画変更もありますが、使いそうな値だと余分目に買っていたりもしました。あらためて集めてみると、けっこうな本数です。ただし、あらためて見るといずれもトランジスタやICで遊んでいた頃の物で、値の範囲がかなり偏ってます。残念ながら真空管モノには使えそうにないのが多いです。

 冬の部屋では暖かく感じますが、やはり大きなアンプは夏向きではありません。部屋で常用するにはちびっこいアンプでじゅうぶん。手持ちの出力管は6AQ5と6BM8がありますが、どちらもプッシュプルで使うとけっこう立派なアンプになってしまいます。電圧増幅管ですが、6SN7ならうまく使えば1Wあまりの出力になり、6Z-P1のシングルアンプと同格になります。残り物の半端部品がいくらかでも活用されるかしら。幸い都合の良さそうな出力トランスが現行品にあります。これは追い風? 買い足す部品がけっこうありそうですが、今度はきちんと拾い出して、余分な買い物はなるべく控えなきゃ。

2014年1月14日火曜日

6SN7 PP : 回路を考えてみる

様子をみながら少し大きめの音で音楽をかけながら、その合間にもうひと遊び。

 しかしSPICEってたいした物です。ササっと回路らしき物を作って、適当に抵抗値とか決めて、とりあえず走らせて、各部の電圧とか電流とかグラフに描かせて 、バランスみながら回路を修正して。本当はもっと緻密な設計に使われる物のはずたけど、とりあえずゲーム感覚で遊べます。なんせ、フリーでソフト代が無料。もちろん試作の部品代も不要。ゴミも出ないし部屋も散らからない。

 アルテック型のポイントは、ゲインも振幅も初段でまかなって、2段目は反転に徹する潔さ。5極3極の複合管なら1本で済みます。 しかし初段は100倍以上のゲインと数十ボルトの振幅が要ります。半導体化しようとすると、単体では難しいけれど、カスコードという合わせ技を使えば2SK30でも可能。反転段は高い電圧に耐えて振幅さえ取れれば何でもよし。という具合でSPICEを使って適当にでっちあげてみました。
 いいかんじで正負の出力が出ます。綺麗にバランスしていてますが、初段から来る歪みが気になります。歪みの点では差動アンプの打ち消しは効果的。半導体なら2段差動にして性能を上げるのは容易。初段のJ-FETはモード変換に徹して、次段のトランジスタで振幅とゲインを稼ぐというのがひと昔前の大出力DCアンプの常套手段。しかしここまで来ると完全に石アンプの設計です。SPICEで試さなくても動くのは判りますし、この道を進んでも「全然おもしろく無さそう」。しかも実際に作るとなると(DCが帰還されないので)ドリフト対策とかSPICEでは追いにくい問題がたくさん出て来るのも判ってます。
差動1段位相反転回路 半導体版

 あらためてカスコード接続2組で差動1段回路を作ってみました。やはり2SK30ではgm不足でゲインが取れません。ネットでメーカーの製品リストを拾って、その中からSPICEのデータが見つかった物を選びました。ネット通販を調べると比較的安価なようです。カスコードにすると、6AU6あたりよりひとクラス高gmの5極管相当になります。所要のゲインと振幅を得るには負荷抵抗は低目で電圧も低くて済みます。カソード(ソース)を深く引けないので、ここは定電流回路を入れて・・・と考えていて気づきました。カスコードアンプ全体では高い電圧で動いていて、バランス上はその分深く下へ引かなければならないようですが・・・FETについては上のトランジスタで低い電圧に抑えられているので、実際はバイアス電圧程度から抵抗で引けばそこそこバランスしそうです。
 電源トランスのあまったヒーター巻き線を整流して正負の電圧を得るものとして、適当に回路を作ってみました。上下のアンバランスは数%で、部品の誤差に吸収される程度。 歪みも少なくて、けっこういいかんじです。

2014年1月10日金曜日

6SN7 PP : 動作と位相反転回路

足りない部品があります。買い出しに行くまで作業は停滞です。別に急ぐ事ではないので、遊びます。

 で、6SN7でパズルゲームの続き。 8KΩのトランスを強引に2倍で使うのも考えましたが、探すと比較的安価で16KΩというトランスがありました。最近はやりのミニアンプ用でしょうか、3Wというのも手頃です。ゲームにリアリティが出て来ました。

 MT管の6CG7は1ユニット3.5Wで2ユニット計5Wの制限がありますが、バルブが大きい6SN7にはありません。ピーク耐圧が高いので、負荷抵抗を高目にして高目の電圧で使う方が良さそうです。古い規格の管も使うのでB電圧を300Vほどで考えます。6Z-P1アンプに使ったのと同じ中古の電源トランスが1個余っていますから、ちょうど良さそうです。

 カットオフ付近の特性の良い管ですから、AB級でバイアスは深目にしても良いと思います。無難な所で線を引くとバイアスが11Vぐらい。プッシュプルですから、22V-PPのドライブです。これで約1.2Wの出力です。そうなると、出力段のゲインは約1/3倍。さすがに3極管です。
 わが家基準に揃えるとすると、仕上がり利得が約15倍。ドライブ段の設計では振幅よりもゲインが厳しくなります。軽くNFをかけるとすると、ドライブ段で60~90倍ぐらい必要です。 真空管であれば、前が5極管のP-K分割か、3極管-3極管のカソード結合型でしょうか。アンプの規模を大きくしないためには5極-3極複合管でP-K分割でしょう。6BL8は手持ちに余裕がありますが、これを使えば6BX7-PPアンプとまったく同じになってしまいます。全然面白くありません。

 やっててふと思いだした事。普通カソード結合型の位相反転段は3極管ですが、ここは3極管である必然性は無いのです。ただ双3極管が簡単で便利なだ け。5極管を使えば、ゲインが増して平衡度を高く取れます。ここで必要なゲインを稼げれば前段の利得が不要になります。つまり差動1段。片入力の差動アンプなのでゲインが1/2になりますが、ハイゲインの5極管なら足りそう。高価な5極管を使うけど管の数は同じ。差動の打ち消しが働いて歪みも少なくなるはずです。
5極管差動1段ドライブ回路

 そこでSPICEを活用。5極管を2本使って差動アンプにしてみます。差動アンプとして平衡度を上げるには高い抵抗で深いマイナスに引くのがいちばん。とりあえずB電源の1/3ぐらいで引いてみます。真空管に6AU6を選んで抵抗値をちょっといじると、すんなり正負の信号が出ました。ゲインも片側120倍ぐらい得られますから、5極管で10Wクラスのアンプに使えばほど良くNFがかかります。そしてハイゲインの威力で、正負のアンバランスは数%以下に収まりました。けっこういい感じ。

 しかし私室で常用するなら、あまり大げさなのは困ります。前述のトランスを使うとなるとヒーター電力も抑えたいです。やはり半導体とのコラボでしょうか。

2014年1月7日火曜日

6SN7 PP : アンプに必要な出力

足りない部品の代わりに使える物がないかと押し入れの箱を捜索。


 部品の買い忘れがありました。動作を測って値を変更という事もありますから、とりあえず代用しておいて後で付け替えという道もあります。実験に使った余りとか解体物とか無いかともおったけれど、そう都合の良い物はありませんでした。そのかわり、買い込んであった真空管がひとまとめ出て来ました。物は6SN7で、今度の6CA7アンプに使う6CG7の元になったGT管です。

 6SN7は足の接続が6BX7と同じです。興味半分に特性を見たら、自作の6BX7プッシュプルのアンプにそのまま差し込んでも定格内でした。試しに差し替えて鳴らしてみると、あきらかに出力は不足でしたが、それは綺麗な音がしました。当時の知人はこの音を聞いてMT版の6FQ7をパラにしてプッシュプルアンプを製作し、サブアンプとして鳴らしていました。
 これが元で、なんとなく出会った物を買っていたらしいです。6SN7は昔は全然高価な管ではなかったです。あちこちのメーカーの管が2本づつ。せっかくだからこれも活用してやりたい。そうなると、パラでシングルか片側づつ使ったプッシュプルでしょう。これで常用できるアンプになるかしら。

 必要なアンプの出力はスピーカーや聴く距離などで大幅に違って来ます。居間に常駐している6BX7-PPアンプは約5Wの出力。私室で普段働いている12BH7A-PPは約2.5Wですが、先日作った6Z-P1シングルでも不足は感じませんでした。実はお正月を挟む時期、6Z-P1のアンプを居間で鳴らしていました。音質の点では予想以上の大健闘で、普通に聴く分には全然支障無しというか、むしろ気楽に聴ける感じの音でした。ただ、音量がぐっと大きくなる部分ではちょっと詰まって音がダンゴになる感じがしました。やはり1Wあまりの出力では居間では力不足のようです。しかし逆に見れば、私室で普通に聴く分には1Wでも全然支障無いと考えられます

 昔試した時には差し替えて定格を越えない事を確認しただけでした。 あらためて、特性図から出力管として使う場合の動作を探ってみます。許容損失が大きいと言っても元々は電圧増幅管。本物の出力管とは流れる電流が違います。6BX7のアンプは8KΩのトランスですが、これでは小さすぎ。どうやら最適負荷は18KΩぐらいのようです。この場合は1.2Wほどの出力になります。先の知人はパラにして6AQ5用だったと思われるトランス(10KΩ?)を付けていました。単ユニットでは20KΩ相当ですから、これは良い動作点です。単ユニットで無駄なく働かせるにはトランスがカギになりそうです。

2013年11月4日月曜日

私室の常用アンプ 12BH7A-PP

趣味ですることだから、いろいろ思案するのも楽しみのひとつ。たっぷり楽しむつもりです。

 ここしばらく、家じゅうのアンプをつなぎ替えて鳴らしてみています。それもそろそろ一巡しました。

 鳴らし比べが一巡して、常用の12BH7A-PPアンプに戻りました。回路自体は6BX7-PPアンプと似ているのですが、各部が倹約設計になっています。いちばん倹約なのが出力トランスで、特注品なのですが・・・200V:5V1Aの電源トランスにタップを出してもらったという物。普通にアンプに使えているあたり、カットコアの威力でしょうか。(その後普通の出力トランスに交換しました。)

 
 12BH7は、本来はテレビの偏向回路用です。パルス回路用として電流は取れますが、オーディオ出力用としてはプレート損失で制約されます。このあたり、テレビでも設計上の注意点だったみたいですが。定格は1ユニットあたり3.5Wですが、元々はパラでの動作を想定していないらしく、同時使用では5Wという資料もありました。これに従うならば、A級アンプの場合は片側2.5Wで設計しておく必要があり、きちんと守るとあまり出力が取れません。AB級の場合はいくらか緩和されますが、それでも合計5Wを越えないようにするとかなり辛いです。このアンプの設計はこれを越えていますが、管はずいぶん長持ちしています。昔に見たテレビセットでは1ユニットで5Wを越えるような物もありましたから、もう少しは無理が利くのかもしれません。古い時代の管と末期の管を見比べると微妙に違っていますから、定格オーバーの使用に対して真空管メーカー側が対策したのかもしれません。いずれにしろ、オーディオ出力用で使う場合は配慮が必要だと思います。


   今度の6CA7-PPアンプで使用するつもりの6CG7/6FQ7も本来はテレビ用の管です。12BH7が垂直偏向回路向きなのに対してこちらは水平偏向回路。 おそらく無理が少ないからでしょうか、この6CG7はカットオフ付近まで良く特性が揃っている事で知られていました。
 この管はA級出力用に使うと損失よりも電流で制約されてしまいます。元々の6SN7はGT管で、ある程度高い電圧で使う設計のようです。これをMT管にしたらしいすが、その際にプレート電圧の定格が低く規定されました。テレビセットではそれほど高い電圧で使う事は無いので、定格を下げたのでしょう。カソードのエミッションには余裕がある(元々パルス回路用だ!)はずなのですが、やはり出力用ではないから仕方ないです。