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2018年6月18日月曜日

プッシュプル用の出力トランス

無信号時にも出力トランスの内部を直流電流が流れています。このためトランスの磁芯には常に磁化されます。

 シングルアンプではトランスを通る電流は真空管の動作範囲の半分の電流を中心に増減します。 だから鉄芯には常時直流磁界が通ります。シングル用のトランスはこの磁界で飽和しないように作られています。プッシュプル用では、上下の巻き線で直流磁界の打ち消しが起こるので、飽和に対する許容量はあまり大きくないのが普通です。

 この直流磁界による飽和の問題から、プッシュプル用のトランスをシングルで使うのは無理ですが、シングル用のトランスをプッシュプルに使うのは(磁力の点では)問題無いはずです。

 一方、プッシュプル用のトランスは2つの巻き線のバランスが必要です。シングル用のトランスでちょうど1/2の位置にタップが出た物があればプッシュプル用になる?? そうだったら、小出力のアンプを作るのに使えるのがあるのではないだろうかしら。

 6Z-P1のシングルアンプに使った春日のKA-1220型は1次が12KΩで、ここに3KΩのタップが出ています。このクラスのトランスなら、タップは5KΩとか8KΩだと思うのですが、それよりだいぶ低い3KΩというのが謎でした。
 ふと気付いたこと。3Kは12Kの1/4ですから、巻数では1/2。そうなると、これはUL接続用のタップとして使うためかもしれません。そして思いついたことは、ここが巻線の中点(からあまりズレていない点)だったら、これはプッシュプル用に使えるのではないか。そうならば、検討中の12AU7-PPアンプに良さそうです。

春日の KA-2110 シングル用12kΩ


 このトランスが使えるかどうか、実物を測ってみるのが早道。6Z-P1アンプを解体するという方法も無い訳ではありませんが、東京へ行ったついでに買って来てしまいました。どのみち使うとなれば新たに購入することになりますから。


 まず、巻き線の直流抵抗。これはVOMで測定。
  0-3K は 290Ω, 3K-12K は 310Ωと320Ω それほど違いはありません。

 次は自作のブリッジで、1次側のインピーダンスを測定。自作なので絶対精度は怪しいけれど、比較にはなります。2次側に8Ωの抵抗を付けて、1KHzで測定。
 0-3K は 3.5KΩ, 3k-12Kも3.5kΩ 2個とも同じ。
 3Kのタップはインピーダンス的にちゃんと中点になっています。
 規格の3KΩより大きいですが、0-12K を測ると 14Kになりましたから計算は合います。

 そこで、12KΩの抵抗を1次側の両端に繋いで、発振機の信号をトランジスタアンプを通して、2次側から 1KHzの0.1 Vを入れてみました。
 0-3K には 2.1V, 3-12K にも 2.1V が出て来ました。これも2個とも同じ。巻数的にも中点のようです。
 電圧が約21倍なので、1次2次の巻数が21倍とすると、インピーダンスでは8Ωの441倍で3.5KΩとなります。上で測ったインピーダンスと合います。つまりこのトランスは、実は14KΩなのかもしれません。


 直流電流が重畳しなない状態で小信号の測定ですから、本来の使用条件とは異なる値が出て当然ですが、それでも3KΩのタップはじゅうぶん巻き線の中点として使えるようです。6Z-P1でシングルアンプに使って、なかなか良い音がしているトランスです。プッシュプルで使っても良い音が期待できそうです。

[製作した12AU7-PPアンプの詳細はこちら]

2015年7月5日日曜日

6Z-P1 Single : アンプのリフォーム

長年私室でBGM用に働いている12BH7Aプッシュプルアンプ。ここへ来て急に仲間が増えました。繋ぎ替えて遊べるように、同じシャシーに載せて前面と背面の配置は同じです。

( このアンプの詳細についてはこちら )

 買い集めた真空管の活用が目的なので、シングルもあればプッシュプルもあり、真空管もざざま。基本的な性能は同じですが、それぞれひとひねりした回路で、内部の造りもあれこれやっています。

 小型アンプを作るきっかけになったのが 6Z-P1シングルアンプ。ずっと以前におもしろ半分で作ったアンプの性能があまりにも情けない状態だったので、本命大物製作の前の腕馴らしも兼ねて作り直しました。
 作りなおして機能的には問題無くなったのですが、やはりしばらくぶりの電気物の製作で、見落としもあり、加工の不手際もあり、中途半端な部分もありました。そしてなにより、外観への配慮がすっかり欠落していました。その後同じシャシーを使ったアンプが勢揃いするとランスの 悪さが目立って来ました。棚の中で長時間目にする私室のアンプにとっては外観も重要です。

上面の部品配置を変えました。回路や使用部品は同じです。
  
 出力トランスを電源トランスと反対の端に配置し、間に真空管を前後に並べました。ドライバ段の回路は平ラグ板に載せて出力トランスの下に。部品の干渉を見逃していて、製作時にラグ板の配置を変更。製作後もシールド板の取り付けとか手直しがありました。
 あらためて全体を見直し。真空管は太くて背も高いです。出力トランスは定格3Wにしてはかなり小ぶりです。 特徴的な姿のST管は良く見えるように横に並べてたいです。見た目が貧弱な出力トランスはその背後に置く。つまり上面の部品配置をそっくりそのまま90度回転すれば良かった。しかしシャシーを買い直して全部作り直しというのはもったいない。そのまま断念。

 昨日ふと思いつきました。問題の回路部分はほぼ正方形のスペースです。電源部は元のままで、回路の部分だけそっくり取り外して、ここをアルミ板で塞いで、その上に新しく穴を開けて部品を載せる。
 手もとにあった解体資材のアルミ板がうまく使えそうでした。元々若干強度不足(ST管の抜き差しはかなり固い)なので補強にもなりそうです。その方針で部品配置を検討して見ました。回路部分はラグ板に載せたまままるっと使うことにしても何とか収まります。配線の引き回しも問題無さそうです。そこで思い切って大改造。今度はシールド板もきちんと作ります。2枚分の穴開け加工に手間がかかりましたが、配線の引き直しは簡単に済みました。全体で半日ぐらいの作業。アルミ板のほか、少しの線材とネジぐらいで、回路部分の部品はそっくり元のままです。ノイズやハムの問題も出ずに済みました。当然ながら出てくる音も元のままですが、一応念のためしばらく音楽をかけます。


2014年3月23日日曜日

6Z-P1 Single : 真空管アンプの熱さ

真空管アンプの音って何でしょうか。居間の6BX7-PPアンプは、製作当時は真空管アンプ愛好の方にはトランジスタっぽい音がすると言われました。その後造ったトランジスタアンプは、DCアンプ絶対派の方には真空管っぽいと言われました。

 引き続きアンプの外観のお化粧をしながら、もうしばらくアンプの鳴らし比べ。これが終わったら晩秋から続いていた電気工作もひと休みの予定。それまでに見直す所とか無いかもう一度チェック。あわせてwebコンテンツも整備して、灯のともった真空管の姿を写真に撮って。
 真空管の灯りの写真はデジ一眼レフだから撮れるもの。真空管のヒーターの光は案外弱いです。ヒーターの照り返しで管やまわりがほんのり赤く見えるように撮るには露出と照明のバランスが悩ましいです。カメラは3脚に固定して、構図を整え、暗くした部屋の中で、アンプに弱い照明を当てて、長時間シャッターで撮ります。デジでは撮ってすぐに結果が確認できます。それをもとに照明の位置や明るさを変えてもう1枚と。まあ、一種のカットアンドトライです。ずいぶんアナログちっくです。

少し青色のグローが出ています

 私室の小型アンプたちの定位置は書棚の中。同じ大きさの入力セレクターと重なって、繋いだらそのまましばらく働きます。上は上の棚板に守られて横の空間も確保されています。使用中はボンネットカバー無しでも全然支障無いです。危ないのはつなぎ替えとかの作業時ぐらい。使用したシャシーが同じなので設置スペースは同じですが、高さが違います。いちばん背が高いのがこの6Z-P1。つるんとした頭と上の棚板の間はけっこう接近します。幸い真空管の発熱が少ないので、真夏でも上の板が熱くなって困ることは無いでしょう。総発熱量は(製作予定を含む)5台の中ではいちばん小さいです。
 居間のアンプは、イザ音楽を聴くぞ、とか映画を見るぞという時しかスイッチが入りません。対して私室のアンプは雑食です。テレビの音声からパソの音声まで、音楽も動画もなんでもあり。朝から晩まで通電しっぱなしの事も多いです。製作時に発熱や管の消耗を気にしたのはそのためもあります。ぎりぎりの性能を発揮させてやるのもひとつの行き方でしょうけど、倹約&貧乏性には向いてないですから。

2013年12月25日水曜日

6Z-P1 Single : 作り直しました

ハラハラドキドキというのは未熟な証拠。でもトキメキが無いと面白くありません。

 先日から進めて来た 6Z-P1アンプの作り直し。大目標6CA7プッシュ製作の前の練習試合のような意味もあります。何度かやって慣れているはずでも、しばらくやってないとすっかり忘れていることもあります。余所での経験が役立ちそうなも箇所もあります。そしてまったく新しい工夫を試すことも大切です。

 平ラグ板の使い方の工夫は、もう少し改良が必要ですが、簡単にCRの値を変更したり追加できる(後述)利点がみとめられました。抵抗のまわりを整頓できるので、被覆の耐圧の心配が軽減されます。
半導体カスコードの初段は予想以上にすんなり機能しました。音も問題無いです。
 シャーシー加工と部品配置は、中途半端に余裕があるので甘く考えてしまって、まったく検討不足でした。部品が干渉してしまい穴を開け直したので、余分なネジ穴ができてしまいました。
 配線は使い慣れたビニル被覆の単線を使いました。耐圧の点で、細い物と太い物を使い分けました。高圧のかかる所は被覆が厚い方が使用中の黒ずみが少ないです。配線後系統別に束ねてビニル紐でくくるのはいつもと同じ処理です。

ひとまず完成という状態


 ひととおり完成したあと、しばらく音出ししましたが、音楽ソースによって高音が妙にキラキラ響いて聴こえました。方形波を入れてオシロで見ると、無帰還でも角がとんがって見えます。おそらく出力トランスの高域に暴れがあり、ドライブ段は無駄に高域が伸びているのと合わせて入力の高調波が悪さしているのでしょう。

後日談:高域の暴れの原因は出力トランス2次側の引き出し線からの電界の漏洩でした。シールド取り付けで解決しました。

 安定増強のおまじないにトランスの2次側にCRを入れて、ドライブ段の負荷抵抗にCRを抱かせて高域を制限。どちらが効いたのか、すんなり聞きやすい音になりました。高域が落ち着くと中域がしっかり聴こえてきます。そのままNFをかけても安定しています。中低域が少しだぶついた感じがしますが、低音もちゃんと鳴っています。私室のヌシの12BH7プッシュのアンプとは微妙に違う雰囲気ですが、非力な5極管のシングルとは思えない音。出力が半分ぐらいだけど発熱も半分ぐらい。夏場には良いかもしれません。このまましばらく鳴らしてみるつもりです。

 

2013年12月23日月曜日

6Z-P1 Single : 作り直しています

なにごとも予習と復習が大切と言いますが、その間に挟まるフィードバックが最大のポイント。
 

  一応部品も揃ったので、6Z-P1シングルアンプの組み立て。まずは腕慣らしと新しい試みの検証という事です。

 SPICEを使うと各部の電流と電圧を簡単にグラフ化して比較できます。交流を入れれば山と谷の関係が一目瞭然。抵抗値を変えて良さそうな動作に落とし込むのも簡単。昔風のカットアンドトライですが、ハンダこては不要で費用は全然かかりません。なんとなくそれらしい回路が出来てしまった感じですが、使った部品のモデルがおおざっぱですから、実際に組んでみるとどうなるか。

  新規購入した出力トランスは春日のKA-1220です。電源トランスは中古ですが、サンスイ製です。目標の6CA7アンプは出力トランスがサンスイで電源トランスが春日ですから、ちょうど逆の関係となりました。
 シャーシー加工なんて何年ぶりかしら。薄いアルミ板なので加工自体は楽です。部品配置で見落としがあって、ネジ穴を開け直す事になり、余分な穴が開いてしまいました。それ以外は何とかできました。前面と背面のレイアウトは、現用の12BH7Aプッシュのアンプと揃えました。うまく出来たら、時々交替で使おうという目論見です。
 新しい試みのひとつが平ラグ板の使い方。組み立て後の部品の交換が予想されますから、ラグの穴を配線に使ってCRはラグ片の方に付けます。タイトラグの使い方に近い感じです。

まずは各部の電圧を測定

  まずは管無しで電源ON。手早く電源部をチェック。次は管を差して、あちこち電圧チェック。この段階がいちばん緊張します。しかしSGが予定よりも少し高目ぐらいで、あとはすべて予定の範囲内。いちばん心配だった半導体カスコードのドライブ段もSPICEが出した電圧とほぼ同じ。面白いです。
 入力に信号を入れて見ると、出力に電圧が出ます。増幅もしています。実験用の小スピーカーを付けて、音声信号を入れてみると・・・すんなりと鳴ってしまいました。低音も案外ちゃんと出ています。
 そこで出力トランス2次側を配線してNFをかけて・・・NFは12dBぐらいかかっているはずなのですが、特に異常発振も無いようです。ノイズもハムも無し。音声信号を入れてしばらく様子見。

 どうも高音が変です。妙にキラキラキンキンと。発振しかかり? NFの抵抗を外すと、かなり軽くなりますが、やはりキンキンと。我慢してしばらく鳴らしてみても変化なし。どうやら出力トランスの高域に暴れがあるようです。これと半導体のドライブ段が高域まで伸びすぎているのが重なってワルサしているのでしょう。
 NF抵抗に小コンデンサを抱かせてみましたが、(裸でも暴れているのだから当然)あまり改善せず。高域のゲイン自体を減らす必要があります。手持ちの部品にはちょうど良い物が無いので、また買い出しです。

後日談:出力トランス2次側の引き出し線からの電界の漏洩がドライバ段の回路に干渉していました。シールド取り付けで解決しました。

2013年12月21日土曜日

6Z-P1 Single : 作り直します

走り出す前にはウォーミングアップが大切。思い切って6Z-P1のシングルアンプを作り直すことにしました。

 探すと12KΩのトランスを作っている所がありしまた。買い忘れていたチョークコイルと合わせて、これを購入しました。黒色塗装のカバー付きの立派な姿ですが、ずいぶん小さいです。定格3Wは、おそらくぎりぎりの3Wでしょう。それでも、今付いているトランスよりはだいぶ大きいです。
 トランスだけ交換では面白くありません。本来の目的の6CA7アンプ作りに向けてのウォーミングアップという意味で、回路部分も作り直すことにしました。SPICEで設計した回路の検証も兼ねています。

6Z-P1 Single 作り直し 新規購入した部品

 小信号用の抵抗は安いです。中にははずして再利用できる物もありますが、手間と信頼性を考えて新しく買い直すことにしました。電気店の現状把握も兼ねて、日本橋へ。
 電気の街といっても、元々日本橋は家電が中心で部品専門店は少なかったです。元々の店の生き残りと後から来た店と合わせて、一般的な部品小売りの店は現在は4店。かなり得手不得手があり、微妙に価格差があります。部品メーカーの消長もあって、在庫限りということでしょうか、値によって欠品があったり。
 メーカーの消長という点で感慨深いのは半導体。汎用のトランジスタなどごっそり廃品種になっていて、真空管時代の終わりの頃を思わせる状態。 どこも在庫の品種が少なくなっていて、価格差も大きいです。お馴染みの2SK30はまだ在庫がありました。しかし高耐圧のトランジスタは見事に消滅している感じ。探して見つけた物は、2SC2621。テレビのクロマアンプ用で、製造した三洋はテレビ製造でも知られた会社ですが、メーカー自体すでに消滅しています。
 元のアンプ自体、作ったままほとんど使っていなかったので、大半の部品は綺麗なままです。電源トランス(これは中古)など、大物の部品はそのまま転用します。シャーシーは、私室で現用のアンプと揃えて、薄いアルミシャーシー(通称弁当箱)にします。まずは初歩のラジオ工作です。

2013年12月10日火曜日

6Z-P1 Single : 回路を再検討してみる

わが家のアンプの利得について、あらためて計算してみました。

 アンプの入力の基準は、どのぐらいが良いのでしょうか。入力レベル0dBで最大出力という考え方もあります。しかしアンプの出力の大小でゲインが違うと、使うアンプによって入力ソース側のボリウムの加減が違ってきます。

 私室で使っているアンプ控えの石アンプと普段居間で使っているアンプ。出力は違いますが、つなぎ替えて使ってもボリウムの位置はほぼ同じです。これは、最初に作った居間のアンプに仕上がりゲインを揃えてあるからです。で、最初に作った時の基準になったのが・・・当時使っていた某メーカー製のアンプ。最初はこれとつなぎ替えて遊んでいたので。
 16Ωで約24倍、8オームで約15倍のゲイン。あらためて計算して見ると、0.7Vで約20Wの出力になります。思い起こせば、たしか元のアンプは20Wだったような。今度のアンプは出力30Wですが、仕上がりゲインをどうするか、ちょっと悩ましいです。

 大出力のアンプは、当然それだけの振幅を得るのに必要なドライブ段を持っています。 逆に苦しくなるのは小出力のアンプ。規模に見合った簡単な回路では裸ゲインがあまり高く取れず、しっかりゲインを稼ごうとするとドライブ段が不釣り合いに大げさになってしまいます。お遊びで作った12BH7Aシングルアンプは10倍ほどのゲインになっていました。12AX7の1段ですから、NFをかける余地を確保するために低く設定したようです。

FETと高耐圧トランジスタをカスコード接続 = 5極管モドキ

で、先日の6ZP-1シングルアンプ。これも仕上がりゲインが低目に設定されています。

 6Z-P1は5極管としては感度が低いです。入力は6V6と大差無いのですが、得られる出力は1/4。ゲインは半分しかありませんから、全体で同じ裸ゲインにするにはドライブ段が2倍頑張らなきゃいけない事になります。前段に12AX7を使ったとしてもNF掛けて仕上がりゲイン15倍は難しいでしょう。2段にするか高増幅率の5極管を使うか、いずれにしても6Z-P1には不似合いっぽい。
 このアンプは真空管のかわりにFETの2SK30Aを使いましたが、ゲインが全然足りなくて仕上がりゲインを抑えてもNFが3dBしかかかってませんでした。定数を微妙に見直してゲインを上げてNFを10dBほどに増やしてみましたが、どう考えてもこれが限界。ゲインを稼ぎつつP-Pで20Vの出力を得ようとすると、電圧が足りません。しかし2SK30Aは高耐圧といっても50V。この点では真空管には全然及びません。古い資料を見ているうちに思い出したカスコード接続。FETの上に高耐圧のトランジスタを積めば高い電圧で使えます。うまくやれば、B電圧でそのままドライブできるのではないかしら。

 という事で、フリーのSPICEソフトを利用して検討してみることにしました。上のトランジスタのバイアスは、電流がほとんど流れないので出力管のカソードから取ることを考えました。回路は簡単です。普通の5極管を使った場合と同じぐらいの定数を入れて走らせてみると、なんとなくいい感じの動作になります。裸で40倍ぐらいのゲインが得られますから、仕上がりを16倍にしてもほど良いぐらいのNFがかかります。振幅もじゅうぶん余裕があって、6AU6あたりよりも使い易そう。
 そうなるとあとはトランジスタ探し。300Vぐらいで1Wぐらいのトランジスタって、けっこういろいろ出回っていた印象なのですが・・・検索してみると、すでにほとんど絶滅状態のようです。 このクラスのトランジスタの代表的な用途はと考えると・・・テレビの映像回路。テレビの回路がだんだんソリッドステート化されて最後に残ったのがブラウン管。ブラウン管も真空管ですが、それもついに液晶になって消滅。そしてその相方となっていたトランジスタも供に消えて行こうとしている感じです。まだ店頭在庫はあるかしら。電気屋街へ行ったら探して見なきゃ。

2013年11月24日日曜日

6Z-P1 Single : 昔作った物を見直す 2

金曜日は日本橋を偵察に。噂によるとかなり「めいど」に浸食されているらしいですから、土日は避けた方が良さそうという判断。

 アンプはもちろん電気系の製作から完全に遠ざかっています。大阪で必要な物が入手可能か、どんな物がどのぐらいの値段なのか、だいいち、部品屋が健在なのかも判りません。まあ、普通の抵抗はあるだろうけど、高耐圧のコンデンサとか、最近はどんな物があるのか下調べしておかないと。ラグ板とか端子台とか、価格とか入手性とかによって、筐体内の配線の引き回しとか考えなければなりません。

古い6Z-P1 綺麗なグローが出ている管もあります
  で、部品屋をまわりながら、どのみち必要になりそうな物から調達。ラグ板とかシャシーにあてがって配置とか考えたいですから、試しにいくつか購入。電子回路も今はデジが主流で、基板もスルーホール実装から面実装へ。受動部品も小さくなってチップ部品が増えています。それでも普通の抵抗器はちゃんと揃うようです。数ワットぐらいの酸化金属抵抗も入手可能。コンデンサは、しばらく見ない間に種類がずいぶん変わっています。やはり耐圧の高い物は少ないですが、探せばなんとかなりそうです。
 ついでに、先日チェックした6Z-P1シングルアンプを手直しするための部品を調達。手直しといっても、一部の抵抗を交換して初段のゲインを上げてみるという程度。真空管より耐圧が低いので、電源電圧を上げる技が使えません。FETを別品種に交換すれば良いのでしょうけど、最近の品種は全然判らないので。
 裸ゲインをいくらか上げられたので、3dBほどしかかかっていなかったNFが10dBほどになりました。試聴すると、すっかり音色の感じが違っています。中域はずいぶん聞きやすくなりましたが、低音が全然出ていないし、音色も変。やはり出力トランスがへろへろなのが効いているようです。中高域が改善した分、アラが丸見えになったのでしょう。
 試しにあり物で適当に作った植木鉢スピーカーにつなぎ替えて見ると、 意外とそれらしく聞こえるのが不思議。元々低音は出なくて高域も全然伸びていない安物ラジオ並のスピーカー。うまく誤魔化されてしまうのでしょう。やはりトランス交換でしょうか。そうなるとシャシーも替えなきゃならないです。悩ましいです。

2013年11月21日木曜日

6Z-P1 Single : 昔に作った物を見直す

ゆっくり潮は流れはじめていますが、もう少し寄り道を。

 注意:12Z-P1のヒーターは12.0Vです。12.6Vではありません。

 居間の本気アンプ私室の常用アンプも本来は音声用では無い管。でも本職の音声出力管を使ったアンプもあります。そのひとつが6Z-P1のシングル。ただ、これは実用品ではなく装飾品。
 音声出力用と言っても、6Z-P1はラジオ用。それも、元は戦時中の倹約設計ラジオ用の『国民球』12-ZP1。47の劣化コピーという評もあるような管。ラジオ少年の標準の6AR5と比べても格下。だから作ったアンプから出る音が良くなくてもそんな物と変に納得していました。しかしあらためて見直すとけっこういいかげんな作りです。ちゃんと作ってやればちゃんとした音が出るんじゃないかしら。

 ネット時代ってありがたいです。探すとちゃんと特性図も出てきました。定格を確認すると、プレートが250VでG2が180V。プレート損失が4Wとあるのですが、1枚の特性図には3.5Wの所に点線が描かれています。当初は3.5Wであったのかもしれません。
 元々の用途が電灯線を双2極管で倍電圧整流したトランスレスラジオ用。プレートもG2も180Vの動作がこの条件でしょう。 この場合は1Wちょっとの出力。、定格いっぱいの電圧で使って出力が1.5W。ただしこの動作だと4Wには収まりますが3.5Wは超過しますし、歪みも多いです。あらためて特性図に12kΩで線を引いてみます。少し電圧を下げて220Vぐらいで使った方が良さそうです。出力が少し低下しますが歪みは減ります。
 フルスイングするにはP-Pで20Vぐらい必要です。これで出力が1.5Wですから、終段のゲインはなんと0.5倍しか無いです。プレート電流が15mmAでG2電流が2.5mmA~4.5mAですが、G2の許容損失が0.6Wですからけっこうぎりぎりです。

昔から使っている電子電圧計 デジタルよりも直感的で使い易いです

 作った際にはあまりきちんと測った記憶がありません。昔から使っている電子電圧計を出したので、アンプを実測してみることにしました。終段のプレートは250VでG2が180Vで、カソード電圧は10Vで規格どおり。NFを外して、発振器の信号を入れてみると、グリッドを5Vで振ると出力トランスの2次側に約1.5V出ますから辻褄は合っています。
 このアンプのドライブ段は、デザイン的な理由もあって、FETを普通の5極管のように使っていますが、ありものの石をおおざっぱに使ったのであまりゲインが取れていません。仕上がりゲインを普通ぐらいに設定したので、実測するとNFが約3dbしかかかっていませんでした。もっとゲインを取ってNFに回してやらなきゃダメですね。しかしそうなると、超貧弱な出力トランスを何とかしなきゃいけなくなりそうです。