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2018年5月27日日曜日

電源のコンデンサ (12BH7A PPの場合)

真空管からトランジスタの時代になり、アナログからデジタルの時代になり。新しい回路技術が出て来て、それが周辺部品の進化を促す。

 1970年代か80年代になる頃、抵抗器は大きく進化しましたが、その後はあまり目立つ変化はありません。ところがコンデンサは10年ごとぐらいの感じで何段階も進化を繰り返しています。
 フィルム系コンデンサは90年代頃からあまり大きな変化は無いのですが、そのかわり電解コンデンサは大幅に性能が向上しました。いちばんこれを必要としたのは、スイッチング電源の一般化とデジタル回路の高速化。 長時間高速で充放電を繰り返し続ける。過酷な条件下で長寿命で、さらに小型化も求められる。


 一般的な電気回路の部品で劣化が心配される物の筆頭が電解コンデンサ。そして、ここ20年ほどの間でいちばん性能や信頼性が向上したのも電解コンデンサ。

基板付け用のコンデンサは高性能でも小型です。
 12BH7A-PPアンプは1990年頃に簡易なBGM用として製作した物。その後私室のBGM用としてずいぶん長時間稼働してきました。最近になって、全体を見直してあれこれ改修した結果、信号系のコンデンサのほとんど全部と抵抗器の一部は新しい物になっています。
 ところが電源のブロックコンデンサは最初に製作した時の物です。幸いまだ容量抜けにはなっていませんが、今後も長く使う事を考えると、どこかで交換する必要があります。

 先日捜し物のついでに部品屋を覗くと、ちょうど良さそうなコンデンサが安価で出てました。

 最新の基板取り付け用の電解コンデンサは、電気的特性が優れていて信頼性が高く長寿命です。そのかわり外形がずいぶん小型になっていて、そのまま付け替えはできません。
 昔からのブロックコンは直径35mm。この基板付けコンデンサは直径30mmで高さは約半分。そこで、ジャンク箱に残っていた古いプロックコンデンサを切断して中身を抜いて、この中に組み込みました。高さは元のブロックコンに合わせましたが、色は黒から灰色に変わりました。
 
 付け替えて鳴らしてみると、低音の安定感が大幅に向上しています。この影響でしょうか、高音も明るく硬い感じに変わりました。回路的には何も変わっていません。電源のコンデンサだけでこんなに変わるとは予想以上。
 このコンデンサの実働時間はかなり長いです。無理の無い使い方なので容量抜けはしていませんが、長く使っている間に何か特性が劣化していたのかもしれません。そうだとすると、古いアンプなどのプロックコンの交換時期の判断が難しくなります。
 元のコンデンサは当時の一般的な物です。この間に2回ほど、電解コンデンサには大きな進歩がありました。この世代の差が音の違いになっているとしたら、使用時間の長短にかかわらず、古い世代のプロックコンは交換した方が良いという事になるのかもしれません。
 いずれにしても、たいへん悩ましいことです。

2019年02月17日追記
 同様の手法で6BX7-PPアンプもブロックコンデンサを更新しました。こちらも容量は抜けてなかったのですが、交換すると低音も高音もすっきり感が増しました。やはり古い電解コンデンサは替えた方が良さそうです。

2016年7月31日日曜日

12BH7A プッシュプルアンプ 配線変更

暑いです。我慢も限界で、お部屋はエアコン入れてます。ならば、多少熱いアンプでもだいじょうぶ?

 暑さに向かう頃から、数が増えた小型アンプをあれこれ繋ぎ替えて鳴らしています。あらためて鳴らし比べると、それぞれ一長一短あります。不満足を感じれば、あらためて見直して手を加える。ひとつ底上げされると、今度は別のが見劣りして感じられるようになります。以下くりかえし。

 6AQ5シングルアンプに続いて先週作業したのは6BM8シングルアンプ。このアンプは製作時におもいついて、結線の変更で簡単にUL接続とK-NFをかけたりはずしたりできるように作りました。4種類を聴き比べ、最終的には最初の計画どおりのUL接続のみの状態で使うことにしました。この状態でしばらく使ったのですが、今後は他の結線で使うことは無さそうと判断しました。そこで、思い切って余分な配線の引き回しを撤去することにしました。
 回路自体は変わっていないのですが、微妙に音質が向上したような気がします。電流の流れがすっきり整理されたのが効いたのでしょうか。

ガラエポ板とハトメラグで平ラグ相当の物を作りました
 
 そこで他のアンプも見直し。 数が増えたプシュプルアンプの中で、現状でいちばん音の粒立ちが欠けているように感じるのが12BH7A-PPアンプ。ずっと昔に製作した物で、製作直後に回路を大幅変更し、その後も何度か少しづつ手を入れて性能向上して来ました。この過程で部品を追加したりして、内部はかなり混沌となっていました。ここをきちんと整理するのが良さそうです。ついでに、初期に急遽追加した電源トランスと初段の回路との間のシールド板もきれいに作り直しましょう。

 まず、後から追加した関係で散らばっていた電源まわりの部品を集約することにしました。それには平ラグ板が要りますが、ちょうど良い端子数の物が手持ちにありません。そこで、ふとした思いつきを実験。
 普通のラグ板はいわゆるベークライト製。プリント基板では最安価なタイプで、耐久性に難ありの材質です。これより優れているのがガラスエポキシ。手もとにはプリント基板の端切れがあります。これを元にしてハトメラグを付ければちょっと丈夫な代用品ができるはずです。まず裏面の銅箔をはがして、端子位置にアナをあけて、ハトメを留める。ハトメをきれいに付けるのに苦労しましたが、それらしい物ができました。

 回路は変わっていません。部品もそのままです。変な所を回っていた配線を整理して、隙間に無理して付いてた部品を移動した程度。その程度ですが、不思議なことに、僅かですが小さな音の粒立ちが向上した感じがします。この程度のことで違いが出るというのは、それはそれで悩ましいことです。
 一方、ガラエポ板で平ラグの代用品が作れることが判りました。手間はかりますが、安価に作れて信頼性が向上。発熱の多い部品が付いているような所はこれと交換するのもアリかもしれません。

2015年3月9日月曜日

12BH7A PP : アルテック型を子細に見直す

だいぶ春らしくなって来ました。

 本格的に暖かくなる前にと、大物の6CA7-PPアンプに繋ぎ替えて、締め切った部屋でちょっと大きめに鳴らしてみました。お馴染みの曲のほかに、最近はあまり聴かないアルバムもかけてみると、記憶にある曲と感じが違いました。音の粒立ちが良くて小さい高音が鋭く定位して聴こえます。奇妙に感じて他のアンプに繋ぎ替え。
 定番の12BH7-PPに繋ぎ替えると、曲全体の感じは同ですが、この粒つぶした定位感は無くなりました。出力の違いかしら。しかし非力な6SN7-PPでも同様にはっきり粒立ちして聞こえます。6Z-P1シングルアンプでは、(低音の響きは劣りますが)高音は6CA7に近い感じ。つまり、この曲はこういったキラキラ粒つぶな録音のようです。どうしても音像がぼやけがちのバスレフスピーカーでは気づかなかった違いが、硬くくっきり鳴るスピーカーで露わになった感じです。

 そうなると、12BH7-PPアンプに問題があることになります。しっかり聴く と、大きな音と被さると小さな音が溶けて鈍ったようになる感じです。単なる歪みとは違う感じで、混変調のようでもあり、スルーレートが足りないというような感じとも何か違います。

箱入りの新品たち : 中古の管が元気なので今のところは出番なしです。

 設計に勘違いが無いか丁寧に見直しましたが、その過程で気づいたこと。位相反転は普通のP-K分割ですが、思い込みから見落としがありました。出力段の側から見た事ばかり考えていましたが、ドライブ段の側からも見直す必要がありました。12BH7Aの入力容量は大きいですが、6BL8の三極部でじゅうぶんドライブできます。ただ、この時に素でインピーダンスの低いカソード側にはそのまま入力容量を充放電する電流が流れます。この電流がワルサしている気がします。 この問題を減らすため、カソード側が無理に頑張らないように、グリッドへ直列に抵抗を入れることを考えました。

  大型で感度の高い出力管でには、安定性のためにクリッドに数kΩの抵抗を直列に入れることがあります。6BX7-PPアンプには一種のおまじないとして1.5kΩの抵抗を入れましたが、倹約設計の12BH7-PPでは入れずに直結にしていました。この違いが微妙に効いているのかもれしません。
 この抵抗を大きくすればどうでしょうか。5kΩぐらいを入れてやるとドライバがかなり楽になるはずです。直列に抵抗が入ると、出力段から見たインピーダンスは上がりますが、10kΩぐらいでも問題無いでしょう。この抵抗と出力段の入力容量でローパスフィルタになりますが、この程度ではハイ落ちというほどにはならずに済みます。直流的には誤差の程度で全然問題無いです。

 という事で、急遽ハンダごてを起動。手持ちのあった6.8kΩの抵抗を各グリッドに入れました。カソード側だけでも良いのでしょうが、そこは気分の問題です。改修は簡単に済みました。で、鳴らすとあきらかに定位感がくっきりと向上していました。低音の響きも一段豊かになった感じです。長い間、ずいぶん損してきた気がします。P-K分割の3極管アンプにはこの抵抗が有効と思われます。近いうちに、6BX7-PPアンプも手直ししようと思います。

2014年5月12日月曜日

真空管のウォームアップ

真空管の動作は熱電子によるもの。だから熱くならなきゃ動作しない。スイッチを入れて暖まるまでの時間は真空管らしいひととき。

  真空管にはウォームアップタイムというものがあります。スイッチを入れてヒーターが点灯して、カソードが暖まって電子が出る。それまでの時間がウォームアップタイム。
 オーディオアンプの場合、スイッチを入れて少し待つと、微かに音が出だして、だんだんそれが大きく聞こえだします。逆にスイッチを切ると、しだいに音が弱まってかすれて消えてゆきます。 真空管時代のテレビでは、暗い絵が出て、だんだん明るくなるとか、真ん中に小さく(あるいは細長く)絵が出て、これが画面いっぱいに拡がるとか。

注意:トランスレス用でない真空管のヒーターを直列にしてはいけません。起動時の温度のばらつきでヒーター断線の危険が増します。

 真空管式のテレビでは、(磁界で輝線が揺れるのを嫌って)トランスレスが普通でした。ヒーターは直列にして100Vで点火します。直列にするのでトランスレス用の真空管は暖まり方が規定されていました。普通のレス用は11秒となっています。正確にはヒーターの温度が上がるまでの時間で、定常動作に至る時間ではありません。

 うちのアンプの真空管たちはと見ると、12BH7Aがテレビ用です。12BH7のウォームアップタイムを調節したのが12BH7Aです。ドライバの6BL8は元々は欧州のテレビ用の管で、姉妹の4BL8や9A8はレス用です。6BM8も原型はテレビ用のレス管です(6BM8はレス用ではない)。
  6SN7-GTに対して6SN7-GTBはウォームアップタイムが規定されていますが、名前程度の違いしか無いのかもしれません。差し替えて比べてみるとどちらも大差無い時間で音が出てきます。

石アンプ : アンプ部と保護回路部

  トランジスタアンプはヒーターがありませんから、スイッチを入れるとすぐに動作を始めます。前段が安定動作する前にいきなり出力段がオンになった場合、スピーカーからボコっと音がでる事があります。逆に電源が切れた瞬間に不安定になる事もあります。アンプが大出力になるほどこの問題は深刻になります。ひとつの解決方法が「保護回路」。スイッチ・オン後しばらくたってからスピーカーをつなぎ、電源喪失時にはすみやかに切り離す。
 出力回路自体の工夫でこの働きをさせる方法もありますが、いちばん簡単確実なのは電磁リレーで物理的に切断すること。自作の石アンプでは異常動作で出力にDCが漏れるような場合も切断するようにしてあります。アンプ部はオペアンプICのμA749を使っていますが、保護回路はすべてディスクリートで作りました。まだこの頃はICを信用していなかったためです。

2014年3月27日木曜日

12BH7A PP : 真空管の寿命

真空管って消耗品と言われます。でもその寿命はかなり差があるようです。

 真空管の動作は完全に金属電極の間の物理的な物。使ううちに徐々に状態が変化します。徐々に消耗してゆき、特性が劣化してゆきます。テレビでは、偏向回路とかでは同期がかからなくなったり振幅がたりなくなったりと限界が"見える"場合もありますが、ノイズとか輝度とか我慢すればどうにかなる場合もあります。オーディオ用のは場合も、どこまで使うか判断が難しいです。
 定格内でも劣化が早い管もあればいつまでも変わらずに働く管もあります。無理な使い方でもある程度耐える管もあれば、すぐに弱る管もあります。同じ管でも使い方によってずいぶん寿命が違うようです。12BH7Aはテレビの偏向回路ではかなり無理な使い方をされていたようです。現役当時は劣化の心配がある管でしたが、どうやらかなりしんどい使い方をされていたようです。中古の管を見ると片ユニットだけへたっている物がかなりありました。

12BH7A と 6BL8 どちらもテレビと縁のある管です

 ふりかえって見ると、このアンプは20年ほど働いています。私室でBGMをかけたり、DTMのモニタとしても働き、ビデオやテレビの音声もここから出していました。休日は朝から晩まで点けっぱなしの事も多く、時には切り忘れたりも。普通の家庭のテレビよりも稼働時間の割合は多いかもしれません。ややA級に近い動作で、無信号でもけっこう発熱しています。それでも管はずいぶん長持ちしました。12BH7Aはすべてテレビなどの中古の管で、この管で3代目。6BL8は2代目。これらは新品も含めて手持ちがかなりありますから、管が無くなって使えなくなる心配は無いでしょう。

2014年2月28日金曜日

12BH7A PP : 出力トランス

しばらくぶりの電気工作。やっているうちにちょっとはカンが戻って来たようです。その調子でもうひと作業。

 しばらく前にはほとんど絶滅していた真空管アンプ関係の部品がまた作られるようになっているのはちょっと驚きでした。
 私室のヌシに収まっていた12BH7A-PPアンプは1990年代に作った物。この頃はもう小型アンプ用の出力トランスなどは絶滅していました。そこで怪しい試みをする事になりました。電源トランスは出力トランスに使えるか?? なりゆきで、1次側の中点タップを出したトランスをカットコアに巻いて貰うことになりました。実物を測ってみると、本式のオーディオ用には全然及ばないものの、ラジオ少年御用達あたりよりはマシな感じでした。そのまま無理は覚悟でアンプにしたら、案外聴きやすい物ができてしまって、そのまま長年働いて来ました。

 懸案の6CA7プッシュプルアンプ製作の流れで、2つのミニアンプを作ってしまいまいた。デザインも機能も12BH7Aのアンプと対になる物なのですが、さすがに繋ぎ替えて聴くと格差が目立ちます。SPICEも活用して動作を見直して、抵抗とコンデンサをいくつか交換して、いくらかマシになったものの、高音も低音もいまひとつ伸びが無い感じ。やはりトランスの特性が足をひっぱっている感じです。ならば、トランス交換するしかない。幸い今なら良さそうなトランスがあります。


 全体を作り替えるのではなくトランスだけ載せ替えることにしました。サイズ的にうまく載りそうな物から春日無線のトランスを選びました。イチカワの物よりひとまわり大きなコアが縦になって幅が抑えられています。定格の10Wはおそらくぎりぎりの容量と思われますが、このアンプには余裕たっぷりです。
 トランスを載せ替えて鳴らしてみると・・・やはり低音も高音もくっきりたっぷりと。このあたり、イマ風の出力トランスの作りなのでしょうか。 あれ??ちょっとキラキラしすぎ。オシロでチェックすると、やはり矩形波の角がギンギンに立ってました。元のトランスが早い所からダラダラ下がっていたのに対して、このトランスはぎりぎり高域まで頑張っているようです。そこで位相補正のコンデンサを変更したら、あっさりと綺麗に収まりました。慣らし運転のまま棚の中に居着いていた6SN7-PPアンプと交替して、昨晩はそのまましばらく私室で音楽をかけて様子見。音はずいぶん変わりましたが、適度な音量感はそのままです。

 私室の棚には12BH7アンプが戻って来たので、6SN7-PPアンプは居間に出張です。ある程度は予想したけれど、カッチリ気合いの入った音です。でも、ちょっと音を大きくしてじっくり聴くには良いけれど、気楽に聴き流す雰囲気では無いし、なによりすっきりしすぎて音量感が足りないです。日中はメインのスピーカーをだいぶ大き目の音で鳴らしていました。やはり、音量感がなんか違います。スピーカーの前では常用の6BX7-PPアンプより音が小さくきこえますが、離れると大きな音で鳴っているのに驚きます。やはりドライブ段の回路の違いと関係があるのでしょうか。

2014年1月24日金曜日

12BH7A PP : 回路を見直しました

わが家でアンプよりも変化があったのがスピーカー。スヒーカーとアンプって悩ましい関係です。

 昨日は大阪市内に出る用事があったついでに日本橋へ足を伸ばしました。抵抗数個とコンデンサ数個の買い物。交通費を加算するとけっこう高価になりますが、やはり目で見て買う方が安心です。特にコンデンサは種類が多く寸法形状も注意が要ります。

 相性というよりも資質の違いでしょう。何が相手でも無難にあしらうやつと、良いも悪いも個性を際立たせるやつと。昔はメーカー製の中型3way密閉型スピーカーを使っていました。一時期はやや小型の2way密閉型と小型の1wayバスレフを併用していて、以後は居間のスピーカーは中型3wayバスレフ、私室は小型の2wayバスレフという体制が長く続きました。どちらもAV機器である程度実績のあるメーカーの製品で、何が相手でもそれなりに無難に鳴るスピーカーです。
 居間のスピーカーに変化はありませんが、私室には箱を自作したスピーカーが加わりました。ちょっと工夫した箱で、10cmのユニット1個をやや大容量のダンプトバスレフ箱に付けた物。周波数特性はあまり平坦ではなく、インピーダンスの暴れも大きいと考えられます。音楽を選びますし、試聴位置によっても音像が変化します。いろいろ癖が悪いです。音はくっきり鮮やかですが、時には音楽ソースのあら探しのようになってしまいます。それでも慣れてしまうと、その緊張感がちょっと心地よく感じてしまったり。

 どうやら、このスピーカー。アンプにとってもずいぶん厳しいようです。アンプを繋ぎ替えると音がずいぶん違って聞こえる曲があります。トランジスタアンプが大出力化した時期の小容量バスレフ箱用の重いユニットを変則的な箱に入れた。おそらくインピーダンスの暴れに加えて逆起電力とかいろいろあるのでしょう。これが小型のモニタスピーカーでは目立たなかった欠陥を露わにしたのでしょう。そして新しい6CA7アンプから常用の12BH7Aに戻した時にこれに気づいた。
 先日の聴き比べで露見した12BH7A常用アンプの問題点。回路定数をSPICEに入れてみると、けっこう難ありの動作でした。ある程度きちんと計算した値が元でも、電圧や利得とか調整するためにあちこち増やしたり減らしたりしているうちに良くない方向にずれ込んでいたようです。昔のアマチュアの製作ではありがちな事でしたが、組んでみてそれらしく音が出たのでそれ以上は追求しませんでした。
 SPICEでのシミュレーションでは、カットアンドトライも速いです。電圧や電流を見て抵抗値をE24で加減して様子を見る。お茶を飲みながら何回か繰り返しても時間はしれています。どうやら抵抗数本とコンデンサ数個の変更でかなり改善しそうでした。そこで、今度はSPICEの検証。お告げのとおり部品を替えて音が変わるか。

 一時期のBGM用として作った物で、当初はこんなに長く活躍するとは思っていませんでした。平ラグ板の配線ですが、部品交換とか全然考えていませんでした。部品は縦横にぎっちり付いていて、その両側から配線が出てます。狭い所で邪魔な線を外したりしながら部品交換。けっこう時間がかかりました。
 で、鳴らして見ると、気になった「もっさり感」は無くなっていました。 SPICEってけっこう良く効くようです。

2014年1月19日日曜日

6CA7 PP : 慣熟運転中

しばらく鳴らして、真空管も部品もすっかり馴染んだようですが・・・

 最初は高音も低音もバラバラの印象でしたが、しばらく鳴らしているうちになんとなく落ち着いた感じになってきました。本当は定格ぐらいの音量で鳴らしてみたいのですが、狭い家では当然無理。dしかし、毎日この新しいアンプの音を聴いているのだから、こっちの耳の方が馴染んだという事もあり得ます。あらためて私室で常用している12BH7Aプッシュのアンプに繋ぎ替えました。
 やはりかなり音楽の印象が違って聞こえます。長く聴き慣れたアンプは(当時の製作意図でもあったのですが)ごく普通でぼんやり聴いてちょうど良いぐらいのの音。まったり癒し系とも言えるれど、新しいアンプの気合いの入ったの音と比べるとずいぶん「もっさり」して聞こえます。
 思いついて、先日作った6Z-P1のアンプも引っ張り出しました。意外なことに、小さな音ではいちばん貧弱な6Z-P1のアンプと大型の6CA7アンプの音が良く似ています。どちらも5極管ですが、それ以外は全然似てもにつかないアンプ。あと共通点があるとすれば、回路の設計の詰めにSPICEを使った事ぐらい。そこで、物は試しと、12BH7Aアンプのドライバ段までの回路をSPICEに入れてみることにしました。幸い6BL8のパラメータもありました。グラフを描かせて見ると、あまり良くない動作になっていました。このアンプを作ったのはもう20年以上前。その時には、前に6BX7アンプを作った時の計算書きを基に適当に値を加減した(テヌキした!)ように記憶しています。当時はまだマイコンがパソコンになったばかりの頃で、シミュレータはアマチュアが使えるようなものではありませんでした。そして、その6BX7アンプを作った70年代半ばは電卓の時代。
 アンプの設計と言っても昔はけっこういいかげんでした。アマチュアの製作では、メーカ公表の動作例そのままとか、略算式で計算したままというのが普通でした。理屈は抜きでここは○倍とか×Ωぐらいという慣習も多く、雑誌の製作記事でもそういった手法が解説されていました。入出力の容量やインピーダンスとかは都合良く忘れて、時定数はとんぶり勘定。さすがにトランジスタの時代になるとこの手は通じなくなりました。オペアンプなんて癖の悪い物も出て来て、丁寧に計算して確認しなければいけなくなりました。一時の徒花に終わりましたが、4chステレオなんてのもありました。先の6BX7アンプ製作の際には、当時の手法で真空管回路を見直そうとしました。今ならパソのSPICEで数秒もかかりませんが、計算尺(まだ関数電卓は持っていなかった)と集計用紙を使って夜な夜な計算を繰り返しました。

 という事で、居間のアンプも持って来ました。繋ぎ替えて、同様にちょっと大き目の音で鳴らし比べ。やはり設計した時代からでしょうか、帯域の取り方が狭い感じで、低音や高音の響きが少し物足りないですが、気になっいた「もっさり」感はありません。中域は新しい6CA7アンプと良く似ていますが、ボーカルの生々しさでは若干こっちが上。何事も細部まで気配りして丁寧にやらなきゃダメという事のようです。
 SPICEに入れた回路の定数をあちこち加減して、それなりにバランスの良さそうな値が求められました。計算も速いし、画面で波形を見ながら電圧配分とか考えられるのはたいへん楽です。回路はそのままで、抵抗やコンデンサをいくつか交換すればかなり改善しそうです。はたしてSPICEの効き目がどのぐらいなのか、やってみなきゃいけなくなりました。


2013年11月4日月曜日

私室の常用アンプ 12BH7A-PP

趣味ですることだから、いろいろ思案するのも楽しみのひとつ。たっぷり楽しむつもりです。

 ここしばらく、家じゅうのアンプをつなぎ替えて鳴らしてみています。それもそろそろ一巡しました。

 鳴らし比べが一巡して、常用の12BH7A-PPアンプに戻りました。回路自体は6BX7-PPアンプと似ているのですが、各部が倹約設計になっています。いちばん倹約なのが出力トランスで、特注品なのですが・・・200V:5V1Aの電源トランスにタップを出してもらったという物。普通にアンプに使えているあたり、カットコアの威力でしょうか。(その後普通の出力トランスに交換しました。)

 
 12BH7は、本来はテレビの偏向回路用です。パルス回路用として電流は取れますが、オーディオ出力用としてはプレート損失で制約されます。このあたり、テレビでも設計上の注意点だったみたいですが。定格は1ユニットあたり3.5Wですが、元々はパラでの動作を想定していないらしく、同時使用では5Wという資料もありました。これに従うならば、A級アンプの場合は片側2.5Wで設計しておく必要があり、きちんと守るとあまり出力が取れません。AB級の場合はいくらか緩和されますが、それでも合計5Wを越えないようにするとかなり辛いです。このアンプの設計はこれを越えていますが、管はずいぶん長持ちしています。昔に見たテレビセットでは1ユニットで5Wを越えるような物もありましたから、もう少しは無理が利くのかもしれません。古い時代の管と末期の管を見比べると微妙に違っていますから、定格オーバーの使用に対して真空管メーカー側が対策したのかもしれません。いずれにしろ、オーディオ出力用で使う場合は配慮が必要だと思います。


   今度の6CA7-PPアンプで使用するつもりの6CG7/6FQ7も本来はテレビ用の管です。12BH7が垂直偏向回路向きなのに対してこちらは水平偏向回路。 おそらく無理が少ないからでしょうか、この6CG7はカットオフ付近まで良く特性が揃っている事で知られていました。
 この管はA級出力用に使うと損失よりも電流で制約されてしまいます。元々の6SN7はGT管で、ある程度高い電圧で使う設計のようです。これをMT管にしたらしいすが、その際にプレート電圧の定格が低く規定されました。テレビセットではそれほど高い電圧で使う事は無いので、定格を下げたのでしょう。カソードのエミッションには余裕がある(元々パルス回路用だ!)はずなのですが、やはり出力用ではないから仕方ないです。