2014年2月28日金曜日

12BH7A PP : 出力トランス

しばらくぶりの電気工作。やっているうちにちょっとはカンが戻って来たようです。その調子でもうひと作業。

 しばらく前にはほとんど絶滅していた真空管アンプ関係の部品がまた作られるようになっているのはちょっと驚きでした。
 私室のヌシに収まっていた12BH7A-PPアンプは1990年代に作った物。この頃はもう小型アンプ用の出力トランスなどは絶滅していました。そこで怪しい試みをする事になりました。電源トランスは出力トランスに使えるか?? なりゆきで、1次側の中点タップを出したトランスをカットコアに巻いて貰うことになりました。実物を測ってみると、本式のオーディオ用には全然及ばないものの、ラジオ少年御用達あたりよりはマシな感じでした。そのまま無理は覚悟でアンプにしたら、案外聴きやすい物ができてしまって、そのまま長年働いて来ました。

 懸案の6CA7プッシュプルアンプ製作の流れで、2つのミニアンプを作ってしまいまいた。デザインも機能も12BH7Aのアンプと対になる物なのですが、さすがに繋ぎ替えて聴くと格差が目立ちます。SPICEも活用して動作を見直して、抵抗とコンデンサをいくつか交換して、いくらかマシになったものの、高音も低音もいまひとつ伸びが無い感じ。やはりトランスの特性が足をひっぱっている感じです。ならば、トランス交換するしかない。幸い今なら良さそうなトランスがあります。


 全体を作り替えるのではなくトランスだけ載せ替えることにしました。サイズ的にうまく載りそうな物から春日無線のトランスを選びました。イチカワの物よりひとまわり大きなコアが縦になって幅が抑えられています。定格の10Wはおそらくぎりぎりの容量と思われますが、このアンプには余裕たっぷりです。
 トランスを載せ替えて鳴らしてみると・・・やはり低音も高音もくっきりたっぷりと。このあたり、イマ風の出力トランスの作りなのでしょうか。 あれ??ちょっとキラキラしすぎ。オシロでチェックすると、やはり矩形波の角がギンギンに立ってました。元のトランスが早い所からダラダラ下がっていたのに対して、このトランスはぎりぎり高域まで頑張っているようです。そこで位相補正のコンデンサを変更したら、あっさりと綺麗に収まりました。慣らし運転のまま棚の中に居着いていた6SN7-PPアンプと交替して、昨晩はそのまましばらく私室で音楽をかけて様子見。音はずいぶん変わりましたが、適度な音量感はそのままです。

 私室の棚には12BH7アンプが戻って来たので、6SN7-PPアンプは居間に出張です。ある程度は予想したけれど、カッチリ気合いの入った音です。でも、ちょっと音を大きくしてじっくり聴くには良いけれど、気楽に聴き流す雰囲気では無いし、なによりすっきりしすぎて音量感が足りないです。日中はメインのスピーカーをだいぶ大き目の音で鳴らしていました。やはり、音量感がなんか違います。スピーカーの前では常用の6BX7-PPアンプより音が小さくきこえますが、離れると大きな音で鳴っているのに驚きます。やはりドライブ段の回路の違いと関係があるのでしょうか。

2014年2月24日月曜日

6BX7 Single : 電源とコンデンサ

もうひと航海する前にできる準備は少しづつやっておきましょう。

 6BX7のシングルアンプを作るつもりで、ゆっくり部品の準備です。押し入れの片付けは終わりました。修理や保守に使用しそうな物は残して、アンプか関連小物でも作るのに使えそうな物も残して、たぶん使わないような部品は思い切って廃棄処分。
 6BX7アンプに関して、必要そうな部品はひととおり拾い出しました。多少不似合いだったり過不足があっても使える物は活用するつもりで検討しました。あとは見つけた時が縁でぼちぼち揃えるつもりです。 

 ネットで見つけて通販したコンデンサが届きました。直径25mmの中から背の高さで選びました。ひと昔前なら220μなんてけっこう大きかったのですが、これはMT管よりひとまわり大きいぐらい。それでも手持ちの足(コンデンサバンド)を付けて見るとけっこういい感じに見えます。

手持ちのバンドに合う 直径25mmのコンデンサ

  6BX7のシングルアンプを作るとなると、確かめておく事があります。比較的安価な既成のトランスを使う場合、オペアンプの電源をヒーター用の6.3V巻線から作らなければなりません。半波の倍電圧整流を上下に重ねれば、±15Vぐらいが得られるはずです。原理的には問題無いはずですが、やはり先に確認。電流は小さいですが、リップルが逆相になりますから、念のため12Vの3端子レギュレータを入れます。
 
 という事で、前置アンプと合わせて基板に組みました。電源部もアンプ部も手持ちの部品をやりくりして済ませました。
  手持ちのヒータートランスを繋いで電圧を加えると、ちゃんと倍電圧の直流が出ます。そこで手持ちのオペアンプのひとつ挿して動作チェック。音声信号を入力して、出力をアンプへ入れると、ちゃんと普通の音が出ました。どうやら、このコースで進んで大丈夫そうです。

2014年2月11日火曜日

古い部品と設計の手法

長年の懸案だった6CA7プッシュプルアンプは当初の予想よりもすんなり完成しました。その課程でいろいろ振り返って考えることがありしまた。

 すんなり進んだのは、今までに身につけた知識や技術もあるけれど、大仕事と思っていろいろ検討して用心深く進めたから。まあ、その用心深さこそが経験の賜物なんだろうけど。
 いろいろ振り返って見るあいだに考えたこと。その中に微妙にし残したような物もあります。まあ、これも急ぐことではなし。時期が来たらゆっくりやればよし。


 真空管以上に無駄にたくさん残っていた古い半導体。初期にはたいへん高価だったけど、すぐに値崩れ状態になりました。真空管は数を少なくうまく使うのが工夫のしどころだったのですが、トランジスタは数個をうまく組み合わせて使うのが工夫。
 今回の6CA7プッシュプルアンプは出力管も含めて8球。双3極管を使っているので、ユニットとしては12ユニットです。これは真空管アンプとしては比較的多い方です。しかしトランジスタアンプなら、簡単な物でももっと多いのが普通。そのうえ小物とか作ると同じ物を何本も使いますから、使い易い物は多少多目に買っていたりしました。部品屋もお徳用の袋入りで売ってましたし。今回もミスなどで破損する事も見越してトランジスタ類は余分に買いました。幸いすべて無事に作動したので、余分の分はそのままストックになりました。

8本足の缶入りオペアンプ 登場時は火星人襲来のような衝撃でした

 初期には真空管に似た感じだったのが集積回路。特にオペアンプは単独の素子というよりも機能部品。○○用○○管という雰囲気。高性能の物は価格も高くて入手も難しくて、汎用の物でも安くはなかったです。それでもジャンクを解体したり特売を買ったりしてあれこれ入手して、いろいろ遊びました。709は制約が多くて使いにくかったです。301は(当時としては)高性能ですが、ひと癖ありました。741はぐっと使い易くなって値段も下がりました。この741や741の類似品はどれも比較的安定していて、オーディオ用や小物製作に気軽に使える物でした。
 初期のオペアンプの多くはこの写真のような金属のケース入りでした。セラミックのDIPに封止された物もありました。種々の機能のアナログICはプラパッケージが普通だったのですから、考えてみるとちょっと不思議です。しかしプラ封止のデジタルICが普通になると、いつまでも缶入りでは不便。だんだんオペアンプもプラ製DIPが普通になりました。 今は面実装が多くなってちびっこくふぺったんこのパッケージが多くなっています。

2014年2月9日日曜日

ハンダごてと工具

アンプ製作もひと区切り。ちょっと大き目の音で音楽を聴きながら、使った道具はお片付け。

 実際に物作りするには道具が要ります。部品は当然ですが、必要な道具を買いそろえる所からやるとなると大ごとになるでしょう。ネジ回しとかドリルとかもともと汎用の工具もありますし、ヤスリとか金ノコとかいろいろ使い道のある物もありますが、シャシーパンチとかニブラーとかけっこう専用っぽい物もあります。これら、長い間に集まった物たち。しばらくぶりの出番だったのが多いです。

今回使用した道具たち ハンダ付け関係

  実はハンダごてはけっこう持っています。さすがに子ども時代の物は残っていませんが、ここに写っている物はかなりの古参です。30Wの方は確か70年代から使っている物。なりゆきで同じ物をもう1本持っています。簡素な構造ですがすごく丈夫です。ちょっと容量の大きなハンダ付けにも使えるので重宝しています。わが家の真空管アンプのすべてと関わっています。今回のアンプたちの製作でもこれが主役を務めました。コテ台も(さすがにスポンジは何回か買い換えましたが)この頃からの物。ずいぶん長い縁です。
 このコテはトランジスタ物の製作にも活躍したのですが、さすがにICピッチのハンダ付けには大きすぎで、かわりに購入したのがもう1本の方。マイコン関係の製作をしていた頃はこちらが主役でした。朝から晩まで通電しっぱなしという事も多かったですが、ここ数年はまったく出番がありませんでした。今回の6SN7アンプの穴開き基板の作業ではひさしぶりの活躍。これも丈夫な物のようで、全然支障無く使えました。
 この他板金工作用に150Wのでっかいのが1本と少し前に閉店処分で買った60Wのが1本ありますが、これらは今回のアンプ製作には使っていません。

 ハンダ吸い取り機はこれが3本目。やはり軽くて反動が少なくて吸引量が多いのはプラスチック製。そのかわり繰り返しの力と衝撃で傷むらしく、突然パキっと折れたり。実はこれも今回の使用中にバネを掛ける部分が折れてしまいました。しかしこれから新しく買い直してもどれだけ使うか判らないので、なんとか応急修理しました。

 ラジペンとニッパーもけっこう古参です。昔はけっこう無理な使い方もしたからでしょうか、けっこう傷んで買い換えていましたが、これらは80年頃から使い続けている物。手に馴染んでいます。鉗子は3本持っています。部品の足を保持したり、狭い所で配線を整えたり、ビニル紐を括ったり。2本は電気とは無関係の工作用に買ったのですが、1本は70年代から使っている物。もちろん、電気もの以外の工作にも大活躍しています。

 ハンダは一応は消耗品なんだろうけど、けっこう長く持っています。子ども時代はもう少し太い物(1.2mm?)を使っていましたが、その小さな巻きを使い切るまでにけっこうかかりました。太すぎると感じて70年代半ばに買ったのが0.8mmの巻き。特売に釣られて1Kg巻きを買ったのですが、まだまだたくさん残っています。おそらく一生使い切れないでしょう。IC関係なら良いのですが、端子まわりとか少し太い配線には0.8mmではハンダの量が足りません。そこで買ったのが1.0mmの巻き。反省の意味で500g巻きにしましたが、やはりけっこう残っています。今回のアンプ製作では(穴開き基板の部分を除いて)これを使いましたが、ほとんど減ったように見えません。世間は鉛離れしているようですが、これだけあれば無くなって困ることは無さそう。

2014年2月7日金曜日

6SN7 PP : 試運転

最後にちゃんと接岸してタラップ下ろすまでが航海。予定よりも少し先まで進みましたが、ここで一度停泊。

 穴開き基板使うのはホントにひさしぶりです。初期の頃、オーディオ関係ではエッチングして基板作る事が多く穴開き基板は補助的な小物以外あまり使いませんでした。その後、マイクロコンピュータで遊んでいた間はけっこう使ったのですが、それもずいぶん前の事。

 しばらくぶりだから、すっかりカンが鈍っています。 基板にバランス良く見栄えよく部品を盛り付けるのも大変。部品の大きさの感覚がすっかり無くなっています。何度か微調整しました。電圧のかかる部品とか熱くなる部品とか、絶縁が気になる物とか、短いイラックスを通して基板から少し浮かせたり。
 増幅は1段ですが、カスコードで石が2個並びます。これが差動で2組あって、ステレオでその2倍。石が8個一直線に並んだ姿はちょっと奇妙です。使ったFETの足の順番で騙されるところでした。2SK362の足配置は2SK30と逆です。

 今日はハンダ付け作業。先の細いハンダこてを出して来て、ハンダも0.8mmの細い物を。マイコン関係に比べると配線の量は全然少ないです。しかし配線がなるべく交錯しないように引き回さなければなりません。特に今回はインピーダンスも高いし電圧も高い。コテ先のあて具合とハンダを供給するスピードの感覚を完全に忘れているのにびっくり。目も指先も衰えているので、細かな所に集中する気合いが持続できません。急ぐことはないので、少しづつゆっくり作業。誤配線が何より怖いですから。


 ひととおり配線したら、念のためテスタでチェック。やはり1箇所配線忘れがありました。電源部は先に組み立てて電圧が出ることは確認済みです。ここに繋いで各部の電圧チェック。なんか変。おかしな所のあたりを調べると、ハンダがちゃんと付いていない所がありました。部品が破損するような誤りでなかったのが幸い。修正して信号を入れると、ちゃんと増幅して出てくるようです。思い切って、真空管のグリッドへ繋いで、管を挿して。一応チェックして発振していない事を確かめてから、実験用のスピーカーを接続。あれ?左チャンネルだけ音が小さい?? 基板をそっと裏返して確認。ハンダのひげが接触していました。電圧のかかる所でなかったのでチェックが甘かった。

 しばらくぶりと言っても言い訳にならないです。かなり恥ずかしいミスが続発したけれど、なんとか音が出ました。 仮配線だった所をきちんと付け直して、しばらく様子見。その間に部屋を掃除して道具は片付け。特に熱くなったりする部分も無く音も正常なので、正規のスピーカーに繋ぎ替え。予想(昔に仮で試した時の印象)とは全然違う音。出力トランスが良いのでしょうか、低音がすごくゆったり響きます。高域は明るく、小さな音がくっきり聞こえます。あとしばらく鳴らしてみます。

2014年2月6日木曜日

真空管と整流回路

今回の主役の6CA7アンプ。回路上のかなめは電源です。正負あわせて3つの整流回路。

 安くて丈夫で扱い易いシリコンダイオードのおかげです。この電源部を真空管で作らなければならないとしたら、すごく面倒な事になっていたでしょう。昔の一般的なアンプは、単一の整流回路で、出力管から前へと次々電圧を下げながら供給する。あとは固定バイアス用に負の電圧を作るぐらい。
 この伝統的な回路構成は、長い間アンプ設計の標準的手法であったと思います。トランジスタ時代になっても、初期には同様の考え方の回路がけっこうありました。

 標準的なデジタルICの電圧は5Vです。初期のCPUの8080は面倒な仕様で、+5,+12,-5Vの3種類の電圧が必要でした。-5Vは電流が小さかった(1mA)ので、なんとか他の電圧から作ろうとする工夫がされました。後継の8085や機能的に上位互換のZ80は5V単一動作になったので、ロジック部の電源は5Vひとつで済むようになったのですが、周辺回路などで仕様上別の電圧が必要な部分は存在しました。その筆頭がモデムなどのシリアル通信。 RS232Cは(できれば)±12Vが欲しいです。メモリ関係はかなり後まで+12が必要な物が残っていました。これらのために電源回路を複雑にするのを避けたいので(電池で動かしたい事もありますし) +5からなんとかして作る工夫がありました。最後にはそのためのICまで登場しました。(これらがアナログ回路に使えるかは不明です。)

デュアル 倍電圧整流回路 オペアンプに良さそうです


 トランジスタと真空管のコンボを考えると電源がポイントになります。製作中の6SN7-GTアンプは差動段を下へ引くマイナスとバイアス用のプラスが要ります。これをどこから作るか。電流は数mAですから、B電源の巻線から取れますが、高い耐圧の部品が要りましすし、電圧のほとんどを無駄に捨ててしまうことになります。幸いどちらも電圧は5~10V程度あれば良いので、ひとつ余ったヒーター巻線 6.3Vを正負に半派整流して得ることにしました。π型にフィルタを入れても電圧は足ります。

 前置するフラットアンプにオペアンプを使おうとすると、このための電源が要ります。中点から吊って単一電源で済ませる手もありますが、できれば正負の電圧が欲しいです。振幅が要りますから、あまり低い電圧では困ります。
 電圧が足りなければ、倍電圧整流という手があります。真空管時代のテレビは、電源トランスを使用せず(磁界で輝線が揺れるのを避けられる)電灯線の100Vを倍電圧整流してB電圧にしていました。電源ラインが宙に浮く(ヒーターの電位が揺れる)のを嫌って片側を接地した半波倍電圧整流です。
 この回路を利用します。ヒーター巻線の6.3Vを半波倍電圧整流。これを上下に積み重ねて正負を作る。リップルが気になるのできちんとフィルターを入るとして、これなら±12Vぐらいは確保できます。(半派を上下で使うので、トランスから見ると両派になります。)

2014年2月5日水曜日

真空管と出力トランス

そろそろ季節が春になって来ました。暖かくなって、その後は暑くなる。

 しかし真夏に大型管のヒータの熱はけっこううっとおしいでが、寒い部屋では赤いヒーターの灯りの暖かさが気持ちよいです。暖房をかけた部屋で真空管アンプで音楽を聴き、春のお出かけの予定とか考えながら、引き続きパズルゲーム。

 手もちの6BM8はすべて中古です。来歴もさまざまでプッシュプルでは使いにくいです。6BM8で遊ぶことを考えました。6BM8は私が子ども時代に作っていじって遊んだもの。あらためてアンプを作ってもいいんじゃないか。3結でも良いけど、子ども時代にはULはやっていませんでした。K-NFといった知恵も無かったです。やりたくても使えるトランスがありませんでした。しかし今なら小型で良質なトランスが新品購入できます。再来した真空管人気がいつまで続くか判りません。作るなら、今でしょ?
6BM8 いろいろ

  当時の6BM8は定番の6AR5よりは高性能で立派(価格も高かった)でしたが、6BQ5とかに比べると格下扱いでした。メーカー製アンプ等にも使われていましたが、システムアンプとかレシーバーとか電蓄とかやや価格を抑えた家庭用が主でした。6BM8の元々の用途から考えれば、電圧200Vぐらいで使うのが良さそうです。軽く使って2Wぐらいの出力。できればULかK-NFにしてみたい。ほど良いトランスが見つかるか。

 トランジスタ以前の時代、アンプには出力トランスが必須でした。当時のラジオ少年の知る上物のトランスは「タムラ」を筆頭に「ラックス」「サンスイ」「タンゴ」といったところ。雑誌の作例はこれらを使っていました。SEL(菅野電機)やATOM(浅川電機)も雑誌広告に載っていました。部品屋へ行くと INSTANT(大阪高波)とか格下っぽい銘柄もありました。そして無銘のおそらくテレビか電蓄かの余剰品。子どもが小遣いで買えたのはちょっと怪しい安物だけ。

 家庭用のラジオがトランジスタになり、電蓄やステレオもトランジスタになり、最後にテレビがトランジスタになって。真空管が使われなくなればトランスも不要になります。気づけばほとんどのメーカーが(特別な高級品や大型の物を除いて) 製造を止めていました。在庫品が売り尽くされジャンク物もじきに枯渇しました。しかし、その真空管用のトランスが最近また新しく作られています。
 トランスという物自体は電源用とか需要がありますし、材料や基本的な技術は共通です。もう少し空白期間が長ければ(すでに適した機械など廃棄されたり経験ある技術者が退職された会社も多いようです。)難しかったかもしれませんが、細くて高圧のかかる線を巻く機械と技術を持った人材があれば(適切な設計が必要ですが)少量生産が可能です。

 幸い今はネット情報の時代です。量販するほどの需要は無くても、少量づつ作って通販や直販で売れば求める人はいます。6Z-P1アンプで使ったのは「春日無線変圧器」製、今度の6SN7-GTのは「(株)イチカワ」製です。このほか、「ノグチトランス」とか、「東栄変成器」とか比較的小型の出力トランスを出しています。かっては専業中堅メーカーが得意にしていた分野ですが、今は一種の隙間市場です。(もっとも、これらがいつまで続くかは判りません。)

追記:ノグチランスは2018年9月で廃業。販売は「ゼネラルトランス」で継続されていますが、この後は不透明です。

メモ : 6BM8のヒーターはグランドに落とすなら4ピン側と書かれた資料がありました。理由は書かれていませんでしたが、グリッドへの管内の配線が4ピン側に近いからでしょう。

2014年2月4日火曜日

3極管シングルアンプ

こだわりも大切だけど柔軟さも大切。思いつきを小ネタにするにはパソは便利です。

 6SN7-GTのアンプは製作途中だけど、カラクタ整理は継続中。このアンプが完成すると、3極管のプッシュプルアンプが3台になります。出力はそれぞれ2倍づつの関係ですが、どれも実用的でちゃんと聴けるアンプ(になる予定)。そうなると手薄?なのが3極管のシングルアンプ。小ネタではなくちゃんとした物を作れるかしら。

 1W程度以上のステレオアンプが目標。条件として、実用的な感度と音質。管や部品に無理をかけないこと。安定重視。手持ちで候補となる管は、12BH7Aのパラレル、6BX7を片方づつ。意表を突いて6BM8か6AQ5の3結か。
 手持ちの6BX7の中には、新品で購入した物のほか中古を買い込んだ物もあります。中古の中にはへたり具合で2ユニットの特性に違いが目立つ物があります。これらはプッシュプルのステレオアンプでは使いにくいです。片ユニットづつシングルアンプにすればこれらも活躍できるのではないかしら。という事で、またパズルゲームの始まり。

 あらためて6BX7の特性図を眺めてみました。6SN7とは対照的です。電流はドバっと流れますが、電流の少ない所ではカーブしています。このへん、12BH7Aよりも癖が悪いです。しかしたっぷり電流を流そうとするとプレート損失を越えてしまいます。このあたりも6SN7とは対照的。電圧を下げて低く寝たロードラインを引くと、出力は減りますが、歪みが減って案外いい感じになりそうです。

 200Vで27mA。負荷が7KΩぐらいで、P-P24Vほどの入力で出力は0.7Wぐらいでしょうか。これは8ΩでP-P6.6Vぐらい。電圧利得は0.27ほどです。出力重視だと、250Vで負荷が5KΩ。入力約30Vで出力が約1.1W。8ΩでP-P8.3Vで利得はやはり0.27ぐらいでしょう。やはり感度が低いです。ほど良くNFをかけて仕上がりを16倍ほどにするにはドライバ段の裸利得が200倍ほど必要です。3極管の1段では無理。一方、6BX7は入力容量の大きな3極管。高インピーダンスでは苦しいです。
Dual Operational Amplifiers / 2回路入りオペアンプたち

 これはパズルです。とりあえず難しい条件をひとつ外してみます。メインアンプの感度が足りなければ前のアンプが頑張れば良いのです。真空管全盛の頃のメインアンプには感度が低い物もありました。それを補うためかプリアンプの最大出力も高く設計されていた気がします。居間で常用している真空管プリには、NF量を減らしてゲインを+6dBするスイッ チを付けてあります。1つの増幅回路ではなく、ゲインが低いパワーアンプとゲインのあるフラットアンプの2つに分けて考えます。

 パワーアンプはシンプルな真空管アンプ。これをフルスイングするには±3Vほどの入力が必要です。この程度なら汎用のオペアンプでも簡単です。この方式は案外うまく行くんじゃないかしら。

2014年2月2日日曜日

6SN7 PP : 製作中 真空管まわり

主要部品が揃ったので、そのまま前進します。

[製作した6SN7-PPアンプの詳細]

 少し前に作った6Z-P1アンプも半導体をドライバ段に使ったハイブリッド構成でしたが、これは6CA7アンプの習作の意味もありましたから、平ラグ板に部品を盛り付けました。今回は部品点数が多くなり、正負の電源が入り組みます。シャシー内も狭いです。コンパクトにまとめるにはやはりプリント基板がBEST。私の電子工作の復習という意味ではこれも良さそう。

 という事でエッチング基板も考えましたが、あらためてやるとなると液やらいろいろ買わなきゃいけないので、ぐっと後退して穴開き基板を使うことにしました。デジタル時代にはけっこう使いましたが、この場合はせいぜい12Vぐらいの電圧。今度はその10倍以上で、回路のインピーダンスも高いです。この点、ちょっと不安はあります。

 6SN7をプッシュプルで使って約1.2Wの出力です。8Ωで3.1Vだから、P-Pでは約8.6Vになります。入力が約22V(P-P) だから ゲインは0.4倍。仕上がりゲインを18倍とすると、ドライブ段のゲインは約45倍。NFを12dBとすると200倍近いゲインが必要です。2SK362のgmは真空管に比べるとかなり高いので、負荷抵抗をあまり大きくしなくても必要なゲインが得られます。ゲインが200倍ぐらいになるように調節すると82kΩで済みます。カスコードは等値的な内部抵抗が高いですから、負荷抵抗を低くできるのは好都合です。次が3極管なので入力容量が大きいためハイ落ちが懸念されますが、(SPICEで見ると)この程度ならそれほど酷くならずに済みそうです。
 トランジスタ回路部分はあとまわしにして、調子が出ているうちに真空管アンプ工作の部分をやってしまうことにしました。今回は使い残しや外し物やジャンク部品もなるべく活用するつもりです。電源トランスのほか、真空管ソケット、スイッチ、ヘッドホンジャック・・・・ ネジはすべて買い置きでまかなえます。配線も使い残しをやりくりします。アルミシャシーに穴を開けて、いろいろネジ止めして、ビニル線を引き回して。電源部は平ラグ板に盛り付けました。出力管のカソードまわりはソケットに直付けです。
 ドライバ段の基板は出力トランスの下に置きます。この部分に1tのアルミ板(残材)でシールドを設けました。基板はこの上にビス留めします。こうしておけば、将来的にドライバ回路を別の物に作り替えることがあっても対応しやすくなります。

 ここまでできれば、あとは小さいハンダごてに持ち替えての作業です。さて、穴開き基板でアナログ物の作業は何年ぶりかしら。