2019年8月8日木曜日

12G-B3/B7 シングルアンプ 完成

子ども時代に廃品のテレビの中でよく見掛けた管。縁あってこれでオーディオアンプを作ることになりました。長年の電気系工作の締めくくりにふさわしい物になりました。

 ゲルマラジオから始まって、真空管でラジオを作り、アンプに作り替え。それからトランジスタに移り、オペアンプに至る。デジタルの横道に逸れて、そのまましばらくマイコン関係に引きずり回される。それが一段落して、ふたたび真空管でアンプを作ることに。

 手持ち部品を浚って、足りない物を拾い出して日本橋をひと巡り。漏れなく揃えたはずなのに、やはり勘違いがありました。通販という手もあるけど、送料も要るし時間もかかる。 それで今日は日本橋の部品屋へ。交通費がかかって高価な抵抗器になりました。それを取り付けて、あらためて試運転。

 子ども時代には、それこそ最初のゲルマラジオのダイオードからして、廃棄テレビを解体して入手したもの。当時は神戸の片隅に住んでいました。神戸市内に電子部品を扱う店がいくつかありました。しかしそこまで行くのは時間も交通費もかかります。大物はまとめて買うけれど、実験と称してあちこち改造して遊ぶには抵抗やコンデンサがいろいろ要ります。いちばん手軽にこれらを入手する方法が廃品テレビなどの解体。倹約にもなります。しかし、当時はテレビの中の真空管を使おうと思うことはありませんでした。それがぐるっと1周回って風変りなアンプになりました。

外観を整えました。12G-B7を挿してみました。
  振り返れば、真空管とトランジスタの比較論争がありました。そこから派生してOTLからOCLを経てDCアンプとか広帯域という方向も。まだモノラル派が生き残っている中で4チャンネルステレオという物も現れました。そうなると、周波数特性と歪率だけで済ませていたのが、位相特性や混変調も考えなければならなくなる。その折々に過去の亡霊のように現れた『3極管vs5極管』の論争。それはその後の縦型FETやMOSFETの時にも。

 縁でやって来た12G-B7。そこから始まった今回のアンプ製作。結局、3結でシングルアンプになりました。3極管のシングルアンプは 6BX7を片方づつ使ったのがあります。規模的には大差無い物で、設計の基本方針も同じです。使った抵抗やコンデンサはどちらも普通のトランジスタ用。出力トランスも最近の普通クラスの製品。でも、出て来た音は全然違う傾向。どちらが良いとかではなく、それぞれ好みか気分という微妙な違い。

 試運転のあとは、完熟運転。その合間にwebページ用の写真撮影。入手した管は12G-B3と12G-B7で、メーカーはいろいろ。念のため差し替えてチェックします。

2019年8月7日水曜日

12G-B3/B7 シングルアンプ 製作ほぼ完了

子ども時代よく見掛けたテレビの水平偏向出力管。これでオーディオアンプを作る。子ども時代には考えもしなかった事。

 けっこう見掛けたけれど使う事など全然考えなかった水平出力管。やはり子ども時代に手を出さなくて良かったです。

 水平偏向管はテレビの中で最大の真空管。プレートキャップまで含めると6CA7より背が高いです。これを10mm下げて取り付けましたが、それでもけっこうな背丈。これが12G-B7になると太さも半端じゃない。使用したトランスも他より大柄なので、ずいぶん存在感のある物になりました。

動作試験中 日立製12G-B3を挿してます

 昨日でシャシーに取り付ける部品は全部付いて、そのあたりの配線もすべて終わってました。そのかわり残ってたのがドライバの基板まわり。
 私室用の小型アンプはドライバ回路が半導体の物がいくつもあります。管を載せるスペース的な事もありますが、発熱低減には効果的です。当然、管が大きくて発熱も多いこのアンプのドライバは半導体。低い電圧で振幅とゲインが必要ですから、真空管で作ろうとするとなかなか難しそうです。
 トランジスタ回路としては簡単な物ですが、ラグ板に架空配線は難しそうです。やはり穴開き基板に盛りつけるのが妥当でしょう。ガラスエポキシのスルーホール基板なんて物もかなり安く買えるようになりましたから。

ドライバ部が基板に載っているので中はすっきりしています。(NF関係が未配線です)

  基板に取り付ける部品はすべてトランジスタ用。このあたりは、パソ関係も含めてあれこれ作って慣れた工作。手もとに使い残った部品をなるべく使うようにしました。電解コンはすべて新しい物ですが、フィルム系コンデンサは使い残りが多いです。結合コンデンサは2個並列にしています。FETは以前に袋買いした残り。トランジスタは6Z-P1シングルの時に念のため余分に買った残り。
 不足部品を買いに行く直前に定数を見直した関係で、 使えると思っていて見間違っていたのがありました。幸いというか、NF用の抵抗なので、とりあえずここは後で取り付けることにして空けてあります。明日でも買いに行く時間が取れるでしょうか。

  という次第で、負帰還無しの状態で、ひととおり動作チェックと音出し。電源電圧が予定より少し低かった事と、出力管の電流が特性図より少し小さいことで、出力管の損失は約7Wになりました。それ以外は想定の範囲内。
 負帰還無しのまま、しばらく音出しを続けました。真空管やシャシーの温度も熱くて困るほどではありません。最初は何ともバランスの悪い音でしたが、1時間ほど経つとけっこう普通の音になりました。裸のシングルアンプとしては意外なほど、低音もしっかり鳴りますし高音も透明感があります。有名な2A3の音は覚えてませんが、12G-B3の3結はけっこうイケるのかも。

 このまましばらく鳴らして、(正規にNFをかけて)外観を仕上げれば完成です。

2019年8月6日火曜日

12G-B3/B7 シングルアンプ 製作途中

子ども時代、身近にあったのに使う事なんて全然考えなかった管。これでアンプを作ろうとしてるけど、意外と手強い。

 聴き比べるつもりで私室用のアンプに仕立ててます。当然同じシャシーの上に同じような部品配置。しかし、少しの違いの積み重なりが案外手強い状態になりました。

シャシーに付く部品はひととおり全部載りました。


 真空管が大きいです。プレートキャップが付きますから、その配線も要ります。特に12G-B7はベースも普通のGT管より大きいです。発熱の大きな管なので通気も考えなければなりません。バイアスが深くて電流が大きいですから、カソード抵抗の発熱も大きくなります。電源のフィルタの抵抗も発熱します。既製品で使える物を選んだ関係で、電源トランスはかなり大柄です。出力トランスも大きいです。 あれこれやりくりして、何とかぎりぎりぴっちり納まった感じです。

発熱の大きな抵抗はタイトラグを介して取り付けています。

 狭い部分があるので、部品を取り付けは順番を考えてしなければなりません。後から付けにくい線は先にハンダ付けしておきます。今までにいくつか製作した際の失敗を振り返りながら少しづつ進めますが、やはり何箇所か手戻りが出ます。位置修正が必要な箇所もありました。

 それでも一応シャシーに付く部品は全部付きました。出力管まわりは、すべてサプパネルに載ってます。出力トランスの引き出し線の余りはシールド板の下で処理できています。2次側の線はタイトラグで中継して、ヘッドホンジャックからスピーカー端子へと、このあたりは他のアンプと共通の処理です。電源まわりは、結局1枚のタイトラグに載せるようにしました。

 あとは、ドライバ部の基板を作って、シールド板の上に取り付けるだけ。

2019年8月2日金曜日

12G-B3/B7 シングルアンプ 製作開始

子ども時代、身近にあったのに使おうなんて全然考えなかった管。今ごろになってそれでアンプを作るという。

 考えてみれば、長年の電気系工作の締めくくりにふさわしいのかもしれません。急ぐ事はありませんから、あれこれ振り返りながら少しづつ作ります。なんとなく勢いであれこれ作って来た私室用小型アンプもこれで打ち止めですから、それぞれの製作の際の工夫も盛り込みます。

 私室用の小型アンプはすべて最初に作った12BH7A-PPで使ったのと同じシャシーに載せています。前面と背面の配置も同じに揃えています。このアンプもそれにならいます。
 12BH7A-PPを製作する際には、なるべく小型化する意図で部品が載るぎりぎりの大きさのシャシーを選びました。その後製作した物は、部品が小型であったり回路の一部に半導体を使ったりで、このシャシーで余裕がありました。今回製作する 12G-B3/B7アンプもドライバは半導体ですが、管自体が大きくトランスも大きいのでシャシー上は窮屈です。そして真空管の発熱も大きいので、その配慮も要ります。

 シャシーにグラフ用紙を貼って、部品とネジを書き込んで位置を調整しました。前面はあとで文字を印刷した透明ビニルを貼りますから、その原稿を紙に印刷して貼り付けました。 

部品を載せて干渉が無いか位置を再確認します

 重量バランスの点では良くないですが、6Z-P1シングルの経験から管の見栄えを考えて『真空管を前に並べて後ろに出力トランスを置く』配置を考えました。並べてみると、横幅にぎりぎり収まりました。
 この真空管は発熱が大きいですから、管壁が熱くなりすぎないように通気を確保します。そのために、サブパネルを使用して真空管を1段下げて取り付けます。これは背の高い6BM8の見栄えを改善するために使った手法で、6AQ5シングルアンプでは熱対策として使用しました。6BM8はMT管なのでGT管用の30φの穴で済んだのですが、今度使う12G-B7はベースが太いですからだいぶ大きな穴が要ります。左側の真空管は出力トランスの中心より少し右にずれていますが、これはサブパネルがヘッドホンジャックと干渉しないようにするためです。
 電源のケミコンには基板付け用のコンデンサを使います。入手の点から太短い物になったので、廃品のブロックコンの中身を抜いて2個重ねて入れます。つまり昔風の2個入りコンデンサと同じ感じで、電源トランスの前に1個だけ立つ形になります。


穴開け加工したシャシー

 課題は真空管を沈めるための大きな丸穴をどうやって開けるか。このシャシーはアルミが薄いので、力のかかる加工だと歪む心配があります。結局、電動の糸ノコを使うことにしました。そのため、この部分は内側にも位置を書いた紙を貼りました。その流れで、電源トランスの角穴も電動の糸ノコで切りました。ブロックコンの穴は30φで済むのでここはシャシーパンチを使いました。あとは、普通にドリルとヤスリの作業。

 穴開けが済んだら水洗いして、ステンレスたわしでヘアライン状に仕上げ。これは加工時のキズを隠すだけでなく、使用中のキズや汚れが目立ちにくくなる効果もあります。


 次はサブバネルの加工。それから電源まわり?それともドライバ回路の基板か?