2013年12月29日日曜日

6CA7 PP : シャシーを加工しました

シャシー加工を完了。次は内部の配線を少しづつ進めます。

 使うのは解体品のMQ-60のシャシーです。 真空管の穴は開いてます。トランスの位置は変えられませんが、ネジ穴は開け直しです。余地にうまく嵌るように微調整。プロックコンの1本とチョークコイルの位置を置き換えて、コンデンサの置き場所を確保し、チョークを出力トランスから離します。
 このシャシーは鉄板の箱の上に厚いアルミの板が載ってます。トランスなどの取り付けネジで供締めで固定される構造です。あまり物のボルトナットで固定して重ねた状態で穴開け加工。元のMQ-60はシャーシー上面にはほとんどネジが出ない構造です。これはそのまま引き継いで、元のラグ板の止めネジや真空管ソケットのネジなど使ってラグ板を固定する予定です。

部品を載せてみました ブロックコンが1本欠けてます

 穴加工が済んだので、部品を載せてみました。ブロックコンデンサは、元のMQ60の物を代用したので1本足りていません。電源トランスの背が高いです。チョークコイルはこの後ろ側に隠れています。
 ネジ穴位置の確認のつもりでネジを締めようとして、電源トランスのネジに問題があることが判明。アルミのバネルが厚いので、鉄板と合わせると 長さが足りないのです。もう5mm長いネジを使っておいて欲しかったです。年明けにネジ屋に買い出しに行かなきゃ。あ、ラグ板とかも買わなきゃ足りない。

2013年12月25日水曜日

6Z-P1 Single : 作り直しました

ハラハラドキドキというのは未熟な証拠。でもトキメキが無いと面白くありません。

 先日から進めて来た 6Z-P1アンプの作り直し。大目標6CA7プッシュ製作の前の練習試合のような意味もあります。何度かやって慣れているはずでも、しばらくやってないとすっかり忘れていることもあります。余所での経験が役立ちそうなも箇所もあります。そしてまったく新しい工夫を試すことも大切です。

 平ラグ板の使い方の工夫は、もう少し改良が必要ですが、簡単にCRの値を変更したり追加できる(後述)利点がみとめられました。抵抗のまわりを整頓できるので、被覆の耐圧の心配が軽減されます。
半導体カスコードの初段は予想以上にすんなり機能しました。音も問題無いです。
 シャーシー加工と部品配置は、中途半端に余裕があるので甘く考えてしまって、まったく検討不足でした。部品が干渉してしまい穴を開け直したので、余分なネジ穴ができてしまいました。
 配線は使い慣れたビニル被覆の単線を使いました。耐圧の点で、細い物と太い物を使い分けました。高圧のかかる所は被覆が厚い方が使用中の黒ずみが少ないです。配線後系統別に束ねてビニル紐でくくるのはいつもと同じ処理です。

ひとまず完成という状態


 ひととおり完成したあと、しばらく音出ししましたが、音楽ソースによって高音が妙にキラキラ響いて聴こえました。方形波を入れてオシロで見ると、無帰還でも角がとんがって見えます。おそらく出力トランスの高域に暴れがあり、ドライブ段は無駄に高域が伸びているのと合わせて入力の高調波が悪さしているのでしょう。

後日談:高域の暴れの原因は出力トランス2次側の引き出し線からの電界の漏洩でした。シールド取り付けで解決しました。

 安定増強のおまじないにトランスの2次側にCRを入れて、ドライブ段の負荷抵抗にCRを抱かせて高域を制限。どちらが効いたのか、すんなり聞きやすい音になりました。高域が落ち着くと中域がしっかり聴こえてきます。そのままNFをかけても安定しています。中低域が少しだぶついた感じがしますが、低音もちゃんと鳴っています。私室のヌシの12BH7プッシュのアンプとは微妙に違う雰囲気ですが、非力な5極管のシングルとは思えない音。出力が半分ぐらいだけど発熱も半分ぐらい。夏場には良いかもしれません。このまましばらく鳴らしてみるつもりです。

 

2013年12月23日月曜日

6Z-P1 Single : 作り直しています

なにごとも予習と復習が大切と言いますが、その間に挟まるフィードバックが最大のポイント。
 

  一応部品も揃ったので、6Z-P1シングルアンプの組み立て。まずは腕慣らしと新しい試みの検証という事です。

 SPICEを使うと各部の電流と電圧を簡単にグラフ化して比較できます。交流を入れれば山と谷の関係が一目瞭然。抵抗値を変えて良さそうな動作に落とし込むのも簡単。昔風のカットアンドトライですが、ハンダこては不要で費用は全然かかりません。なんとなくそれらしい回路が出来てしまった感じですが、使った部品のモデルがおおざっぱですから、実際に組んでみるとどうなるか。

  新規購入した出力トランスは春日のKA-1220です。電源トランスは中古ですが、サンスイ製です。目標の6CA7アンプは出力トランスがサンスイで電源トランスが春日ですから、ちょうど逆の関係となりました。
 シャーシー加工なんて何年ぶりかしら。薄いアルミ板なので加工自体は楽です。部品配置で見落としがあって、ネジ穴を開け直す事になり、余分な穴が開いてしまいました。それ以外は何とかできました。前面と背面のレイアウトは、現用の12BH7Aプッシュのアンプと揃えました。うまく出来たら、時々交替で使おうという目論見です。
 新しい試みのひとつが平ラグ板の使い方。組み立て後の部品の交換が予想されますから、ラグの穴を配線に使ってCRはラグ片の方に付けます。タイトラグの使い方に近い感じです。

まずは各部の電圧を測定

  まずは管無しで電源ON。手早く電源部をチェック。次は管を差して、あちこち電圧チェック。この段階がいちばん緊張します。しかしSGが予定よりも少し高目ぐらいで、あとはすべて予定の範囲内。いちばん心配だった半導体カスコードのドライブ段もSPICEが出した電圧とほぼ同じ。面白いです。
 入力に信号を入れて見ると、出力に電圧が出ます。増幅もしています。実験用の小スピーカーを付けて、音声信号を入れてみると・・・すんなりと鳴ってしまいました。低音も案外ちゃんと出ています。
 そこで出力トランス2次側を配線してNFをかけて・・・NFは12dBぐらいかかっているはずなのですが、特に異常発振も無いようです。ノイズもハムも無し。音声信号を入れてしばらく様子見。

 どうも高音が変です。妙にキラキラキンキンと。発振しかかり? NFの抵抗を外すと、かなり軽くなりますが、やはりキンキンと。我慢してしばらく鳴らしてみても変化なし。どうやら出力トランスの高域に暴れがあるようです。これと半導体のドライブ段が高域まで伸びすぎているのが重なってワルサしているのでしょう。
 NF抵抗に小コンデンサを抱かせてみましたが、(裸でも暴れているのだから当然)あまり改善せず。高域のゲイン自体を減らす必要があります。手持ちの部品にはちょうど良い物が無いので、また買い出しです。

後日談:出力トランス2次側の引き出し線からの電界の漏洩がドライバ段の回路に干渉していました。シールド取り付けで解決しました。

2013年12月21日土曜日

6Z-P1 Single : 作り直します

走り出す前にはウォーミングアップが大切。思い切って6Z-P1のシングルアンプを作り直すことにしました。

 探すと12KΩのトランスを作っている所がありしまた。買い忘れていたチョークコイルと合わせて、これを購入しました。黒色塗装のカバー付きの立派な姿ですが、ずいぶん小さいです。定格3Wは、おそらくぎりぎりの3Wでしょう。それでも、今付いているトランスよりはだいぶ大きいです。
 トランスだけ交換では面白くありません。本来の目的の6CA7アンプ作りに向けてのウォーミングアップという意味で、回路部分も作り直すことにしました。SPICEで設計した回路の検証も兼ねています。

6Z-P1 Single 作り直し 新規購入した部品

 小信号用の抵抗は安いです。中にははずして再利用できる物もありますが、手間と信頼性を考えて新しく買い直すことにしました。電気店の現状把握も兼ねて、日本橋へ。
 電気の街といっても、元々日本橋は家電が中心で部品専門店は少なかったです。元々の店の生き残りと後から来た店と合わせて、一般的な部品小売りの店は現在は4店。かなり得手不得手があり、微妙に価格差があります。部品メーカーの消長もあって、在庫限りということでしょうか、値によって欠品があったり。
 メーカーの消長という点で感慨深いのは半導体。汎用のトランジスタなどごっそり廃品種になっていて、真空管時代の終わりの頃を思わせる状態。 どこも在庫の品種が少なくなっていて、価格差も大きいです。お馴染みの2SK30はまだ在庫がありました。しかし高耐圧のトランジスタは見事に消滅している感じ。探して見つけた物は、2SC2621。テレビのクロマアンプ用で、製造した三洋はテレビ製造でも知られた会社ですが、メーカー自体すでに消滅しています。
 元のアンプ自体、作ったままほとんど使っていなかったので、大半の部品は綺麗なままです。電源トランス(これは中古)など、大物の部品はそのまま転用します。シャーシーは、私室で現用のアンプと揃えて、薄いアルミシャーシー(通称弁当箱)にします。まずは初歩のラジオ工作です。

2013年12月12日木曜日

6CA7 PP : ドライバ段の設計 SPICEで

物は試しとSPICEを入れたので、ついつい遊んでしまいました。

 シミュレーターを使うにはパーツのデータが必要です。基本的な抵抗やコンデンサは入っていますから、微妙な特性が影響するような動作でなければ、ある程度の受動回路は組めます。汎用のロジック部品なども入ってますが、困るのはトランジスタなどの能動部品。先のシミュレートの際には、ネットで探して必要なデータを入手できました。ついでに探すと、主な真空管のデータもありました。うまく働くでしょうか。という事で、真空管の回路を描いてみました。トランスのデータが無いので、ドライブ段のみのですが、おおまかな電圧配分と振幅やゲインを確認できるでしょう。

2段差動 ドライブ部の検討
  初段と2段目は直流的に分離しているので、それぞれ別々に定数をいじれます。シミュレータでは異常動作しても危険は無いので、抵抗の値を少し変えて動作のバランスを崩してみるとか。
 まず、先の計算値をそのまま入れて走らせてみます。一度目は見事に異常動作しましたが・・・配線ミスでした。繋ぎ直すと、ちゃんと出力が出て来ました。
 6FQ7の2段目は、ほぼ予定どおり動作になりました。実用上ばらつきの程度でしょう。かなり謎だった1段目は 、シミュレーターでは予定とちょっと違う動作点になりましたが、だいたいマージンの内に入っていて問題無い程度。この段はゲインが高目に出て、トータルでは300倍ぐらいのゲインになりました。振幅にも余裕があります。仕上がりゲインをちょっと高目にしても20dBぐらい負帰還がかけられそうです。真空管には2~3割のばらつきがあります。実際に組んでみるとどうなるか判りませんが、けっこういい具合に進んでいるのではないかしら。

2013年12月10日火曜日

6Z-P1 Single : 回路を再検討してみる

わが家のアンプの利得について、あらためて計算してみました。

 アンプの入力の基準は、どのぐらいが良いのでしょうか。入力レベル0dBで最大出力という考え方もあります。しかしアンプの出力の大小でゲインが違うと、使うアンプによって入力ソース側のボリウムの加減が違ってきます。

 私室で使っているアンプ控えの石アンプと普段居間で使っているアンプ。出力は違いますが、つなぎ替えて使ってもボリウムの位置はほぼ同じです。これは、最初に作った居間のアンプに仕上がりゲインを揃えてあるからです。で、最初に作った時の基準になったのが・・・当時使っていた某メーカー製のアンプ。最初はこれとつなぎ替えて遊んでいたので。
 16Ωで約24倍、8オームで約15倍のゲイン。あらためて計算して見ると、0.7Vで約20Wの出力になります。思い起こせば、たしか元のアンプは20Wだったような。今度のアンプは出力30Wですが、仕上がりゲインをどうするか、ちょっと悩ましいです。

 大出力のアンプは、当然それだけの振幅を得るのに必要なドライブ段を持っています。 逆に苦しくなるのは小出力のアンプ。規模に見合った簡単な回路では裸ゲインがあまり高く取れず、しっかりゲインを稼ごうとするとドライブ段が不釣り合いに大げさになってしまいます。お遊びで作った12BH7Aシングルアンプは10倍ほどのゲインになっていました。12AX7の1段ですから、NFをかける余地を確保するために低く設定したようです。

FETと高耐圧トランジスタをカスコード接続 = 5極管モドキ

で、先日の6ZP-1シングルアンプ。これも仕上がりゲインが低目に設定されています。

 6Z-P1は5極管としては感度が低いです。入力は6V6と大差無いのですが、得られる出力は1/4。ゲインは半分しかありませんから、全体で同じ裸ゲインにするにはドライブ段が2倍頑張らなきゃいけない事になります。前段に12AX7を使ったとしてもNF掛けて仕上がりゲイン15倍は難しいでしょう。2段にするか高増幅率の5極管を使うか、いずれにしても6Z-P1には不似合いっぽい。
 このアンプは真空管のかわりにFETの2SK30Aを使いましたが、ゲインが全然足りなくて仕上がりゲインを抑えてもNFが3dBしかかかってませんでした。定数を微妙に見直してゲインを上げてNFを10dBほどに増やしてみましたが、どう考えてもこれが限界。ゲインを稼ぎつつP-Pで20Vの出力を得ようとすると、電圧が足りません。しかし2SK30Aは高耐圧といっても50V。この点では真空管には全然及びません。古い資料を見ているうちに思い出したカスコード接続。FETの上に高耐圧のトランジスタを積めば高い電圧で使えます。うまくやれば、B電圧でそのままドライブできるのではないかしら。

 という事で、フリーのSPICEソフトを利用して検討してみることにしました。上のトランジスタのバイアスは、電流がほとんど流れないので出力管のカソードから取ることを考えました。回路は簡単です。普通の5極管を使った場合と同じぐらいの定数を入れて走らせてみると、なんとなくいい感じの動作になります。裸で40倍ぐらいのゲインが得られますから、仕上がりを16倍にしてもほど良いぐらいのNFがかかります。振幅もじゅうぶん余裕があって、6AU6あたりよりも使い易そう。
 そうなるとあとはトランジスタ探し。300Vぐらいで1Wぐらいのトランジスタって、けっこういろいろ出回っていた印象なのですが・・・検索してみると、すでにほとんど絶滅状態のようです。 このクラスのトランジスタの代表的な用途はと考えると・・・テレビの映像回路。テレビの回路がだんだんソリッドステート化されて最後に残ったのがブラウン管。ブラウン管も真空管ですが、それもついに液晶になって消滅。そしてその相方となっていたトランジスタも供に消えて行こうとしている感じです。まだ店頭在庫はあるかしら。電気屋街へ行ったら探して見なきゃ。

2013年11月30日土曜日

6CA7 PP : 電源トランスが届きました

注文していた電源トランスが届きました。あとは少しづつ慎重に進むだけです。

 予想よりちょっびり早く届きました。ネジ穴を開け直さなきゃいけませんが、とりあえずそのままシャシーに載せてみました。底面積の割に高さがあります。背の高い真空管と似合いそうです。うまく組み上がったらスマートな姿になるでしょうけど、部品の配置に全然余裕がありません。静電シールドを付けてもらったのですが、初段管と近いのが心配です。

春日無線変圧器 O-BS700型
電源トランスばかり気にしていたのですが、チョークコイルの事をすっかり忘れていました。外観の良い物はたいへん高価です、ネット情報をひととおり浚えると、使えそうなチョークが電源トランスと同じ所から出ているのを見つけました。バンドカバー型で小型で低価格で無理なく載る大きさ。インダクタンスはもう少し欲しいけど電流には余裕があります。一緒に送ってもらえば送料の分安く付いたのですが。まあ、ブロックコンデンサとか日本橋で調達しきれなければ、秋葉原へ遠征しなきゃいけなくなるかもしれませんし。

 真空管アンプ用のトランス類は一時期ほぼ絶滅していたのですが、最近はポチポチ作られているようです。この6CA7のアンプが完成したら、手持ちの真空管で何か作って遊ぶのも良さそう。6BM8と6AQ5がまとまった本数あります。

2013年11月24日日曜日

6Z-P1 Single : 昔作った物を見直す 2

金曜日は日本橋を偵察に。噂によるとかなり「めいど」に浸食されているらしいですから、土日は避けた方が良さそうという判断。

 アンプはもちろん電気系の製作から完全に遠ざかっています。大阪で必要な物が入手可能か、どんな物がどのぐらいの値段なのか、だいいち、部品屋が健在なのかも判りません。まあ、普通の抵抗はあるだろうけど、高耐圧のコンデンサとか、最近はどんな物があるのか下調べしておかないと。ラグ板とか端子台とか、価格とか入手性とかによって、筐体内の配線の引き回しとか考えなければなりません。

古い6Z-P1 綺麗なグローが出ている管もあります
  で、部品屋をまわりながら、どのみち必要になりそうな物から調達。ラグ板とかシャシーにあてがって配置とか考えたいですから、試しにいくつか購入。電子回路も今はデジが主流で、基板もスルーホール実装から面実装へ。受動部品も小さくなってチップ部品が増えています。それでも普通の抵抗器はちゃんと揃うようです。数ワットぐらいの酸化金属抵抗も入手可能。コンデンサは、しばらく見ない間に種類がずいぶん変わっています。やはり耐圧の高い物は少ないですが、探せばなんとかなりそうです。
 ついでに、先日チェックした6Z-P1シングルアンプを手直しするための部品を調達。手直しといっても、一部の抵抗を交換して初段のゲインを上げてみるという程度。真空管より耐圧が低いので、電源電圧を上げる技が使えません。FETを別品種に交換すれば良いのでしょうけど、最近の品種は全然判らないので。
 裸ゲインをいくらか上げられたので、3dBほどしかかかっていなかったNFが10dBほどになりました。試聴すると、すっかり音色の感じが違っています。中域はずいぶん聞きやすくなりましたが、低音が全然出ていないし、音色も変。やはり出力トランスがへろへろなのが効いているようです。中高域が改善した分、アラが丸見えになったのでしょう。
 試しにあり物で適当に作った植木鉢スピーカーにつなぎ替えて見ると、 意外とそれらしく聞こえるのが不思議。元々低音は出なくて高域も全然伸びていない安物ラジオ並のスピーカー。うまく誤魔化されてしまうのでしょう。やはりトランス交換でしょうか。そうなるとシャシーも替えなきゃならないです。悩ましいです。

2013年11月22日金曜日

6CA7 PP : ドライバ部の利得

そろそろ部品の調達にかかります。しばらく部品屋から遠ざかってましたから、どんな物がどんな値段なのか調べながらです。

 回路の構成はすでに決まってますが、定数を拾ってなかった部分がありました。初段のまわりを再確認。
 初段の管には12AT7を考えています。ゲイン優先だと12AX7なんだろうけど、2段目である程度稼げますし、ここであまり高ろうとするとミラー効果の影響が大きくなりますから。
 12AT7はECC81の番号を持つ欧州系の管。本来は高周波用で、続番のECC82/12AU7、ECC83/12AX7に比べるとオーディオ用ではマイナーな存在。抵抗結合で音声増幅のデータは少ないです。浅いバイアスである程度電流を流して使う事を想定しているような感じの特性です。真空管のバラツキは2~3割ぐらいありますから、余裕見ておく必要もあります。ある程度詰めて組んだ上で、実測値を見て修正することになるでしょう。

6Z-P1シングルアンプ 実測して動作を確認中
 初段も差動アンプですが、負帰還も含めて見るとコモンモードでの使用になります。2段目とはC結合しますからプレート電圧の縛りはありません。μが60なので、プレート負荷を2倍弱の100kΩにして見ます。電源電圧は前段の220Vから1割ほど抵抗で落として200V供給するとして、プレート電流1.2mAほど。カソードが-1.4Vぐらい。入力がP-Pで1.5Vで出力がP-Pで80Vほどだからゲインは30倍ぐらい。差動で見ると半分になって15倍ぐらい。出力が10VP-Pになる入力は0.67Vで、この分はカソードが揺れます。この時のプレートの引き残りは75Vで支障無し。カソードを-100Vから引くとして、共通の抵抗が42KΩぐらい。けっこう良い値ではないかしら。
 全体のゲインを見ると、15×12×1.5で270倍。仕上がりが26倍の予定ですから、ちょうど良い感じです。

2013年11月21日木曜日

6Z-P1 Single : 昔に作った物を見直す

ゆっくり潮は流れはじめていますが、もう少し寄り道を。

 注意:12Z-P1のヒーターは12.0Vです。12.6Vではありません。

 居間の本気アンプ私室の常用アンプも本来は音声用では無い管。でも本職の音声出力管を使ったアンプもあります。そのひとつが6Z-P1のシングル。ただ、これは実用品ではなく装飾品。
 音声出力用と言っても、6Z-P1はラジオ用。それも、元は戦時中の倹約設計ラジオ用の『国民球』12-ZP1。47の劣化コピーという評もあるような管。ラジオ少年の標準の6AR5と比べても格下。だから作ったアンプから出る音が良くなくてもそんな物と変に納得していました。しかしあらためて見直すとけっこういいかげんな作りです。ちゃんと作ってやればちゃんとした音が出るんじゃないかしら。

 ネット時代ってありがたいです。探すとちゃんと特性図も出てきました。定格を確認すると、プレートが250VでG2が180V。プレート損失が4Wとあるのですが、1枚の特性図には3.5Wの所に点線が描かれています。当初は3.5Wであったのかもしれません。
 元々の用途が電灯線を双2極管で倍電圧整流したトランスレスラジオ用。プレートもG2も180Vの動作がこの条件でしょう。 この場合は1Wちょっとの出力。、定格いっぱいの電圧で使って出力が1.5W。ただしこの動作だと4Wには収まりますが3.5Wは超過しますし、歪みも多いです。あらためて特性図に12kΩで線を引いてみます。少し電圧を下げて220Vぐらいで使った方が良さそうです。出力が少し低下しますが歪みは減ります。
 フルスイングするにはP-Pで20Vぐらい必要です。これで出力が1.5Wですから、終段のゲインはなんと0.5倍しか無いです。プレート電流が15mmAでG2電流が2.5mmA~4.5mAですが、G2の許容損失が0.6Wですからけっこうぎりぎりです。

昔から使っている電子電圧計 デジタルよりも直感的で使い易いです

 作った際にはあまりきちんと測った記憶がありません。昔から使っている電子電圧計を出したので、アンプを実測してみることにしました。終段のプレートは250VでG2が180Vで、カソード電圧は10Vで規格どおり。NFを外して、発振器の信号を入れてみると、グリッドを5Vで振ると出力トランスの2次側に約1.5V出ますから辻褄は合っています。
 このアンプのドライブ段は、デザイン的な理由もあって、FETを普通の5極管のように使っていますが、ありものの石をおおざっぱに使ったのであまりゲインが取れていません。仕上がりゲインを普通ぐらいに設定したので、実測するとNFが約3dbしかかかっていませんでした。もっとゲインを取ってNFに回してやらなきゃダメですね。しかしそうなると、超貧弱な出力トランスを何とかしなきゃいけなくなりそうです。


2013年11月19日火曜日

6CA7 PP : 電源トランスを特注で

一応は進路が定まったので、少しづつ先へ進むことにします。

 電源トランスを発注しました。この先は大きな変針はできません。
 MQ60の古シャシーを使う場合、管などの穴が開いていますから、それに合わせて部品を盛り付けなければなりません。回路が決まったので、これに従って部品配置と配線のとりまわしを考えてみました。けっこう窮屈なのと、若干強引な引き回しが出そうですが、このシャシーでどうにかなりそうです。そうなると、ここに載るトランスの大きさが決まってきます。
 先の回路の検討から、必要な電圧は決まっています。出力管のSGをプレートより低く取るので、この電圧が必要で、差動のカソードをマイナスに引くのにもうひとつタップを出してと。巻線を共用してセンタータップ整流にすると、端子数が7個。
 1次側に110Vも設けると残りの端子は4個。ヒーター巻線は2組しか設けられません。使用する管が決まっているのでヒーターの電流は自動的に決まってしまいます。 Hバイアスをかけるものとして、出力管とドライバ段に分けることにしました。6Aの巻線って思い切り太いです。
 B巻線の電流は 200-(12.6+37.8)÷(290×2)=0.255 となりました。もう少し欲しいけど我慢です。


1次側に110Vを設けたのは、場合によっては少し電圧を下げる使い方もあるのではないかと考えたからです。この場合、ヒーターの電圧も下がりますが、全体に軽い動作なのでエミッションが足りなくなる心配はありません。むしろ、寿命の点では好ましいような気もします。

 トランスができるのに合わせてぼちぼち部品の調達を考えなければなりません。さて、メイドさんの街になってしまった日本橋に必要な部品があるのかしら。

2013年11月15日金曜日

6CA7 PP : 筐体関連の作業開始

今回は私が今までにやった事の無い手順での製作。良く見て考えながら、少しづつ進めるつもりです。

 回路が決まって、出力段もドライブ段も電圧と電流がほぼ決まって来ました。電源トランスは、基本的には以前に考えた物で行けることになりました。端子数が制約されるので、ヒーター巻線を左右に分けるのは断念して、ドライブ段も中点タップは無しに。
 居間の6BX7のアンプは、当初は静かな部屋で使うサブアンプの構想で、ヘッドホンジャックも設けてあります。ドライブ段の6BL8はノイズやハム対策の点では普通の真空管です。トランスに余裕があったのでドライブ段を直流点火しました。現在私室で常用しているアンプも構想段階からヘッドホンでの使用を考えていました。ヒーターは交流点火ですが、カソードに対して+のバイアスをかけています。幸いこの対策が効いたらしく、深夜にヘッドボンかけていてもハムが気になることはありません。レストアしたKMQ7は普通に中点接地で、スピーカに耳を付けると(ヘッドホンジャックは無い)僅かにハム音が聞こえる程度。
 現用のアンプは出力は小さいけれどゲインは普通にあります。今度のアンプは大出力ですが、仕上がりゲインは同じですから、ハムやノイズに関しては(正常動作時は)ほぼ同じ条件となります。とりあえず、片側をCで落として+のバアイスをかけるようにしてみる予定です。

トランスの大きさを確認 : 出力トランスがきりぎりです
トランスが決まったので、シャーシー加工を始められます。穴を開けてしまうと後戻りができません。鉄シャシーにアルミを重ねた構造は美しいてすが、組み立て開始後の追加や修正が困難です。ネジ位置とかもきちんとチェックしておく必要があります。
 ケミコンは大きな物が3本載ります。元のチョークコイルの位置はケミコンに転用して、元のバイアス回路用の小さなケミコンの位置にチョークを置くことにすると、ネジ穴の加工だけで済ませられそうです。
 使用予定のSW-30に比べてOY-15の小ささが実感されます。ケミコンの取り付けネジの頭はぎりぎりかわせました。後ろ側ぎりぎりまで後退させると真空管との間もなんと確保できます。内部のCR等の支持には平ラグを使う方式を考えています。部品の盛り付け具合も考えると、微妙に窮屈です。
 本来のMQ-60はボンネットカバーがあるのですが、入手したこのシャシーには付いてしませんでした。もっとも、トランスの大きさを見ると、元のカバーをそのまま使うのはあきらかに無理。しかし、落下物など不意の事態を考えるとやはり何か保護になる物が欲しいです。上面と前面だけ覆うような物を作る事を考えています。

2013年11月13日水曜日

6CA7 PP : 出力トランス SW-30について

急いで作らなきゃいけない訳は無いです。せっかくだから、いろいろ楽しみたいです。

 古い雑誌とかひっばりだして見ると、製作記事とか広告とか、けっこう面白いです。ネットも漁って資料探して、古い回路とか眺めたり。

 SW30-6の資料は見つかりませんでしたが、ラックスのOY-15の資料は出て来ました。推奨容量34Wで、やはり本来は30W級のトランスです。-5について見ると、許容電流が120mA(片側)で不平衡が1.9mAと。インダクタンスを高く取ってコンパクトにまとめた反面デリケートで余裕の無い物になっているように思います。用途の欄には6CA7も書かれていますが、これはある程度軽く使った場合の想定でしょう。A3500のように40W取り出す動作は定格オーバー。MQ60でも全然余裕がありません。
 そう思って考えて見ると、学校放送用のアンプにはごっついトランスが載っていました。もっとも規格は規格で、実際の限界に対してある程度余裕があるのが普通です。自社製品のトランスだから、このへんのマージンも見込んで製品化したのでしょう。高級オーディオメーカーのアンプと出力がクリップするような負荷で働かされる業務用のアンプでは考え方自体大きく違うのは判りますが、少しの異常動作でも大きな事故の引き金になりかねません。ラックスのアンプについて、回路を追ってみると、真空管も耐圧とか定格オーバーで使っているのが見あたります。メーカーとしてテストして確認したり選別品を使ったりしていたと思うのですが、保守状況が悪い中で長く使われる事を想定すると、やはり無理は禁物だったと思うのです。

6CA7の大きさ
  私は6CA7って格好良い管だと思っています。特に松下の管は、ガラス管がステムの径ぎりぎりまで拡大されていて、頂部が平らで、他には無い手間のかかる作りです。規格の寸法の中で最大の容積を確保しようという誠実な努力。
 一緒に写真に写っているのは6BX7で、これはごく普通のGT管。ヒーターは2ユニットで1.5Aですから、1ユニットあたりでは6CA7の半分。その上の12BH7は0.6Aですからさらにその半分以下。プッシユプルで比較すると、6CA7は3結で20Wほど出るのに対して、12BH7で2.5Wほど、6BX7で6Wほど。垂直出力用の管は働きの割に大飯ぐらいのようです。

2013年11月10日日曜日

6CA7 PP : ドライバ部について

先を急ぐ訳ではないので、調べ物から脱線して寄り道

今度のアンプのドライブの回路は差動2段と決めています。
 真空管アンプで悩ましいのが位相反転。現代のトランジスタアンプでは常識のコンプリメンタリが使えないので、プッシュプルの両側は逆相で駆動する必要があります。

いちばん単純明快なのがP-K分割回路。
 トランジスタの場合はベース電流が微妙に気になるのですが、真空管のグリッド電流はごく僅かです。3極管のカソードとプレートに流れる電流は同じ。等しい値の抵抗には同じ電圧で逆相の電圧が生じます。考え方はシンプルですが、大出力が尊ばれる?高級オーディオアンプではあまり好まれない感じです。インピーダンス的に不均衡と言われますが、実際の影響は無視できる(多量の負帰還がかかっているのと同じ)ほどです。前段が5極管ならゲイン不足の心配も少ないでしょう。欠点は振幅が半分(以下)になる事と、カソードフォロワーと同様に発振の心配があるぐらい。

ミュラード型の反転回路の説明はいろいろありますが、私は(不完全な)差動アンプと考えています。
 逆相の信号が得られる回路のひとつが差動増幅器。平衡入力を増幅して平衡で送り出す。入力が不均衡ならば、その差が出力に平衡で出るので、片側づつみれば逆位相の信号が得られます。平衡度が十分であれば、片側入力を接地すると位相反転回路になります。しかし真空管の1段では(次段を考えると)平衡度を高くできません。そこで上下のゲインを変えて小細工する。昔からなんとなく怪しいく感じていました。今でも好きになれません。

 最大の問題はこの段が片入力だという事。片入力なので裸ゲインが半減します。もし入力が平衡であれば、この段では前段の不平衡の分だけを相手にすれば良くなり、μの低い球でも平衡度が取れてゲインも取れる。それには前段で位相反転させて来る。前段にP-K分割を置けばウィリアムソンアンプに似た感じ(なぜウィリアムソンアンプは差動にしなかったのか不思議です)になります。前段も差動にするともっと簡単になり、差動の片側に負帰還をかけることができます。この場合の注意点は前段が同相入力(ただし振幅も電流も小さい)で動くことぐらいでしょうか。

 トランジスタアンプでは差動増幅が普通ですが、これは負帰還をうまくかけて安定させるのが主目的。コンプリメンタリーの出力回路には差動のドライブは不要(入力は同相ですから)でなので、片側からのみ出力を取っていて、反対側は遊んでいます。


 私室のアンプは、普通のオーディオアンプとはずいぶん違う入力を与えられています。部屋で聴く程度の音量ならば、アンプのゲインで十分という事で、普段はプリアンプがわりにセレクターが繋がっています。セレクターの入力は5つ。パソが2台とCD/DVDプレーヤーとFMラジオが繋がっています。パソではmp3やAVIやいろいろ再生しますし、CDやDVDをかける事もあります。
 絶対にプリアンプが必要になるのは、レコードの再生。盤の減りと針の減りが気になるので、そうそう気楽に使えないのが現状。プレーヤー自体の定位置は居間なのですが、しばらく前にレコード盤の何枚かをCD化する際に持って来たまま居着いていました。部屋の片付けでこれを居間に戻すので、その前に少しの間鳴らしてみました。

調べ物のついでに見つけた事のメモ
12AT7のヒーターに関して、片側を接地する場合は、12V点火の場合は5ピンを接地、6V点火の場合は4・5ピンを接地すると。理由は不明です。

2013年11月4日月曜日

私室の常用アンプ 12BH7A-PP

趣味ですることだから、いろいろ思案するのも楽しみのひとつ。たっぷり楽しむつもりです。

 ここしばらく、家じゅうのアンプをつなぎ替えて鳴らしてみています。それもそろそろ一巡しました。

 鳴らし比べが一巡して、常用の12BH7A-PPアンプに戻りました。回路自体は6BX7-PPアンプと似ているのですが、各部が倹約設計になっています。いちばん倹約なのが出力トランスで、特注品なのですが・・・200V:5V1Aの電源トランスにタップを出してもらったという物。普通にアンプに使えているあたり、カットコアの威力でしょうか。(その後普通の出力トランスに交換しました。)

 
 12BH7は、本来はテレビの偏向回路用です。パルス回路用として電流は取れますが、オーディオ出力用としてはプレート損失で制約されます。このあたり、テレビでも設計上の注意点だったみたいですが。定格は1ユニットあたり3.5Wですが、元々はパラでの動作を想定していないらしく、同時使用では5Wという資料もありました。これに従うならば、A級アンプの場合は片側2.5Wで設計しておく必要があり、きちんと守るとあまり出力が取れません。AB級の場合はいくらか緩和されますが、それでも合計5Wを越えないようにするとかなり辛いです。このアンプの設計はこれを越えていますが、管はずいぶん長持ちしています。昔に見たテレビセットでは1ユニットで5Wを越えるような物もありましたから、もう少しは無理が利くのかもしれません。古い時代の管と末期の管を見比べると微妙に違っていますから、定格オーバーの使用に対して真空管メーカー側が対策したのかもしれません。いずれにしろ、オーディオ出力用で使う場合は配慮が必要だと思います。


   今度の6CA7-PPアンプで使用するつもりの6CG7/6FQ7も本来はテレビ用の管です。12BH7が垂直偏向回路向きなのに対してこちらは水平偏向回路。 おそらく無理が少ないからでしょうか、この6CG7はカットオフ付近まで良く特性が揃っている事で知られていました。
 この管はA級出力用に使うと損失よりも電流で制約されてしまいます。元々の6SN7はGT管で、ある程度高い電圧で使う設計のようです。これをMT管にしたらしいすが、その際にプレート電圧の定格が低く規定されました。テレビセットではそれほど高い電圧で使う事は無いので、定格を下げたのでしょう。カソードのエミッションには余裕がある(元々パルス回路用だ!)はずなのですが、やはり出力用ではないから仕方ないです。 

2013年10月29日火曜日

6CA7 PP : 回路の検討 3

ネット時代って便利ですね。探すと真空管の特性図も入手できます。真空管マニュアルの図よりも大きくて見やすいです。数社の資料を見比べて確かめたりできますし、ちょっと変わった条件のデータもあったり。

ということで、略算式で得たデータを図に落とし込んで、確認と微調整。

まず2段目。負荷抵抗33kΩで線を引いてみます。電源220Vが低い感じですが・・・
ちょうど良さそうなあたりに線を引くと、真ん中はグリッドが-6Vで2.5mA流すあたりになります。
33kΩで82V落ちますからプレートは143V。
入力がP-Pで10V最大で、出力がP-Pで120V出ますから、ゲインは12倍。
実際に必要な出力はP-Pで40Vあまりですから、入力はP-Pで3.3Vぐらい。
グリッドの振幅も余裕があります。
略算とは微妙に違いがあり、一般的な動作例に近い値が出ました。
手元にあった雑誌の製作記事の回路図から逆算した値とも何となく似ています。
まあこんなものでしょうか。多少ズレでいても、カソードバイアスの抵抗で調整できるでしょう。

次は1段目ですが・・・

6BX7 プッシュプル 6BL8アルテック型
数日前から、居間のアンプを私室に移動して鳴らしています。これは双3極管の6BX7を使ったプッシュプルです。鳴らしているスピーカーが普通でない物だからでしょうか、つなぎ替えるとずいぶん音の感じが違います。何から来る違いなのか微妙に悩ましいです。

2013年10月25日金曜日

6CA7 PP : 電源トランスの仕様

先を急いでもしようがない。あちこち眺めながら行くことにします。

先日のドライバ段の計算は、やはり変です。
どうも、負荷抵抗の小さいあたりでは略算式では誤差が多いようです。
特性図に載せてみると、それでも6CG7はあまりズレていないのですが、12AT7は全然違っています。動作についてはきちんと算出しなきゃいけないようです。まあ、この方向で進めそうだという事が解っただけでも意味はあったような。

 で、電圧配分が見えてきたので、今度は電源回路から見て行くことにします。まずは電源トランス。特注(イージーオーダー?)する予定ですから、その仕様の範囲で作れるかどうか検討します。

 必要な電圧は、交流で 290V,190V,120V 。それぞれセンタータップ整流しますから、巻き線は共通で済みます。電流が大きいのはプレートの290V。この電圧では意外とG2の電流は小さいです。大出力を取り出すなら、合わせて145mAは欲しいですが、まあそんなに連続して大きな音はださないので、かなり控え目でも済みそうです。あと、ドイラバ段とバイアスのマイナスが必要。
 難関はヒーター。6CA7は大食らいで 1.5Ax4=6A,ドライバ段に600mAx2+300max2=1.8A。これは常時ですからけっこう大きいです。

 

  で、シャシーに載る大きさからトランスを選ぶと、200VAの物が限度のようです。ここから逆算するとと、高圧巻き線は250mAしか取れないことになります。ちょっと貧弱な気もしますが、まあ仕方ないかしら。で、ちょっと困ったのは、端子の総数。B巻き線にタップがたくさん出るので、ここだけで7個。総数14個ですから、ヒーター巻き線に回せるのが4個だけ。悩ましいです。

2013年10月23日水曜日

6CA7 PP : 回路の検討 2

昔のように頻繁に部品屋に行くことはできません。作り始めるまでになるべくきちんと計算して、できれば部品交換して調整ということは無しに済ませたいです。


略算式で計算して、どうやらドライブ電圧は良さそうです。
この値から、さらに2段目の動作を略算式で詰めて行きます。
あくまで略算ですから、あとで特性図で確認して調整する必要があります。
最後は、実際に作って見て調整ですが、これはなるべく少なくしたいです。


普通と逆で、電圧やプレート負荷から動作を探ってゆきますが、普通の抵抗結合増幅のデータとはずいぶん違う値が出て来ます。
アナログ計算機
プレート抵抗が33kΩとすると、増幅率は約6倍。まあ、こんな物かしら。
最大出力31Vを割ると約5Vの入力です。
√2倍して、グリッドの引き残りを足すと、7.8~8V がバイアス電圧で、この時の電流が2.7mAほど。
すると、33kΩで落ちる電圧が89Vぐらいで、P-K間が139V。最大振幅時の引きのこりが95V。
差動のバランスの点ではカソードは大きくマイナスに引きたいです。
マイナス側の電圧は最低でも95Vで、余裕を見て120Vぐらいでしょうか。
120Vとすると、(120-8)÷(2.7×2)=20.7kΩ
なんとなくもっともらしい数値が出ました。(ホント??)
電力も電流も規格に収まります。12AU7 でもだいじょうぶなぐらいです。

そのまま1段目もひととおり計算しておきます。

1段目と2段目は直結にはしません。全体ではDCは帰還されませんから、大げさな回路で補正しないかぎりDCは不安定になります。ミュラード型のように片側だけ前段から引っ張る回路も見ますが、これではどのみち低域に時定数ができますし、グリッド電流の問題やインピーダンス的に不均衡が出ます。潔く両方ともCを入れる方が安心な気がします。最近は容量が大きくて特性の良いコンデンサが安く使えます。電源電圧の利用という点でも、この方が楽です。(注:ミュラード型の原型は直結では無いらしいです。)

2段目のグリッドの抵抗を330kΩとして、1段目のプレート抵抗はその1/3の100KΩにして見ます。
使用予定の 12AT7 は μ=60です。
電圧を180Vとすると、増幅度は約15倍。なんとなく、このゲインは低すぎる感じ。
そのまま計算を続けると、バイアスは3.2Vぐらいでしょうか。電流は0.7mAぐらい。この値は変!
最大振ることは無いですが。P-Kの残りが40Vぐらいでちっょと足りない感じ。
カソードを-90Vから引くとして、カソード抵抗は62kΩ。

ここで全体のゲインを見ておきます。仕上がりゲインは手もとの他のアンプと同程度とするつもりです。仕上がりで約25倍。そうなると裸で100倍ぐらいは欲しいです。

出力段は、P-P=40Vの入力で 16Ωに30Wですから、P-Pで60Vぐらいの出力。意外とゲインがあります。さすがに5極管。
1.5×6×15÷2で、全体では67倍ぐらい。このままではNF量がほんのちょっぴりしかありません。
これは略算ですから、実際はもっと高いとは思いますが、もう少しゲインが必要です。
それよりも、どっか見落としや勘違いがありそうな気もします。

しばらくは頭の体操です。






2013年10月21日月曜日

6CA7 PP : 回路の検討1

出力段からきちんと計算してみることにします。

命題は、一次側で30W、P-P間で6KΩの負荷。

この条件に合うのは、300Vで200mA(交流)。
  プレートの引きのこりを見込むと、電源は375Vは必要。もう少し余裕が欲しいです。
B級のクロスオーバーを40mmA(片側)とすると、最大で240mAぐらい。もう少し少なくても良いかしら。
SG電圧+250Vぐらいでちょうど良い電流になりそうです。
  この電圧で、バイアス40mmAぐらいになるグリッド電圧は-20~22Vぐらい。
案外いい具合になりそうです。

電源トランスはプレートが280~290V, G2が190~200V ぐらいでしょうか。
  SGはチョークを通すとして、プレートは整流しっぱなしで済まそうと思います。
  この電圧なら、コンデンサの耐圧が楽になります。

とりあえず、回路を図にしてみました
 この時の入力が P-Pで40Vぐらい。意外と楽そうですが・・・
  ドライブ段のプレートはSG電圧からR通して取るとして、220V以下でしょう。
6CA7のグリッド抵抗は、安全を考えて100kΩとします。
  そこで、プレート抵抗は余裕を見てその1/3以下として、33kΩ。
管に6CG7を使うとして、μ=20 ですから、負荷33kΩは良い値でしょう。
これを略算式に入れて見ると・・・
  出力電圧は、実効値で約31V。P-Pで86Vですから、2倍の余裕を見ても何とかなりそう。

もう少しきちんと計算してみなければいけないようです。


2013年10月10日木曜日

6CA7 PP : トランスとシャシー 比較検討

使用するシャシーの元のMQ60についても少し調べてみました。

 MQ60は今では保守が難しいアンプですが、単純な不良品というのではなく、解体ジャンクのような物がけっこう出回っているようです。使える部品を共食いしたり、他のアンプの保守用に部品取りされたり。うちに来たのはそんな残りもののようです。

 使用されている真空管は50C-A10。6C-A10のヒータ違いです。大出力の3極管で、感度が高くてプッシュプルで30Wが得られるのがウリだったようです。しかしその型番のとおり、日本独自の管であり、開発元のNECが製造をやめてしまうと供給が途絶えてしまいました。相当管や類似管はありません。同じ国産大出力3極管でも東芝の6G-A4が単純な3極管の拡大版なのに対して、この管の中身は、見た感じでは晩期のテレビの偏向管用ビーム管とたいへん良く似ています。テレビの偏向管の設計を転用して(内部で3結にして)オーディオ用に仕立て直したのてはないでしょうか。当然、各部の見直しはされたと思うのですが、現役当時から弱い(無理が利かない、劣化が早い)玉と見られていました。
 50C-A10は50V点火です。2本直列にしてACで直接点火すればヒーター巻き線が不要になります。これで電源トランスの容量を小さく済ませているのですが、他の管で代用するような改造をしようとするとこれが支障になってしまいます。 3結にして代わりに使えそうなGT管はいくつかありますが、ヒーターだけ別に供給するのでなければ電源トランスの載せ替えが必要になります。

 使用出力トランスのOY-15は、現代では故障が多いという評のようです。詳細なスペックは判りませんが、どうやら本来は30W級のトランスのようですし、サイズもコンパクトに作られていて余裕がありそうには見えません。その後同じOY-15でも巻き線を変更した大出力用が開発されて、A3600やMQ70などに使用されています。ここから考えると、A3500のように6CA7で40W程度を得る使い方はおそらく定格ぎりぎりでしょう。無理がかかってトランスが不良となったアンプが増えれば、管の方の事情で保守不能のアンプのトランスが移植用に取られるのは自然でしょう。そして解体ジャンクが残る。

インピーダンスブリッジで測定
  で、使用する出力トランスについて性能の確認。今日はインピーダンスの測定をしました。これは自作のブリッジで、絶対精度は使用したCとRの精度に依存します(誤差数%程度)が、相対的な比較には使えます。長く使用していなかったけれど、試すとちゃんと動作しました。
 2次側にダミーの抵抗を付けて、1次側のインピーダンスを測ります。巻き線の片側づつと両プレート間、2個ともほとんど同じ値です。1kHzで約6KΩ、50Hzでは少し低下して5.7kΩぐらいです。

 ついでに、外した電源のブロックコンを測ってみました。B電圧側の大きなコンデンサはちゃんと容量がありましたが、バイアス回路用?の小さいコンデンサは容量が抜けていました。原因は謎。まあ、プロックコンはすべて買い直すつもりですが。

 この事から、使用シャーシーの元のアンプの故障については、上記とは全然別のシナリオが考えられます。最終的には片側出力トランスの異常発熱による焼損に至った思われますが、残った部品 の中で酷い過熱跡が目立ったのは出力トランスの高域安定用の抵抗でした。バイアス回路のコンデンサが完全に容量抜け (前述)していた事から考えて、[バイアス回路の異常]→[出力段の異常動作]→[異常発振]という具合ではなかったでしょうか。

2013年10月9日水曜日

6CA7 PP : 電源トランス

情報を探りながら、引き続きゆっくりと前進中

 一般的な現行のトランスでは都合の良さそうな物は見あたりませんでした。そのかわり、比較的簡単に特注で作ってもらえそうな所を見つけました。特注といってもイージーオーダー程度の感じです。規格品よりも少し高いぐらいの価格です。まあ、真空管用の電源トランスなんて、今どきは規格品でも工場のラインでガンガン作っていてる訳はありませんから、注文に合わせて巻き数とか加減しても製造工程自体はあまり違わないはずです。都合の良い品が無くて逡巡するよりも、最適な物が得られるとなればそれだけでいくらかは需要に繋がるはずですから、これはたいへんうまい着想点のように思います。
 少し電流の大きなトランスの電圧を低めにして、巻き線の途中にタップを出してもらえばOK。大きさの点でもなんとか(ネシ穴はあけなおしですが)シャシーに載ります。 プレートとG2とプラスの電圧が2つ。バイアスと差動段を下に引くのにマイナスをひとつ。ドライバ段はスクリーンの電圧から取れます。電源部の概要が決まりつつあります。プレート側は抵抗が高くてプシュプルで打ち消されますから、多少リップルがあってもあまり支障無いでしょう。対してスクリーンはリップルの影響が出ます。電流の変動も大きいので、こちらはチョークを通した方が良さそうです。電流が小さいので大きなチョークで無くても済むのが有りがたいですが・・・見栄えの良さそうな物はやはり高価です。微妙に悩ましい。

6SN7-GT
出力段の電圧が自由になりそうなので、これに合わせてドライバ段を考えることにしました。出力30Wのアンプとしてはプレートが高目でバイアスも深いです。グリッドはフルスイングしないのですが、それでもPeak-Peakで30Vは振る必要があります。余裕を見ると、ドライブ段の電圧はけっこう必要です。初段と直結にするとその分全体にプラス側にシフトしますから、スクリーン電圧の250Vからドロップしたのでは不足ぎみ。やはり直結はやめて、グリッドをグランド基準にしてカソードをマイナスに引くのが簡単そうです。電圧の余裕で平衡度が良くなりますし、副次的な効果として、コンデンサの耐圧が楽になります。今は良質でコンパクトなコンデンサが入手しやすいですから、直結にしなくても心配は少ないです。
  ドライブ段は6FQ7/6CG7で行けそうです。テレビの水平発振の管で、6SN7のMT版です。6SN7は特性の素直な管で、アンプの出力段に使ったところ(出力は取れませんが)ずいぶん良い音がしました。損失が大きいので電圧を上げても余裕があります。前段は今のところ12AT7で行く予定でいます。μが60ですが不足することは無いでしょう。

 

2013年10月6日日曜日

6CA7 PP : 出力段の設計

海図の無い航海のようで、まだしばらく手探り状態です。

 普通は管の定格と特性から動作点を求めてトランスを決めます。昔のアンプの製作では出力が大事。真空管メーカーの動作例もこの方向で書かれています。昔の雑誌などの製作記事を見ると、とにかくどれだけ出せるかが関心だった事が判ります。それも、できれば簡単で安い回路で。

6BM8 と雑誌の製作記事
  今日は実家へ。箱にしまってあった昔の部品の中に活用できる物がないかチェック。抵抗とかコンデンサとか今となっては好んで使うような物は全然無かったのですが、真空管はいろいろ出て来ました。ちょうど真空管の終了する頃、あちこちの放出品やジャンク玉とか、何かに使えるかと集めていたようです。6BM8は私が最初にアンプを作った管。何本かありましたから、この6CA7の後で余力があれば使ってやろうかしら。

決定事項から逆に計算してみることにしました

 今回はトランスが決まっているので、ここから逆に真空管の動作を決めてゆくことにします。6KΩのトランスで入力30Wですから、素直に計算すると、振幅300Vで200mAです。引き残りを2割ぐらい見込むとB電圧は375Vぐらいになります。グリッドをフルスイングさせずに-5Vぐらいまでとすると、SGが250VでIpが150mAぐらいになります。クロスオーバーを50mAとすると、案外いい感じかもしれません。もう少し電流を小さくしても歪みは大差無さそうです。6CA7にとってはずいぶん軽い動作てすね。ちなみに、このまま電圧を上げて(SGも上げる)6CA7の定格いっぱいの動作になるように計算して見ると、ちゃんと45W以上出ます。例のMQ70の動作点がこれなんでしょうね。6CA7で45W出すだけならば、負荷抵抗を小さく取って電流を流せばもっと低い電圧で済みます。アマチュアやコストに厳しい電器メーカーはこちらを選ぶでしょうが、トランスも製造している高級オーディオメーカーとしてはコストとは違うメリットを感じたのでしょう。
 以上から、電源トランスは、B電圧として350Vぐらい、SG用に250Vぐらいが必要です。電流は、フルパワーを考えると300mA以上要りますが、いわゆるミュージックパワーで考えると200mAぐらいでしょう。SGの電圧は変動を嫌うのでB電圧から抵抗で落とすのでは具合が悪いです。やはり別のタップから取る必要がありそうです。具合の良い電源トランスがあれば良いのですが・・・

2013年10月5日土曜日

6CA7 PP : 部品配置の確認

形としては全然進んでいません。ここまで遅くなったのだから、急ぐことはないのですが。

 トランスとかシャシーとか、いずれもなりゆきで決まってしまっています。このまま何か出物とかひょこっとあればそれが追い風になるのですが、電気屋街とか出歩くこともなくなっているのでその可能性は低そうです。

トランスを横向きにしてみると
回路と部品配置を考えてみると、元の回路でそのまま使える所は無いですから、シャシーの中のCR等を撤去しました。ついでに、出力トランスの位置を確認しました。トランスはネジ穴を開け直す必要があります。試しに90度回転させてみると、ぎりぎりコンデンサをかわせる事が判りました。端子板の穴も少し加工してぎりぎり後退させれば出力管とぎりぎりの位置です。まあ、出力管はかなり減挌して使うのでたぶん大丈夫でしょう。ついでに、ドライブ段の管も載せてみました。電源トランスの関係でヒーター電流が厳しくならなければ2段目はこの6FQ7で行きたいです。6FQ7は600mAで12AU7なら300mAです。初段が12AT7で300mmA。6CA7の1.5Aがおもいっきりつらいです。

 配線用の線材とかネジとかけっこう買わなきゃいけない物がありそうです。元のシャシーに使ってあったネジは鉄ネジで、メッキが良くなかったらしくかなりサビが浮いています。今日は自宅の買い置きの箱をチェックしました。明日は実家の物置の箱の中を探す予定。ラグ板とか使えそうな物があったはず。

2013年10月4日金曜日

6CA7 PP : 出力段の確認


行き先は決まったものの、進路が定まってません

 とりあえず、古い本を引っ張り出して、頭のリフレッシュ。真空管の回路なんて、ずいぶん長く遠ざかっていますから、すっかり忘れています。面倒な計算無しで済ませたいけど、今回はちょっと面倒そうだし・・・

ネットで入手できる真空管の資料
同時に、検討用に資料を収集しました。ネット時代って有りがたいことです。出力管の6CA7については、数社の電子化されたマニュアルが見つかりました。さっそくプリンタで印刷。ここに出力トランスの6kΩのロードラインを引いて、動作を見ようという訳。

 併せてMQ60の事を調べていると、同じラックスのMQ70というアンプの情報が出てきました。 どうやら、A3700のシャーシーを流用して新規設計のトランスを載せた物のようです。6CA7プッシュで45Wを出しています。出力トランスを見ると、A3700はA3500と同じ5KΩですが、このMQ70はさらに高い6.5kΩです。電源電圧が微妙に高いとかK-NF付きとか多少違いはありますが、なんとも奇妙。
 そこで、6CA7の特性図をじっくりと眺めます。この管、どう見ても肩の特性が酷いです。普通なら肩を避けて歪みを下げるように負荷を小さく(電圧の低い所まで使わない)するのでしょう。玉の損失が増えますが、出力も取れます。メーカー推奨の負荷抵抗はこの値に近いです。一方、グリッド特性から見ると、B電圧にかかわらずバイアスが浅くなると急に特性が悪くなっている事が判りました。見方を変えると、入力をフルスイングさせずにバイアスの深い所だけ使えば、意外と直線性が良いことになりそうです。試しに-5Vまで振るとして計算してみると、出力もけっこう取れています。このあたり、オーディオメーカーならではの着想点なのでしょうか。この動作点では、特性が寝て電流は小さくなっていますが、 それでもけっこう大きいです。プレート電圧をいくらか低く取っても、30Wのトランス(本来7591用とすると、あまり電流を流せないかもしれない)には負担が重そうです。やはり、SGの電圧を少し下げて電流を抑えるのが良さそうです。

元の電源トランスの取り付け穴の大きさ
探すと、このMQ60を改造して(シャーシーを流用して)いる方の作例がいくつか見つかりました。それによると、どうやらこのシャシーの電源トランスの穴に、そのままあるいは小修正程度で載せられるトランスがいくつかあるようです。これらを使って、必要な電圧と電流を得られるかどうか検討することになります。どうやら、どれも素直には使えそうにありません。現行品はやや役不足。力的には良さそうなのは廃品種。費用的には今回の計画最大の買い物になりますから、たいへん悩ましいです。

 ドライブ段についても少しづつ検討を進めています。内部の部品配置を考えると、あまり凝ったことはできません。差動段のマイナス電圧が電源トランスの巻き線とも関係して来ますが、妙な事は考えずに素直に差動2段をC結合というのが無難そうです。

2013年10月2日水曜日

6CA7 PP : 出力トランスのチェック

まず、予定しているトランスが使えるか確認することにしました。

 譲り受けた時に巻き線の抵抗と絶縁は確認しているのですが、それからしばらく経ってます。計画を進めた後で"使えない"って事になると悲しいです。

トランスの動作確認 背中合わせにして信号を通す
とりあえず、簡単にできる確認から。2個を背中合わせに繋いで、アンプからオーディオ信号を通してみます。ステレオのスピーカーの片側に繋いで、他方と聞き比べ。 普通に音楽を聴いている時よりも少し大きな音程度でしか試せないですが、巻き線の組み合わせをいろいろ変えながらしばらく様子見。幸い気になるような音量や音質の変動はありませんでした。インピーダンスは測ってませんが、巻き線の直流抵抗を測ると、2個同じでした。どうやら生きているらしいです。

 この合間に届いたアンプのジャンクを解体。重量のバランスと美観を第一にトランスを配置した事がわかります。 内部の配線の取り回しはかなり無理やりという感じがしました。新しい回路では、どう部品を盛りつけて、どう配線を引き回すのが良いのか、けっこう悩まされそうです。
 内部の抵抗のいくつかに焼けたような跡がありしまた。どうやら故障の第一原因は出力トランスの異常だったようです。片側のトランスの付近にワックスのような物が滲みたようになっていました。MQ60に使用されていたトランスはOY-15で、優れた音質に加えてコンパクトで高出力で有名な物でしたが、どうやら経年とともに故障が多発する傾向があったようです。

SW-30は OY-15より少し大きい
解体したシャシーにSW-30を載せてみました。寸法的にOY-15よりもひとまわり大きいです。
左右はぎりぎり載りましたが、電源部のブロックコンデンサの穴にひっかかりました。この部分は何か見苦しくないような手当が必要そうです。ドライバ段のソケットはぎりぎりクリアしています。こうして見ると、このアンプがかなりコンパクトな事が判ります。

左右はぎりぎり載りますが・・・

トランスを載せたついでに、出力管も載せてみました。ただ並べただけなのですが、すぐに何かアンプが出来てしまいそうです。電源トランスの穴が難関なのですが。
 SW-30はやや背が低いのに対して6CA7は背が高いです。玉の頭の方がトランスよりも高いというのはあまり良くないです。少しシャシー内に沈められれば理想的なのですが、この加工は簡単では済みません。微妙に悩ましいです。

 ※ 取り外した 6C-A10用のソケットは使用しません。欲しい方にお譲りします。

6CA7 PP : 出力トランスに関して

箱にしまってあったトランスを出して見ました。

 まずは概要の確認。しばらくぶりに書棚から真空管規格表を出してみました。やはり記憶があいまいになっていました。6CA7の代表的動作例を見ると、普通の動作については負荷抵抗が3.5kΩとかかなり低いのです。あれれ? 現物はサンスイのSW-30-6です。インピーダンスが6kΩ。3結ならばちょうど良さそうですが、3結は悔しい。ラックスのA3500がOY-15-5載せているのは何? 特性図から6kΩの負荷で使う場合の動作を引くことができるだろうか。そうなると、トランスの定格が気になります。

SW-30-6 トランスの規格を確認する
どうやらこのSW-30は出力30W用という事らしいですが、調べても電流とかのデータはみつかりませんでした。しかしこの 30-6は元々は7591という管用らしいですから、この管の動作から推測して、それを越えない程度の使い方に留めれば安全でしょう。7591はGT管ですが、6L6や6CA7よりもひと回り小さくて6BQ5より大きいあたりをねらった玉のひとつのようですが、内部抵抗を下げて低電圧で出力を得ようとする玉が多いのに対して、高い電圧で使って電流は少な目。5極管らしいのですが、特性はビーム管に似て肩が綺麗です。(SW-30-6は150mA程度で使うのが安全か?)
 この動作を強引に6CA7に当てはめてみると、バイアスの深い所だけ使うかたちになって、出力は小さくなりそうです。高い負荷抵抗に見合うように電流を小さくするには、SGの電圧を下げる方法があります。特性図は250Vの場合しか見つかりませんでしたが、3結の特性から類推すると200Vぐらいまで下げると良さそうです。
 SG電圧をB電圧の半分にできれば(B電圧がSG電圧の2倍で良ければ)、整流回路を倍電圧整流にするという手があります。

 このように電流を抑えた動作にすると、トランスの負担が軽くなりますし、電源トランスも小さくて済みます。管の損失もかなり小さくなりますから、寿命の点でも好ましいです。本来のオーディオ管としての6CA7の特性とはかなり異なってしまいますが、高電圧動作をそのまま1/3に抑えたような風でもあります。なお、カソード電流がかなり小さくなりますから、ヒーター電圧も少し下げて良いような気がします。6CA7のヒーターは1.5Aですから4本で38Wもの発熱にもなります。

 少し行き先が見えて来た気がします。

2013年10月1日火曜日

6CA7 PP : 懸案の検討開始

長年というには長い長い期間がたって・・・ぼちぼち懸案のアンプを作ろうかと。

 私室では普段は真空管のアンプを使っています。BGMとかパソの音声とかテレビの音とか、いろんな音がここから出て来ます。大音量は不要ですが、それなりに聞きやすい音質が望ましい。ずいぶん前に、ふとした気の迷いで作ったアンプですが、けっこう長時間働きっぱなしなのに意外と長持ちしています。
 12BH7の片側づつを使ったプッシュプルで、ドライブ段含めてMT9ピンの4球。大飯喰らいというほどではないけど、夏の暑い時期は休憩という事にして、トランジスタアンプに繋ぎ換えていました。そろそろ涼しくなって来たので、これをまた元に戻して・・・・と。
 そのついでにと、作ったもののほとんど出番の無い「ミニアンプ」に繋ぎ換えて数日間鳴らしていました。ひとつは12BH7のパラシングル、もうひとつは6Z-P1のシングル。どちらもそれなりの音が出ますが、正直、全然良い音では無い。直線性に問題のある3極管と、インピーダンスが高くて電流もとれない5極管。

 アンプの違いを再認識したあと、押入を片づけていると電気工作の半端部品の中に、買い置きの真空管ソケットとか見つけてしまいました。そういえば・・・いつかそのうちにアンプを作るつもりだったなあ。

 最終目標は6CA7のプッシュプルアンプです。その前に手持ちの玉でも使って何か作るというのもおもしろそうです。6AQ5とか6AR5とか無線少年っぽい管もあったはずだし。


 いくつかプランを考えましたが、そうなると部品の調達が問題になって来ます。大阪市内まで電車で行ける場所に住んでいますが、すでに大阪日本橋でも抵抗やコンデンサといった部品はなかなか揃わなくなって来ています。 大物で規格がはっきりしているような物ならネット通販という手もありますが、良さそうな物を探すのが難しいです。意外と難物らしいのがシャシーのようです。襷にも短いのが少しと帯にも長すぎるのがいろいろと。

軟弱プランを考えてみました

 適当なキットとかあれば、これをベースに使って部品調達で楽できないかしら。うまく行けば、シャシー加工もサボれるかもしれません。昔はラックスのA3500かA3700とかありました。適当な価格も物があれば、これらの中古か故障品とか使えるかもしれません。


 なんとなく情報収集かたがたネットを見ていると、 ラックスのMQ60の抜け殻という風のが出ていました。使用の真空管はとっくの昔に入手困難になっていて、出力トランスも元から故障が多い品。故障機から使える部品だけ取ったのでしょうか、玉とトランス類は全部ありませんが、スイッチや端子などはそのまま使えます。未加工のシャシー買うよりも安いので、そのまま購入してしまいしまた。心配なのは、必要な電流を取れる電源トランスが収まるかという事。(6CA7使用だとヒーターの分だけでも容量が大きくなりますから)
 元の出力トランスはOY-15型です。手持ちのSW-30はこれより少し大きいですが、何とか取り付けられるでしょう。チョークコイルや電源のコンデンサの穴は加工が必要かもしれません。出力管はソケットを交換すればそのままの位置に付きます。元のドライブ段は左右にMT9ピンが2本づつ。基本プランの差動2段回路には具合が良さそうです。
 という具合で、永年塩漬けになっていた6CA7アンプ作りが急に動き出すことになりました。電源トランス探しする前に、まずは回路の検討。


6CA7 PP : 計画の概要

長い間考えていたアンプを作る計画を、今頃になって始動します。

構想や計画の進み具合のメモがわりに、ブログに書いてゆくことにします。

現状とここに至る経緯のメモ
6CA7 松下製

1 真空管 6CA7 でアンプを作る
 これは小学生時代からの懸案。いつかはこの格好良くて力強そうな管でアンプを作るって。
 6BM8や6AR5と比べると、ふたまわり以上強力。当時の知人のお兄さんがこの6CA7のシングルアンプを作ったというので、僕はそのうちにプッシュプルで、と。
 中学校時代の学校放送のアンプの出力管は6CA7でした。毎日平然と学校中に大きな音を届けるって、すごくプロっぽく感じました。だから余計に6CA7が凄く感じられました。ここが重要なポイント。だから、作るアンプはEL34じゃなくて6CA7。
 その後、なりゆきで中古の6CA7を入手。回路の案をいくつか考えましたが、そのまま停滞。

2 出力トランスを譲られてしまった
 ある時当時の知り合いに「そのうちに6CA7でアンプを作りたい」という話をしたら、そのつもりで入手したトランスがあると言われ、なりゆきで譲られてしまいました。トランスは中古の山水のSW-30-6でした。K巻き線もSGタップも無い素のプッシュプル用。これを使うとなると、純5結か3結になります。6KΩというのがちょっとひっかかったのですが、ラックスのA3500がOY-15-5を使っているのでこの程度なら使えるんじゃないかと思いました。

3 アンプの規模を考えてみた
 6CA7は高圧動作すればぎりぎり100Wに届くかという玉。学生時代に作っていたなら、きっとぎりぎりの大パワーを目指していたでしょう。しかし、そんな大出力は使い道がありません。せっかく作るなら、時々は鳴らして楽しめる物が良いです。
 トランジスタやハイブリッドICを使って数十ワット級のアンプをいくつか作って、出力が大きいからと言って満足感が増す訳で無いことは実感済み。部屋での主用アンプ(当時)は6BX7のプッシュですが力不足を感じることは無いです。全体の発熱量や大きさ(重さ)も考えると、ほど良い規模の物の方が活用できるでしょう。 真空管やトランス類の寿命も考えると、ある程度余裕をみた動作の方が安心です。

4 で、一応は回路を考えてみた
 居間の主用アンプ私室の常用アンプも純3極管のプッシュです。トランジスタSEPPアンプもあり、小ネタ用の真空管シングルのミニアンプがあります。こうなると、やはり素直に5極管として使うしか無さそう。動作的にはK-NFをやって見たかったけど、譲られたトランスを使うと、K-NFもUL接続も無しになります。ちょっと悩ましいです。
 なりゆきでこうなったのですが、家にある真空管プッシュプルアンプはすべて初段が5極のPK分割です。 せっかくだからもうひと工夫したい。どうせなら、定電流素子を含めてアクティブな半導体素子は使わずに、単純な真空管の回路で済ませたい。なるべくなら使用中の再調整無しに長く使えるようにしたい。候補のひとつが2段差動回路。双3極管で構成すると、ドライブ部が4球になります。デザイン的には収まりが良さそう。

5 全体をまとめると
 出力段の6CA7はほぼ決定。これを常識的なC結合の固定バイアスでプッシュプル。ドライブ段が差動2段の場合、手持ちの本数を考えると、トップが12AX7か12AT7で2段目が12AU7か6FQ7あたり。ゲインとドライブ電圧について検討が必要でしょう。大出力は考えないし、NFもそれほど深くするつもりはありませんから、電圧配分以外は難しく無さそうです。
 初段のグリッドをグランドに取るとカソードはマイナスに引く必要がありますが、どうせ終段のバイアスのマイナスが要りますから問題は少ないでしょう。初段と2段目の結合をどうするかが悩みどころ。最終的にはDCの負帰還がかけられないので、両側とも直結にすると長期的には不安定要素になります。片側のみ直結で他方はC結合という手もありますし、潔く両側ともC結合にするのも良さそうですし。

・・・・というあたりまでで、何年も放置したままになっていました。