2019年1月7日月曜日

位相反転回路のチェック 12AU7-PP

ドライバ段の試験をするには、電源が必要。電源部を作るにはシャシー加工が必要・・・
 
 電源は仮組でも良かったのだけど、どうせ作らなきゃいけない物。スボラして後で手戻りするのは得にならない。この際だから、ちゃんと作っておこう。
 工程を途中で止めておくのは無駄だし、後から加工する部分が多ければそれだけ手間が増える。最低シャシーの背面の加工は必要。トランスを付ける金具を作って、トランスの位置を決めなければ。スイッチを付けるんだから、前パネルも作ってしまおう。
 ここまで進めると真空管の位置が決まってきます。切削屑が散りますから、金属加工はまとめてやるのが吉です。あれこれ考えて、結局筐体関係の加工はすべてやってしまう事になりました。

低圧電源とドライバ段までを配線した状態


 スイッチはパネルの前側からの取り付けです。だからスイッチに配線してから取り付ける方が楽です。ボリウムもパネルと一緒に取り付けますから、先に配線しておくのが楽です。 結局、シャシー内側に関係した配線はほんんどを済ませてしまいました。

 まずは、電源の確認。なんと、マイナスの電圧が出ていない。3端子レギギユレータまわりの問題かと思ったのですが、古い買い置きのダイオードが1個不良でした。未使用だったのですが。これを交換したら、あとは問題なし。オペアンプを差し込んで、いちばん心配だったオフセット電圧の確認。数個で差し替えてチェックしたけれど、いずれも支障無い程度でした。

位相反転回路の出力を確認

 そこで入力に発振器を、出力にシンクロを繋いで、出力のレベルと波形の確認。ちゃんと逆位相で同じレベルの信号が出ています。信号レベルを上げて振幅も確認しました。オペアンプ使った位相反転回路はちゃんと動作しています。


2019年1月2日水曜日

オペアンプで位相反転回路 12AU7-PP

 部品がだいたい揃った(はずの)12AU7-PPアンプ。ぼちぼち製作開始。

 おそらく私自身の最後の新規製作になる物。初心に返ってゆっくりやってます。まずは、オペアンプによる位相反転回路の部分。これを盛りつける基板は、用途廃止したデジタル物の基板の余りの部分を活用。

手持ちの余剰部品の活用のため、彩りが賑やかです

 オペアンプ以外にも、今回は特に手もとの余剰部品の使用を意識しています。ここで使われなければ廃棄される可能性が高い物たち。

 抵抗は、いわゆる「無駄な抵抗」をなるべく多く使えるように値を決めました。そのためメーカーなどまちまちです。コンデンサも、けっこう昔に取り込んだ物が混じってます。オペアンプを差し替えて遊べるようにソケットにしました。

 抵抗は立実装にしました。デジタル物の手法で、部品の足は基板面から少し出して切断し、導線で繋ぎました。ここには余り物のラッピングワイヤーを剥いて利用。配線は無理に裏面で引き回さずに表にジャンパを飛ばしました。

 このあと電源回路を作って、ちゃんと動作するか実験しなきゃ。

[製作した12AU7-PPアンプの詳細はこちら]

2018年12月5日水曜日

電源トランス 12AU7-PP

真空管装置の大物部品は穴を開けた箱形シャシーにの上面に取り付けて、下側で配線するのが普通。

[製作した12AU7-PPアンプの詳細はこちら]

  真空管は熱くなります。垂直で使うのが基本で、シャシーに付けたソケットに上から挿すのが普通(横倒しは配慮すれば可能、倒立はダメ。)です。そうすると、真空管まわりの受動部品はシャシーの下面に付くのが自然。シャシー自体をシールドとして利用しやすいです。
 シャシーのシールド効果を利用しつつ、空間を有効利用するためには、電解コンデンサやトランスなど大物部品は上面に置きたいです。ブロックコンデンサや伏型のトランスはこの使い方に便利なように進化した結果のように思います。

汎用の電源トランスはたいへん安価です
逆に言えば、シャシーの上下に部品と回路を付ける構造でなければ、これらの形状は必要がない。特に伏型のトランスなど、他の実装方法ではたいへん使いにくいです。このため、現在では真空管用以外の普通のトランスで伏型は無いです。

 真空管用は今では特殊なトランスで、品種が限られていて、値段も他に比べると高いです。汎用のトランスが使用できれば安くすみます。 予定している12AU7-PPアンプでは、汎用のトランスを使うことを考えました。安くすむかわり、当然普通のバンド型です。
 高圧電源はAC110V~120Vで足りますから、ACライン用の絶縁トランスが利用できます。ヒータはトランジスタ回路用のAC12Vのトランスを使用します。定格より5%低くなりますがこの程度なら支障は少ないでしょう。ドライバ回路は整流後安定化して±15Vを得るためにはAC12Vでは微妙に足りませんから、もう少し高い巻線が必要です。巻線の片側が接地になりますが、この2つは一つの巻線から取ることが可能です。

 まず大阪で探したのですが、残念ながら適当な物がありませんでした。そこで、東京へ行く用事があったついでに、秋葉原の東栄トランスで購入しました。

※バンド型の出力トランスと電源トランスを普通に取り付けると磁芯の方向が平行になってしまいます。取り付けに工夫が必要です。

2018年11月29日木曜日

真空管の名前

真空管の名前には、一定のルールがあることになってますが・・・

 日本で一般的に使われていた真空管は米国系。これに日本独自規格の管が加わります。元々は欧州系の管も、日本では米国での名を名乗っていました。

 米国系の管名は、ヒーター電圧を表す数字+英字1または2文字+電極数を示す数字 という構成。英字は登録順に付くのが基本なので、電圧違いの相当管でも違うことが多く判りにくいです。末尾の数字も、複合管の構成はわかりませんし、シールドの扱いなど不統一もあります。この点、欧州の型番は判り良いです。最初の英文字はヒーターを表し、レス管の場合は電流が示されます。続く英文字は内部ユニットを表し、複合管は複数文字になって構成がわかります。その次の数字1文字は管形、その後は追番です。

元のシャシーの印刷には間違いがありました

 日本の管名は、米国と欧州の混合という感じです。最初の数字がヒータ電圧なのは米式と同じ。次の英字は管形で、ハイフンを挟んで、その次に欧州式のように内部ユニットの種類を示す英字が来て、最後はそのユニットについての通し番号。ヒーター違いや管形違いでも後半部が同じになるのが工夫されている点のように感じます。

 寒くなって来たので、発熱の多いアンプでもメンタル的に使いやすくなりました。大物の6CA7-PPアンプを出しました。これはラックスのMQ-60の解体シャシーを利用しています。上面には元々使用していた管名が印刷されています。回路が変わって載る真空管も変わりました。ドライバ段の管の所は(間違いを防ぐ意味で)新しい管名のラベルを貼りました。出力管は間違いようが無いのと、使用する6CA7と似た名前が書かれていたので、そのままにしてありました。
 ここに使われていたのは日本生まれの3極管で、6C-A10のヒーターを50Vにした管。50CA10と書かれていますが、日本式の型番なので 50C-A10とまんなかにハイフンが入るのが正しいです。
 という事を考えているうちに、ふと気づいたこと。6CA7は普通の5極管です。米国式の基準に従えば末尾の数字は5か6です。末尾7は絶対に変です。

[製作した6CA7-PPアンプの詳細は→こちら]

2018年10月11日木曜日

オペアンプで真空管を駆動する

手もとにたくささんある真空管を活用する。そのために、やはり手もとにたくさんあるオペアンプをつかおうというプラン。

[製作した12AU7-PPアンプの詳細はこちら]

 あらためて見直して、想定される使用量をあきらかに超えている12AU7。小型テレビの垂直出力に使われたこともありますが、元々は普通の電圧増幅管です。これを音声出力用に使えば・・・普通に考えればオーディオ用としては全然問題外の低出力なのだけど、実際の私室のアンプの働き具合を考えると、プッシュブルなら使えないような物では無さそう。というか、6SN7-PPの事を考えるとけっこう良さそうな感じ。小型の机用アンプを作る計画がゆっくり動きだしました。

 6Z-P1シングルアンプに使用した出力トランスについて、ふと思いついて実験をおこないました。 どうやら、このKA-1220型はプッシュプルで使えるみたい。ならば、12AU7-PPアンプに使ってみよう。
  そうなると、次はドライブをどうするか。小型で消費電力の小さい12AU7を使うのだから、ドライブ回路も小電力でコンパクトなもの。私室のアンプの中には、同様の意図で真空管アンプの回路を半導体で置き換えたドライブ回路を持つ物があります。

 手もとにはあれこれ買い集めたオペアンプICがけっこう残ってます。オペアンプは、最初の頃はそこそこ高価でしたから、安い出物を買い込んでいました。でもすぐに性能の良い物が安く出回るようになりました。そうなれば、ひと世代前の物は出番を失います。一方、安くなったので所要数以上に買ってしまった物もあります。
 これらは、今後おそらく出番が無いでしょう。これらを使って真空管をドライブできるか。プッシュプルアンプなので位相反転回路が必要です。そうなると・・・ 結局、古典的な自己平衡型の回路になりました。スルーレートの点でちょっと厳しいですが、12AU7を振ることができそうです。(12AU7は三極管としては入力容量があまり大きくないです。)
 ただ、心配なのはDCオフセット。これは実際に組んで測ってみるのが早道のようです。

2018年6月18日月曜日

プッシュプル用の出力トランス

無信号時にも出力トランスの内部を直流電流が流れています。このためトランスの磁芯には常に磁化されます。

 シングルアンプではトランスを通る電流は真空管の動作範囲の半分の電流を中心に増減します。 だから鉄芯には常時直流磁界が通ります。シングル用のトランスはこの磁界で飽和しないように作られています。プッシュプル用では、上下の巻き線で直流磁界の打ち消しが起こるので、飽和に対する許容量はあまり大きくないのが普通です。

 この直流磁界による飽和の問題から、プッシュプル用のトランスをシングルで使うのは無理ですが、シングル用のトランスをプッシュプルに使うのは(磁力の点では)問題無いはずです。

 一方、プッシュプル用のトランスは2つの巻き線のバランスが必要です。シングル用のトランスでちょうど1/2の位置にタップが出た物があればプッシュプル用になる?? そうだったら、小出力のアンプを作るのに使えるのがあるのではないだろうかしら。

 6Z-P1のシングルアンプに使った春日のKA-1220型は1次が12KΩで、ここに3KΩのタップが出ています。このクラスのトランスなら、タップは5KΩとか8KΩだと思うのですが、それよりだいぶ低い3KΩというのが謎でした。
 ふと気付いたこと。3Kは12Kの1/4ですから、巻数では1/2。そうなると、これはUL接続用のタップとして使うためかもしれません。そして思いついたことは、ここが巻線の中点(からあまりズレていない点)だったら、これはプッシュプル用に使えるのではないか。そうならば、検討中の12AU7-PPアンプに良さそうです。

春日の KA-2110 シングル用12kΩ


 このトランスが使えるかどうか、実物を測ってみるのが早道。6Z-P1アンプを解体するという方法も無い訳ではありませんが、東京へ行ったついでに買って来てしまいました。どのみち使うとなれば新たに購入することになりますから。


 まず、巻き線の直流抵抗。これはVOMで測定。
  0-3K は 290Ω, 3K-12K は 310Ωと320Ω それほど違いはありません。

 次は自作のブリッジで、1次側のインピーダンスを測定。自作なので絶対精度は怪しいけれど、比較にはなります。2次側に8Ωの抵抗を付けて、1KHzで測定。
 0-3K は 3.5KΩ, 3k-12Kも3.5kΩ 2個とも同じ。
 3Kのタップはインピーダンス的にちゃんと中点になっています。
 規格の3KΩより大きいですが、0-12K を測ると 14Kになりましたから計算は合います。

 そこで、12KΩの抵抗を1次側の両端に繋いで、発振機の信号をトランジスタアンプを通して、2次側から 1KHzの0.1 Vを入れてみました。
 0-3K には 2.1V, 3-12K にも 2.1V が出て来ました。これも2個とも同じ。巻数的にも中点のようです。
 電圧が約21倍なので、1次2次の巻数が21倍とすると、インピーダンスでは8Ωの441倍で3.5KΩとなります。上で測ったインピーダンスと合います。つまりこのトランスは、実は14KΩなのかもしれません。


 直流電流が重畳しなない状態で小信号の測定ですから、本来の使用条件とは異なる値が出て当然ですが、それでも3KΩのタップはじゅうぶん巻き線の中点として使えるようです。6Z-P1でシングルアンプに使って、なかなか良い音がしているトランスです。プッシュプルで使っても良い音が期待できそうです。

[製作した12AU7-PPアンプの詳細はこちら]

2018年5月27日日曜日

電源のコンデンサ (12BH7A PPの場合)

真空管からトランジスタの時代になり、アナログからデジタルの時代になり。新しい回路技術が出て来て、それが周辺部品の進化を促す。

 1970年代か80年代になる頃、抵抗器は大きく進化しましたが、その後はあまり目立つ変化はありません。ところがコンデンサは10年ごとぐらいの感じで何段階も進化を繰り返しています。
 フィルム系コンデンサは90年代頃からあまり大きな変化は無いのですが、そのかわり電解コンデンサは大幅に性能が向上しました。いちばんこれを必要としたのは、スイッチング電源の一般化とデジタル回路の高速化。 長時間高速で充放電を繰り返し続ける。過酷な条件下で長寿命で、さらに小型化も求められる。


 一般的な電気回路の部品で劣化が心配される物の筆頭が電解コンデンサ。そして、ここ20年ほどの間でいちばん性能や信頼性が向上したのも電解コンデンサ。

基板付け用のコンデンサは高性能でも小型です。
 12BH7A-PPアンプは1990年頃に簡易なBGM用として製作した物。その後私室のBGM用としてずいぶん長時間稼働してきました。最近になって、全体を見直してあれこれ改修した結果、信号系のコンデンサのほとんど全部と抵抗器の一部は新しい物になっています。
 ところが電源のブロックコンデンサは最初に製作した時の物です。幸いまだ容量抜けにはなっていませんが、今後も長く使う事を考えると、どこかで交換する必要があります。

 先日捜し物のついでに部品屋を覗くと、ちょうど良さそうなコンデンサが安価で出てました。

 最新の基板取り付け用の電解コンデンサは、電気的特性が優れていて信頼性が高く長寿命です。そのかわり外形がずいぶん小型になっていて、そのまま付け替えはできません。
 昔からのブロックコンは直径35mm。この基板付けコンデンサは直径30mmで高さは約半分。そこで、ジャンク箱に残っていた古いプロックコンデンサを切断して中身を抜いて、この中に組み込みました。高さは元のブロックコンに合わせましたが、色は黒から灰色に変わりました。
 
 付け替えて鳴らしてみると、低音の安定感が大幅に向上しています。この影響でしょうか、高音も明るく硬い感じに変わりました。回路的には何も変わっていません。電源のコンデンサだけでこんなに変わるとは予想以上。
 このコンデンサの実働時間はかなり長いです。無理の無い使い方なので容量抜けはしていませんが、長く使っている間に何か特性が劣化していたのかもしれません。そうだとすると、古いアンプなどのプロックコンの交換時期の判断が難しくなります。
 元のコンデンサは当時の一般的な物です。この間に2回ほど、電解コンデンサには大きな進歩がありました。この世代の差が音の違いになっているとしたら、使用時間の長短にかかわらず、古い世代のプロックコンは交換した方が良いという事になるのかもしれません。
 いずれにしても、たいへん悩ましいことです。

2019年02月17日追記
 同様の手法で6BX7-PPアンプもブロックコンデンサを更新しました。こちらも容量は抜けてなかったのですが、交換すると低音も高音もすっきり感が増しました。やはり古い電解コンデンサは替えた方が良さそうです。