2024年1月14日日曜日

ラックス MQ-60/KMQ-60 アンプの修理に関して

ここにアンプの製作の記事を載せるようになってから 、今までに数回相談がありましたので、現況での考えをまとめて置きます。何かの参考になれば。

 私が製作した6CA7-PPアンプはシャシーにラックス製MQ-60アンプの解体品を利用しました。この繋がりでの御相談のようです。
 
これはまったくのオリジナルの回路です入手したのはほとんどの部品を外されたシャシー部のみでした。使用したトランスや真空管は元とは異なっています。既存のアンプの改造/修理には該当しないと思います。

 ラックスのMQ-60アンプは微妙に内容の異なるいくつかの仕様があるようですが、基本的にはOY15-5トランスを使用した50C-A10のプッシュプルアンプで、ドライバはカソード結合(ムラード)型で、初段が6267の3結、位相反転が6DT8。最大の問題は出力管の50C-A10が交換困難。次に出力トランスの故障/不良。トランスについては多くの製品に使用されアマチュアの製作にも使われた物ですから、それなりの程度の中古品があるようです。また(それなりの価格ですが)代替に使える製品もいくつかあります。しかし出力管の50C-A10は元々耐久性や寿命の問題があり多くは早期に不良になっています。NECのオリジナルの管で他社製や類似品はありません。使用された製品が少ないので、新品はもちろん程度の良い中古も入手は難しいです。ある程度の期間実用にしようとすると、これは改造置き換えを検討するべきでしょう。

 50C-A10 は回路的には3極管ですがこの規模の3極管は当時も現在も他に存在しません。そしてこれの構造はビーム管を内部で3結にした物ですから、ビーム管(5極管含む)の3結で代用するのは自然でしょう。
 この規模の管で現状で入手が難しくない物でとなると、6L6-GC、6CA7,6550あたりでしょう。

 50C-A10の出自からはカラーテレビの水平偏向管も候補になると思いますが、規格上の耐圧を越える心配とプレートキャップが要る点であまり勧められません。

 いずれもソケット交換が必要です。元の回路部分が動作していたとすると、6CA7に替えるのが簡単そうです。管の外観がだいぶ異なり、出力が少し小さくなりますが、出力トランスとの組み合わせも問題ありません。
 50C-A10はヒーターが50Vで、これを2本直列にして電源の100Vで点火しています。このため搭載の電源トランスには出力管のヒーター用の巻き線がありません。6CA7の場合は4本で6Aの電流になります。電源トランスを載せ替えるか別にヒーター用のトランスを付けるか。前者は費用的に大袈裟になります。後者は筐体には載らないのでケーブル引き出しで別置きする事になります。

 ドライバ回路については、振幅もゲインも問題ありません。バイアス回路は調整範囲を超えるかもしれませんが、抵抗値の変更(追加)で対処できる程度です。裸ゲインが変わるので高域が不安定になるかもしれませんが、位相補償をいじるよりも仕上がりゲインを変えて帰還量を同程度にする方法が簡単でしょう。おそらくこの程度で、元の回路をそのまま保つ事ができると思います。

 なお、3結にする際には、第2グリッドは直接ではなく数百Ω程度の抵抗を介してプレートに結ぶ方が安心です。また、当時のコンデンサは元々耐久性が低くおそらくかなり劣化しているはずなので、積極的に交換すべきです。特に段間の結合コンデンサと位相反転部のグリッドを接地するコンデンサは漏洩電流が怖いですから。そのほか、電解コンデンサも可能なら替えておくべきだと思います。バイアス回路の可変抵抗も交換した方が安心でしょう。あとは・・・入力部の直流阻止は個人的にはぜひ入れたいです。原型尊重という点からもこの程度で済ますのが良いと思います。