2016年2月8日月曜日

6AK6 PP 回路の検討

打ち止めのつもりで作った6AQ5-PPアンプは良い感じになりました。だからこそ、余剰トランスから始まった6AK6アンプは蛇足にならないように丁寧に進めなきゃ。

 流れに乗って真空管が決まりました。出力段の動作はほとんどいじりようが無さそうです。次はドライブ回路。
 出力管の6AK6は許容損失が小さいです。 プッシュプルにするので管は少し楽にはなりますが、ヒーター電力も小さいし、管形も小さいので無理はさせられません。素直にプレート180Vで使います。G2電圧は少し下げて165Vぐらい。ここからドライバの電源を取ると、せいぜい150V程度です。
 仕上がりゲインをわが家基準にして適度にNFをかけるには裸ゲインが120倍ほど。必要な振幅はP-Pで20Vぐらいこれを真空管でやるとなるとけっこう面倒です。

6AK6の大きさ 12BH7Aよりも、6BL8よりもちびっこいです。

 細身でちびっこい管ですが、小さなシャシーの上に4本載せるとあまり余地はありません。無理してもあと2本ぐらいですし、ドライバの管形が出力管より大きいというのも釣り合いが良くないです。やはり半導体で構成するのが妥当です。
 トランジスタアンプとして考えればいろんな方法があります。インピーダンスが高くて5極管なので入力容量も小さいですから、オペアンプで直接駆動することもできます。でも、そっち方向に進むと今回の趣旨とはズレてしまいます。「本来は真空管のところを半導体で代用する」という感じで行くことにします。段数の多い回路は避けて、なるべくシンプルな回路。

 6SN7-PPはgmの高いFETを使って差動アンプ1段で済ませました。6AQ5-PPアンプはカソード結合(ミュラード)型にしました。これらと同じ回路では面白くないです。P-K分割(アルテック型)はシンプルですが、半導体使ってもこの電源電圧では利得と振幅の両立は難しいです。 残った回路の中で、やはり面白そうなのは「自己平衡型」です。古典的な回路ですが、電源電圧の割にゲインと振幅が得られます。最初に12BH7A-PPアンプを製作した際、手持ちの12AX7の活用を考えてこの回路で作ったのですが、やはり12AX7ではじゅうぶんな性能が得られず、結局6BL8を使ったP-K分割に変更してしまいました。3極管では能力不足でもFETとトランジスタのカスコードならそこそこ行けそうです。特に今回は出力管が5極管ですから、その点も楽です。

 手持ちの2SK30を使うつもりで、あらためてSPICEで詳細に検討。FETとしてはあまり高gmではありませんが、真空管なら6C6ぐらいになります。カスコードにして150Vかければ必要なゲインは得られます。入力容量の心配が少なく、インピーダンス的にも楽です。やや部品点数が多いこと、基板上の配線が入り組んで面倒そうなのが難点です。まあ、エッチングして基板作るのではない(穴あき基板を使う) のでなんとかなるでしょう。


2016年1月5日火曜日

余剰の出力トランスの活用を考える

あまり使わないままなりゆきで余剰になった出力トランスを活用するという思考ゲーム

 まず条件を列挙。8KΩのプッシュプル用トランスを活用する。実用的なアンプにする。あまりお金はかけない。入手困難な真空管は使わない。なるべく手持ちの余剰部品を活用する。

 トランスの定格は10Wですが、そんな大出力は不要です。私室で使うアンプとすると、1Wでも足ります。普通に8KΩで使う管を探すと、普通では6AR5あたりでしょうか。昔は安く出回っていた管ですが、最近はかなり高価になっています。そして、これだと6Wほどの大出力が出てしまいます。もっと小出力の管。昔のトランスレスラジオ用の管は、今では入手が難しくなっていますし、バラツキが大きい(らしい)のでプッシュプルにできるペアが組めるかどうか。だいたいPPで8KΩには合わないような。

活用されたそうにしている部品たち


 2次側の4Ωに負荷を繋いでインピーダンスを2倍にして使うと16KΩになりますから、電圧の割に電流が少ない管を探すことになります。先に製作した6SN7-GTのアンプが16kΩのトランスを使っています。電圧の割に低出力の5極管というと・・・6Z-P1か。

 考えているうちに思い出したのが、6AK6という管。定格も特性もだいたい似通っていて、今では入手困難な6Z-P1の代替にもなるらしいです。大型のST管に対してちびっこい7ピンMT管。詳細に見ると、外観だけでなく本来の設計意図も日本的な戦時設計の6Z-P1とはだいぶ違うようです。

  6AK6という型番もちょっと面白いです。米国式の型番は一見論理的ですが、名が似ていても全然別物とか、微妙にまぎらわしいです。 それでも出力用5極管は末尾5が多いですし、末尾6は電圧増幅管が多いとかある程度の傾向はあります。その中で危ないのがこの6AK6と6AK5の関係。6の方が音声用出力管で5の方が高周波用電圧増幅管。実物を見れば判りますが、型番だけではだまされそうです。

2015年11月29日日曜日

ヘッドホンたち

最近は出番が減っていますが、ヘッドホンもあります。それも古い物ばかりいつくも。某所でのネタで手もとのヘッドホンを見直しました。

 まわりに音を散らさずにちょっと大きな音で聴きたい時、まわりに影響されずに微妙な音をしっかり聴きたい時、やはりヘッドホンは効果的です。私室のアンプはパーソナルな用途であり、以前はDTMのモニタとしても働いていました。だから私室用の小型アンプにはヘッドホンジャックが付いています。
 ここしばらくアンプを製作しています。後者のためのヘッドホンは、その際のチェックにも参加しました。前者のためのヘッドホンもいくつかあります。比較的長時間の電車通勤だった頃はカセット再生機で音楽を聴いたりしていましたが、それはずいぶん昔の事。デジタル音楽プレーヤーを経て、最近はたまに携帯で音楽を聴く程度です。そうなると音質よりも携帯性。耳穴式のイヤホンばかりで、頭から被るヘッドホンは出番が無くなっていました。


昭和の日本製品 YS-11とウォークマン
ネタ話のついでに昔のヘッドホンを引っ張り出しました。微妙ないきさつでソニー製の軽量ヘッドホンは3個持っています。1つはカセットプレーヤーの付属品。片方が鳴らなくなり、そのまま袋に入っていましたが、 今回あらためてチェックして、コードを交換修理しました。2個目は、確かソニーのモニタに応募して貰った物で、携帯用ではなく長いコードと太い標準プラグが付いています。3個目は、元々は全日空の機内で使用していた物らしく、空の日のイベントで購入しました。どれも古い物で、弱点の耳当てのスポンジがへたっていました。それでも探すとこれと合う大きさのスポンジがありました。あまり高価ではないので、おもいきって全部交換。
 いずれもよく似た外観で、大きさはほとんど同じですが、弦のあたりとか構造が違います。最近製作したアンプに繋いでしっかり聞き比べると、それぞれ音は微妙に違います。デジタル音楽プレーヤーやタプレットにも繋いで鳴らしてみました。気合いを入れて聴くにはへろい音ですが、携帯機器で鳴らすと不思議といいい感じです。やはりそういった音づくりのようです。

 写真は、元ANAのヘッドホン。昔に伊丹空港で撮影したYS-11の写真をパソのモニタに映して、それを背景に撮りました。糸で吊って撮影して、レタッチで糸を消す。昭和の日本の特撮の手法です。

2015年7月5日日曜日

6Z-P1 Single : アンプのリフォーム

長年私室でBGM用に働いている12BH7Aプッシュプルアンプ。ここへ来て急に仲間が増えました。繋ぎ替えて遊べるように、同じシャシーに載せて前面と背面の配置は同じです。

( このアンプの詳細についてはこちら )

 買い集めた真空管の活用が目的なので、シングルもあればプッシュプルもあり、真空管もざざま。基本的な性能は同じですが、それぞれひとひねりした回路で、内部の造りもあれこれやっています。

 小型アンプを作るきっかけになったのが 6Z-P1シングルアンプ。ずっと以前におもしろ半分で作ったアンプの性能があまりにも情けない状態だったので、本命大物製作の前の腕馴らしも兼ねて作り直しました。
 作りなおして機能的には問題無くなったのですが、やはりしばらくぶりの電気物の製作で、見落としもあり、加工の不手際もあり、中途半端な部分もありました。そしてなにより、外観への配慮がすっかり欠落していました。その後同じシャシーを使ったアンプが勢揃いするとバランスの 悪さが目立って来ました。棚の中で長時間目にする私室のアンプにとっては外観も重要です。

上面の部品配置を変えました。回路や使用部品は同じです。
  
 出力トランスを電源トランスと反対の端に配置し、間に真空管を前後に並べました。ドライバ段の回路は平ラグ板に載せて出力トランスの下に。部品の干渉を見逃していて、製作時にラグ板の配置を変更。製作後もシールド板の取り付けとか手直しがありました。
 あらためて全体を見直し。真空管は太くて背も高いです。出力トランスは定格3Wにしてはかなり小ぶりです。 特徴的な姿のST管は良く見えるように横に並べてたいです。見た目が貧弱な出力トランスはその背後に置く。つまり上面の部品配置をそっくりそのまま90度回転すれば良かった。しかしシャシーを買い直して全部作り直しというのはもったいない。そのまま断念。

 昨日ふと思いつきました。問題の回路部分はほぼ正方形のスペースです。電源部は元のままで、回路の部分だけそっくり取り外して、ここをアルミ板で塞いで、その上に新しく穴を開けて部品を載せる。
 手もとにあった解体資材のアルミ板がうまく使えそうでした。元々若干強度不足だった(ST管の抜き差しはかなり固い)ので補強にもなりそうです。その方針で部品配置を検討して見ました。回路部分はラグ板に載せたまままるっと使うことにしても何とか収まります。配線の引き回しも問題無さそうです。そこで思い切って大改造。今度はシールド板もきちんと作ります。2枚分の穴開け加工に手間がかかりましたが、配線の引き直しは簡単に済みました。全体で半日ぐらいの作業。アルミ板のほか、少しの線材とネジぐらいで、回路部分の部品はそっくり元のままです。ノイズやハムの問題も出ずに済みました。当然ながら出てくる音も元のままですが、一応念のためしばらく音楽をかけます。

2015年6月27日土曜日

6AQ5 PP : 製作 ~ 配線作業 2

一連の私室の小型アンプ群の最終となる6AQ5プッシュプルアンプ。じっくり準備したので、始めれば順調に進みます。

[ 完成したアンプの詳細はこちら ]

 このアンプのドライバ部は半導体の回路です。穴開き基板に組み付けました。万一の間違いがあるといけません。ひと晩置いてから再度チェック。ハンダ付け不良や接触があるといけないので、ところどころテスタも使って調べました。FETがソケット付けなので、この作業は楽です。
 筐体側は、真空管を挿さずに通電チェック。煙も火花も出なくて幸い。高圧も(無負荷なので本来より高く)出ています。ドライバ回路へ行く電圧も正常です。

 基板を筐体内に取り付けて配線を接続。NFの線は繋がないでおきます。真空管のグリッドへの配線は仮付けです。 ここで一応(FET無しで)各部の電圧チェック。異常は無さそう。真空管と違って半導体は少しのことで損傷し、外観では異常の有無が判りません。できる用心はしておくのが吉です。
 FETを挿して、素早く電圧チェック。想定範囲に収まっていました。今度はシンクロを接続してオーディオ信号を入力。ちゃんと逆相の波形が出ています。ここまで来るとひと安心。

完成状態

 真空管を挿して、出力を見ると・・・無事に波形が出ています。思い切ってヘッドホンを接続すると、ちゃんと音が出ます。NFはかかっていませんが、一応それらしい音です。次は位相のチェック。
 やはり正帰還でした。グリッドへの線を入れ替えて、きちんとハンダ付け。ヘッドホンを繋ぐとそれらしい音が聞こえます。どうやらちゃんと動作しているようです。あとはスピーカーを繋いでしばらく様子見です。

外観も整えました
出力トランスは新品です。真空管も新品です。しばらく慣らしが必要です。最初の30分ぐらいは音が安定しませんでしたが、その後はだんだん落ち着いて来ました。この間に各部の電圧をチェック。
 一度常用アンプに繋ぎ替えて、耳を馴らします。その合間に矩形波を入れてシンクロで波形チェック。 出力トランスなど実際の特性が判りませんから、位相補正の値は安全方向に推測で決めています。幸い今回も修正の必要はありませんでした。(場合によっては部品を買いだしに行かなければなりませんから)

 一応これで完成という事で外観を整えました。あとしばらくいろんな音楽を鳴らして様子を見ます。

2015年6月26日金曜日

6AQ5 PP : 製作 ~ 配線作業 1

一連の私室の小型アンプ群の最終となる6AQ5プッシュプルアンプ。今までの電子工作の総まとめという気持ちで製作しています。

[ 完成したアンプの詳細はこちら ]

 このアンプは出力段は真空管をごく普通の回路で使っています。ドライバ部の回路は真空管ではなくFETを使っていますが何のひねりもない普通のミュラード型です。製作の工程は真空管アンプの部分とトランジスタアンプの部分に分けられます。

シャシー内の配線


 外観は真空管アンプそのものですから、シャシーに取り付ける部品の周辺は昔ながらの真空管アンプの手法で製作します。電源スイッチもサイズが小さいだけで昔のスナップスイッチと同じです。
 電源部は平ラグに盛り付けます。コンパクトにまとめられ、部品交換も簡単です。発熱の多い抵抗を電解コンデンサから離す意味もあります。回路の接地点はこの平ラグの下です。
 出力管まわりは立ラグを使った昔風の配線です。使用した立ラグはすべて買い置きの活用です。
真空管ソケットのセンターを結ぶようにアース母線を引いています。カソード抵抗とバイパスのケミコンは真空管ソケットに直接ハンダ付けせずに立ラグで中継しています。真空管の熱が伝わるのを軽減しようという考えです。SGには安全のため直列抵抗を入れました。これも立ラグで中継しています。物理的ストレスで破損することを避けるため、抵抗の足は少し曲げてゆとりを持たせてあります。

 出力トランスはバンド型で、下は広くあいています。ここにドライバ部の基板を取り付けますが、トランズのリード線がここを通るので電界の影響を避けるためにシールド板を設けます。

ドライバ部の基板


 ドライバ部はすべてICピッチの穴開き基板に載せます。今回はちょっと贅沢してスルーホール基板を新規購入しました。スルーホール基板はランドがはがれる心配が無く丈夫です。部品の足を穴にまっすぐ入れて裏からハンダ付けして、先は少し残してすべて切っていまい、細いメッキ線でこの部品の足の先を繋ぐように配線しています。ICを使った回路で良く使う方法で、回路の変更や部品の交換が容易です。
 穴あき基板の配線では、部品の足を折り曲げて回路を作る方法がありますが、この方法では後から部品交換するのが困難になります。


 抵抗は基板から少し浮かせて取り付けてあります。基板と接触してショートする事を防ぐ意味と基板が反った時に破損するのを避けるためです。
 中央の列は電源部です。ここを挟んで左右の回路が対称に載っています。使用したフィルムコンデンサは手持ちの活用です。積層フィルムコンデンサには熱収縮チューブをかけました。FETは直接ハンダ付けせずにソケットを使用しました。

2015年6月25日木曜日

6AQ5 PP : 製作 ~ 部品組み付け

一連の私室の小型アンプ群の最終となる6AQ5プッシュプルアンプ。今までの総まとめとしてゆっくり作業しています。

[ 完成したアンプの詳細はこちら ]

 穴加工が終わったシャシーに部品をねじ止めします。電源スイッチ、ヘッドホンジャック、ボリウムは自身がネジで締め付けて固定する構造です。電源のコード止めははめ合わせです。それ以外はビスナットで止め付けます。
 ひととおり部品を付けて見て、位置を確認し、必要ならば修正するのですが、今回は特に問題はありませんでした。その上で真空管ソケットの脇の立ラグの位置を決め、出力トランスの下のシールド板(兼基板取り付け部)の形を微調整しました。

まずシャシーにネジ止めしてみました。
 
 この中では電源トランスは4mmネジによる固定です。下面にネジの先が出ていて、これをシャシー下側からナットで締め付けます。ナットと平ワッシャは付属していましたが、これに手持ちのスプリングワッシャを挟みました。
 それ以外の部品は3mmのネジを使います。平ラグ板や内部のシールド板はスペーサーを介して取り付けますが、この部分も3mmのネジです。平ワッシャと内歯ワッシャを挟んでいます。ケミコンの足と出力トランスのの取り付け部にはプラワッシャも挟んでいます。ネジやワッシャなどは大阪市内のネジ屋で購入しています。ひと袋50個か100個入りなので、いつのまにか使い残しが溜まります。そして、あれこれ解体した際に発生した使用済みのネジがあります。今回は過去に製作して用途を終えた物たちへのオマージュという意味も含めて、解体品のネジの中から綺麗な物を選って使うことにしました。

経路とかさなりを考えて順に配線してゆきます。


 このシャシーは薄いので、取り付けてからでは配線しにくい部品もあります。後からハンダこてを入れにくい場所の配線は、長さを見て片側だけハンダ付けてしておきます。前面や背面に付く部品は一旦取り外して先に配線をハンダ付けします。逆に真空管ソケットのヒーターなど、部品を付けてからでなければ配線できない所もあります。
 出力トランスの下にドライバ段の基板が付きます。ここには基板の取り付け部材を兼ねたシールド板が被さります。1次側は揃えて真空管ソケットに導きます。2次側の配線は横に引き出して平ラグ板で中継します。

 シヤシーに取り付けた部品の間の配線が一段落したら、ラグ板まわりの配線です。計画性が要りますが、進み出したら早いです。