2016年2月12日金曜日

6AK6 PP 使用する出力トランスを変更

出力トランスはインピーダンスを変換するもの。インピーダンスは巻き数の比で決まります。

 2次側に繋ぐインピーダンスが変われば1次側のインピーダンスも変わります。2次側の4Ω端子に8Ωを繋げば本来8KΩのトランスは16KΩ相当になります。しかしインダクタンスや浮遊容量などは変わらないので、周波数特性などは本来とは異なります。普通は1/2から2倍程度なら実用上はあまり支障が無いと言われ、元からそのようにしてインピーダンスを変えて使えると謳った物もあります。

 今回の6AK6計画の発端は余剰になった8KΩのトランス。これを2倍の16KΩで使うつもりでした。しかし、計画を進めるうちに気になる点が出て来ました。
 このトランスは10W用です。定格の割にはコンパクトですがちびっこい6AK6には寸法的にも過大です。

 死蔵するよりはと思って始めた計画ですが、より良い働き場所があるならそちらの方が良いはず。このトランスを活用してもらえるアテができたので、余剰のトランスはそちらへ譲渡して、より良さそうなトランスをかわりに使うことにしました。

筐体加工をはじめました


  イチカワのトランスに16KΩの製品があり、これを使用することにしました。6SN7プッシュプルアンプに使って音質の点でも気に入っている物です。サイズ的にも似合います。
 イチカワのトランスは通販のみで店頭販売がありません。イチカワにメールで問い合わせると幸い在庫があるとのこと。急いでネットで注文。

 CR類がまだ揃っていませんが、筐体加工と関係ある部品が決まりましたから、まとまった時間を利用してシャシーまわりの工作をすることにしました。アルミの切削くずが出る作業は一気にやってしまう方が良いですから。

※ イチカワは真空管用トランスの製造販売を2022年1月で終了しました。

2016年2月11日木曜日

6AK6 PP 電源まわり

真空管アンプ関係に限りませんが、すでに大阪では電子系工作用の部品が揃いにくくなっています。

 装置の小型化にともなって面実装が多くなっています。それにともなって従来のスルーホール実装用の部品の生産が縮小されたり停止されたりしています。国内の電子部品メーカー自体、だいぶ前から撤退したり廃業したりしています。
 大阪の日本橋の部品屋は現在4軒。1/4Wの抵抗はまだE24で揃いますが、1/2W以上の抵抗は店によって歯抜け状態だったりします。コンデンサは在庫限りの品種が多いです。仕入れを絞っているのか流通の関係なのか、思わぬ部品が在庫切れしていたりすることも多いです。

 ネットの写真やカタログではよくわからない点もあります。やはり実物を見るとイメージが確かになります。交通費の問題はありますが、店頭で見て手にとって確かめて買いたいです。それでも無いのが判っている物は通販に頼るしかありません。
 真空管アンプに関して、いちばん悩ましいのがトランス。今では都合の良いジャンクに巡り会う可能性はまず無いですし、あっても酷く高価です。新品購入できる物はありますが、販売ルートが限られています。

購入した電源トランスと平滑用コンデンサ

 まず電源トランス。ヒーターは0.6Aで足りますから簡単なのですが、問題は高圧巻き線。B電源はが直流で約190Vで50mAほどですから、かなり電圧の低いトランスが要ります。最悪は特注も考えてネットを探すと、使えそうな物がいくつか見つかりました。その中から、「東栄変成器の PT-10」を選びました。センタータップで160V×100mA。電圧はちょうど良さそうで、電流には余裕があります。ヒーターは1Aが2つ。価格も比較的安いです。
 東栄のトランスを使う場合の難関は、店頭販売が中心でネットでメール注文とかできないこと。6BX7シングルアンプで使った時には、都合良く東京へ行く用事があったので秋葉原へ回ったのですが、 次に東京へ行く予定はだいぶ先。仕方なしに、お店に電話をかけました。幸い、代引きで送っていただけたので早く入手できました。

 昔は真空管用の電源回路にはブロックコンデンサがつきものでした。今でも入手可能な物はありますが、小型のアンプには不釣り合いな大きな物で価格も高いです。6SN7プッシュプルアンプ製作の際には、窮余の策で基板付け用のコンデンサを購入しました。容量がほど良い物を選んだら直径が22mmでした。思いついて合う足(バンド)が無いかネットで探し、通販で購入しました。その後は手持ちの直径25mmの足に合うコンデンサを探して使いました。今回はうまく22mmの足を入手できたので、6SN7アンプに使ったのと同じ22mmのコンデンサを使います。

追記
その後、東栄変成器のネットショップができました。現在はネットから購入できます。 

2016年2月8日月曜日

6AK6 PP 回路の検討

打ち止めのつもりで作った6AQ5-PPアンプは良い感じになりました。だからこそ、余剰トランスから始まった6AK6アンプは蛇足にならないように丁寧に進めなきゃ。

 流れに乗って真空管が決まりました。出力段の動作はほとんどいじりようが無さそうです。次はドライブ回路。
 出力管の6AK6は許容損失が小さいです。 プッシュプルにするので管は少し楽にはなりますが、ヒーター電力も小さいし、管形も小さいので無理はさせられません。素直にプレート180Vで使います。G2電圧は少し下げて165Vぐらい。ここからドライバの電源を取ると、せいぜい150V程度です。
 仕上がりゲインをわが家基準にして適度にNFをかけるには裸ゲインが120倍ほど。必要な振幅はP-Pで20Vぐらいこれを真空管でやるとなるとけっこう面倒です。

6AK6の大きさ 12BH7Aよりも、6BL8よりもちびっこいです。

 細身でちびっこい管ですが、小さなシャシーの上に4本載せるとあまり余地はありません。無理してもあと2本ぐらいですし、ドライバの管形が出力管より大きいというのも釣り合いが良くないです。やはり半導体で構成するのが妥当です。
 トランジスタアンプとして考えればいろんな方法があります。インピーダンスが高くて5極管なので入力容量も小さいですから、オペアンプで直接駆動することもできます。でも、そっち方向に進むと今回の趣旨とはズレてしまいます。「本来は真空管のところを半導体で代用する」という感じで行くことにします。段数の多い回路は避けて、なるべくシンプルな回路。

 6SN7-PPはgmの高いFETを使って差動アンプ1段で済ませました。6AQ5-PPアンプはカソード結合(ミュラード)型にしました。これらと同じ回路では面白くないです。P-K分割(アルテック型)はシンプルですが、半導体使ってもこの電源電圧では利得と振幅の両立は難しいです。 残った回路の中で、やはり面白そうなのは「自己平衡型」です。古典的な回路ですが、電源電圧の割にゲインと振幅が得られます。最初に12BH7A-PPアンプを製作した際、手持ちの12AX7の活用を考えてこの回路で作ったのですが、やはり12AX7ではじゅうぶんな性能が得られず、結局6BL8を使ったP-K分割に変更してしまいました。3極管では能力不足でもFETとトランジスタのカスコードならそこそこ行けそうです。特に今回は出力管が5極管ですから、その点も楽です。

 手持ちの2SK30を使うつもりで、あらためてSPICEで詳細に検討。FETとしてはあまり高gmではありませんが、真空管なら6C6ぐらいになります。カスコードにして150Vかければ必要なゲインは得られます。入力容量の心配が少なく、インピーダンス的にも楽です。やや部品点数が多いこと、基板上の配線が入り組んで面倒そうなのが難点です。まあ、エッチングして基板作るのではない(穴あき基板を使う) のでなんとかなるでしょう。


2016年1月5日火曜日

余剰の出力トランスの活用を考える

あまり使わないままなりゆきで余剰になった出力トランスを活用するという思考ゲーム

 まず条件を列挙。8KΩのプッシュプル用トランスを活用する。実用的なアンプにする。あまりお金はかけない。入手困難な真空管は使わない。なるべく手持ちの余剰部品を活用する。

 トランスの定格は10Wですが、そんな大出力は不要です。私室で使うアンプとすると、1Wでも足ります。普通に8KΩで使う管を探すと、普通では6AR5あたりでしょうか。昔は安く出回っていた管ですが、最近はかなり高価になっています。そして、これだと6Wほどの大出力が出てしまいます。もっと小出力の管。昔のトランスレスラジオ用の管は、今では入手が難しくなっていますし、バラツキが大きい(らしい)のでプッシュプルにできるペアが組めるかどうか。だいたいPPで8KΩには合わないような。

活用されたそうにしている部品たち


 2次側の4Ωに負荷を繋いでインピーダンスを2倍にして使うと16KΩになりますから、電圧の割に電流が少ない管を探すことになります。先に製作した6SN7-GTのアンプが16kΩのトランスを使っています。電圧の割に低出力の5極管というと・・・6Z-P1か。

 考えているうちに思い出したのが、6AK6という管。定格も特性もだいたい似通っていて、今では入手困難な6Z-P1の代替にもなるらしいです。大型のST管に対してちびっこい7ピンMT管。詳細に見ると、外観だけでなく本来の設計意図も日本的な戦時設計の6Z-P1とはだいぶ違うようです。

  6AK6という型番もちょっと面白いです。米国式の型番は一見論理的ですが、名が似ていても全然別物とか、微妙にまぎらわしいです。 それでも出力用5極管は末尾5が多いですし、末尾6は電圧増幅管が多いとかある程度の傾向はあります。その中で危ないのがこの6AK6と6AK5の関係。6の方が音声用出力管で5の方が高周波用電圧増幅管。実物を見れば判りますが、型番だけではだまされそうです。

2015年11月29日日曜日

ヘッドホンたち

最近は出番が減っていますが、ヘッドホンもあります。それも古い物ばかりいつくも。某所でのネタで手もとのヘッドホンを見直しました。

 まわりに音を散らさずにちょっと大きな音で聴きたい時、まわりに影響されずに微妙な音をしっかり聴きたい時、やはりヘッドホンは効果的です。私室のアンプはパーソナルな用途であり、以前はDTMのモニタとしても働いていました。だから私室用の小型アンプにはヘッドホンジャックが付いています。
 ここしばらくアンプを製作しています。後者のためのヘッドホンは、その際のチェックにも参加しました。前者のためのヘッドホンもいくつかあります。比較的長時間の電車通勤だった頃はカセット再生機で音楽を聴いたりしていましたが、それはずいぶん昔の事。デジタル音楽プレーヤーを経て、最近はたまに携帯で音楽を聴く程度です。そうなると音質よりも携帯性。耳穴式のイヤホンばかりで、頭から被るヘッドホンは出番が無くなっていました。


昭和の日本製品 YS-11とウォークマン
ネタ話のついでに昔のヘッドホンを引っ張り出しました。微妙ないきさつでソニー製の軽量ヘッドホンは3個持っています。1つはカセットプレーヤーの付属品。片方が鳴らなくなり、そのまま袋に入っていましたが、 今回あらためてチェックして、コードを交換修理しました。2個目は、確かソニーのモニタに応募して貰った物で、携帯用ではなく長いコードと太い標準プラグが付いています。3個目は、元々は全日空の機内で使用していた物らしく、空の日のイベントで購入しました。どれも古い物で、弱点の耳当てのスポンジがへたっていました。それでも探すとこれと合う大きさのスポンジがありました。あまり高価ではないので、おもいきって全部交換。
 いずれもよく似た外観で、大きさはほとんど同じですが、弦のあたりとか構造が違います。最近製作したアンプに繋いでしっかり聞き比べると、それぞれ音は微妙に違います。デジタル音楽プレーヤーやタプレットにも繋いで鳴らしてみました。気合いを入れて聴くにはへろい音ですが、携帯機器で鳴らすと不思議といいい感じです。やはりそういった音づくりのようです。

 写真は、元ANAのヘッドホン。昔に伊丹空港で撮影したYS-11の写真をパソのモニタに映して、それを背景に撮りました。糸で吊って撮影して、レタッチで糸を消す。昭和の日本の特撮の手法です。

2015年7月5日日曜日

6Z-P1 Single : アンプのリフォーム

長年私室でBGM用に働いている12BH7Aプッシュプルアンプ。ここへ来て急に仲間が増えました。繋ぎ替えて遊べるように、同じシャシーに載せて前面と背面の配置は同じです。

( このアンプの詳細についてはこちら )

 買い集めた真空管の活用が目的なので、シングルもあればプッシュプルもあり、真空管もざざま。基本的な性能は同じですが、それぞれひとひねりした回路で、内部の造りもあれこれやっています。

 小型アンプを作るきっかけになったのが 6Z-P1シングルアンプ。ずっと以前におもしろ半分で作ったアンプの性能があまりにも情けない状態だったので、本命大物製作の前の腕馴らしも兼ねて作り直しました。
 作りなおして機能的には問題無くなったのですが、やはりしばらくぶりの電気物の製作で、見落としもあり、加工の不手際もあり、中途半端な部分もありました。そしてなにより、外観への配慮がすっかり欠落していました。その後同じシャシーを使ったアンプが勢揃いするとバランスの 悪さが目立って来ました。棚の中で長時間目にする私室のアンプにとっては外観も重要です。

上面の部品配置を変えました。回路や使用部品は同じです。
  
 出力トランスを電源トランスと反対の端に配置し、間に真空管を前後に並べました。ドライバ段の回路は平ラグ板に載せて出力トランスの下に。部品の干渉を見逃していて、製作時にラグ板の配置を変更。製作後もシールド板の取り付けとか手直しがありました。
 あらためて全体を見直し。真空管は太くて背も高いです。出力トランスは定格3Wにしてはかなり小ぶりです。 特徴的な姿のST管は良く見えるように横に並べてたいです。見た目が貧弱な出力トランスはその背後に置く。つまり上面の部品配置をそっくりそのまま90度回転すれば良かった。しかしシャシーを買い直して全部作り直しというのはもったいない。そのまま断念。

 昨日ふと思いつきました。問題の回路部分はほぼ正方形のスペースです。電源部は元のままで、回路の部分だけそっくり取り外して、ここをアルミ板で塞いで、その上に新しく穴を開けて部品を載せる。
 手もとにあった解体資材のアルミ板がうまく使えそうでした。元々若干強度不足だった(ST管の抜き差しはかなり固い)ので補強にもなりそうです。その方針で部品配置を検討して見ました。回路部分はラグ板に載せたまままるっと使うことにしても何とか収まります。配線の引き回しも問題無さそうです。そこで思い切って大改造。今度はシールド板もきちんと作ります。2枚分の穴開け加工に手間がかかりましたが、配線の引き直しは簡単に済みました。全体で半日ぐらいの作業。アルミ板のほか、少しの線材とネジぐらいで、回路部分の部品はそっくり元のままです。ノイズやハムの問題も出ずに済みました。当然ながら出てくる音も元のままですが、一応念のためしばらく音楽をかけます。

2015年6月27日土曜日

6AQ5 PP : 製作 ~ 配線作業 2

一連の私室の小型アンプ群の最終となる6AQ5プッシュプルアンプ。じっくり準備したので、始めれば順調に進みます。

[ 完成したアンプの詳細はこちら ]

 このアンプのドライバ部は半導体の回路です。穴開き基板に組み付けました。万一の間違いがあるといけません。ひと晩置いてから再度チェック。ハンダ付け不良や接触があるといけないので、ところどころテスタも使って調べました。FETがソケット付けなので、この作業は楽です。
 筐体側は、真空管を挿さずに通電チェック。煙も火花も出なくて幸い。高圧も(無負荷なので本来より高く)出ています。ドライバ回路へ行く電圧も正常です。

 基板を筐体内に取り付けて配線を接続。NFの線は繋がないでおきます。真空管のグリッドへの配線は仮付けです。 ここで一応(FET無しで)各部の電圧チェック。異常は無さそう。真空管と違って半導体は少しのことで損傷し、外観では異常の有無が判りません。できる用心はしておくのが吉です。
 FETを挿して、素早く電圧チェック。想定範囲に収まっていました。今度はシンクロを接続してオーディオ信号を入力。ちゃんと逆相の波形が出ています。ここまで来るとひと安心。

完成状態

 真空管を挿して、出力を見ると・・・無事に波形が出ています。思い切ってヘッドホンを接続すると、ちゃんと音が出ます。NFはかかっていませんが、一応それらしい音です。次は位相のチェック。
 やはり正帰還でした。グリッドへの線を入れ替えて、きちんとハンダ付け。ヘッドホンを繋ぐとそれらしい音が聞こえます。どうやらちゃんと動作しているようです。あとはスピーカーを繋いでしばらく様子見です。

外観も整えました
出力トランスは新品です。真空管も新品です。しばらく慣らしが必要です。最初の30分ぐらいは音が安定しませんでしたが、その後はだんだん落ち着いて来ました。この間に各部の電圧をチェック。
 一度常用アンプに繋ぎ替えて、耳を馴らします。その合間に矩形波を入れてシンクロで波形チェック。 出力トランスなど実際の特性が判りませんから、位相補正の値は安全方向に推測で決めています。幸い今回も修正の必要はありませんでした。(場合によっては部品を買いだしに行かなければなりませんから)

 一応これで完成という事で外観を整えました。あとしばらくいろんな音楽を鳴らして様子を見ます。