2020年9月3日木曜日

抵抗器も熱い

まだまだ暑い日が続いてますが、そろそろ秋が近い感じ。朝晩の風は少し涼しくなって来ました。

 私室ではトランジスタアンプと併用しながら真空管アンプで音楽鳴らしています。気分程度の違いですが、先月は消費電力が最小の6AK6-PPが働いていました。今月は気分を変えて6Z-P1のシングルに。シングルアンプですから、出力の有無にかかわらず電力を消費します。音になっていない分はすべて熱です。

 真空管アンプでは、真空管のヒーターの発熱が目立ちますが、それ以外の部分も発熱しています。大型の管では出力管のプレートからの熱も目立ちます。しかしそれ以外の回路の発熱も要注意なのですが、昔は普通はほぼ完全に意識されていませんでした。

 真空管にかぎらず、電子回路のあちこちに抵抗器が使われています。抵抗に電流が流れると{ 電流 × 電圧=電力 }の分の熱が発生します。この熱は抵抗器自体を加熱します。だから電力の大きな抵抗器は温度に注意が必要です。これはトランジスタ回路でも同様、というか、実装密度が高く温度に敏感な分一層要注意だったのです。
 トランジスタは温度で特性の変わるので発熱とその処理を考えるのは当然の事。そしてその心配は一緒に組み込む抵抗器にも及ぶ。

12G-B3/7シングルアンプ 出力管まわりの抵抗の処理

 昔の真空管用の抵抗器は容量の割に外形が大きかったです。そのため大きな表面積から熱を放散することができるので、定格に近い電力でもあまり高温にはなりません。たとえば1/2Wの抵抗は1/2W近い電力で使っても長時間耐えました。ところが最近の小型の抵抗は、短時間ならその電力に耐えるという設定です。1/2Wの抵抗を1/2Wの熱が発生する所に使うと、数分も経たずに非常な高温になります。つまり、抵抗器からの熱の行方も考えて、容量に余裕のある(表面積が大きい)抵抗を使うか、放熱の処理をしなければならないのです。


 抵抗で発生した熱は、一部はリード線を伝わり、残りはその表面から周囲の空気に伝わります。抵抗の周囲の空気の温度が上がり、この熱は周囲の部品を暖め、最終的には筐体に伝わります。抵抗の周囲に適切な通気が確保できていなければ、筐体内は筐体表面より高い温度になります。発生した熱は最終的に筐体の外面から放熱されるのですから、余分な回り道を辿るよりは、抵抗の熱を効率良く筐体に伝える方が良いはずです。

  アマチュアの製作などで、大きな放熱器を密閉した筐体内に取り付けたものがありますが、これはまったく無意味です。放熱器を外面に付けるか筐体内の通気を確保する、あるいは筐体自体を放熱器として扱って熱の流れを作るべきです。

 写真の12G-B3/7シングルアンプはカーソド抵抗器の発熱が大きいです。低μでバイアスが深く、シングルアンプで電流が大きいです。概算で1.4Wぐらい。通常の炭素皮膜(金属皮膜も同様)は外装の耐熱性が低いので大型の物を使っても長時間の使用では焼け焦げの心配があります。そのため耐熱性が高いセメント抵抗を使用しました。小型であるかわり表面からの放散だけでは温度が高くなるので、リード線からの放熱も利用します。取り付けには磁器製のタイトラグを使用し、熱が筐体に伝わるようにしました。ラグの足に近い側に抵抗を置き、熱が嫌いなコンデンサは少し離してあります。

 G2に直列に入っている抵抗は手持ちの難燃性皮膜の抵抗を使いました。外装の耐圧の不安はありますが、電流が小さいので小型の炭素皮膜で済みます。

2020年8月10日月曜日

真空管アンプは熱い?

暑い日が続いてます。あとしばらく我慢。そんな中でも、今年は真空管アンプで音楽聴いてます。

 真空管は橙色に灯るヒーターがポイント。これは飾りではなく、真空管が熱さに耐えて真面目に働いている証拠。だから、LEDなど仕込んで照らすのは何か違うような気がしています。

 冬は暖かく見えるヒーターの灯りですが、夏は暑苦しく感じてしまいます。とは言ってもこれは気分的な物で、室内で使っている他の電機製品全体から見れば問題になるほどの発熱ではありません。特に最近製作したような小型アンプならばその消費電力自体が小さいので、ホント気分程度の違い。でも、アンプの置き場所は棚の中なので・・・・

 しばらく前に電源1次側で消費電力を測りましたから、これに従って春から夏に向かって、順繰り発熱の多いアンプから少ないアンプへと繋ぎ替えて来ました。そして、先月半ばからは消費電力最少の 6AK6-PP が働いています。
6AK6プッシュプルアンプ

 このアンプは5極管のプッシュプルで効率が良いこと、ドライブがトランジスタという事もありますが、使っている 6AK6 のヒーター電力が小さいことが効いています。.6.3Vで150mAですから、4本でも僅か約.3.8Wです。
 あらためて、他のアンプのヒーターの電力を計算して見ます。最大は当然ながら 12G-B3/B7シングルで約15W。次が12BH7ブッシュブルの約13Wですが、これはドライバの6BL8のヒーター電力が大きいからです。出力管だけなら 6SN7プッシュプルと同じ約7.6Wです。ドライバが真空管だとその分のヒーターが効いてきます。6AQ5のプッシュプルは駆動が半導体ですから450mAが4本で約13W。シングルの方はドライバに使った6AU6の分がかわりに加算されて約9.5W。6BM8は複合管で、その3極部が加わって約9.8W。6BX7はヒーター電力が大きいですが、1本でステレオになっているので、ドライバ込みで約11Wで済んでいます。管は大きいですが、6Z-P1のヒーターは6AR5より小さいです。そのためドライブが半導体という事もあって約4.4Wです。いずれも、普通の電球よりずっと少ない発熱です。つまり気にするほどの事では無いです。

 もっと暑くなると冷房をかける時間が増えるので、そうなれば居直ってラスボスの6CA7-PPを部屋で鳴らすのもアリかもしれません。

2020年4月3日金曜日

BGMにmp3をかける (その2)

作業中とか、だらだら音楽をかけるにはUSBメモリーに入れたデジタルデータが便利。机上用アンプに繋いでる装置の使い勝手が良いので、もうひとつ同じような物を作ることにしました。

 デジタルの音楽データにはいろんな形式があります。いちばん一般的なのはmp3でしょうか。圧縮効率が良いのですが、音質的にはいくつか問題があります。非可逆圧縮であり、その圧縮時のアルゴリズムによって音質がかなり変わるのが困りもの。mp3の他にもいくつかの形式がありますが、総合的に見れば大同小異。結果、単独の音楽用についてはmp3が使われ続けています。一方、まったく非圧縮のwavデータからある程度小さくできる可逆圧縮の形式もいくつかあります。両者を合わせればかなりの種類があります。統一できれば良いのですが、非可逆形式の場合は変換するほどデータとして劣化がおこります。つまり、ある程度一般的な形式については、そのまま再生する方向で考えた方が良いでしょう。

 で、今回入手したモジュールは、以前に入手した物より多くの形式をサポートしています。電源が5V単独なのは同じですが、直接スピーカーを駆動するのではなく、別のパワーアンプに接続する仕様です。つまり出力がグランド基準のラインレベル。これは案外使いやすい??

ケースも含めてすべて余剰部品と解体廃品の活用


 で、とりあえず+5V(USB電源)を繋いで見ました。ちゃんと機能して、音楽が再生されたので、不要装置の解体廃品を利用して実用的な装置にまとめることにしました。トランスは少し電圧が高いですが、必要な電流は少ないですから、5Vの3端子電源ICを通せば問題無い。

 簡単な工作で済ませて、オーディオセットに繋いで聴くと・・・やはり音がガサツな感じ。基板上にはチップ部品がいくつか付いてますが、ちゃんとしたフィルタになっているようには見えません。そこで前作で有効だったCRフィルタを付けてみました。ライン出力でインピーダンスが不明なので、適当に作ったのですが、効果がいまひとつな上に音質に影響が出ました。

 やはりトランジスタでバッファを入れるか。という事を考えていて思い出したのが、オペアンプ使った帰還型のLPF。幸い整流直後の電圧がDC12Vほどありますから、念のため9Vの3端子レギュレータを挟んでも汎用オペアンプを働かせるのに足ります。
 この時期に部品の買い出しには行きたくないです。手持ちをかきまわしたところ、解体部品も活用すれば16KHzのフィルタができることが判りました。という事で急遽追加工作。

 フィルタは昔にオペアンプで作って遊びました。それで甘く考えて、電源まわりの処理をテヌキしたら異常発振が起こり、急遽パスコンを追加。グランドの処理をいいかげんに済ませたのが祟ってハムが出て、レギュレータまわりとか配線をやりなおし。さらには、ケチって使った解体部品の抵抗の1本がノイズ発生器になってたり・・・と、いろいろあって1日遊べました。

2019年10月14日月曜日

アンプの発熱と電源トランス

大出力アンプはそれ相応に熱くなりますが、真空管アンプは小出力でもそこそこ熱くなります。

 A級アンプでは無信号時には出力に回されない分の電力が出力素子で消費されますから、大出力アンプほど発熱する理屈。AB級アンプでもアイドリング電流が流れます。このアイドリングはトランジスタの場合はかなり少なくて良いので、大出力アンプでもあまり熱くならないのです。
 ドライバ回路はA級動作なので無信号時にも電流は流れます。ここは出力の大小よりも回路方式による違いが効いてきます。動作電圧が高い真空管アンプの方が不利ですが、一般的に見るとトランジスタの方が複雑な回路を使う傾向があるので、この部分は案外トランジスタアンプの方が発熱しているかもしれません。
 しかし真空管にはトランジスタには無いヒーターというやっかいな物があります。特別な物を除くと小型の管でもそこそこの大きさがあり、おおまかな傾向としては、大出力用の管ほど大きくなります。

 私室のアンプは棚の中で使うので、あまり発熱が多いと夏場は困ります。真空管を含む信号回路部分は(各部の動作電流の和×B電圧)で求められます。電流の和は、電源部のフィルターの抵抗のドロップから簡単に求められます。これにヒーター電力を加算すると、回路全体の消費電力になります。この値からアンプの発熱の多少を知ることができます。

 ところが、これらは電灯線の電源からそのまま供給されるのではなく、すべて電源トランスを通って来ます。この部分でかならずいくらかのロスが生じます。このロスもアンプを熱くさせる要素になります。つまり、実際のアンプの熱さを考えるなら、トランスも込みで見なければなりません。

 ふと思いついて、揃った私室用小型真空管アンプの実際の消費電力を測ってみることにしました。それには電源トランスの一次側に入る電流を測れば確かです。教科書的には、ここに電流計を入れれば良いのですが、それには交流電流計が必要です。
そこで、『きわめてアマチュア的で野蛮な方法』を使って測定することにしました。

下記の方法は感電や測定機器など破損する危険が高いです。安易におこなってはいけません。


 延長コードを加工して、片方の配線の途中に1Ωの抵抗を直列に入れました。回路全体から見ると1Ωは無視できる値です。この両端の電圧を測ります。ここに生じる電圧を測ればオームの法則から電流が求められます。たとえば 0.3Vであれは 0.3A流れているので、電力は 30Wという事になります。

測定結果は 昇順に
6AK6 プッシュプル13W
6Z-P1 シングル 20W
6SN7 プッシュプル 21W
6BM8 ULシングル 25W
6BX7 シングル 26W
6AQ5 プッシュプル 29W
6AQ5 シングル 30W
12BH7A プッシュプル 32W
12G-B3/B7 三結シングル 36W

 6AK6-PPと6SN7-PPはヒーター電力が4Wほど違いますが、規模的にはほぼ同じですから3極管と5極管の電圧利用率の差が効いているようです。
 6AQ5 シングルと6BM8 ULシングルはほぼ互角のはずなのですが、6AQ5 シングルがずいぶん高いです。このアンプは(定格では容量に余裕があるはずなのに)電源トランスがかなり熱くなるので、ここの損失が大きいのでしよう。

 12BH7A-PPはかなりA級寄りの動作で、プレート損失では6BM8-Sや6BX7-Sと同程度ですが、ドライパが真空管の6BL8というのが不利に働いてます。6AQ5-PPはを12BH7-PPに合わせて製作しました。だいたい近いですが少し小さく出ています。12BH7-PPの方が電源トランスが熱くなるので、能率の差でしよう。
 かなり超過するつもりで作った12G-B3/B7 三結シングルが意外と低く出ました。このアンプは電源トランスがあまり熱くならないので、トランスの能率が良いのかもしれません。

2019年9月29日日曜日

昔に12G-B7の3結に手を出していたとしたら 仮想ゲーム(2)

あらためて見ると、12G-B3/B7の3結って、すくなくとも6G-A4や6R-A8よりは2A3似近い。そこで2A3の代用にしようと思いついた・・・という仮定で思考ゲーム。

 12G-B7が現役だった頃、私はまだ雑誌の記事を見ながら継ぎ接ぎする程度の知恵しか働きませんでした。というか、だいたいあの頃のアマチュアの多くはメーカの動作例か雑誌の作例の動作をなぞるようなやり方が普通だったと思います。

 12G-B3は、定格が10Wですから、これを守るとすると2A3の2/3しかありません。しかし6G-B3Aの事も考えると、おそらオーディオ用では12~13Wぐらいで使えるでしょう。12G-B7であれば2A3の代役になりそうです。 その場合も耐圧をいくらと見るかが問題です。偏向管としての規格ではG2の耐圧が250Vと低いです。G1との絶縁で抑えられていると考えるなら、3結の場合もこの電圧に収めるべきです。しかしこの電圧はパルス回路で使うビーム管として、実用的な電流で使える範囲を示しているという見方もできます。これは12G-B3がは200Vである事からも推測されます。おそらく絶縁の点ではもっと行けるはず。そうならば、3結なら300V以上でも行けるでしょう。
 当時は定格ぎりぎり、むしろ多少超過ぐらいが普通だったので、300Vで使うとすると2A3とほぼ互角(250Vだとひとまわり小出力)になます。 

12G-B7 は大型の管です

 2A3と違って12G-B7は傍熱管ですからヒーターの処理が楽です。これはプッシュプルにする場合には効果絶大です。しかも、グリッド抵抗の制限が緩いので、固定バイアスにする場合も楽です。

 AB級プッシュプルの動作を考えます。この場合はバイアスが40Vを越えるぐらいになりそうです。2A3よりは少し低いですが、6CA7や6L6などよりも高いです。これが6G-A4や6R-A8だと半分ぐらいになるので、P-K分割でも何とかなります。メーカーはこのあたりを狙ったのでしょう。
 当時なら大型アンプでドライブ電圧が欲しい場合はカソード結合型(ムラード型)でしょう。問題はB電圧がだいぶ低いこと。普通に初段と反転段を直結にしようとすると電圧配分に苦労しそうです。2A3の場合はここにもう1段入れて電圧を上げたりしている回路を見掛けます。グリッド抵抗の事を考えてカソードフォロワーを挟んだりしている回路もあります。
 もっとも、自己バイアスだとその分B電圧を高くしますから、位相反転段の電圧はもう少し上がるので、それで何とかなるかもしれません。ここから発想して悪知恵を働かせると、固定バイアスのマイナスが50V以上あるはずなので、この分で下へ引くという手がありそうです。そしてせっかくマイナスに引くのだから、やはり初段から差動回路となると思うのですが、当時は考慮外だったでしょう。
 事の発端の6CA7-PPアンプではドライバを2段差動にしました。この回路ではDC安定性の理由で2段を直結にしなかったので、電圧配分の問題はありません。+250Vと-150Vで働かせていますが、この電圧で振幅40Vを得るのは全然問題無いです・・・・

 って、結局このへんの話に戻って来てしまいました。

2019年9月23日月曜日

昔に12G-B7の3結に手を出していたとしたら 仮想ゲーム(1)

あらためて特性図見ると、12G-B3/B7の3結って、6G-A4や6R-A8よりは2A3似近い。現役当時にも注目されていて良さそうな物だと思うけど、昔の雑誌などで見た記憶はない。

 2A3は古典管。使いにくい要素満載。逆に言えば、改良して使い勝手を良くするポイントはたくさんある訳です。ならば、自称2A3の後継という管、あるいは他薦2A3のリリーフ役がいろいろあっても良さそう。

 どうやら6G-A4や6R-A8がウリにしたかったのは、ドライブの感度。感度が低ければドライブ段のゲインが必要です。同出力で考えれば振幅が要ります。これを低い電源電圧で得なければならない。これは同時にバイアスが深い事にもなり、そうなると、自己バイアスで使った時の電源のロスが大きくなります。6G-A4は2A3の倍以上の感度ですから、アマチュア的にはかなりハードルが低くなります。
 しかし、これによりμが高くなり、プレート電流が少なくなり、内部抵抗が上がる。ヘタすると歪みも増える。なんとなく"2A3が良い"という理由から離れてしまうような。

日本の近代的真空管は欧米メーカの技術を元にしています


 自称2A3の後継が期待ハズレなら、他薦はどうだろうか。おそらくそういう方向の動きはあったはずです。でもほとんどその跡が残っていません。多極管の3結は2A3の代替にはならない、あるいは別物という意識だったのでしょうか。

 3結で使うとして、規模的に2A3ぐらいになる管があるでしょうか。オルソンアンプは6F6の3結をパラで使ってます。調べ直すと6F6の3結は2A3の半分に似ています。しかし6V6や6L6の系統は3結では電流が小さくなって出力が取れません。6BQ5も同様。
 6BM8は案外3結μが低く出力が取れますが、元々が小さいので出力は2A3の半分。この上のクラスだと、6CA7や6G-B8。この6G-B8は水平偏向管の出身です。ならば、アマチュア的には水平偏向管の3結でオーディオアンプは有りだったのではないかしら。

 プレート損失は-B7なら2A3と同等。3結のμは同程度。電流が多く流れて内部抵抗が少し低い。ヒーター電力は少し大きいですが、傍熱なので扱いやすさは段違い。グリッドバイアスの抵抗を高くできるのは大きなメリットと思います。プレートキャップが必要ですが、当時であれば入手は容易。当時の価格は大差なさそうですが、-B7はテレビのジャンクという手もありましたから、アマチュア的には面白そうなのですが。

注意: 記載の数値は"てきとう"です。ちゃんと計算してません。


 12G-B3や-B7が現役だった頃。これらを3結にして有名な2A3の代替に使ってアンプを作る・・・という仮定で思考ゲームです。(あくまで思考ゲームです。)今回製作したアンプは、12G-B3をかなり軽く使って、ドライブは半導体です。これは現代の発想。当時の常識に合わせたな回路を考えます。

 当時を想定していますから、半導体は電源のダイオード以外使いません。-B7を定格一杯の15Wで使います。出力トランスは2A3用が使えそうです。(G2の耐圧を考慮すると)電源電圧は2A3より低目で250V~300Vぐらいでしょう。これで少し多目の60~70mmAほど流して・・・やはりほとんど2A3の置き換えです。

 バイアスが少し浅くて30V程度。当時の使い方を想定すると、適度のNFかけるのに必要なゲインは100倍ぐらい。これを低いB電圧で得る。そのためには6AU6とかgmの高い5極管を使う。しかしこうするとインピーダンスが高くなって、3結の出力管をドライブするのが苦しくなるので、3極管のカソードフォロワーを入れる。これに12AU7の半分を使うのは・・・ならば、5極3極の複合管の方が合理的。6BL8とか6AN8とかちょうど良さそうです。B電圧が(150Vでは厳しいですが)200Vほどあれば必要な振幅は得られそうです。

 って、今回半導体で作った回路と同じような物になりました。これなら、当時のラジオ少年でも製作できたかしら? でも、当時はカソードフォロワーはあまり一般的で無かったですから、12AU7+12AU7で3段アンプにして発振に悩まされたような気がします。

2019年9月16日月曜日

音声出力用3極管

 昔から熱烈な3極管支持者はたくさんいます。使い方にもよるけれど、3極管と多極管は違う音がするのは確か。問題はその差をどう考えるか。

 音声出力用の5極管は純粋なオーディオ用はもちろん、小電力の小型セットから業務用システムまでいろんな所に使われていて、用途に合わせた大小さまざまの音声出力用の管が作られました。
 熱烈な支持者があるのだから、当然3極管には音声出力用に特化した性能の管がいくつも作られていて良いはずです。しかし、いつでも多く出て来る管は 古典管の2A3。それしか無いのか、代え難い何かがあるのか。だから使いにくくても我慢して使う。そのうちに、これを使いこなすのが目標になり現代に至ったという感じかもしれない。

12G-B3 と 6BX7 / 発熱の大きな6BX7の方が管が小さいです。


  あらためて2A3のスペックを見てみます。直熱管でヒーターが2.5Vの2.5Aですから、傍熱管なら6.3Vの1~1.5Aぐらいでしょうか。許容損失は15Wありますが、Ebが300Vです。内部抵抗が0.8Kと低いですがμが4と低いです。それにともなってバイアスがたいへん深くなります。グリッド電流が流れやすいらしく、グリッド抵抗が自己バイアスなら500Kですが固定バイアスなら50KΩとなっています。つまり、ヒーターの事は別にしても、かなり使いにくい管です。

 『和製2A3』と言われる6G-A4をあらためて見直すと、簡単に2A3程度の出力が得られる3極管という感じで、スペック的にはまったく別物。Ppは少し小さい13Wで、Ebが350Vと高いです。しかし、元の6BX7から引き継いで、μが10と高く内部抵抗も1.4Kあります。その分でバイアスが半分ほどで済みます。グリッド抵抗が固定バイアスでも250Kなので、ドライブのしやすさは段違いです。
 これが6R-A8だとPpが15Wで2A3と同じですが、管形を考えると厳しそうです。μが10は6G-A4と同じですが、内部抵抗は少し低い。gmが少し高く、バイアスが低くなってます。最大出力は2A3と互角というのですが、それにはぎりぎり高い電圧をかける必要があります。やはり2A3の後継代替ではなく全くの別物。なにより、この6R-A8はビーム管の6R-B10を内部で3結にして生まれた管。純粋の3極管では無いという意見も。

 有名なオルソンアンプは6F6の3結のパラ。確かに6F6の3結は2A3の半分に似ている。純粋の3極管にこだわらなければ5極管の3結で済む。だから音声出力用三極管の新種は需要が低かった??

 12G-B7を3結にすると、Ppの15Wは2A3と互角(12G-B3は10Wで考えておくべきでしよう)。μは6ぐらいですが、内部抵抗はひとまわり低く0.5KΩぐらい。つまり2A3より低い電圧で電流が流れる管。3結の耐圧は不明ですが、低い電圧で電流が流れますから、プレート損失で先に抑えられます。3結時のグリッド抵抗は不明ですが、出自を考えるとおそらく固定バイアスでも250K以下という事は無いでしょう。バイアスが深い分、ドライブ電圧が要ります。B電圧が低くなる分を考えても、回路的な難しさは2A3より低い感じです。12G-B3/B7が現役だった頃、このような使い方に気付いた人もいたはずです。