2019年2月16日土曜日

BGMにmp3をかける

先日作った12AU7-PPアンプに小型スピーカーを繋いで、作業中のBGMをかけています。

 しっかり聴くのではなく、だらだらと音楽を流すとなると、いちいち交換する手間のかかるCDとかは不都合。多少音質が低下するけど、この点ではパソでmp3を鳴らすのが簡単。しかし、しっかり聴くのでなければパソから送り出すほどの事は無い。スマホとかでも良さそうだけど、いちいち繋ぐのも面倒。

 あれこれ考えているうちに見つけたのは、ちょっと怪しげなmp3プレーヤーのモジュール。何かの組み込み用らしいです。USBかSDメモリーを挿入すれば、中のmp3を連続して再生するらしい。電源は5Vで、出力は直接スピーカーを繋ぐらしい。でもどうやら出力はグランド基準では無さそう。これを何とかして、アンプに繋げるかしら。安かったので、とりあえず試して見ることにしました。

基板に付いているコネクタは電源と左右のスピーカー用です

 まず、電源に5Vを接続して出力端子の電圧を測ると、どちらも+2.5V。差動出力らしい。どこかからグランド基準の出力が取れるだろうか。
 基板の載っているICを見ると、8002と書かれています。検索したら、それらしい製品の資料が出てきました。基板のパターンを追ってみると、資料の推奨回路とピン接続と合致すます。どうやら、コレでアタリらしい。(下の写真)

8002はちょっと面白い構成のICです。

 資料の解説には小電力のBTLオーディオアンプと書かれていますが、内部構成が独特です。というか、これはBTL(負荷ブリッジ接続)というのとは違うような・・・
 内部は2個のパワー・オペアンプのようです。第一ユニットは普通に正負の入力(4と3ピン)が出ていて、推奨回路では反転アンプとして使っています。第二ユニットは内部で-1倍の反転アンプとなるように構成され、この入力は第一ユニットの出力に結ばれています。IC内部で基準の1/2Vccが作られていて(2ピン)、第二ユニットの+入力は内部でここに結ばれています。推奨回路では第一ユニットの+をここに結んでいます。このように、2つのユニットは電力的には独立しているので、片側からのみ出力を取っても問題無さそうです。

 そこで、第一ユニットの出力(5ピン)から引きだして、コンデンサを通してアンプに繋いでみました。けっこういい感じで音が出ます。心配だった耳障りなノイズは問題無さそうですが・・・何か音がザラついています。基板上にフィルタらしい物が無いですから、デジタルのノイズが素通しで出ているのでしょう。そこで簡単なフィルタを付けてみることにしました。
 手もとにある使い残しの抵抗とコンデンサを組み合わせて2段のCRローパスフィルタを作りました。8002はスピーカーを鳴らせるICですから、フィルタのインピーターンスは低目にして、後続のバッファは無しで済ませました。(上の写真奥側の小基板)

 簡単なフィルタですが、それなりに効果があるようです。常用のシステムに繋いでしっかり聴くとやはりガサツな音ですが、音量控え目でぼんやり聴くならあまり支障無いぐらいで、BGM用ならじゅうぶん使えます。(片出力で使っているので電源ON/OFF時のポップノイズは出ます。)

 合板の端材でケースのような物を作りました。バネル面の電源スイッチは操作しにくいので、小型のスナップスイッチを並列に付けました。

2019年2月11日月曜日

カソードNFをかけました 6AQ5-S

キャラ的にどうしても出番が少ない6AQ5シングルアンプ。改造してしっかりとK-NFをかけます。


 改造と言っても、トランスや真空管はそのまま使って筐体もそのまま使います。発熱対策で周囲の通気を良くするため、6AQ5はサブパネルで約4mm沈めて付けてます。この部分もそのまま使います。このため外観はまったく変更無しです。

 インピーダンス確保のためにエミッタフォロワを追加しますが、これは内部のスペースに収まります。ネジ穴も元のをそのまま使いますから、改造するのは内部の回路だけです。
 トランジスタ用の電源はコンデンサ保護の分流抵抗から分けて取りましたから、電源回路は元のままです。
 接地されていた出力管カソードのケミコンは出力トランスの2次側に接続変更します。このため立ラグ板を追加して中継します。このコンデンサは容量を増すために新規購入して交換しました。
 ヒーターバイアスは出力管のカソード電位を利用した簡易な方法でしたが、カソードが出力とともに振られるようになるので、これが使えなくなります。そこでヒーターは片側接地にしました。初段のカソードがコンデンサで接地されるので支障無いと判断しました。初段のG2のバイパスは直接グランドに繋ぎました。 

改造後:左の基板がエミッタフォロワーです

 エミッタフォロワーの部分はスルーホール基板の残材を利用して作りました。トランジスタは汎用の小信号用なら何を使っても大差無いです。後で差し替えて遊ぶかもしれないのでソケットにしてあります。
 6AU6の関係の部品は元と同じように平ラグ板に載せます。値の変わる抵抗と位相補正用のコンデンサは交換しました。その他の多くは再利用ですが、回路が大幅に変わるため一旦全部外して付け直しました。このような改造が簡単なのは平ラグ配線の利点です。

 バッファ基板の組み立ても含めて、改造はゆっくりやって半日の作業。それから動作チェック。
 まず何も挿さずに電圧を確認。それから出力管を挿して、カソードNFを付けて発振しないことを確認。トランジスタを挿してバッファの動作を確認。6AU6を挿して、もう一度電圧チェック。それから信号を入れてみます。メージャーNFはかかっていませんが、けっこういい感じの音が出ます。それからNFを接続。
 あらためてスピーカーを繋いでしっかり鳴らします。やはり最初はだいぶ酷い音が出ました。出力トランスの直流磁化が変化したからでしょうか。そのまま鳴らしていると次第に落ち着いて来ました。音の傾向は元とはずいぶん違います。念のため、K-NFを外してみると、以前と同じような鳴り方に戻りますから、この違いはK-NFの効果のようです。記憶にある6V6のULシングルとも違う音です。

 低音がしっかり締まった感じに響くのは同じトランスを使っている6BX7シングルと似た感じです。全体に明るい感じは元と同様ですが、中域も緩さが無くなり、特にボーカルがしっかり聞こえる感じで、これは小音量でも同じ傾向です。思い切って実行した改造ですが、予想以上に効果がありました。

カソードNFをかける方法 6AQ5-S

2015年に製作した6AQ5シングルアンプ。他のアンプと比べると、キャラクタ的にいまひとつ活躍できていません。

 このアンプでは6AQ5を素のビーム管として使用しました。たいへんすっきり聴きやすい音になりましたが、同じ出力トランスを使った6BX7シングルとは対照的。これがビーム管シングルの音なのかもしれませんが、キャラ的には私の好みとは異なります。そしてスピーカーとの相性が出やすい感じで、私室の癖の悪いスピーカ相手では活躍させるのは難しい。
 オーディオアンプで6AQ5シングルの音は覚えがありませんが、原型と言われる6V6は、昔に知人の所で聴いたUL接続シングルアンプの音が印象に残っています。6AQ5もUL接続にしてやれば好ましい音になるのかもしれません。しかしそれにはULタップのある出力トランスが必要です。

 あれこれ考えた結果、もう一度カソードNFを試して見ることにしました。

手もとに使い残った小信号用トランジスタ

 このアンプに使用しているトランスにはNF巻線はありません。2次側が出力管のカソードと同相になるようにするには1次側か2次側のどちらかの接続を逆にしなければなりません。

 巻線を逆接続するのは3段でNFをかけるアンプでは普通におこなう手法です。増幅が3段だと(反転×反転×反転)=逆相ですから、出力トランスを逆接続にして初段のカソードと位相を合わせます。しかし2段アンプでは巻線を逆接続すると初段のカソードに帰還することができなくなります。

 解決策のひとつは、半導体で1段追加するか6AU6を双3極管の2段に換えるなど、3段アンプにしてしまう事。しかしこれは簡単では済まなそう。

 2段増幅の出力トランスを逆接続にすると、全体では反転増幅回路になります。そこで素直にNFをカソードではなくグリッドに返すことにします。でも、そうすると入力インピーダンスが低くなってしまい、オーディオアンプとしては使いにくなります。これを避けるためには前にバッファを置けばよいです。1倍のバッファなら、トランジスタのエミッタフォロワーが簡単です。この部分の電源は、真空管の電源から抵抗で落として作れます。

 この方法なら主要部品はそのまま使えます。筐体もそのまま使えます。期待するような効果が得られなければ元に戻すのも可能です。

 

カソードNFをかける改造 6AQ5-S

5極管と3極管の優劣。特性的な事もあり、製造上の事もある。そしてなにより、使いやすく安い3極管があるのか。

 思い切った方法としては、5極管の3極管接続というのがあります。静特性の上では3極管と同じになりますが、たいがいは大幅な感度低下あるいは出力低下となります。

 UL接続は5結と3結の中間のように説明されます。良いとこ取りという見方もあり、中途半端という意見もあります。G2はその名のようにグリッドであって制御能力がありますから、ここへ帰還しているという考え方が正しいように思います。出力トランスがからんでいるので、実際の動作は解析困難ですが、たいがいは5結とも3結とも異なる雰囲気の音になります。

 6AQ5は背丈は12BH7と同じですが細身です。


 出力トランスがらみで出力段の特性を改善するアイディアは他にもあります。その中で良く知られてるのがカソードNF。トランスの2次側から出力管のカソードに帰還します。このための巻き線を持った出力トランスもあります。

 カソードに戻してNFになるためには、出力管のカソードと同相の電圧が必要です。プッシュプルならば、2次側の4Ωが16Ωの中点である事を利用する方法もありますが、普通のシングル用のトランスを普通に使えば、2次側の出力はプレートと同相ですから、カソードに対しては逆相になります。このためシングルアンプの場合はNF用巻線を持ったトランスを使用します。

 6BM8シングルアンプに使用したトランスは2次側に16Ω端子がありました。製作の際にこれを利用してカソードNFをかける方法を思いつきました、出力トランス全体を上下逆にして、8Ω端子を接地すると16Ω端子には出力と逆相の電圧が(少し)出ます。これを利用(逆相の逆相は同相)してNFをかけたところ、ある程度の効果が確認できました。(最終的には、このアンプは当初の構想どおりUL接続にしました。)
 これをもとに、キャラクタ的に使いにくいと感じていた6AQ5シングルアンプの音質改善を試みました。これはかなり無理やりな方法だったためか、多少改善した面もありましたが、全体としては失敗でした。結局短期間で元に戻してしまいました。

 しかし、カソードNF自体には魅かれるものがあります。あらためて見直しているうちに、出力トランスは普通の使い方をして、きちんとカソードNFをかける方法を思いつきました。

2019年2月7日木曜日

小型密閉式スピーカーを鳴らす

強力なユニットを極小の密閉箱に入れると、フツウではない鳴り方をします。しかしこのスピーカーはアンプを選びます。

 [製作した12AU7-PPアンプの詳細はこちら]

 常識はずれのスピーカー。当然のように低音は絶対的に不足します。しかし(それほど大きくない音で鳴らす限り)ダラダラとレベルは低下しながらも、ずいぶん低い音までしっかり鳴っているのが判ります。ただ、このスピーカーは駆動する側から見るとたいへんしんどいはずです。

 そこで、あれこれ揃った私室のアンプに加えて居室用のアンプなども動員して、繋ぎ替えて鳴らしてみました。その結果、やはりたいへんアンプを選ぶことが判りました。プッシュプルであればそれほど問題無いのですが、どちらかというと3極管が適していて、シングルは3極管でも5極管でも全然ダメでした。いずれもNFがかかっていて、数値的なダンピングファクタはそこそこ低いはずなのですが。(おそらくNFの少ないアンプだと破綻する。)

 低音は物足りないですが、小音量であれば、自然で聞きやすい音です。そして、レベルが下がる低域をイコライザで少し持ち上げると、小さなスピーカーとは思えない音になります。
 ほとんどバッフルが無い形状のためでしょうか、このスピーカーは指向性も奇妙です。軸をはずれても音に違いが少ないです。これは片隅に置いてBGM用に鳴らすには好都合です。

12AU7-PPアンプには 低域を持ち上げるスイッチを付けました

 ほとんどネタで作った変則的なスピーカーと、ネタを固めた小出力アンプの計画が交錯しました。まず3極管のプッシュプルというのはこの性悪なスピーカーには似合いの相手。12AU7は、特性的には12BH7Aと6SN7の中間ぐらい。机上BGM用ならば出力が小ささくても問題無さそう。ヒーター電力が小さく、ドライブにオペアンプを使うので全体の消費電力は小さい。長時間連続で使うBGM用には好都合。
 そこで、このアンプには「バスブースト」機能を付けることにしました。これは昔あったラウドネスとは違って、小型のスピーカーでカットオフ付近以下の低音が不足するのを電気的に補うとことを意図したものです。メインの負帰還ループにコンデンサを挟んで低域の帰還量を減らす簡単な方式にしました。

 製作したアンプにスピーカーを繋いで鳴らし、バスブーストを入り切りしてみます。普通にBGMをかけている状態ではあまり違いが判りませんが、意識して聴けばベースラインがしっかり辿れるようになります。意図したとおりの効果が出ています。

2019年1月31日木曜日

小型密閉式スピーカーという物

先日作った12AU7-PP机上用アンプに関連して、小型のスピーカーの話を。


 ずいぶん前に作ったスピーカーの事を想いだしたのは去年の今ころ、。当時の知人の発案に従って作った物で、普通のスピーカーボックスの設計から見ると全くの異端。

 低音をきちんと出すにはある程度以上の大きさの板に付けるか箱に入れる必要があります。平面の板は、大きくなければ背面の振動が回り込みます。遮音するために背面を閉じると、箱の中の空気がバネのように振舞って、スピーカーの動きに影響します。
 バスレフは、背面から出る音を共振を利用して位相反転して出すという発想です。これによって低音を増強して、小型の箱でも低音を出せるのですが、それより低い音が急激にカットされたような感じになります。また、小容量の箱では特有の癖のある音になり、音像がぼやけて隠った音になりがちで、個人的にはあまり好みではありません。

100φの塩ビ管の曲がりとキャップ。使用ユニットは8cm。


 彼の発案は『小型で強力なユニットをごく小容量の箱に入れて、その中に綿などを空所が無いほどに詰める』という物。これでは当然のように低音は絶対的に不足します。しかし(それほど大きくない音で鳴らす限り)ダラダラとレベルは低下しながらも、ずいぶん低い音までしっかり鳴っているように聞こえるのです。

 どうやら、このような聞こえ方をするにはいくつか条件がある事がわかりました。
  • 大きさの割に大出力の、磁気回路が強力なユニットを使う。
  • 内容積が極端に小さくなければならない。箱の共振点はスピーカ自体よりかなり高いところ。
  • 箱内にほとんど空所が無いぐらいに綿など軽い物を入れる。(吸音よりも空気バネとしての共振を鈍らせる、ダンパのように働くのではないかと思われます。)
  • これらと関係するので、使用するユニットが大口径ではうまく行かない。
  • ユニットはしっかり取り付けて、空気漏れしないように隙間を塞ぐ。
  • 箱自体が丈夫で振動しにくくなければならない。
ネットであれこれ見ているうちに、これに合った感じのユニットが安く出ているのを見つけ、昨年春に東京へ出かけた際に購入して帰りました。これを使っていろいろ検証した後、塩ビ管を使用してスピーカーに仕立てました。

 昔に実験した時の物よりひとまわり大きいですが、出てくる音の傾向は同じ感じになりました。全体には完全にハイ寄りなのですが、中域からなだらかに下がってゆき、レベルは低いものの重低音まで綺麗に出ています。
 全体に制動がかかる感じなのでしょうか、スピーカの能率は低くなります。それでも(大音量が必要ではないので)ボリウムのツマミを少し余分に回せばカバーできる程度。
 一方、このスピーカーは逆起電力が大きくインピーダンスがでこぼこなはずです。おそらくこのためでしょうか、たいへんアンプを選ぶことが判りました。プッシュプルであればそれほど問題無いのですが、どちらかというと3極管が適していて、シングルは3極管でも5極管でも全然ダメでした。いずれもNFがかかっていて、数値的なダンピングファクタはそこそこ低いはずなのですが。(おそらくNFの少ないアンプだと破綻するでしょう。)

 妙に音の粒立ちが良く、ステレオにするときっちり分離します。ほとんどバッフルが無い形状のためでしょうか、スピーカーの軸をはずれても音に違いが少ないです。音量を上げすぎなければ、たいへんすっきり聴きやすい音です。 そして、レベルが下がる低域をイコライザで少し持ち上げると、小さなスピーカーとは思えない音になります。

2019年1月11日金曜日

12AU7-PP 上カバーを作る

机上でパソコン使用時のBGM用に使います。真空管がむき出しではまずいです。

 [製作した12AU7-PPアンプの詳細はこちら]

 棚の中に収まっているアンプと違って不用意に何かがあたる危険が多いです。上部のカバーは必須です。置き場所を考慮すると長手を奥行き方向にして、スイッチとボリウムが前に付きます。少ないとは言え、真空管の発熱がありますから、上蓋に通気穴が無いといけません。この条件でケースを探したのですが、良い物がありませんでした。そこで、汎用のアルミシャシーにパネルを付けて、カバーを製作して被せることにしました。

 全体の発熱が多くないので、適度の通気が確保できれば、ボンネットケースのような物でなくても済みます。昔のラジオやテレビは木製のキャビネットでした。このイメージで、上部カバーは合板を接着して作り、ニスで塗りました。側面に通気のための穴を開けました。 背面上部は開いています。底面はアルミのパンチングです。

合板を張り合わせて作りました
 
 ボリウムとスイッチを付ける前パネルは残材のカラーアルミ板で作りました。文字入れは、透明ビニルシートにパソコンで裏刷りした物を貼り付けました。裏刷りなので手で擦れて消えることはありません。 ツマミは、ずいぶん前に買い込んであった処分品。やっと使ってやれました。