2019年2月11日月曜日

カソードNFをかける方法 6AQ5-S

2015年に製作した6AQ5シングルアンプ。他のアンプと比べると、キャラクタ的にいまひとつ活躍できていません。

 このアンプでは6AQ5を素のビーム管として使用しました。たいへんすっきり聴きやすい音になりましたが、同じ出力トランスを使った6BX7シングルとは対照的。これがビーム管シングルの音なのかもしれませんが、キャラ的には私の好みとは異なります。そしてスピーカーとの相性が出やすい感じで、私室の癖の悪いスピーカ相手では活躍させるのは難しい。
 オーディオアンプで6AQ5シングルの音は覚えがありませんが、原型と言われる6V6は、昔に知人の所で聴いたUL接続シングルアンプの音が印象に残っています。6AQ5もUL接続にしてやれば好ましい音になるのかもしれません。しかしそれにはULタップのある出力トランスが必要です。

 あれこれ考えた結果、もう一度カソードNFを試して見ることにしました。

手もとに使い残った小信号用トランジスタ

 このアンプに使用しているトランスにはNF巻線はありません。2次側が出力管のカソードと同相になるようにするには1次側か2次側のどちらかの接続を逆にしなければなりません。

 巻線を逆接続するのは3段でNFをかけるアンプでは普通におこなう手法です。増幅が3段だと(反転×反転×反転)=逆相ですから、出力トランスを逆接続にして初段のカソードと位相を合わせます。しかし2段アンプでは巻線を逆接続すると初段のカソードに帰還することができなくなります。

 解決策のひとつは、半導体で1段追加するか6AU6を双3極管の2段に換えるなど、3段アンプにしてしまう事。しかしこれは簡単では済まなそう。

 2段増幅の出力トランスを逆接続にすると、全体では反転増幅回路になります。そこで素直にNFをカソードではなくグリッドに返すことにします。でも、そうすると入力インピーダンスが低くなってしまい、オーディオアンプとしては使いにくなります。これを避けるためには前にバッファを置けばよいです。1倍のバッファなら、トランジスタのエミッタフォロワーが簡単です。この部分の電源は、真空管の電源から抵抗で落として作れます。

 この方法なら主要部品はそのまま使えます。筐体もそのまま使えます。期待するような効果が得られなければ元に戻すのも可能です。

 

カソードNFをかける改造 6AQ5-S

5極管と3極管の優劣。特性的な事もあり、製造上の事もある。そしてなにより、使いやすく安い3極管があるのか。

 思い切った方法としては、5極管の3極管接続というのがあります。静特性の上では3極管と同じになりますが、たいがいは大幅な感度低下あるいは出力低下となります。

 UL接続は5結と3結の中間のように説明されます。良いとこ取りという見方もあり、中途半端という意見もあります。G2はその名のようにグリッドであって制御能力がありますから、ここへ帰還しているという考え方が正しいように思います。出力トランスがからんでいるので、実際の動作は解析困難ですが、たいがいは5結とも3結とも異なる雰囲気の音になります。

 6AQ5は背丈は12BH7と同じですが細身です。


 出力トランスがらみで出力段の特性を改善するアイディアは他にもあります。その中で良く知られてるのがカソードNF。トランスの2次側から出力管のカソードに帰還します。このための巻き線を持った出力トランスもあります。

 カソードに戻してNFになるためには、出力管のカソードと同相の電圧が必要です。プッシュプルならば、2次側の4Ωが16Ωの中点である事を利用する方法もありますが、普通のシングル用のトランスを普通に使えば、2次側の出力はプレートと同相ですから、カソードに対しては逆相になります。このためシングルアンプの場合はNF用巻線を持ったトランスを使用します。

 6BM8シングルアンプに使用したトランスは2次側に16Ω端子がありました。製作の際にこれを利用してカソードNFをかける方法を思いつきました、出力トランス全体を上下逆にして、8Ω端子を接地すると16Ω端子には出力と逆相の電圧が(少し)出ます。これを利用(逆相の逆相は同相)してNFをかけたところ、ある程度の効果が確認できました。(最終的には、このアンプは当初の構想どおりUL接続にしました。)
 これをもとに、キャラクタ的に使いにくいと感じていた6AQ5シングルアンプの音質改善を試みました。これはかなり無理やりな方法だったためか、多少改善した面もありましたが、全体としては失敗でした。結局短期間で元に戻してしまいました。

 しかし、カソードNF自体には魅かれるものがあります。あらためて見直しているうちに、出力トランスは普通の使い方をして、きちんとカソードNFをかける方法を思いつきました。

2019年2月7日木曜日

小型密閉式スピーカーを鳴らす

強力なユニットを極小の密閉箱に入れると、フツウではない鳴り方をします。しかしこのスピーカーはアンプを選びます。

 [製作した12AU7-PPアンプの詳細はこちら]

 常識はずれのスピーカー。当然のように低音は絶対的に不足します。しかし(それほど大きくない音で鳴らす限り)ダラダラとレベルは低下しながらも、ずいぶん低い音までしっかり鳴っているのが判ります。ただ、このスピーカーは駆動する側から見るとたいへんしんどいはずです。

 そこで、あれこれ揃った私室のアンプに加えて居室用のアンプなども動員して、繋ぎ替えて鳴らしてみました。その結果、やはりたいへんアンプを選ぶことが判りました。プッシュプルであればそれほど問題無いのですが、どちらかというと3極管が適していて、シングルは3極管でも5極管でも全然ダメでした。いずれもNFがかかっていて、数値的なダンピングファクタはそこそこ低いはずなのですが。(おそらくNFの少ないアンプだと破綻する。)

 低音は物足りないですが、小音量であれば、自然で聞きやすい音です。そして、レベルが下がる低域をイコライザで少し持ち上げると、小さなスピーカーとは思えない音になります。
 ほとんどバッフルが無い形状のためでしょうか、このスピーカーは指向性も奇妙です。軸をはずれても音に違いが少ないです。これは片隅に置いてBGM用に鳴らすには好都合です。

12AU7-PPアンプには 低域を持ち上げるスイッチを付けました

 ほとんどネタで作った変則的なスピーカーと、ネタを固めた小出力アンプの計画が交錯しました。まず3極管のプッシュプルというのはこの性悪なスピーカーには似合いの相手。12AU7は、特性的には12BH7Aと6SN7の中間ぐらい。机上BGM用ならば出力が小ささくても問題無さそう。ヒーター電力が小さく、ドライブにオペアンプを使うので全体の消費電力は小さい。長時間連続で使うBGM用には好都合。
 そこで、このアンプには「バスブースト」機能を付けることにしました。これは昔あったラウドネスとは違って、小型のスピーカーでカットオフ付近以下の低音が不足するのを電気的に補うとことを意図したものです。メインの負帰還ループにコンデンサを挟んで低域の帰還量を減らす簡単な方式にしました。

 製作したアンプにスピーカーを繋いで鳴らし、バスブーストを入り切りしてみます。普通にBGMをかけている状態ではあまり違いが判りませんが、意識して聴けばベースラインがしっかり辿れるようになります。意図したとおりの効果が出ています。

2019年1月31日木曜日

小型密閉式スピーカーという物

先日作った12AU7-PP机上用アンプに関連して、小型のスピーカーの話を。


 ずいぶん前に作ったスピーカーの事を想いだしたのは去年の今ころ、。当時の知人の発案に従って作った物で、普通のスピーカーボックスの設計から見ると全くの異端。

 低音をきちんと出すにはある程度以上の大きさの板に付けるか箱に入れる必要があります。平面の板は、大きくなければ背面の振動が回り込みます。遮音するために背面を閉じると、箱の中の空気がバネのように振舞って、スピーカーの動きに影響します。
 バスレフは、背面から出る音を共振を利用して位相反転して出すという発想です。これによって低音を増強して、小型の箱でも低音を出せるのですが、それより低い音が急激にカットされたような感じになります。また、小容量の箱では特有の癖のある音になり、音像がぼやけて隠った音になりがちで、個人的にはあまり好みではありません。

100φの塩ビ管の曲がりとキャップ。使用ユニットは8cm。


 彼の発案は『小型で強力なユニットをごく小容量の箱に入れて、その中に綿などを空所が無いほどに詰める』という物。これでは当然のように低音は絶対的に不足します。しかし(それほど大きくない音で鳴らす限り)ダラダラとレベルは低下しながらも、ずいぶん低い音までしっかり鳴っているように聞こえるのです。

 どうやら、このような聞こえ方をするにはいくつか条件がある事がわかりました。
  • 大きさの割に大出力の、磁気回路が強力なユニットを使う。
  • 内容積が極端に小さくなければならない。箱の共振点はスピーカ自体よりかなり高いところ。
  • 箱内にほとんど空所が無いぐらいに綿など軽い物を入れる。(吸音よりも空気バネとしての共振を鈍らせる、ダンパのように働くのではないかと思われます。)
  • これらと関係するので、使用するユニットが大口径ではうまく行かない。
  • ユニットはしっかり取り付けて、空気漏れしないように隙間を塞ぐ。
  • 箱自体が丈夫で振動しにくくなければならない。
ネットであれこれ見ているうちに、これに合った感じのユニットが安く出ているのを見つけ、昨年春に東京へ出かけた際に購入して帰りました。これを使っていろいろ検証した後、塩ビ管を使用してスピーカーに仕立てました。

 昔に実験した時の物よりひとまわり大きいですが、出てくる音の傾向は同じ感じになりました。全体には完全にハイ寄りなのですが、中域からなだらかに下がってゆき、レベルは低いものの重低音まで綺麗に出ています。
 全体に制動がかかる感じなのでしょうか、スピーカの能率は低くなります。それでも(大音量が必要ではないので)ボリウムのツマミを少し余分に回せばカバーできる程度。
 一方、このスピーカーは逆起電力が大きくインピーダンスがでこぼこなはずです。おそらくこのためでしょうか、たいへんアンプを選ぶことが判りました。プッシュプルであればそれほど問題無いのですが、どちらかというと3極管が適していて、シングルは3極管でも5極管でも全然ダメでした。いずれもNFがかかっていて、数値的なダンピングファクタはそこそこ低いはずなのですが。(おそらくNFの少ないアンプだと破綻するでしょう。)

 妙に音の粒立ちが良く、ステレオにするときっちり分離します。ほとんどバッフルが無い形状のためでしょうか、スピーカーの軸をはずれても音に違いが少ないです。音量を上げすぎなければ、たいへんすっきり聴きやすい音です。 そして、レベルが下がる低域をイコライザで少し持ち上げると、小さなスピーカーとは思えない音になります。

2019年1月11日金曜日

12AU7-PP 上カバーを作る

机上でパソコン使用時のBGM用に使います。真空管がむき出しではまずいです。

 [製作した12AU7-PPアンプの詳細はこちら]

 棚の中に収まっているアンプと違って不用意に何かがあたる危険が多いです。上部のカバーは必須です。置き場所を考慮すると長手を奥行き方向にして、スイッチとボリウムが前に付きます。少ないとは言え、真空管の発熱がありますから、上蓋に通気穴が無いといけません。この条件でケースを探したのですが、良い物がありませんでした。そこで、汎用のアルミシャシーにパネルを付けて、カバーを製作して被せることにしました。

 全体の発熱が多くないので、適度の通気が確保できれば、ボンネットケースのような物でなくても済みます。昔のラジオやテレビは木製のキャビネットでした。このイメージで、上部カバーは合板を接着して作り、ニスで塗りました。側面に通気のための穴を開けました。 背面上部は開いています。底面はアルミのパンチングです。

合板を張り合わせて作りました
 
 ボリウムとスイッチを付ける前パネルは残材のカラーアルミ板で作りました。文字入れは、透明ビニルシートにパソコンで裏刷りした物を貼り付けました。裏刷りなので手で擦れて消えることはありません。 ツマミは、ずいぶん前に買い込んであった処分品。やっと使ってやれました。

2019年1月9日水曜日

試運転 12AU7-PP

ドライバ段の試験をするには電源が必要。電源部を作るためにシャシーなどを加工して。結局ほとんどの作業が進んでしまいました。

[製作した12AU7-PPアンプの詳細はこちら]

 置き場所を考えたら、奥行きを長手方向に使うことになります。縦横の大きさを基準に選んだシャシーは、深さが5cmもあります。そこでこれを利用して、シャシーの上下に部品を盛り分けることにしました。上にカバーを被せて前面にパネルを付けますから、上面の部品に触れてしまう心配はありません。

 出力トランスも電源トランスもバンド型で、特に電源トランスはカバー無しです。ハム防止のためには鉄心の軸方向を直交させたいです。それには電源トランスを横倒しに取り付けるのが良い。そのためにL字型の金具を作る。
  通気の点で、真空管はサブパネルに付けることにしました。シャシーの深さが大きいのでかなり深く沈めることになり、これに合わせるためにドライバ段の基板も高いスペーサを介して取り付けます。
 スイッチは前パネルに付けるので、パネルの加工が必要です。スイッチの位置がシャシーと中途半端に重なるので、その部分はシャシーを切り欠きます。

 結局、筐体はずいぶん複雑な構造になりました。
 
一応回路部分は完成 シャシー下面
  ヒーターとオペアンプ用と、真空管用に、電源トランスが2個に分かれています。シャシー自体をシールドに使うように、上下で高圧と低圧に分けます。
 ドライバに関係する部分はすべてシャシー下面で完結しています。動作チェックをするには、ここの部分を完成さるのが早道。しかしそれには筐体加工を完了させておかなきゃ。

一応回路部分は完成 シャシー上面
  ここまで来ると、出力段関係を作ればほとんど完成してしまいます。高圧側の電源回路は簡単です。これに出力トランスの1次側を通してプレートに繋ぐだけ。この配線の引き回しは、シャシー自体をシールドのように使って、上面を這わせています。

 入力に発振機の信号を入れて、出力波形を確認。それらしい波形は出たけれど、NFをかけようとすると・・・何か変。ていねいにチェックすると、左右チャンネルの配線の一部を取り違えるという恥ずかしいミスでした。修正してあらためてチェック。
 問題無さそうなので、出力にスピーカを繋いでみると、ちゃんとピーと音が出ます。そこで今度は音楽を入力に。予想以上にすっきり聴きやすい音です。高音はけっこう硬く鳴り、低音はゆったり伸びやかに響きます。

 買い忘れて、代用品でしのいでる部品が数個。これを正規の部品に交換して、上部カバーを製作したら完成です。このまましばらく慣熟運転です。

2019年1月7日月曜日

位相反転回路のチェック 12AU7-PP

ドライバ段の試験をするには、電源が必要。電源部を作るにはシャシー加工が必要・・・
 
 電源は仮組でも良かったのだけど、どうせ作らなきゃいけない物。スボラして後で手戻りするのは得にならない。この際だから、ちゃんと作っておこう。
 工程を途中で止めておくのは無駄だし、後から加工する部分が多ければそれだけ手間が増える。最低シャシーの背面の加工は必要。トランスを付ける金具を作って、トランスの位置を決めなければ。スイッチを付けるんだから、前パネルも作ってしまおう。
 ここまで進めると真空管の位置が決まってきます。切削屑が散りますから、金属加工はまとめてやるのが吉です。あれこれ考えて、結局筐体関係の加工はすべてやってしまう事になりました。

低圧電源とドライバ段までを配線した状態


 スイッチはパネルの前側からの取り付けです。だからスイッチに配線してから取り付ける方が楽です。ボリウムもパネルと一緒に取り付けますから、先に配線しておくのが楽です。 結局、シャシー内側に関係した配線はほんんどを済ませてしまいました。

 まずは、電源の確認。なんと、マイナスの電圧が出ていない。3端子レギギユレータまわりの問題かと思ったのですが、古い買い置きのダイオードが1個不良でした。未使用だったのですが。これを交換したら、あとは問題なし。オペアンプを差し込んで、いちばん心配だったオフセット電圧の確認。数個で差し替えてチェックしたけれど、いずれも支障無い程度でした。

位相反転回路の出力を確認

 そこで入力に発振器を、出力にシンクロを繋いで、出力のレベルと波形の確認。ちゃんと逆位相で同じレベルの信号が出ています。信号レベルを上げて振幅も確認しました。オペアンプ使った位相反転回路はちゃんと動作しています。