私自身はこの記事に取り上げるようなアンプをは製作するつもりはありません。参考資料として掲載します。
ある所で相談を受けたのはだいぶ前。その後もいくつか思う事があり、関連した内容をここに書きます。
[ ここまでの話 ]
ふつうのスピーカーをふつうに駆動するには、押すと引くの双方向に電流を流す必要がある。これをシングルアンプで果たすには、パワー素子の反対側をどうすれば良いのか。電圧増幅回路CR結合と違ってRで吊るのではダメです。ここで有効に働くのはトランス(あるいはチョークコイル)。リアクタンスによってON期間に蓄えたエネルギーでOFFに向かう期間を駆動する。トランスであればインピーダンスの変換も同時におこなえます。真空管のシングルアンプはこのようにトランスによって成立してるのです。
そうなると、トランジスタのシングルアンプもトランスを使うのが確実ではないか。トランジスタと真空管の比較という点でも公平な気がします。問題はトランジスタに適したシングル用のトランスがあるのか。
トランジスタ用のトランスで昔のアマチュア製作の定番だったのが山水のSTシリーズ。当時のカタログを見ると出力トランスはすべてプッシュプル用でシングル用はありません。
実用オーディオ製品では無くても、トランジスタのシングルでスピーカーを駆動する回路は確かにあったはずです。2石レフレックスラジオとか。という事で手許の初歩向け雑誌を見ると、なんと、どの回路もプッシュプル用のトランスをそのまま(両端を)使っています。プッシュプル用のトランスは直流を流すようには作られていません。このような使い方ではコアが磁化されて飽和するか、そうでなくとも特性はメタメタのはず。無いから仕方ない、あるいは元々音質特性は問題外という事でしょう。
現行の既製品で、シングル用の、コイルに直流電流を流す前提で作られているトランスは真空管用だけです。で、これはトランジスタで使えるのだろうか。
[ 続きはこちら ]