2014年6月29日日曜日

6BX7 Single : 製作しました

ひと区切りの区切りまで一気に進みました。若干の不手際はありましたが、おおむね順調な航海。このあとはゆっくり休息。

 筐体加工から内部の配線と部品の取り付けと、ほぼ2日で一気に進みました。通電して各部の電圧を測って、とりあえず信号を入れて出力を確認。今回は何のヒネリも無い回路で、NFかけても安定動作。そのまま馴らし運転。[このアンプの詳細はこちら]

 同じシャシーの加工が4台続きました。部品配置はそれぞれ大幅に違いますが、いろいろ知恵が働くものです。今回のがいちばん手間な加工なのですが、それでも半日ほどでできました。部品の配置とか、休止の間にぽちぽち考えていたのも効いています。やはり走り出す前の準備が大切です。
 出力管の6BX7は熱くなることで知られた管。ソケットの周囲に通気穴を開けました。シャシーが薄いので、この部分は裏側に2tの板を重ねて加工。手間がかかりましたが、けっこう丈夫になりました。それ以外は特別な加工は無しです。

大小の管が1本づつ

 トランスはすべて新品ですが、あちこちに手持ちの余剰部品や外し物の部品を活用しています。この後はおそらく電気ものの大物の製作は無いでしょうから、ここで使ってやらなきゃ、結局廃棄されることになるでしょう。
 内部の配線は、今回はタイトラグを利用した架空配線。昔はメーカー製の通信機や計測器に使われていた方式です。本来は部品交換のしやすさが特徴の方法で、配線のひきまわしとか先にきちんと計画しなければなりません。学生時代に6BX7-PPアンプを作る際にこの方式を採りました。その時の事など思いだしながら、さらにひと工夫加えました。

 6BX7-PPアンプは、一部の部品交換だけで長く活躍しています。当時は真空管が終焉を迎える時期。予備のつもりで何本か買い込んで、さらにジャンクの管も数本。若干余裕のある動作にした事と、私室用の小型アンプができてからは稼働時間が減ったこともあって、今でも最初にセットした管が健在です。この分だと買い置きの真空管たちに出番が来るかしら。
 6BX7は双3極管で、1本でプッシュプルなのですが、2ユニットの特性が揃っていて、ステレオなら2本あるのが望ましいです。ジャンクで片ユニットがへたりぎみの管とか、1本だけとか、シングルアンプでなければ出番が巡って来ないところでした。


2014年6月25日水曜日

6BX7 Single : トランスを購入しました

昨年から真空管アンプをいくつか作って来ました。予定した物があとひとつ。そろそろまた作業再開です。


 春からお花の時期はあちこちお出かけする所があります。でもそれも一段落。夏の旅の時期までしばらくまたお部屋でごそごそします。まずは、準備しかかって中断していた真空管アンプ製作のつづきです。
 順番的には6BM8シングルより先に作るべきだと思ったけど、部品の揃い具合で後回しになってしまっていた6BX7のシングルアンプ。やっと部品が揃いました。

部品が揃いました


 最後になったのは電源トランス。電圧と電流がちょうど良さそうで小型であまり高価でない物という規準で探して、選択したのは「東栄変成器」のP-70という物。ヒーターが3Aと2AでB巻線が220Vの70mA。 6SN7-PPアンプに使っている物と定格は同じですが、縦横高さともひとまわり大きく、これなら容量いっぱい取り出しても大丈夫そうです。
 入手が遅くなったのは、東京のお店へ行って買ったから。ネット時代の恩恵で商品情報は簡単に得られても、実体物の入手はまた別。ネットショップでカード払いだと簡単なのですが、そうでない所もあります。特にこの東栄変成器は実店舗販売が中心で、通販は電話で問い合わせとかなり面倒。送金料と送料も考えて、東京へ行く用事のついでに買って帰ることにしたのです。ちなみに、出力トランスはイチカワ製ですが、こちらは店舗販売は無しで通販のみのようです。

※ その後東栄変成器もネットから通販できるようになりました。

※ イチカワは真空管用トランスの製造販売を2022年1月で終了しました。

2014年5月12日月曜日

真空管のウォームアップ

真空管の動作は熱電子によるもの。だから熱くならなきゃ動作しない。スイッチを入れて暖まるまでの時間は真空管らしいひととき。

  真空管にはウォームアップタイムというものがあります。スイッチを入れてヒーターが点灯して、カソードが暖まって電子が出る。それまでの時間がウォームアップタイム。
 オーディオアンプの場合、スイッチを入れて少し待つと、微かに音が出だして、だんだんそれが大きく聞こえだします。逆にスイッチを切ると、しだいに音が弱まってかすれて消えてゆきます。 真空管時代のテレビでは、暗い絵が出て、だんだん明るくなるとか、真ん中に小さく(あるいは細長く)絵が出て、これが画面いっぱいに拡がるとか。

注意:トランスレス用でない真空管のヒーターを直列にしてはいけません。起動時の温度のばらつきでヒーター断線の危険が増します。

 真空管式のテレビでは、(磁界で輝線が揺れるのを嫌って)トランスレスが普通でした。ヒーターは直列にして100Vで点火します。直列にするのでトランスレス用の真空管は暖まり方が規定されていました。普通のレス用は11秒となっています。正確にはヒーターの温度が上がるまでの時間で、定常動作に至る時間ではありません。

 うちのアンプの真空管たちはと見ると、12BH7Aがテレビ用です。12BH7のウォームアップタイムを調節したのが12BH7Aです。ドライバの6BL8は元々は欧州のテレビ用の管で、姉妹の4BL8や9A8はレス用です。6BM8も原型はテレビ用のレス管です(6BM8はレス用ではない)。
  6SN7-GTに対して6SN7-GTBはウォームアップタイムが規定されていますが、名前程度の違いしか無いのかもしれません。差し替えて比べてみるとどちらも大差無い時間で音が出てきます。

石アンプ : アンプ部と保護回路部

  トランジスタアンプはヒーターがありませんから、スイッチを入れるとすぐに動作を始めます。前段が安定動作する前にいきなり出力段がオンになった場合、スピーカーからボコっと音がでる事があります。逆に電源が切れた瞬間に不安定になる事もあります。アンプが大出力になるほどこの問題は深刻になります。ひとつの解決方法が「保護回路」。スイッチ・オン後しばらくたってからスピーカーをつなぎ、電源喪失時にはすみやかに切り離す。
 出力回路自体の工夫でこの働きをさせる方法もありますが、いちばん簡単確実なのは電磁リレーで物理的に切断すること。自作の石アンプでは異常動作で出力にDCが漏れるような場合も切断するようにしてあります。アンプ部はオペアンプICのμA749を使っていますが、保護回路はすべてディスクリートで作りました。まだこの頃はICを信用していなかったためです。

2014年3月27日木曜日

12BH7A PP : 真空管の寿命

真空管って消耗品と言われます。でもその寿命はかなり差があるようです。

 真空管の動作は完全に金属電極の間の物理的な物。使ううちに徐々に状態が変化します。徐々に消耗してゆき、特性が劣化してゆきます。テレビでは、偏向回路とかでは同期がかからなくなったり振幅がたりなくなったりと限界が"見える"場合もありますが、ノイズとか輝度とか我慢すればどうにかなる場合もあります。オーディオ用のは場合も、どこまで使うか判断が難しいです。
 定格内でも劣化が早い管もあればいつまでも変わらずに働く管もあります。無理な使い方でもある程度耐える管もあれば、すぐに弱る管もあります。同じ管でも使い方によってずいぶん寿命が違うようです。12BH7Aはテレビの偏向回路ではかなり無理な使い方をされていたようです。現役当時は劣化の心配がある管でしたが、どうやらかなりしんどい使い方をされていたようです。中古の管を見ると片ユニットだけへたっている物がかなりありました。

12BH7A と 6BL8 どちらもテレビと縁のある管です

 ふりかえって見ると、このアンプは20年ほど働いています。私室でBGMをかけたり、DTMのモニタとしても働き、ビデオやテレビの音声もここから出していました。休日は朝から晩まで点けっぱなしの事も多く、時には切り忘れたりも。普通の家庭のテレビよりも稼働時間の割合は多いかもしれません。ややA級に近い動作で、無信号でもけっこう発熱しています。それでも管はずいぶん長持ちしました。12BH7Aはすべてテレビなどの中古の管で、この管で3代目。6BL8は2代目。これらは新品も含めて手持ちがかなりありますから、管が無くなって使えなくなる心配は無いでしょう。

2014年3月23日日曜日

6Z-P1 Single : 真空管アンプの熱さ

真空管アンプの音って何でしょうか。居間の6BX7-PPアンプは、製作当時は真空管アンプ愛好の方にはトランジスタっぽい音がすると言われました。その後造ったトランジスタアンプは、DCアンプ絶対派の方には真空管っぽいと言われました。

 引き続きアンプの外観のお化粧をしながら、もうしばらくアンプの鳴らし比べ。これが終わったら晩秋から続いていた電気工作もひと休みの予定。それまでに見直す所とか無いかもう一度チェック。あわせてwebコンテンツも整備して、灯のともった真空管の姿を写真に撮って。
 真空管の灯りの写真はデジ一眼レフだから撮れるもの。真空管のヒーターの光は案外弱いです。ヒーターの照り返しで管やまわりがほんのり赤く見えるように撮るには露出と照明のバランスが悩ましいです。カメラは3脚に固定して、構図を整え、暗くした部屋の中で、アンプに弱い照明を当てて、長時間シャッターで撮ります。デジでは撮ってすぐに結果が確認できます。それをもとに照明の位置や明るさを変えてもう1枚と。まあ、一種のカットアンドトライです。ずいぶんアナログちっくです。

少し青色のグローが出ています

 私室の小型アンプたちの定位置は書棚の中。同じ大きさの入力セレクターと重なって、繋いだらそのまましばらく働きます。上は上の棚板に守られて横の空間も確保されています。使用中はボンネットカバー無しでも全然支障無いです。危ないのはつなぎ替えとかの作業時ぐらい。使用したシャシーが同じなので設置スペースは同じですが、高さが違います。いちばん背が高いのがこの6Z-P1。つるんとした頭と上の棚板の間はけっこう接近します。幸い真空管の発熱が少ないので、真夏でも上の板が熱くなって困ることは無いでしょう。総発熱量は(製作予定を含む)5台の中ではいちばん小さいです。
 居間のアンプは、イザ音楽を聴くぞ、とか映画を見るぞという時しかスイッチが入りません。対して私室のアンプは雑食です。テレビの音声からパソの音声まで、音楽も動画もなんでもあり。朝から晩まで通電しっぱなしの事も多いです。製作時に発熱や管の消耗を気にしたのはそのためもあります。ぎりぎりの性能を発揮させてやるのもひとつの行き方でしょうけど、倹約&貧乏性には向いてないですから。

2014年3月17日月曜日

6BM8 Single : 慣熟運転中

出発点へ戻る航海。当初の思惑と順序は逆になりましたが、第一行程は順風の中で終了。残りはまた潮時を待ってから。

6BM8のアンプは無事に完成。聴き慣れた音楽をかけながら慣らし運転を継続中。中古の真空管もひととおり動作チェック。かなり酷使されたのか、足のあたりが黒ずんだ管もありますが、全部支障なく動作しています。

 やや控え目の動作ですが真空管はかなり熱くなります。電源トランスは余裕があるので、暖かくなるという程度。出力トランスがカバー無しなので漏洩磁束の影響を心配したのですが、ハムもノイズも出ずに済みました。外観の問題だけです。しばらく鳴らしているうちに新品のトランスも馴染んできたようです。全体としては普通の真空管アンプという感じの音に落ち着いて来ました。けっこう音量感のある鳴り方で、ゆったり雰囲気で聴くにはいい感じです。

古いオペアンプたち 8ピン1回路入り


 オペアンプもいろいろ差し替えてみました。特性に差はありますが、ゲインは低いし振幅も小さいです。いずれも出力アンプ部よりも広帯域で、最終的な出力では全然差がありません。低雑音でない品種でもノイズが聞こえることは無いです。上の写真は手元に残っていたオペアンプたち。それぞれ数個あります。

 左側の缶入りとその下の3個は汎用オペアンプの元祖フェアチャイルドのμA741とその互換品。日本のメーカーも互換品を作っていました。NPNのエミッタフォロワでインピーダンスを稼いで、カスコードにカレントミラーと縦積みにしてゲインを稼ぐ構成。
 LM307はLM301に位相補正コンデンサを内蔵して741に対抗したような品種。これはモトローラ製の互換品。入力部は良く似た構成ですが、出力段は準コンプリという変則構成。
 これらの次の世代は入力部がPNPになっています。上右のNE5534は低雑音広帯域を謳っていますが、用途が難しいです(要位相補償)。これはテキサス製の互換品。
 その下は入力部がJ-FETになったテキサスのシリーズのひとつ。用途を選ばない使い易いICと思っていましたが、今回の使用で意外とドライブ力が無いことが判明。
 CA3140はRCAの製品で入力部はMOS-FETです。次段以降も変な回路で、出力部はSEPPですら無いというユニークさ。RCAの製品ではCMOS出力のCA3130も持っているのですが、残念ながらこれは耐圧の問題で使えません。

2014年3月14日金曜日

6BM8 Single : 製作開始

主要部品が揃ったので、上げ潮に乗って進むことにしました。6BM8シングルアンプの製作を開始。ふりだしに戻る航海です。

 子ども時代の事とか考えると、これを最後に持ってくるべきだとは思うけれど、なりゆきでトランスが先に揃ってしまったので、6BM8のアンプの製作を開始しました。
 子ども時代は廃棄物のテレビなどの解体部品でずいぶん遊びました。レスの管を活用する知恵は無かったので、真空管は新品を買いました。トランス類などジャンク屋で外し物も買いました。今度は、管は中古ですがその他は新品です。
 おそらく、まとまった電気ものの製作はこれが最後。出番が無かったものや試作に使った物、短期間で解体した残渣など、手もとに残った部品をなるべく多く使うことにしました。適材適所とは行かなくても、そのまま捨てられるよりは良いでしょう。そのつもりで回路の方も微調整。

ケミコン シャシーに立つ
  ラグ板配線の良い所は、少しづつ作業ができること。筐体がらみの部品は全部揃いました。中身の抵抗やコンデンサはいくつかが欠けていますが、大きさの取り合いが必要な物は無いので、時間のあるうちにシャシー加工をやってしまうことにしました。シャシー加工をすると、アルミの削りクズが散らかりますから、この工程は一気にやってしまうのが吉。
 部品配置は先にいろいろ検討しましたから、作業は一気に進みます。大物の穴を開けたら仮組みして確認し、ラグ板などの位置を微調整してネジ穴開け。そのままネジ止めまでやってしまいました。中身はカラですが、外側はすっかりそれらしい雰囲気。真空管を挿してみました。
 6BM8は背丈が高い分細く見えます。真空管はこの2本だけですから、シャシー上面は広々として見えます。ちょっとボリュームのある電源トランスの前にはケミコンが2本並びました。昔からの馴染みの光景。これが無いと全然サマになりません。本来は基板付け用のコンデンサですが、こうして足を付けるといい感じです。