2016年8月14日日曜日

出力トランジスタをドライブする

時間を見て古い雑誌などの記事や回路を発掘してみました。 

[製作したトランジスタアンプの詳細は→こちら]

 真空管アンプについては(段間トランス+出力トランス)から(コンデンサ結合+出力トランス)へ移行し、その先にトランスを使わないSEPPが作られたという感じでした。
 トランジスタアンプは、出力段のドライブに悩まされたためか、SEPPでも段間のトランスを使った物がけっこうありました。しかし、出力トランスを使ったプッシュプルで段間トランスを使っていないという回路は見あたりませんでした。このあたり、位相反転回路で苦労したうえにドライブで苦労するのは引き合わないという事のようです。

 不要品から発生した古い出力トランスを活用するために、ドライバトランスを新規購入するのは本末転倒。なんとか現代的な回路で使えないか考えることにしました。命題は、なるべく手持ちが使えて新規購入する部品が少ないこと。シンプルで安定した回路で実用的な性能。できれば単電源12Vで動作。では、SPICEを使ったゲームの開始です。

 出力段の素子はトランジスタです。バイアスのことと、DC安定性のことを考えると、入力段から出力段のあいだのどこかで直流を切る必要があります。段間にトランスは使わないので、どこかにコンデンサ結合が入ります。

オーディオ用として知られたトランジスタたち @hfe測定中

 出力段のトランジスタを電流で駆動するのですから、思いついたのは{前にFETを置いて(電圧→電流)変換}というプラン。反転ダーリントンの前側をFETにした感じの組み合わせです。真空管アンプっぽい雰囲気になりますが、電圧の無駄が大きいです。おそらく音質的にはトランジスタアンプというよりもFETアンプ。面白そうだけど。
 位相反転回路が要りますから・・・・ここはトランジスタアンプらしく差動アンプが良さそうです。出力段のベースに電流を流すという視点から、差動2段にして2段目と出力段を直結というのも考えましたが、バイアスをかける良い方法が思いつきませんでした。出力段がAB級で休止区間ではベース電流が流れないのも面倒。

 結局、出力段自体をダーリントンにして等値的にhfeを高くしてベース電流を無視できる程度にするのが簡単という事になりました。こうすれば前から見たインピーダンスがかなり高くなるので、普通にコンデンサ結合で済ませられます。ベース電流が小さいので、かなり高い抵抗を通してバイアスを与えられます。そうなればバイアス電圧はダイオードの順電圧で済ませられます。
 見かけのインピーダンスを稼ぐのに高いhfeのトランジスタを使いますから、出力部の電圧利得は高目になります。SPICEで試すと、手持ちのある2SK30を差動アンプに使ってドライブできそうです。ただし、差動1段で平衡度を確保しようとすると、下に引くのに定電流が必要になります。都合、片側7石という構成になりました。石数は多いですが、動作的には6SN7-PPアンプと同じ2段アンプです。

 手持ちの2SK30は6AQ5-PPアンプ製作の際に測定してありますから、ここからほど良い物を選り出せます。あとはトランジスタ。ほど良い大きさのトランジスタでhfeがだいたい揃う物があるか。長く使っているテスタには簡単な付加回路でhfe測定ができる機能があります。ひさしぶりにこれを活用しました。