2016年7月31日日曜日

12BH7A プッシュプルアンプ 配線変更

暑いです。我慢も限界で、お部屋はエアコン入れてます。ならば、多少熱いアンプでもだいじょうぶ?

 暑さに向かう頃から、数が増えた小型アンプをあれこれ繋ぎ替えて鳴らしています。あらためて鳴らし比べると、それぞれ一長一短あります。不満足を感じれば、あらためて見直して手を加える。ひとつ底上げされると、今度は別のが見劣りして感じられるようになります。以下くりかえし。

 6AQ5シングルアンプに続いて先週作業したのは6BM8シングルアンプ。このアンプは製作時におもいついて、結線の変更で簡単にUL接続とK-NFをかけたりはずしたりできるように作りました。4種類を聴き比べ、最終的には最初の計画どおりのUL接続のみの状態で使うことにしました。この状態でしばらく使ったのですが、今後は他の結線で使うことは無さそうと判断しました。そこで、思い切って余分な配線の引き回しを撤去することにしました。
 回路自体は変わっていないのですが、微妙に音質が向上したような気がします。電流の流れがすっきり整理されたのが効いたのでしょうか。

ガラエポ板とハトメラグで平ラグ相当の物を作りました
 
 そこで他のアンプも見直し。 数が増えたプシュプルアンプの中で、現状でいちばん音の粒立ちが欠けているように感じるのが12BH7A-PPアンプ。ずっと昔に製作した物で、製作直後に回路を大幅変更し、その後も何度か少しづつ手を入れて性能向上して来ました。この過程で部品を追加したりして、内部はかなり混沌となっていました。ここをきちんと整理するのが良さそうです。ついでに、初期に急遽追加した電源トランスと初段の回路との間のシールド板もきれいに作り直しましょう。

 まず、後から追加した関係で散らばっていた電源まわりの部品を集約することにしました。それには平ラグ板が要りますが、ちょうど良い端子数の物が手持ちにありません。そこで、ふとした思いつきを実験。
 普通のラグ板はいわゆるベークライト製。プリント基板では最安価なタイプで、耐久性に難ありの材質です。これより優れているのがガラスエポキシ。手もとにはプリント基板の端切れがあります。これを元にしてハトメラグを付ければちょっと丈夫な代用品ができるはずです。まず裏面の銅箔をはがして、端子位置にアナをあけて、ハトメを留める。ハトメをきれいに付けるのに苦労しましたが、それらしい物ができました。

 回路は変わっていません。部品もそのままです。変な所を回っていた配線を整理して、隙間に無理して付いてた部品を移動した程度。その程度ですが、不思議なことに、僅かですが小さな音の粒立ちが向上した感じがします。この程度のことで違いが出るというのは、それはそれで悩ましいことです。
 一方、ガラエポ板で平ラグの代用品が作れることが判りました。手間はかりますが、安価に作れて信頼性が向上。発熱の多い部品が付いているような所はこれと交換するのもアリかもしれません。

2016年6月15日水曜日

サンスイのSTトランス

サンスイは高級オーディオメーカーとしても有名ですが、昔のラジオ少年のイメージではやはり『トランス』。特にSTシリーズの小型トランスのお世話になった者は多いはずです。

 最初はゲルマニウムラジオから始まる初歩のラジオ工作。次はどっちへ行く。私の時代は「1石レフレックス」が定番でした。トランジスタでイヤホンを鳴らすところにトランスがひとつ。スピーカーを繋ぐにはもう一つトランスとトランジスタを足して・・・

 部屋の棚の中を片付けていると、ずいぶん前に役目を終えた装置が出て来ました。ヘッドホン用のインピーダンス整合器。中にはトランスが入っています。思いついて解体しました。
 中に入っていたトランスはサンスイのトランジスタ用トランス ST-84 。プッシュプル用の出力トランスで、1次側が150Ωで2次側は4Ωと8Ωで容量は0.7W。

サンスイ ST-84


 現代でも真空管アンプでは出力トランスを使うのが普通。しかし現代のトランジスタアンプには出力トランスは使われません。トランジスタも出始めの頃はトランスを使うのが普通でした。電池式の小型ラジオなどはかなり後までトランスを使っていました。真空管でも出力トランスを使用しないアンプも作られました。
 いろいろ難点のある出力トランスをなんとか排除したい。トランジスタも真空管も、そのためにいろいろ工夫されました。結局、トランジスタではトランスレスにする都合の良い「コンプリメンタリー」回路が作れたのに対して、真空管ではそういった都合の良い回路が無かった。

 で、出て来たトランジスタ用の出力トランス。合間の時間を利用して使い道を考えてみることにしました。といっても、このトランスをちゃんと働かせるのだから、出力段はトランス式のAB級プッシュプル以外あり得ません。あとは、これをどうやってドライブするか。
 手持ちの部品を活用して面白い回路ができるでしょうか。トランスのインピーダンスから逆に追ってゆくと、電圧12Vでほど良い出力のアンプができそうです。
 

2016年2月19日金曜日

6AK6 PP 組み立て完了

じっくり準備を重ねたので、動き出したらスムーズに進みます。作業を切り分けて毎晩少しづつ。そして最後は一気に。

 私室の小型アンプは昔に作った物を含めて計8台。回路も使っている管も全部違います。部品配置や配線方法はそれぞれ違いますが、部分的に見れば共通点するところもあります。
 6AK6プッシュプルアンプは意図的に6SN7-GTプッシュプルアンプに似せた部品配置にしました。後ろに出力トランスを置き、ドライバ基板はシールド板を挟んでその下に。このあたりの構造も同じです。

ドライバ回路が半導体なので、内部は隙間が多いです。


 出力トランスはイチカワの ITPP-3W-16Kです。6SN7-GTのアンプで使った物と同じです。メールで照会してATMで送金。送料はかかりますが、買い出しに行くより早いです。

 今回は手持ちの買い置きや余剰品を活用することを目標に加えています。回路のうち厳密でなくても良い箇所はこれらに合わせて加減しました。手持ちで間に合わない部品は、用事で市内へ出たついでに購入しました。

 という具合で、意外なほどスムーズに進んで完成。念のため各部の電圧を測って、信号を入れてみると、ちゃんと音が出ました。6SN7アンプで使って出力トランスの極性が判っているので 、NFもそのままかかりました。オシロで見ると、矩形波の角が少し尖っていたので、位相補償のコンデンサを変更しました。
 どうやらイチカワのトランスは馴れるまでに時間がかかるようです。テスト中にもどんどん音が変わって行きました。2時間ほどたつとだいたい落ち着きましたが、6SN7アンプの時の感じからは、まだもうしばらく慣熟が要ると思います。

※ イチカワは真空管用トランスの製造販売を2022年1月で終了しました。

2016年2月17日水曜日

6AK6 PP ドライバ部

部屋がちらかる作業は一気にした方が良いです。しかし手もと作業の場合は少しづつ進められるものもあります。

[ 完成した6AK6-PPアンプの詳細]

 まだ一部のCRが未購入ですが、ドライバ部のCR等は揃っています。 筐体加工が終了して配線のひきまわしも決まりましたから、今度は基板の配線作業。細い方のハンダこての出番です。

部品点数は多目。ジヤンパがたくさん飛んでます。抵抗は立実装にしました。

 今度の回路は自己平衡型。一見上下に対称なようで、細部はかなり違います。信号は後ろから前へと戻ってるし、NFも加わります。電源まわりは簡単に済みますが、全体としては部品が多目。
 今回もICピッチの穴開き基板に盛りつけます。真空管と同じ高い電圧がかかりますし熱の事もありますから、スルーホールのエポ板を奮発しました。引き回しの面倒そうな配線が多いので、これらは表にジャンパで飛ばしました。抵抗は立実装にしました。FETとトランジスタの計8石が並ぶのは6SN7プッシュプルの基板と同じですが、回路の簡潔さという点では現代的な差動回路の方が数段上です。

2016年2月12日金曜日

6AK6 PP 使用する出力トランスを変更

出力トランスはインピーダンスを変換するもの。インピーダンスは巻き数の比で決まります。

 2次側に繋ぐインピーダンスが変われば1次側のインピーダンスも変わります。2次側の4Ω端子に8Ωを繋げば本来8KΩのトランスは16KΩ相当になります。しかしインダクタンスや浮遊容量などは変わらないので、周波数特性などは本来とは異なります。普通は1/2から2倍程度なら実用上はあまり支障が無いと言われ、元からそのようにしてインピーダンスを変えて使えると謳った物もあります。

 今回の6AK6計画の発端は余剰になった8KΩのトランス。これを2倍の16KΩで使うつもりでした。しかし、計画を進めるうちに気になる点が出て来ました。
 このトランスは10W用です。定格の割にはコンパクトですがちびっこい6AK6には寸法的にも過大です。

 死蔵するよりはと思って始めた計画ですが、より良い働き場所があるならそちらの方が良いはず。このトランスを活用してもらえるアテができたので、余剰のトランスはそちらへ譲渡して、より良さそうなトランスをかわりに使うことにしました。

筐体加工をはじめました


  イチカワのトランスに16KΩの製品があり、これを使用することにしました。6SN7プッシュプルアンプに使って音質の点でも気に入っている物です。サイズ的にも似合います。
 イチカワのトランスは通販のみで店頭販売がありません。イチカワにメールで問い合わせると幸い在庫があるとのこと。急いでネットで注文。

 CR類がまだ揃っていませんが、筐体加工と関係ある部品が決まりましたから、まとまった時間を利用してシャシーまわりの工作をすることにしました。アルミの切削くずが出る作業は一気にやってしまう方が良いですから。

※ イチカワは真空管用トランスの製造販売を2022年1月で終了しました。

2016年2月11日木曜日

6AK6 PP 電源まわり

真空管アンプ関係に限りませんが、すでに大阪では電子系工作用の部品が揃いにくくなっています。

 装置の小型化にともなって面実装が多くなっています。それにともなって従来のスルーホール実装用の部品の生産が縮小されたり停止されたりしています。国内の電子部品メーカー自体、だいぶ前から撤退したり廃業したりしています。
 大阪の日本橋の部品屋は現在4軒。1/4Wの抵抗はまだE24で揃いますが、1/2W以上の抵抗は店によって歯抜け状態だったりします。コンデンサは在庫限りの品種が多いです。仕入れを絞っているのか流通の関係なのか、思わぬ部品が在庫切れしていたりすることも多いです。

 ネットの写真やカタログではよくわからない点もあります。やはり実物を見るとイメージが確かになります。交通費の問題はありますが、店頭で見て手にとって確かめて買いたいです。それでも無いのが判っている物は通販に頼るしかありません。
 真空管アンプに関して、いちばん悩ましいのがトランス。今では都合の良いジャンクに巡り会う可能性はまず無いですし、あっても酷く高価です。新品購入できる物はありますが、販売ルートが限られています。

購入した電源トランスと平滑用コンデンサ

 まず電源トランス。ヒーターは0.6Aで足りますから簡単なのですが、問題は高圧巻き線。B電源はが直流で約190Vで50mAほどですから、かなり電圧の低いトランスが要ります。最悪は特注も考えてネットを探すと、使えそうな物がいくつか見つかりました。その中から、「東栄変成器の PT-10」を選びました。センタータップで160V×100mA。電圧はちょうど良さそうで、電流には余裕があります。ヒーターは1Aが2つ。価格も比較的安いです。
 東栄のトランスを使う場合の難関は、店頭販売が中心でネットでメール注文とかできないこと。6BX7シングルアンプで使った時には、都合良く東京へ行く用事があったので秋葉原へ回ったのですが、 次に東京へ行く予定はだいぶ先。仕方なしに、お店に電話をかけました。幸い、代引きで送っていただけたので早く入手できました。

 昔は真空管用の電源回路にはブロックコンデンサがつきものでした。今でも入手可能な物はありますが、小型のアンプには不釣り合いな大きな物で価格も高いです。6SN7プッシュプルアンプ製作の際には、窮余の策で基板付け用のコンデンサを購入しました。容量がほど良い物を選んだら直径が22mmでした。思いついて合う足(バンド)が無いかネットで探し、通販で購入しました。その後は手持ちの直径25mmの足に合うコンデンサを探して使いました。今回はうまく22mmの足を入手できたので、6SN7アンプに使ったのと同じ22mmのコンデンサを使います。

追記
その後、東栄変成器のネットショップができました。現在はネットから購入できます。 

2016年2月8日月曜日

6AK6 PP 回路の検討

打ち止めのつもりで作った6AQ5-PPアンプは良い感じになりました。だからこそ、余剰トランスから始まった6AK6アンプは蛇足にならないように丁寧に進めなきゃ。

 流れに乗って真空管が決まりました。出力段の動作はほとんどいじりようが無さそうです。次はドライブ回路。
 出力管の6AK6は許容損失が小さいです。 プッシュプルにするので管は少し楽にはなりますが、ヒーター電力も小さいし、管形も小さいので無理はさせられません。素直にプレート180Vで使います。G2電圧は少し下げて165Vぐらい。ここからドライバの電源を取ると、せいぜい150V程度です。
 仕上がりゲインをわが家基準にして適度にNFをかけるには裸ゲインが120倍ほど。必要な振幅はP-Pで20Vぐらいこれを真空管でやるとなるとけっこう面倒です。

6AK6の大きさ 12BH7Aよりも、6BL8よりもちびっこいです。

 細身でちびっこい管ですが、小さなシャシーの上に4本載せるとあまり余地はありません。無理してもあと2本ぐらいですし、ドライバの管形が出力管より大きいというのも釣り合いが良くないです。やはり半導体で構成するのが妥当です。
 トランジスタアンプとして考えればいろんな方法があります。インピーダンスが高くて5極管なので入力容量も小さいですから、オペアンプで直接駆動することもできます。でも、そっち方向に進むと今回の趣旨とはズレてしまいます。「本来は真空管のところを半導体で代用する」という感じで行くことにします。段数の多い回路は避けて、なるべくシンプルな回路。

 6SN7-PPはgmの高いFETを使って差動アンプ1段で済ませました。6AQ5-PPアンプはカソード結合(ミュラード)型にしました。これらと同じ回路では面白くないです。P-K分割(アルテック型)はシンプルですが、半導体使ってもこの電源電圧では利得と振幅の両立は難しいです。 残った回路の中で、やはり面白そうなのは「自己平衡型」です。古典的な回路ですが、電源電圧の割にゲインと振幅が得られます。最初に12BH7A-PPアンプを製作した際、手持ちの12AX7の活用を考えてこの回路で作ったのですが、やはり12AX7ではじゅうぶんな性能が得られず、結局6BL8を使ったP-K分割に変更してしまいました。3極管では能力不足でもFETとトランジスタのカスコードならそこそこ行けそうです。特に今回は出力管が5極管ですから、その点も楽です。

 手持ちの2SK30を使うつもりで、あらためてSPICEで詳細に検討。FETとしてはあまり高gmではありませんが、真空管なら6C6ぐらいになります。カスコードにして150Vかければ必要なゲインは得られます。入力容量の心配が少なく、インピーダンス的にも楽です。やや部品点数が多いこと、基板上の配線が入り組んで面倒そうなのが難点です。まあ、エッチングして基板作るのではない(穴あき基板を使う) のでなんとかなるでしょう。