大型の出力管はビーム管が多いです。シンポル図ではSGとプレートの間に翼のような物が描かれます。これはビーム形成板と呼ばれますが、これがビームを作っている訳では無さそうです。
4極管の説明について、プレートとグリッドの間にもうひとつグリッドを追加したと説明される事が昔から多いと思います。確かに高周波増幅や小信号増幅で(G2電圧がプレートよりかなり低い動作で)は、静電シールド効果が目立つのでスクリーングリッド(:遮蔽格子)という名が合うのかもしれません。一方、プレート電圧が低い領域ではG2が積極的にカソードの電子を引っ張っているので、加速電極だという解説もあります。この場合もプレートの電圧の変化を隠しているという意味の説明が付きます。
しかし実態はかなり違うのではないでしょうか。特性の点で効いてくるのはプレートの位置や大きさではなく、G2の位置とその形状ですから、3極管のプレートを透け透けにして、その外側に第二のプレート置いたと考えるべきなのではないでしょうか。そう考えると、4極管は3極管のカスコード接続(上側は中途半端なA2級動作をしている)と見なせないでしょうか。
4極管の問題のひとつはG2に流れ込んでしまう電流。G2の電圧がプレートより高くなる区間が広くなる大振幅ほど影響が大きくなります。これを軽減する工夫のひとつがグリッドの目合わせ。これにより、G1で絞られた電子流がそのまま勢いよく直進してプレートに当たる。
6L6-GC と 12G-B7 遠縁の親戚関係 |
ビーム管の要はグリッドの目合わせ。この電子流が停滞せずにプレートに流れ込むには、G2とプレートの間隔も重要です。しかしグリッド支柱の付近はビームが整わず、プレートとの間隔も取れません。ビーム形成板はこの部分を隠しているように見えます。ビーム管はグリッドは微妙ですが、プレートはかなり自由が利くようです。
ビーム管の古典といわれるのが6L6。12G-B3/B7系のライバルにあたる6BQ6の元を遡るとここに至るらしいです。メタル管からガラス管になって6L6-Gとなり、プレート引き出しを頂部に移して送信管になったのが807。これそのものもテレビの水平偏向にも使われたらしいですが、初期の専用管の6BG6はパルス回路用に耐圧を上げ電流を増した物のようです。
この6BQ6のプレートを拡大して容量を増したのが6DQ6で、これに習って12G-B3のプレートを拡大した物が12G-B7です。一方、この過程を追って6L6の特性はそのままに容量を大きくして生まれたのが6L6-GCらしいです。だから6L6-GCの外観は水平偏向管とも少し似ています。
製造時期は少し違いますが、同じ東芝製を並べてみました。プレートは6L6-GCの方が少し長く、12G-B7の方が少し厚いです。12G-B7のカソードが大きいのが目立つほかは、内部の構造はよく似ています。