2019年5月18日土曜日

12G-B3/B7 オーディオアンプにする (1)

子ども時代、手近にあったけど手を出すことは無かった真空管。今さらだけどアンプにしてみようと思います。

 縁でやって来た真空管は12G-B7。部品取りに解体した廃品テレビの中で見た記憶があります。当時はこれを使おうとは思いませんでしたが、もしこれを使ったとするとどんなオーディオアンプになったでしょうか。

 あらためて調べてみると、6.3V管の6G-B3A/B7のオーディオ用としての使用例がいくつか出て来ました。そのままピーム管のプッシュプルで使うと、300V程度のB電圧で40W級のアンプになるようです。しかし規模的に子どもの手に負える物では無さそうですし、このような用途ならば6CA7や6L6の方が使いやすそうです。雑誌などの製作記事には400Ωスピーカー用のSEPPアンプがいくつかありましたが、真似してジャンク部品で作れるような物ではありません。
 12G-B3/B7は、低い電圧で大電流を流すように作られた管で、ビーム管としての特性は綺麗ではありません。この点からはシングルアンプは不適当な気がします。ところが、規格表にある3結の時の特性図はたいへん素直です。有名な2A3には及ばなくても、現代的には使いやすい感じです。どうやら3結で低内部抵抗の3極管として使う方が面白そうです。

 シングルで使うならメーカーや使用歴が違っても支障無いです。ステレオにするので相方が最低1本、継続的に使うなら数本は必要です。テレビで使われて多少くたびれた管でも良ので、安い出物があるか探して見ました。
 真空管テレビが終わると保守用に確保されていた真空管はあちこちで投げ売り状態になりました。その中には12G-B3やB7もありました。その後作例がいくつか紹介されたこともあってか、かなり価格が上がったと聞いていました。しかしあらためて探して見ると、開封品(ほとんど使っていない?)の12B-B3と12G-B7がずいぶん安価に出ているのを見つけました。

12G-B3 と 12G-B7 いろいろ


 小ネタ半分なので、あれこれ繋ぎ替えて聴き比べできる私室用のアンプにします。同じシャシーを使って外観を揃えます。仕上がりゲインも揃えます。
 ドライバは、当時のテレビ管の仲間から選ぶとすると、中間周波増幅に多く使われた3CB6あたりでしょうか。しかし今回は大きさと総発熱量の関係から半導体を使います。6Z-P1シングルアンプで使用した手法で、J-FETとトランジスタをカスコードにすると5極管に似た特性になります。

 私室用のアンプは棚の中で使用するので発熱が大きすぎると困ります。12G-B3の3結の許容損失は12Wあるいは13Wという説がありますが、規格上は原型の25E5と同じ10Wです。ここからさらに軽減して約8Wで考えます。しかしテレビの水平偏向管なのでヒーター電力が約8Wもあります。このため管2本分で合計32W程度。電流が大きくバイアス電圧が大きい管です。これを自己バイアスで使うのでカソード抵抗の発熱が大きくなります。全体では常用している12BH7A-PPアンプよりだいぶ発熱が大きいことになりますが、この程度なら、真夏でなければそれほど困ることは無いと思います。

2019年5月12日日曜日

ビーム管

2極の真空管に格子を加えて制御機能を持たせた3極管。さらに極を追加した4極管。しかし4極管は優れた特徴を持つかわり、欠点もありました。

 大型の出力管はビーム管が多いです。シンポル図ではSGとプレートの間に翼のような物が描かれます。これはビーム形成板と呼ばれますが、これがビームを作っている訳では無さそうです。

 4極管の説明について、プレートとグリッドの間にもうひとつグリッドを追加したと説明される事が昔から多いと思います。確かに高周波増幅や小信号増幅で(G2電圧がプレートよりかなり低い動作で)は、静電シールド効果が目立つのでスクリーングリッド(:遮蔽格子)という名が合うのかもしれません。一方、プレート電圧が低い領域ではG2が積極的にカソードの電子を引っ張っているので、加速電極だという解説もあります。この場合もプレートの電圧の変化を隠しているという意味の説明が付きます。
 しかし実態はかなり違うのではないでしょうか。特性の点で効いてくるのはプレートの位置や大きさではなく、G2の位置とその形状ですから、3極管のプレートを透け透けにして、その外側に第二のプレート置いたと考えるべきなのではないでしょうか。そう考えると、4極管は3極管のカスコード接続(上側は中途半端なA2級動作をしている)と見なせないでしょうか。

 4極管の問題のひとつはG2に流れ込んでしまう電流。G2の電圧がプレートより高くなる区間が広くなる大振幅ほど影響が大きくなります。これを軽減する工夫のひとつがグリッドの目合わせ。これにより、G1で絞られた電子流がそのまま勢いよく直進してプレートに当たる。

6L6-GC と 12G-B7 遠縁の親戚関係

 ビーム管の要はグリッドの目合わせ。この電子流が停滞せずにプレートに流れ込むには、G2とプレートの間隔も重要です。しかしグリッド支柱の付近はビームが整わず、プレートとの間隔も取れません。ビーム形成板はこの部分を隠しているように見えます。ビーム管はグリッドは微妙ですが、プレートはかなり自由が利くようです。

 ビーム管の古典といわれるのが6L6。12G-B3/B7系のライバルにあたる6BQ6の元を遡るとここに至るらしいです。メタル管からガラス管になって6L6-Gとなり、プレート引き出しを頂部に移して送信管になったのが807。これそのものもテレビの水平偏向にも使われたらしいですが、初期の専用管の6BG6はパルス回路用に耐圧を上げ電流を増した物のようです。

 この6BQ6のプレートを拡大して容量を増したのが6DQ6で、これに習って12G-B3のプレートを拡大した物が12G-B7です。一方、この過程を追って6L6の特性はそのままに容量を大きくして生まれたのが6L6-GCらしいです。だから6L6-GCの外観は水平偏向管とも少し似ています。
 製造時期は少し違いますが、同じ東芝製を並べてみました。プレートは6L6-GCの方が少し長く、12G-B7の方が少し厚いです。12G-B7のカソードが大きいのが目立つほかは、内部の構造はよく似ています。

2019年5月2日木曜日

水平偏向出力管 12G-B7と12G-B3


縁でやって来た12G-B7。これはテレビの水平偏向出力管。昔のテレビで映像が映る部分はブラウン管と呼ばれる巨大な真空管。

 プラウン管は、おおまかに言えば円錐と四角錐の中間のような形。底面を手前にして横倒しになっています。奥側にある頂点から手前のアノードへ電子が飛んでそこに塗られた蛍光体に当たると発光する。この電子の流れを上下左右に振り回して映像を描く。テレビのブラウン管では、電磁石を使って(フレミングの法則)電子の流れを振り回していました。これが偏向。日米のテレビでは、毎秒30枚の画像を送って来ますが、1画面を1ラインずらして2回で描くので、垂直の動きは60Hz。1画面は水平の線525本で描かれるので、水平の動きは約15kになります。音声の帯域の上下ぎりぎりの所にうまく設定されているように思います。
 強力な電磁石を駆動するのですから、偏向管が扱う電力はどうしても大きくなります。特に高い周波数で大振幅が必要な水平偏向はたいへんです。さらにこの回路はブラウン管の電子流となる高圧発生も兼ねています。そのため、ここには大型のビーム管が使われました。

日本式型番の真空管 大きさは似ていますが能力は4倍ほど違います

 12G-B3はテレビの水平偏向出力用の真空管です。型番の示すように日本独自の規格の真空管です。家庭用のテレビには日本的な事情に合わせて作られた日本独自の真空管がいろいろ使われていました。
 初期の水平偏向出力には6BQ6など米国系の系統の管が使われたようです。欧州系の真空管を作っていた松下はPL36/25E5を製造しましたが、これは特殊な構造のフレートを持っていて、低い電圧で大電流が流せます。これは電源電圧が低い日本には好都合。しかし25E5は欧州のトランスレス管でヒーターが300mA。日本向きの600mA管が欲しい・・・

 そこで東芝が作ったのが12G-B3。25E5のヒーターを100V用に600mAに変更したような管。12G-B3は、昭和30年代を通して日本の各社のテレビに使用され、多くのメーカーが大量に生産しました。
 特性図では原型の25E5と微妙に違いがありますが、偏向用としては同特性と言われます。定格も少し違いますが、当時の定格の考え方はかなりあいまいだったので、実質的には同等のようです。どちらも長期間に少しづつ改良され、製造時期やメーカーによって構造に違いがあり、実際の定格は途中で少し大きくなっているという話もあります。
 その後、テレビの広角化と大画面化にともなってより大きな偏向電力が必要になり、12G-B3をひとまわり大型化した12G-B7が登場しました。管が太くなりプレートも大型になっていますが、(偏向用としては)特性を同じに揃えてあり、修理の際にそのまま差し替えて長寿命になるということでした。

 この系統の管はテレビではスニペッツが出やすいという欠点があったようです。特殊なプレート構造の関係か、プレート電圧の低い領域の特性が悪いのが原因らしいです。これはビーム管としてシングルアンプに使う場合には注意が要りそうです。

2019年4月24日水曜日

テレビ用真空管

私の子ども時代のテレビは真空管。しかしそこに使用されていた真空管はラジオやアンプなどでは見掛けない型番の物ばかりでした。

 最近になって、12G-B7という大型の真空管が1本やって来ました。保守用の使い残しでしょうか、箱は水濡れ跡があり半ば潰れていますが、管自体は新品のようです。これは日本のテレビ用の真空管で、子ども時代に部品取りに解体した廃棄テレビの中でも見掛けた記憶があります。これも何かの縁。あらためてしらべてみることにしました。

 子ども自体には真空管でラジオやアンプを作って遊びました。その際、廃棄テレビからいろいろ部品取りしたけど、真空管を使う事は考えなかったです。

12G-B7は大型化して 12G-B3の許容損失を増した物。箱には定価は1300円と書かれています。


 昔の感覚では真空管はそれぞれ用途が 決まっている物。特にテレビは真空管をうまく組み合わせて少ない本数で効率よく高性能を得るのが工夫のしどころだったようです。

 しかし、テレビ用の真空管の中にはラジオやオーディオに使われていた管を原型にした物もありますし、逆にテレビ出身でアンプなどに使われるようになった管もあります。だから、当時ある程度関心と知識があれば、テレビ用の管を使って遊ぶ事もできたかもしれません。
 ところが、この頃は家庭のラジオやステレオなどはトランジスタ化が進んでいて、ラジオ用など定番の真空管のバルク物はかなり安く出回っていましたから、テレビ用の真空管を無理して使う必要はありませんでした。そのためでしょうか、雑誌などを見直してもテレビ用の管使う話は(無線関係を除くと)ほとんど出て来ません。

 あらためて見直すと面白そうなテレビ用真空管がいくつかありますが、当時これらをハナから除外してしまった一番の理由はヒーター電圧。当時の一般的なテレビは、真空管のヒーター を直列にして電源100Vを加えるトランスレス(電源トランスを使わない)でした。これは軽量化と安価低減にもなりますが、狭い筐体で漏洩磁束の影響を避けるのにたいへん効果的だったと思われます。このため多くの管はヒーター電圧が6.3Vではなかったのです。(当時は3.15V管を2本直列したり、6.3Vの巻線を直列にして12.6Vにする事は思いつかなかったです。)

2019年4月22日月曜日

リアクタンス負荷

普通のオーディオアンプの設計では、便宜的に出力に接続する負荷を抵抗として扱います。しかし、実際に接続されるスピーカーは単純な抵抗ではありません。


 古い雑誌を見ていると面白い記事がありました。記事の内容は、当時登場したばかりの縦型FET(静電誘導トランジスター)の特性と現実の動作に関する考察でした。この素子は普通のトランジスタや接合型FETとは全く異なる静特性を持っていました。一見すると真空管の三極管と似ているので、ここから昔の三極管vs五極管の論議が持ち出されました。とは言っても、昔の真空管のように出力トランスを使うのではありません。真空管では不可能な逆極性のペアを使ったプッシュプル。真空管と同じように考えて良い訳はありません。あらためて見直します。

 トランジスタを使ったアンプの出力部は、最初こそトランス結合でしたが、コンデンサ結合のSEPPになり、すぐにコンプリメンタリーSEPPになり、出力コンデンサも不要のDCアンプ構成になりました。抵抗負荷なら、これらは単純に等値なのですが、実際のスピーカーを考えると、本当に等値なのだろうかという疑問が生じます。

実際のスピーカーはけっこう複雑な動きをします
  
 通常のスピーカーは細い導線を巻いたコイルを磁界の中に置いた構造です。コイルにはコーンが取り付けられています。純抵抗なら、アンプの出力電圧と電流は、電圧に関しても周波数に関しても比例する関係になるはずです。しかし、コイルですから、周波数的には直線ではありません。コイルの動きは物理的にコーンなどに抑えられるので、この分がインピーダンスに影響して来ます。動いたコーンは元に戻る時に逆に電流を生じますし、低域の共振点あたりでは振動によって生じる電流がアンプに流れ込んで来ます。

 前述の雑誌記事の要点は、現実のスピーカーを考えるならば、純抵抗から純リアクタンスの間にあるはずで、アンプの動作を考えるならば、抵抗負荷で考えたのでは不十分なのではないかという内容でした。(スピーカーの共振や外乱による電流まで考えるともっと面倒になりますが。)
 リアクタンス負荷では、電圧と電流は位相が90度ずれますから、静特性の図では直線ではなくリサージュのような円になります。記事はSEPPプッシュプルのAB級の領域とB級の領域の遷移についての考察でしたが、この問題はプッシュプルよりも(出力トランスを使用した)シングルで影響しそうです。リアクタンスが大きい場合は、静特性の図の上で抵抗負荷で引いた直線の右上や左下の領域が問題になります。

 このあたり、三極管vs五極管の論議やシングルとプッシュプルの(抵抗負荷で計測した)数値に表れない違いと何か関係がありそうです。そして、スピーカーの箱の形式やシングル/マルチの論議にも関わっているような気がします。

2019年2月16日土曜日

BGMにmp3をかける

先日作った12AU7-PPアンプに小型スピーカーを繋いで、作業中のBGMをかけています。

 しっかり聴くのではなく、だらだらと音楽を流すとなると、いちいち交換する手間のかかるCDとかは不都合。多少音質が低下するけど、この点ではパソでmp3を鳴らすのが簡単。しかし、しっかり聴くのでなければパソから送り出すほどの事は無い。スマホとかでも良さそうだけど、いちいち繋ぐのも面倒。

 あれこれ考えているうちに見つけたのは、ちょっと怪しげなmp3プレーヤーのモジュール。何かの組み込み用らしいです。USBかSDメモリーを挿入すれば、中のmp3を連続して再生するらしい。電源は5Vで、出力は直接スピーカーを繋ぐらしい。でもどうやら出力はグランド基準では無さそう。これを何とかして、アンプに繋げるかしら。安かったので、とりあえず試して見ることにしました。

基板に付いているコネクタは電源と左右のスピーカー用です

 まず、電源に5Vを接続して出力端子の電圧を測ると、どちらも+2.5V。差動出力らしい。どこかからグランド基準の出力が取れるだろうか。
 基板の載っているICを見ると、8002と書かれています。検索したら、それらしい製品の資料が出てきました。基板のパターンを追ってみると、資料の推奨回路とピン接続と合致すます。どうやら、コレでアタリらしい。(下の写真)

8002はちょっと面白い構成のICです。

 資料の解説には小電力のBTLオーディオアンプと書かれていますが、内部構成が独特です。というか、これはBTL(負荷ブリッジ接続)というのとは違うような・・・
 内部は2個のパワー・オペアンプのようです。第一ユニットは普通に正負の入力(4と3ピン)が出ていて、推奨回路では反転アンプとして使っています。第二ユニットは内部で-1倍の反転アンプとなるように構成され、この入力は第一ユニットの出力に結ばれています。IC内部で基準の1/2Vccが作られていて(2ピン)、第二ユニットの+入力は内部でここに結ばれています。推奨回路では第一ユニットの+をここに結んでいます。このように、2つのユニットは電力的には独立しているので、片側からのみ出力を取っても問題無さそうです。

 そこで、第一ユニットの出力(5ピン)から引きだして、コンデンサを通してアンプに繋いでみました。けっこういい感じで音が出ます。心配だった耳障りなノイズは問題無さそうですが・・・何か音がザラついています。基板上にフィルタらしい物が無いですから、デジタルのノイズが素通しで出ているのでしょう。そこで簡単なフィルタを付けてみることにしました。
 手もとにある使い残しの抵抗とコンデンサを組み合わせて2段のCRローパスフィルタを作りました。8002はスピーカーを鳴らせるICですから、フィルタのインピーターンスは低目にして、後続のバッファは無しで済ませました。(上の写真奥側の小基板)

 簡単なフィルタですが、それなりに効果があるようです。常用のシステムに繋いでしっかり聴くとやはりガサツな音ですが、音量控え目でぼんやり聴くならあまり支障無いぐらいで、BGM用ならじゅうぶん使えます。(片出力で使っているので電源ON/OFF時のポップノイズは出ます。)

 合板の端材でケースのような物を作りました。バネル面の電源スイッチは操作しにくいので、小型のスナップスイッチを並列に付けました。

2019年2月11日月曜日

カソードNFをかけました 6AQ5-S

キャラ的にどうしても出番が少ない6AQ5シングルアンプ。改造してしっかりとK-NFをかけます。


 改造と言っても、トランスや真空管はそのまま使って筐体もそのまま使います。発熱対策で周囲の通気を良くするため、6AQ5はサブパネルで約4mm沈めて付けてます。この部分もそのまま使います。このため外観はまったく変更無しです。

 インピーダンス確保のためにエミッタフォロワを追加しますが、これは内部のスペースに収まります。ネジ穴も元のをそのまま使いますから、改造するのは内部の回路だけです。
 トランジスタ用の電源はコンデンサ保護の分流抵抗から分けて取りましたから、電源回路は元のままです。
 接地されていた出力管カソードのケミコンは出力トランスの2次側に接続変更します。このため立ラグ板を追加して中継します。このコンデンサは容量を増すために新規購入して交換しました。
 ヒーターバイアスは出力管のカソード電位を利用した簡易な方法でしたが、カソードが出力とともに振られるようになるので、これが使えなくなります。そこでヒーターは片側接地にしました。初段のカソードがコンデンサで接地されるので支障無いと判断しました。初段のG2のバイパスは直接グランドに繋ぎました。 

改造後:左の基板がエミッタフォロワーです

 エミッタフォロワーの部分はスルーホール基板の残材を利用して作りました。トランジスタは汎用の小信号用なら何を使っても大差無いです。後で差し替えて遊ぶかもしれないのでソケットにしてあります。
 6AU6の関係の部品は元と同じように平ラグ板に載せます。値の変わる抵抗と位相補正用のコンデンサは交換しました。その他の多くは再利用ですが、回路が大幅に変わるため一旦全部外して付け直しました。このような改造が簡単なのは平ラグ配線の利点です。

 バッファ基板の組み立ても含めて、改造はゆっくりやって半日の作業。それから動作チェック。
 まず何も挿さずに電圧を確認。それから出力管を挿して、カソードNFを付けて発振しないことを確認。トランジスタを挿してバッファの動作を確認。6AU6を挿して、もう一度電圧チェック。それから信号を入れてみます。メージャーNFはかかっていませんが、けっこういい感じの音が出ます。それからNFを接続。
 あらためてスピーカーを繋いでしっかり鳴らします。やはり最初はだいぶ酷い音が出ました。出力トランスの直流磁化が変化したからでしょうか。そのまま鳴らしていると次第に落ち着いて来ました。音の傾向は元とはずいぶん違います。念のため、K-NFを外してみると、以前と同じような鳴り方に戻りますから、この違いはK-NFの効果のようです。記憶にある6V6のULシングルとも違う音です。

 低音がしっかり締まった感じに響くのは同じトランスを使っている6BX7シングルと似た感じです。全体に明るい感じは元と同様ですが、中域も緩さが無くなり、特にボーカルがしっかり聞こえる感じで、これは小音量でも同じ傾向です。思い切って実行した改造ですが、予想以上に効果がありました。