縁でやって来た真空管は12G-B7。部品取りに解体した廃品テレビの中で見た記憶があります。当時はこれを使おうとは思いませんでしたが、もしこれを使ったとするとどんなオーディオアンプになったでしょうか。
あらためて調べてみると、6.3V管の6G-B3A/B7のオーディオ用としての使用例がいくつか出て来ました。そのままピーム管のプッシュプルで使うと、300V程度のB電圧で40W級のアンプになるようです。しかし規模的に子どもの手に負える物では無さそうですし、このような用途ならば6CA7や6L6の方が使いやすそうです。雑誌などの製作記事には400Ωスピーカー用のSEPPアンプがいくつかありましたが、真似してジャンク部品で作れるような物ではありません。
12G-B3/B7は、低い電圧で大電流を流すように作られた管で、ビーム管としての特性は綺麗ではありません。この点からはシングルアンプは不適当な気がします。ところが、規格表にある3結の時の特性図はたいへん素直です。有名な2A3には及ばなくても、現代的には使いやすい感じです。どうやら3結で低内部抵抗の3極管として使う方が面白そうです。
シングルで使うならメーカーや使用歴が違っても支障無いです。ステレオにするので相方が最低1本、継続的に使うなら数本は必要です。テレビで使われて多少くたびれた管でも良ので、安い出物があるか探して見ました。
真空管テレビが終わると保守用に確保されていた真空管はあちこちで投げ売り状態になりました。その中には12G-B3やB7もありました。その後作例がいくつか紹介されたこともあってか、かなり価格が上がったと聞いていました。しかしあらためて探して見ると、開封品(ほとんど使っていない?)の12B-B3と12G-B7がずいぶん安価に出ているのを見つけました。
12G-B3 と 12G-B7 いろいろ |
小ネタ半分なので、あれこれ繋ぎ替えて聴き比べできる私室用のアンプにします。同じシャシーを使って外観を揃えます。仕上がりゲインも揃えます。
ドライバは、当時のテレビ管の仲間から選ぶとすると、中間周波増幅に多く使われた3CB6あたりでしょうか。しかし今回は大きさと総発熱量の関係から半導体を使います。6Z-P1シングルアンプで使用した手法で、J-FETとトランジスタをカスコードにすると5極管に似た特性になります。
私室用のアンプは棚の中で使用するので発熱が大きすぎると困ります。12G-B3の3結の許容損失は12Wあるいは13Wという説がありますが、規格上は原型の25E5と同じ10Wです。ここからさらに軽減して約8Wで考えます。しかしテレビの水平偏向管なのでヒーター電力が約8Wもあります。このため管2本分で合計32W程度。電流が大きくバイアス電圧が大きい管です。これを自己バイアスで使うのでカソード抵抗の発熱が大きくなります。全体では常用している12BH7A-PPアンプよりだいぶ発熱が大きいことになりますが、この程度なら、真夏でなければそれほど困ることは無いと思います。