2014年5月12日月曜日

真空管のウォームアップ

真空管の動作は熱電子によるもの。だから熱くならなきゃ動作しない。スイッチを入れて暖まるまでの時間は真空管らしいひととき。

  真空管にはウォームアップタイムというものがあります。スイッチを入れてヒーターが点灯して、カソードが暖まって電子が出る。それまでの時間がウォームアップタイム。
 オーディオアンプの場合、スイッチを入れて少し待つと、微かに音が出だして、だんだんそれが大きく聞こえだします。逆にスイッチを切ると、しだいに音が弱まってかすれて消えてゆきます。 真空管時代のテレビでは、暗い絵が出て、だんだん明るくなるとか、真ん中に小さく(あるいは細長く)絵が出て、これが画面いっぱいに拡がるとか。

注意:トランスレス用でない真空管のヒーターを直列にしてはいけません。起動時の温度のばらつきでヒーター断線の危険が増します。

 真空管式のテレビでは、(磁界で輝線が揺れるのを嫌って)トランスレスが普通でした。ヒーターは直列にして100Vで点火します。直列にするのでトランスレス用の真空管は暖まり方が規定されていました。普通のレス用は11秒となっています。正確にはヒーターの温度が上がるまでの時間で、定常動作に至る時間ではありません。

 うちのアンプの真空管たちはと見ると、12BH7Aがテレビ用です。12BH7のウォームアップタイムを調節したのが12BH7Aです。ドライバの6BL8は元々は欧州のテレビ用の管で、姉妹の4BL8や9A8はレス用です。6BM8も原型はテレビ用のレス管です(6BM8はレス用ではない)。
  6SN7-GTに対して6SN7-GTBはウォームアップタイムが規定されていますが、名前程度の違いしか無いのかもしれません。差し替えて比べてみるとどちらも大差無い時間で音が出てきます。

石アンプ : アンプ部と保護回路部

  トランジスタアンプはヒーターがありませんから、スイッチを入れるとすぐに動作を始めます。前段が安定動作する前にいきなり出力段がオンになった場合、スピーカーからボコっと音がでる事があります。逆に電源が切れた瞬間に不安定になる事もあります。アンプが大出力になるほどこの問題は深刻になります。ひとつの解決方法が「保護回路」。スイッチ・オン後しばらくたってからスピーカーをつなぎ、電源喪失時にはすみやかに切り離す。
 出力回路自体の工夫でこの働きをさせる方法もありますが、いちばん簡単確実なのは電磁リレーで物理的に切断すること。自作の石アンプでは異常動作で出力にDCが漏れるような場合も切断するようにしてあります。アンプ部はオペアンプICのμA749を使っていますが、保護回路はすべてディスクリートで作りました。まだこの頃はICを信用していなかったためです。

2014年3月27日木曜日

12BH7A PP : 真空管の寿命

真空管って消耗品と言われます。でもその寿命はかなり差があるようです。

 真空管の動作は完全に金属電極の間の物理的な物。使ううちに徐々に状態が変化します。徐々に消耗してゆき、特性が劣化してゆきます。テレビでは、偏向回路とかでは同期がかからなくなったり振幅がたりなくなったりと限界が"見える"場合もありますが、ノイズとか輝度とか我慢すればどうにかなる場合もあります。オーディオ用のは場合も、どこまで使うか判断が難しいです。
 定格内でも劣化が早い管もあればいつまでも変わらずに働く管もあります。無理な使い方でもある程度耐える管もあれば、すぐに弱る管もあります。同じ管でも使い方によってずいぶん寿命が違うようです。12BH7Aはテレビの偏向回路ではかなり無理な使い方をされていたようです。現役当時は劣化の心配がある管でしたが、どうやらかなりしんどい使い方をされていたようです。中古の管を見ると片ユニットだけへたっている物がかなりありました。

12BH7A と 6BL8 どちらもテレビと縁のある管です

 ふりかえって見ると、このアンプは20年ほど働いています。私室でBGMをかけたり、DTMのモニタとしても働き、ビデオやテレビの音声もここから出していました。休日は朝から晩まで点けっぱなしの事も多く、時には切り忘れたりも。普通の家庭のテレビよりも稼働時間の割合は多いかもしれません。ややA級に近い動作で、無信号でもけっこう発熱しています。それでも管はずいぶん長持ちしました。12BH7Aはすべてテレビなどの中古の管で、この管で3代目。6BL8は2代目。これらは新品も含めて手持ちがかなりありますから、管が無くなって使えなくなる心配は無いでしょう。

2014年3月23日日曜日

6Z-P1 Single : 真空管アンプの熱さ

真空管アンプの音って何でしょうか。居間の6BX7-PPアンプは、製作当時は真空管アンプ愛好の方にはトランジスタっぽい音がすると言われました。その後造ったトランジスタアンプは、DCアンプ絶対派の方には真空管っぽいと言われました。

 引き続きアンプの外観のお化粧をしながら、もうしばらくアンプの鳴らし比べ。これが終わったら晩秋から続いていた電気工作もひと休みの予定。それまでに見直す所とか無いかもう一度チェック。あわせてwebコンテンツも整備して、灯のともった真空管の姿を写真に撮って。
 真空管の灯りの写真はデジ一眼レフだから撮れるもの。真空管のヒーターの光は案外弱いです。ヒーターの照り返しで管やまわりがほんのり赤く見えるように撮るには露出と照明のバランスが悩ましいです。カメラは3脚に固定して、構図を整え、暗くした部屋の中で、アンプに弱い照明を当てて、長時間シャッターで撮ります。デジでは撮ってすぐに結果が確認できます。それをもとに照明の位置や明るさを変えてもう1枚と。まあ、一種のカットアンドトライです。ずいぶんアナログちっくです。

少し青色のグローが出ています

 私室の小型アンプたちの定位置は書棚の中。同じ大きさの入力セレクターと重なって、繋いだらそのまましばらく働きます。上は上の棚板に守られて横の空間も確保されています。使用中はボンネットカバー無しでも全然支障無いです。危ないのはつなぎ替えとかの作業時ぐらい。使用したシャシーが同じなので設置スペースは同じですが、高さが違います。いちばん背が高いのがこの6Z-P1。つるんとした頭と上の棚板の間はけっこう接近します。幸い真空管の発熱が少ないので、真夏でも上の板が熱くなって困ることは無いでしょう。総発熱量は(製作予定を含む)5台の中ではいちばん小さいです。
 居間のアンプは、イザ音楽を聴くぞ、とか映画を見るぞという時しかスイッチが入りません。対して私室のアンプは雑食です。テレビの音声からパソの音声まで、音楽も動画もなんでもあり。朝から晩まで通電しっぱなしの事も多いです。製作時に発熱や管の消耗を気にしたのはそのためもあります。ぎりぎりの性能を発揮させてやるのもひとつの行き方でしょうけど、倹約&貧乏性には向いてないですから。

2014年3月17日月曜日

6BM8 Single : 慣熟運転中

出発点へ戻る航海。当初の思惑と順序は逆になりましたが、第一行程は順風の中で終了。残りはまた潮時を待ってから。

6BM8のアンプは無事に完成。聴き慣れた音楽をかけながら慣らし運転を継続中。中古の真空管もひととおり動作チェック。かなり酷使されたのか、足のあたりが黒ずんだ管もありますが、全部支障なく動作しています。

 やや控え目の動作ですが真空管はかなり熱くなります。電源トランスは余裕があるので、暖かくなるという程度。出力トランスがカバー無しなので漏洩磁束の影響を心配したのですが、ハムもノイズも出ずに済みました。外観の問題だけです。しばらく鳴らしているうちに新品のトランスも馴染んできたようです。全体としては普通の真空管アンプという感じの音に落ち着いて来ました。けっこう音量感のある鳴り方で、ゆったり雰囲気で聴くにはいい感じです。

古いオペアンプたち 8ピン1回路入り


 オペアンプもいろいろ差し替えてみました。特性に差はありますが、ゲインは低いし振幅も小さいです。いずれも出力アンプ部よりも広帯域で、最終的な出力では全然差がありません。低雑音でない品種でもノイズが聞こえることは無いです。上の写真は手元に残っていたオペアンプたち。それぞれ数個あります。

 左側の缶入りとその下の3個は汎用オペアンプの元祖フェアチャイルドのμA741とその互換品。日本のメーカーも互換品を作っていました。NPNのエミッタフォロワでインピーダンスを稼いで、カスコードにカレントミラーと縦積みにしてゲインを稼ぐ構成。
 LM307はLM301に位相補正コンデンサを内蔵して741に対抗したような品種。これはモトローラ製の互換品。入力部は良く似た構成ですが、出力段は準コンプリという変則構成。
 これらの次の世代は入力部がPNPになっています。上右のNE5534は低雑音広帯域を謳っていますが、用途が難しいです(要位相補償)。これはテキサス製の互換品。
 その下は入力部がJ-FETになったテキサスのシリーズのひとつ。用途を選ばない使い易いICと思っていましたが、今回の使用で意外とドライブ力が無いことが判明。
 CA3140はRCAの製品で入力部はMOS-FETです。次段以降も変な回路で、出力部はSEPPですら無いというユニークさ。RCAの製品ではCMOS出力のCA3130も持っているのですが、残念ながらこれは耐圧の問題で使えません。

2014年3月14日金曜日

6BM8 Single : 製作開始

主要部品が揃ったので、上げ潮に乗って進むことにしました。6BM8シングルアンプの製作を開始。ふりだしに戻る航海です。

 子ども時代の事とか考えると、これを最後に持ってくるべきだとは思うけれど、なりゆきでトランスが先に揃ってしまったので、6BM8のアンプの製作を開始しました。
 子ども時代は廃棄物のテレビなどの解体部品でずいぶん遊びました。レスの管を活用する知恵は無かったので、真空管は新品を買いました。トランス類などジャンク屋で外し物も買いました。今度は、管は中古ですがその他は新品です。
 おそらく、まとまった電気ものの製作はこれが最後。出番が無かったものや試作に使った物、短期間で解体した残渣など、手もとに残った部品をなるべく多く使うことにしました。適材適所とは行かなくても、そのまま捨てられるよりは良いでしょう。そのつもりで回路の方も微調整。

ケミコン シャシーに立つ
  ラグ板配線の良い所は、少しづつ作業ができること。筐体がらみの部品は全部揃いました。中身の抵抗やコンデンサはいくつかが欠けていますが、大きさの取り合いが必要な物は無いので、時間のあるうちにシャシー加工をやってしまうことにしました。シャシー加工をすると、アルミの削りクズが散らかりますから、この工程は一気にやってしまうのが吉。
 部品配置は先にいろいろ検討しましたから、作業は一気に進みます。大物の穴を開けたら仮組みして確認し、ラグ板などの位置を微調整してネジ穴開け。そのままネジ止めまでやってしまいました。中身はカラですが、外側はすっかりそれらしい雰囲気。真空管を挿してみました。
 6BM8は背丈が高い分細く見えます。真空管はこの2本だけですから、シャシー上面は広々として見えます。ちょっとボリュームのある電源トランスの前にはケミコンが2本並びました。昔からの馴染みの光景。これが無いと全然サマになりません。本来は基板付け用のコンデンサですが、こうして足を付けるといい感じです。
 

2014年3月9日日曜日

6BM8 Single : 出力段の検討

実際の物作りはまとまった時間が必要。でも、準備は合間に少しづつ進めておくのが良いです。

 大物の6CA7-PPアンプが意外とすんなり出来たのも、振り返って見れば、構想を長い間暖めてきたのが大きかったように思えます。まあ、ちょっと以上に長すぎましたが。

 今回の一件のからみでやり残したような感じなのがもうひとつ。なんとなく集まった中古の6BM8を活用すること。本数はあってもあまり状態の良くない中古ばかり。プッシュプルにするのは無理。大出力も要らないので、やはりシングルでしょう・・・・・という事で、いろいろ考えてみました。
 回路は教科書的なシンプルな2段増幅を考えます。3極部はμ=70ですから、5結にしてもNFをかけると微妙にゲインが足りません。 無理にゲインを稼ごうとせずに、前置アンプで補うことにします。そうすると(感度が低くても良いので)ULやK-NFにする余裕が出て来ます。6BM8は子ども時代に使った管です。最初はラジオを作り、ひととおり遊んだあとはアンプに作り替えて、NFをかけたり3結にしたりしました。しかし出力トランスが怪しいジャンク物で、ULはできませんでした。今度作るならULをやってみたいです。

 そこで、6BM8に合いそうでULタップが出ているトランスを探しました。あまり高価で無いのが好ましいです。選んだのは、ノグチトランスの PFM-5WSという物。カバー無しのバンド止めの廉価タイプ。リード線が下出しなので、感電の心配は無いですが、漏洩磁束の影響はどうでしょうか。

 6BM8の原型のPCL82は元々は欧州のトランスレステレビ用です。250V以上かけている作例が多いですが、本来はあまり高い電圧で使う物では無さそうです。特性図を眺めていると、200Vぐらいが良さそうです。そうなると電源トランスが問題。必要な電流を取れそうなトランスで電圧の低い物は既製品には見あたりませんでした。無ければ作る??
 6CA7-PPアンプの電源トランスを特注した春日無線に頼むとして、試しに容量を計算してみると、既製品の2割増しぐらいの価格になりました。高圧巻線はブリッジ整流にし、後での使い回しも考慮して普通程度の電圧の端子も設けました。オペアンプの電源用に使うため、ヒーター巻線のひとつは12.6V(CT付き)にしました。

 これで大物はだいたい揃いました。 実際の作業は梅雨の頃かしら。それまで、まだしばらく考える時間はあります。

2014年2月28日金曜日

12BH7A PP : 出力トランス

しばらくぶりの電気工作。やっているうちにちょっとはカンが戻って来たようです。その調子でもうひと作業。

 しばらく前にはほとんど絶滅していた真空管アンプ関係の部品がまた作られるようになっているのはちょっと驚きでした。
 私室のヌシに収まっていた12BH7A-PPアンプは1990年代に作った物。この頃はもう小型アンプ用の出力トランスなどは絶滅していました。そこで怪しい試みをする事になりました。電源トランスは出力トランスに使えるか?? なりゆきで、1次側の中点タップを出したトランスをカットコアに巻いて貰うことになりました。実物を測ってみると、本式のオーディオ用には全然及ばないものの、ラジオ少年御用達あたりよりはマシな感じでした。そのまま無理は覚悟でアンプにしたら、案外聴きやすい物ができてしまって、そのまま長年働いて来ました。

 懸案の6CA7プッシュプルアンプ製作の流れで、2つのミニアンプを作ってしまいまいた。デザインも機能も12BH7Aのアンプと対になる物なのですが、さすがに繋ぎ替えて聴くと格差が目立ちます。SPICEも活用して動作を見直して、抵抗とコンデンサをいくつか交換して、いくらかマシになったものの、高音も低音もいまひとつ伸びが無い感じ。やはりトランスの特性が足をひっぱっている感じです。ならば、トランス交換するしかない。幸い今なら良さそうなトランスがあります。


 全体を作り替えるのではなくトランスだけ載せ替えることにしました。サイズ的にうまく載りそうな物から春日無線のトランスを選びました。イチカワの物よりひとまわり大きなコアが縦になって幅が抑えられています。定格の10Wはおそらくぎりぎりの容量と思われますが、このアンプには余裕たっぷりです。
 トランスを載せ替えて鳴らしてみると・・・やはり低音も高音もくっきりたっぷりと。このあたり、イマ風の出力トランスの作りなのでしょうか。 あれ??ちょっとキラキラしすぎ。オシロでチェックすると、やはり矩形波の角がギンギンに立ってました。元のトランスが早い所からダラダラ下がっていたのに対して、このトランスはぎりぎり高域まで頑張っているようです。そこで位相補正のコンデンサを変更したら、あっさりと綺麗に収まりました。慣らし運転のまま棚の中に居着いていた6SN7-PPアンプと交替して、昨晩はそのまましばらく私室で音楽をかけて様子見。音はずいぶん変わりましたが、適度な音量感はそのままです。

 私室の棚には12BH7アンプが戻って来たので、6SN7-PPアンプは居間に出張です。ある程度は予想したけれど、カッチリ気合いの入った音です。でも、ちょっと音を大きくしてじっくり聴くには良いけれど、気楽に聴き流す雰囲気では無いし、なによりすっきりしすぎて音量感が足りないです。日中はメインのスピーカーをだいぶ大き目の音で鳴らしていました。やはり、音量感がなんか違います。スピーカーの前では常用の6BX7-PPアンプより音が小さくきこえますが、離れると大きな音で鳴っているのに驚きます。やはりドライブ段の回路の違いと関係があるのでしょうか。