2014年2月6日木曜日

真空管と整流回路

今回の主役の6CA7アンプ。回路上のかなめは電源です。正負あわせて3つの整流回路。

 安くて丈夫で扱い易いシリコンダイオードのおかげです。この電源部を真空管で作らなければならないとしたら、すごく面倒な事になっていたでしょう。昔の一般的なアンプは、単一の整流回路で、出力管から前へと次々電圧を下げながら供給する。あとは固定バイアス用に負の電圧を作るぐらい。
 この伝統的な回路構成は、長い間アンプ設計の標準的手法であったと思います。トランジスタ時代になっても、初期には同様の考え方の回路がけっこうありました。

 標準的なデジタルICの電圧は5Vです。初期のCPUの8080は面倒な仕様で、+5,+12,-5Vの3種類の電圧が必要でした。-5Vは電流が小さかった(1mA)ので、なんとか他の電圧から作ろうとする工夫がされました。後継の8085や機能的に上位互換のZ80は5V単一動作になったので、ロジック部の電源は5Vひとつで済むようになったのですが、周辺回路などで仕様上別の電圧が必要な部分は存在しました。その筆頭がモデムなどのシリアル通信。 RS232Cは(できれば)±12Vが欲しいです。メモリ関係はかなり後まで+12が必要な物が残っていました。これらのために電源回路を複雑にするのを避けたいので(電池で動かしたい事もありますし) +5からなんとかして作る工夫がありました。最後にはそのためのICまで登場しました。(これらがアナログ回路に使えるかは不明です。)

デュアル 倍電圧整流回路 オペアンプに良さそうです


 トランジスタと真空管のコンボを考えると電源がポイントになります。製作中の6SN7-GTアンプは差動段を下へ引くマイナスとバイアス用のプラスが要ります。これをどこから作るか。電流は数mAですから、B電源の巻線から取れますが、高い耐圧の部品が要りましすし、電圧のほとんどを無駄に捨ててしまうことになります。幸いどちらも電圧は5~10V程度あれば良いので、ひとつ余ったヒーター巻線 6.3Vを正負に半派整流して得ることにしました。π型にフィルタを入れても電圧は足ります。

 前置するフラットアンプにオペアンプを使おうとすると、このための電源が要ります。中点から吊って単一電源で済ませる手もありますが、できれば正負の電圧が欲しいです。振幅が要りますから、あまり低い電圧では困ります。
 電圧が足りなければ、倍電圧整流という手があります。真空管時代のテレビは、電源トランスを使用せず(磁界で輝線が揺れるのを避けられる)電灯線の100Vを倍電圧整流してB電圧にしていました。電源ラインが宙に浮く(ヒーターの電位が揺れる)のを嫌って片側を接地した半波倍電圧整流です。
 この回路を利用します。ヒーター巻線の6.3Vを半波倍電圧整流。これを上下に積み重ねて正負を作る。リップルが気になるのできちんとフィルターを入るとして、これなら±12Vぐらいは確保できます。(半派を上下で使うので、トランスから見ると両派になります。)