2013年10月29日火曜日

6CA7 PP : 回路の検討 3

ネット時代って便利ですね。探すと真空管の特性図も入手できます。真空管マニュアルの図よりも大きくて見やすいです。数社の資料を見比べて確かめたりできますし、ちょっと変わった条件のデータもあったり。

ということで、略算式で得たデータを図に落とし込んで、確認と微調整。

まず2段目。負荷抵抗33kΩで線を引いてみます。電源220Vが低い感じですが・・・
ちょうど良さそうなあたりに線を引くと、真ん中はグリッドが-6Vで2.5mA流すあたりになります。
33kΩで82V落ちますからプレートは143V。
入力がP-Pで10V最大で、出力がP-Pで120V出ますから、ゲインは12倍。
実際に必要な出力はP-Pで40Vあまりですから、入力はP-Pで3.3Vぐらい。
グリッドの振幅も余裕があります。
略算とは微妙に違いがあり、一般的な動作例に近い値が出ました。
手元にあった雑誌の製作記事の回路図から逆算した値とも何となく似ています。
まあこんなものでしょうか。多少ズレでいても、カソードバイアスの抵抗で調整できるでしょう。

次は1段目ですが・・・

6BX7 プッシュプル 6BL8アルテック型
数日前から、居間のアンプを私室に移動して鳴らしています。これは双3極管の6BX7を使ったプッシュプルです。鳴らしているスピーカーが普通でない物だからでしょうか、つなぎ替えるとずいぶん音の感じが違います。何から来る違いなのか微妙に悩ましいです。

2013年10月25日金曜日

6CA7 PP : 電源トランスの仕様

先を急いでもしようがない。あちこち眺めながら行くことにします。

先日のドライバ段の計算は、やはり変です。
どうも、負荷抵抗の小さいあたりでは略算式では誤差が多いようです。
特性図に載せてみると、それでも6CG7はあまりズレていないのですが、12AT7は全然違っています。動作についてはきちんと算出しなきゃいけないようです。まあ、この方向で進めそうだという事が解っただけでも意味はあったような。

 で、電圧配分が見えてきたので、今度は電源回路から見て行くことにします。まずは電源トランス。特注(イージーオーダー?)する予定ですから、その仕様の範囲で作れるかどうか検討します。

 必要な電圧は、交流で 290V,190V,120V 。それぞれセンタータップ整流しますから、巻き線は共通で済みます。電流が大きいのはプレートの290V。この電圧では意外とG2の電流は小さいです。大出力を取り出すなら、合わせて145mAは欲しいですが、まあそんなに連続して大きな音はださないので、かなり控え目でも済みそうです。あと、ドイラバ段とバイアスのマイナスが必要。
 難関はヒーター。6CA7は大食らいで 1.5Ax4=6A,ドライバ段に600mAx2+300max2=1.8A。これは常時ですからけっこう大きいです。

 

  で、シャシーに載る大きさからトランスを選ぶと、200VAの物が限度のようです。ここから逆算するとと、高圧巻き線は250mAしか取れないことになります。ちょっと貧弱な気もしますが、まあ仕方ないかしら。で、ちょっと困ったのは、端子の総数。B巻き線にタップがたくさん出るので、ここだけで7個。総数14個ですから、ヒーター巻き線に回せるのが4個だけ。悩ましいです。

2013年10月23日水曜日

6CA7 PP : 回路の検討 2

昔のように頻繁に部品屋に行くことはできません。作り始めるまでになるべくきちんと計算して、できれば部品交換して調整ということは無しに済ませたいです。


略算式で計算して、どうやらドライブ電圧は良さそうです。
この値から、さらに2段目の動作を略算式で詰めて行きます。
あくまで略算ですから、あとで特性図で確認して調整する必要があります。
最後は、実際に作って見て調整ですが、これはなるべく少なくしたいです。


普通と逆で、電圧やプレート負荷から動作を探ってゆきますが、普通の抵抗結合増幅のデータとはずいぶん違う値が出て来ます。
アナログ計算機
プレート抵抗が33kΩとすると、増幅率は約6倍。まあ、こんな物かしら。
最大出力31Vを割ると約5Vの入力です。
√2倍して、グリッドの引き残りを足すと、7.8~8V がバイアス電圧で、この時の電流が2.7mAほど。
すると、33kΩで落ちる電圧が89Vぐらいで、P-K間が139V。最大振幅時の引きのこりが95V。
差動のバランスの点ではカソードは大きくマイナスに引きたいです。
マイナス側の電圧は最低でも95Vで、余裕を見て120Vぐらいでしょうか。
120Vとすると、(120-8)÷(2.7×2)=20.7kΩ
なんとなくもっともらしい数値が出ました。(ホント??)
電力も電流も規格に収まります。12AU7 でもだいじょうぶなぐらいです。

そのまま1段目もひととおり計算しておきます。

1段目と2段目は直結にはしません。全体ではDCは帰還されませんから、大げさな回路で補正しないかぎりDCは不安定になります。ミュラード型のように片側だけ前段から引っ張る回路も見ますが、これではどのみち低域に時定数ができますし、グリッド電流の問題やインピーダンス的に不均衡が出ます。潔く両方ともCを入れる方が安心な気がします。最近は容量が大きくて特性の良いコンデンサが安く使えます。電源電圧の利用という点でも、この方が楽です。(注:ミュラード型の原型は直結では無いらしいです。)

2段目のグリッドの抵抗を330kΩとして、1段目のプレート抵抗はその1/3の100KΩにして見ます。
使用予定の 12AT7 は μ=60です。
電圧を180Vとすると、増幅度は約15倍。なんとなく、このゲインは低すぎる感じ。
そのまま計算を続けると、バイアスは3.2Vぐらいでしょうか。電流は0.7mAぐらい。この値は変!
最大振ることは無いですが。P-Kの残りが40Vぐらいでちっょと足りない感じ。
カソードを-90Vから引くとして、カソード抵抗は62kΩ。

ここで全体のゲインを見ておきます。仕上がりゲインは手もとの他のアンプと同程度とするつもりです。仕上がりで約25倍。そうなると裸で100倍ぐらいは欲しいです。

出力段は、P-P=40Vの入力で 16Ωに30Wですから、P-Pで60Vぐらいの出力。意外とゲインがあります。さすがに5極管。
1.5×6×15÷2で、全体では67倍ぐらい。このままではNF量がほんのちょっぴりしかありません。
これは略算ですから、実際はもっと高いとは思いますが、もう少しゲインが必要です。
それよりも、どっか見落としや勘違いがありそうな気もします。

しばらくは頭の体操です。






2013年10月21日月曜日

6CA7 PP : 回路の検討1

出力段からきちんと計算してみることにします。

命題は、一次側で30W、P-P間で6KΩの負荷。

この条件に合うのは、300Vで200mA(交流)。
  プレートの引きのこりを見込むと、電源は375Vは必要。もう少し余裕が欲しいです。
B級のクロスオーバーを40mmA(片側)とすると、最大で240mAぐらい。もう少し少なくても良いかしら。
SG電圧+250Vぐらいでちょうど良い電流になりそうです。
  この電圧で、バイアス40mmAぐらいになるグリッド電圧は-20~22Vぐらい。
案外いい具合になりそうです。

電源トランスはプレートが280~290V, G2が190~200V ぐらいでしょうか。
  SGはチョークを通すとして、プレートは整流しっぱなしで済まそうと思います。
  この電圧なら、コンデンサの耐圧が楽になります。

とりあえず、回路を図にしてみました
 この時の入力が P-Pで40Vぐらい。意外と楽そうですが・・・
  ドライブ段のプレートはSG電圧からR通して取るとして、220V以下でしょう。
6CA7のグリッド抵抗は、安全を考えて100kΩとします。
  そこで、プレート抵抗は余裕を見てその1/3以下として、33kΩ。
管に6CG7を使うとして、μ=20 ですから、負荷33kΩは良い値でしょう。
これを略算式に入れて見ると・・・
  出力電圧は、実効値で約31V。P-Pで86Vですから、2倍の余裕を見ても何とかなりそう。

もう少しきちんと計算してみなければいけないようです。


2013年10月10日木曜日

6CA7 PP : トランスとシャシー 比較検討

使用するシャシーの元のMQ60についても少し調べてみました。

 MQ60は今では保守が難しいアンプですが、単純な不良品というのではなく、解体ジャンクのような物がけっこう出回っているようです。使える部品を共食いしたり、他のアンプの保守用に部品取りされたり。うちに来たのはそんな残りもののようです。

 使用されている真空管は50C-A10。6C-A10のヒータ違いです。大出力の3極管で、感度が高くてプッシュプルで30Wが得られるのがウリだったようです。しかしその型番のとおり、日本独自の管であり、開発元のNECが製造をやめてしまうと供給が途絶えてしまいました。相当管や類似管はありません。同じ国産大出力3極管でも東芝の6G-A4が単純な3極管の拡大版なのに対して、この管の中身は、見た感じでは晩期のテレビの偏向管用ビーム管とたいへん良く似ています。テレビの偏向管の設計を転用して(内部で3結にして)オーディオ用に仕立て直したのてはないでしょうか。当然、各部の見直しはされたと思うのですが、現役当時から弱い(無理が利かない、劣化が早い)玉と見られていました。
 50C-A10は50V点火です。2本直列にしてACで直接点火すればヒーター巻き線が不要になります。これで電源トランスの容量を小さく済ませているのですが、他の管で代用するような改造をしようとするとこれが支障になってしまいます。 3結にして代わりに使えそうなGT管はいくつかありますが、ヒーターだけ別に供給するのでなければ電源トランスの載せ替えが必要になります。

 使用出力トランスのOY-15は、現代では故障が多いという評のようです。詳細なスペックは判りませんが、どうやら本来は30W級のトランスのようですし、サイズもコンパクトに作られていて余裕がありそうには見えません。その後同じOY-15でも巻き線を変更した大出力用が開発されて、A3600やMQ70などに使用されています。ここから考えると、A3500のように6CA7で40W程度を得る使い方はおそらく定格ぎりぎりでしょう。無理がかかってトランスが不良となったアンプが増えれば、管の方の事情で保守不能のアンプのトランスが移植用に取られるのは自然でしょう。そして解体ジャンクが残る。

インピーダンスブリッジで測定
  で、使用する出力トランスについて性能の確認。今日はインピーダンスの測定をしました。これは自作のブリッジで、絶対精度は使用したCとRの精度に依存します(誤差数%程度)が、相対的な比較には使えます。長く使用していなかったけれど、試すとちゃんと動作しました。
 2次側にダミーの抵抗を付けて、1次側のインピーダンスを測ります。巻き線の片側づつと両プレート間、2個ともほとんど同じ値です。1kHzで約6KΩ、50Hzでは少し低下して5.7kΩぐらいです。

 ついでに、外した電源のブロックコンを測ってみました。B電圧側の大きなコンデンサはちゃんと容量がありましたが、バイアス回路用?の小さいコンデンサは容量が抜けていました。原因は謎。まあ、プロックコンはすべて買い直すつもりですが。

 この事から、使用シャーシーの元のアンプの故障については、上記とは全然別のシナリオが考えられます。最終的には片側出力トランスの異常発熱による焼損に至った思われますが、残った部品 の中で酷い過熱跡が目立ったのは出力トランスの高域安定用の抵抗でした。バイアス回路のコンデンサが完全に容量抜け (前述)していた事から考えて、[バイアス回路の異常]→[出力段の異常動作]→[異常発振]という具合ではなかったでしょうか。

2013年10月9日水曜日

6CA7 PP : 電源トランス

情報を探りながら、引き続きゆっくりと前進中

 一般的な現行のトランスでは都合の良さそうな物は見あたりませんでした。そのかわり、比較的簡単に特注で作ってもらえそうな所を見つけました。特注といってもイージーオーダー程度の感じです。規格品よりも少し高いぐらいの価格です。まあ、真空管用の電源トランスなんて、今どきは規格品でも工場のラインでガンガン作っていてる訳はありませんから、注文に合わせて巻き数とか加減しても製造工程自体はあまり違わないはずです。都合の良い品が無くて逡巡するよりも、最適な物が得られるとなればそれだけでいくらかは需要に繋がるはずですから、これはたいへんうまい着想点のように思います。
 少し電流の大きなトランスの電圧を低めにして、巻き線の途中にタップを出してもらえばOK。大きさの点でもなんとか(ネシ穴はあけなおしですが)シャシーに載ります。 プレートとG2とプラスの電圧が2つ。バイアスと差動段を下に引くのにマイナスをひとつ。ドライバ段はスクリーンの電圧から取れます。電源部の概要が決まりつつあります。プレート側は抵抗が高くてプシュプルで打ち消されますから、多少リップルがあってもあまり支障無いでしょう。対してスクリーンはリップルの影響が出ます。電流の変動も大きいので、こちらはチョークを通した方が良さそうです。電流が小さいので大きなチョークで無くても済むのが有りがたいですが・・・見栄えの良さそうな物はやはり高価です。微妙に悩ましい。

6SN7-GT
出力段の電圧が自由になりそうなので、これに合わせてドライバ段を考えることにしました。出力30Wのアンプとしてはプレートが高目でバイアスも深いです。グリッドはフルスイングしないのですが、それでもPeak-Peakで30Vは振る必要があります。余裕を見ると、ドライブ段の電圧はけっこう必要です。初段と直結にするとその分全体にプラス側にシフトしますから、スクリーン電圧の250Vからドロップしたのでは不足ぎみ。やはり直結はやめて、グリッドをグランド基準にしてカソードをマイナスに引くのが簡単そうです。電圧の余裕で平衡度が良くなりますし、副次的な効果として、コンデンサの耐圧が楽になります。今は良質でコンパクトなコンデンサが入手しやすいですから、直結にしなくても心配は少ないです。
  ドライブ段は6FQ7/6CG7で行けそうです。テレビの水平発振の管で、6SN7のMT版です。6SN7は特性の素直な管で、アンプの出力段に使ったところ(出力は取れませんが)ずいぶん良い音がしました。損失が大きいので電圧を上げても余裕があります。前段は今のところ12AT7で行く予定でいます。μが60ですが不足することは無いでしょう。

 

2013年10月6日日曜日

6CA7 PP : 出力段の設計

海図の無い航海のようで、まだしばらく手探り状態です。

 普通は管の定格と特性から動作点を求めてトランスを決めます。昔のアンプの製作では出力が大事。真空管メーカーの動作例もこの方向で書かれています。昔の雑誌などの製作記事を見ると、とにかくどれだけ出せるかが関心だった事が判ります。それも、できれば簡単で安い回路で。

6BM8 と雑誌の製作記事
  今日は実家へ。箱にしまってあった昔の部品の中に活用できる物がないかチェック。抵抗とかコンデンサとか今となっては好んで使うような物は全然無かったのですが、真空管はいろいろ出て来ました。ちょうど真空管の終了する頃、あちこちの放出品やジャンク玉とか、何かに使えるかと集めていたようです。6BM8は私が最初にアンプを作った管。何本かありましたから、この6CA7の後で余力があれば使ってやろうかしら。

決定事項から逆に計算してみることにしました

 今回はトランスが決まっているので、ここから逆に真空管の動作を決めてゆくことにします。6KΩのトランスで入力30Wですから、素直に計算すると、振幅300Vで200mAです。引き残りを2割ぐらい見込むとB電圧は375Vぐらいになります。グリッドをフルスイングさせずに-5Vぐらいまでとすると、SGが250VでIpが150mAぐらいになります。クロスオーバーを50mAとすると、案外いい感じかもしれません。もう少し電流を小さくしても歪みは大差無さそうです。6CA7にとってはずいぶん軽い動作てすね。ちなみに、このまま電圧を上げて(SGも上げる)6CA7の定格いっぱいの動作になるように計算して見ると、ちゃんと45W以上出ます。例のMQ70の動作点がこれなんでしょうね。6CA7で45W出すだけならば、負荷抵抗を小さく取って電流を流せばもっと低い電圧で済みます。アマチュアやコストに厳しい電器メーカーはこちらを選ぶでしょうが、トランスも製造している高級オーディオメーカーとしてはコストとは違うメリットを感じたのでしょう。
 以上から、電源トランスは、B電圧として350Vぐらい、SG用に250Vぐらいが必要です。電流は、フルパワーを考えると300mA以上要りますが、いわゆるミュージックパワーで考えると200mAぐらいでしょう。SGの電圧は変動を嫌うのでB電圧から抵抗で落とすのでは具合が悪いです。やはり別のタップから取る必要がありそうです。具合の良い電源トランスがあれば良いのですが・・・