普通は管の定格と特性から動作点を求めてトランスを決めます。昔のアンプの製作では出力が大事。真空管メーカーの動作例もこの方向で書かれています。昔の雑誌などの製作記事を見ると、とにかくどれだけ出せるかが関心だった事が判ります。それも、できれば簡単で安い回路で。
6BM8 と雑誌の製作記事 |
決定事項から逆に計算してみることにしました
今回はトランスが決まっているので、ここから逆に真空管の動作を決めてゆくことにします。6KΩのトランスで入力30Wですから、素直に計算すると、振幅300Vで200mAです。引き残りを2割ぐらい見込むとB電圧は375Vぐらいになります。グリッドをフルスイングさせずに-5Vぐらいまでとすると、SGが250VでIpが150mAぐらいになります。クロスオーバーを50mAとすると、案外いい感じかもしれません。もう少し電流を小さくしても歪みは大差無さそうです。6CA7にとってはずいぶん軽い動作てすね。ちなみに、このまま電圧を上げて(SGも上げる)6CA7の定格いっぱいの動作になるように計算して見ると、ちゃんと45W以上出ます。例のMQ70の動作点がこれなんでしょうね。6CA7で45W出すだけならば、負荷抵抗を小さく取って電流を流せばもっと低い電圧で済みます。アマチュアやコストに厳しい電器メーカーはこちらを選ぶでしょうが、トランスも製造している高級オーディオメーカーとしてはコストとは違うメリットを感じたのでしょう。
以上から、電源トランスは、B電圧として350Vぐらい、SG用に250Vぐらいが必要です。電流は、フルパワーを考えると300mA以上要りますが、いわゆるミュージックパワーで考えると200mAぐらいでしょう。SGの電圧は変動を嫌うのでB電圧から抵抗で落とすのでは具合が悪いです。やはり別のタップから取る必要がありそうです。具合の良い電源トランスがあれば良いのですが・・・