2013年10月10日木曜日

6CA7 PP : トランスとシャシー 比較検討

使用するシャシーの元のMQ60についても少し調べてみました。

 MQ60は今では保守が難しいアンプですが、単純な不良品というのではなく、解体ジャンクのような物がけっこう出回っているようです。使える部品を共食いしたり、他のアンプの保守用に部品取りされたり。うちに来たのはそんな残りもののようです。

 使用されている真空管は50C-A10。6C-A10のヒータ違いです。大出力の3極管で、感度が高くてプッシュプルで30Wが得られるのがウリだったようです。しかしその型番のとおり、日本独自の管であり、開発元のNECが製造をやめてしまうと供給が途絶えてしまいました。相当管や類似管はありません。同じ国産大出力3極管でも東芝の6G-A4が単純な3極管の拡大版なのに対して、この管の中身は、見た感じでは晩期のテレビの偏向管用ビーム管とたいへん良く似ています。テレビの偏向管の設計を転用して(内部で3結にして)オーディオ用に仕立て直したのてはないでしょうか。当然、各部の見直しはされたと思うのですが、現役当時から弱い(無理が利かない、劣化が早い)玉と見られていました。
 50C-A10は50V点火です。2本直列にしてACで直接点火すればヒーター巻き線が不要になります。これで電源トランスの容量を小さく済ませているのですが、他の管で代用するような改造をしようとするとこれが支障になってしまいます。 3結にして代わりに使えそうなGT管はいくつかありますが、ヒーターだけ別に供給するのでなければ電源トランスの載せ替えが必要になります。

 使用出力トランスのOY-15は、現代では故障が多いという評のようです。詳細なスペックは判りませんが、どうやら本来は30W級のトランスのようですし、サイズもコンパクトに作られていて余裕がありそうには見えません。その後同じOY-15でも巻き線を変更した大出力用が開発されて、A3600やMQ70などに使用されています。ここから考えると、A3500のように6CA7で40W程度を得る使い方はおそらく定格ぎりぎりでしょう。無理がかかってトランスが不良となったアンプが増えれば、管の方の事情で保守不能のアンプのトランスが移植用に取られるのは自然でしょう。そして解体ジャンクが残る。

インピーダンスブリッジで測定
  で、使用する出力トランスについて性能の確認。今日はインピーダンスの測定をしました。これは自作のブリッジで、絶対精度は使用したCとRの精度に依存します(誤差数%程度)が、相対的な比較には使えます。長く使用していなかったけれど、試すとちゃんと動作しました。
 2次側にダミーの抵抗を付けて、1次側のインピーダンスを測ります。巻き線の片側づつと両プレート間、2個ともほとんど同じ値です。1kHzで約6KΩ、50Hzでは少し低下して5.7kΩぐらいです。

 ついでに、外した電源のブロックコンを測ってみました。B電圧側の大きなコンデンサはちゃんと容量がありましたが、バイアス回路用?の小さいコンデンサは容量が抜けていました。原因は謎。まあ、プロックコンはすべて買い直すつもりですが。

 この事から、使用シャーシーの元のアンプの故障については、上記とは全然別のシナリオが考えられます。最終的には片側出力トランスの異常発熱による焼損に至った思われますが、残った部品 の中で酷い過熱跡が目立ったのは出力トランスの高域安定用の抵抗でした。バイアス回路のコンデンサが完全に容量抜け (前述)していた事から考えて、[バイアス回路の異常]→[出力段の異常動作]→[異常発振]という具合ではなかったでしょうか。