All the photos and writings are my original work. Copyright reserved.
Commercial use prohibited. For personal research only. Except annotated.
別記ある物を除き、文章・図・写真等の無断転載は禁止します。
2013年11月10日日曜日
6CA7 PP : ドライバ部について
今度のアンプのドライブの回路は差動2段と決めています。
真空管アンプで悩ましいのが位相反転。現代のトランジスタアンプでは常識のコンプリメンタリが使えないので、プッシュプルの両側は逆相で駆動する必要があります。
いちばん単純明快なのがP-K分割回路。
トランジスタの場合はベース電流が微妙に気になるのですが、真空管のグリッド電流はごく僅かです。3極管のカソードとプレートに流れる電流は同じ。等しい値の抵抗には同じ電圧で逆相の電圧が生じます。考え方はシンプルですが、大出力が尊ばれる?高級オーディオアンプではあまり好まれない感じです。インピーダンス的に不均衡と言われますが、実際の影響は無視できる(多量の負帰還がかかっているのと同じ)ほどです。前段が5極管ならゲイン不足の心配も少ないでしょう。欠点は振幅が半分(以下)になる事と、カソードフォロワーと同様に発振の心配があるぐらい。
ミュラード型の反転回路の説明はいろいろありますが、私は(不完全な)差動アンプと考えています。
逆相の信号が得られる回路のひとつが差動増幅器。平衡入力を増幅して平衡で送り出す。入力が不均衡ならば、その差が出力に平衡で出るので、片側づつみれば逆位相の信号が得られます。平衡度が十分であれば、片側入力を接地すると位相反転回路になります。しかし真空管の1段では(次段を考えると)平衡度を高くできません。そこで上下のゲインを変えて小細工する。昔からなんとなく怪しいく感じていました。今でも好きになれません。
最大の問題はこの段が片入力だという事。片入力なので裸ゲインが半減します。もし入力が平衡であれば、この段では前段の不平衡の分だけを相手にすれば良くなり、μの低い球でも平衡度が取れてゲインも取れる。それには前段で位相反転させて来る。前段にP-K分割を置けばウィリアムソンアンプに似た感じ(なぜウィリアムソンアンプは差動にしなかったのか不思議です)になります。前段も差動にするともっと簡単になり、差動の片側に負帰還をかけることができます。この場合の注意点は前段が同相入力(ただし振幅も電流も小さい)で動くことぐらいでしょうか。
トランジスタアンプでは差動増幅が普通ですが、これは負帰還をうまくかけて安定させるのが主目的。コンプリメンタリーの出力回路には差動のドライブは不要(入力は同相ですから)でなので、片側からのみ出力を取っていて、反対側は遊んでいます。
私室のアンプは、普通のオーディオアンプとはずいぶん違う入力を与えられています。部屋で聴く程度の音量ならば、アンプのゲインで十分という事で、普段はプリアンプがわりにセレクターが繋がっています。セレクターの入力は5つ。パソが2台とCD/DVDプレーヤーとFMラジオが繋がっています。パソではmp3やAVIやいろいろ再生しますし、CDやDVDをかける事もあります。
絶対にプリアンプが必要になるのは、レコードの再生。盤の減りと針の減りが気になるので、そうそう気楽に使えないのが現状。プレーヤー自体の定位置は居間なのですが、しばらく前にレコード盤の何枚かをCD化する際に持って来たまま居着いていました。部屋の片付けでこれを居間に戻すので、その前に少しの間鳴らしてみました。
調べ物のついでに見つけた事のメモ
12AT7のヒーターに関して、片側を接地する場合は、12V点火の場合は5ピンを接地、6V点火の場合は4・5ピンを接地すると。理由は不明です。
2013年10月29日火曜日
6CA7 PP : 回路の検討 3
ということで、略算式で得たデータを図に落とし込んで、確認と微調整。
まず2段目。負荷抵抗33kΩで線を引いてみます。電源220Vが低い感じですが・・・
ちょうど良さそうなあたりに線を引くと、真ん中はグリッドが-6Vで2.5mA流すあたりになります。
33kΩで82V落ちますからプレートは143V。
入力がP-Pで10V最大で、出力がP-Pで120V出ますから、ゲインは12倍。
実際に必要な出力はP-Pで40Vあまりですから、入力はP-Pで3.3Vぐらい。
グリッドの振幅も余裕があります。
略算とは微妙に違いがあり、一般的な動作例に近い値が出ました。
手元にあった雑誌の製作記事の回路図から逆算した値とも何となく似ています。
まあこんなものでしょうか。多少ズレでいても、カソードバイアスの抵抗で調整できるでしょう。
次は1段目ですが・・・
6BX7 プッシュプル 6BL8アルテック型 |
2013年10月25日金曜日
6CA7 PP : 電源トランスの仕様
先日のドライバ段の計算は、やはり変です。
どうも、負荷抵抗の小さいあたりでは略算式では誤差が多いようです。
特性図に載せてみると、それでも6CG7はあまりズレていないのですが、12AT7は全然違っています。動作についてはきちんと算出しなきゃいけないようです。まあ、この方向で進めそうだという事が解っただけでも意味はあったような。
で、電圧配分が見えてきたので、今度は電源回路から見て行くことにします。まずは電源トランス。特注(イージーオーダー?)する予定ですから、その仕様の範囲で作れるかどうか検討します。
必要な電圧は、交流で 290V,190V,120V 。それぞれセンタータップ整流しますから、巻き線は共通で済みます。電流が大きいのはプレートの290V。この電圧では意外とG2の電流は小さいです。大出力を取り出すなら、合わせて145mAは欲しいですが、まあそんなに連続して大きな音はださないので、かなり控え目でも済みそうです。あと、ドイラバ段とバイアスのマイナスが必要。
難関はヒーター。6CA7は大食らいで 1.5Ax4=6A,ドライバ段に600mAx2+300max2=1.8A。これは常時ですからけっこう大きいです。
で、シャシーに載る大きさからトランスを選ぶと、200VAの物が限度のようです。ここから逆算するとと、高圧巻き線は250mAしか取れないことになります。ちょっと貧弱な気もしますが、まあ仕方ないかしら。で、ちょっと困ったのは、端子の総数。B巻き線にタップがたくさん出るので、ここだけで7個。総数14個ですから、ヒーター巻き線に回せるのが4個だけ。悩ましいです。
2013年10月23日水曜日
6CA7 PP : 回路の検討 2
略算式で計算して、どうやらドライブ電圧は良さそうです。
この値から、さらに2段目の動作を略算式で詰めて行きます。
あくまで略算ですから、あとで特性図で確認して調整する必要があります。
最後は、実際に作って見て調整ですが、これはなるべく少なくしたいです。
普通と逆で、電圧やプレート負荷から動作を探ってゆきますが、普通の抵抗結合増幅のデータとはずいぶん違う値が出て来ます。
アナログ計算機 |
最大出力31Vを割ると約5Vの入力です。
√2倍して、グリッドの引き残りを足すと、7.8~8V がバイアス電圧で、この時の電流が2.7mAほど。
すると、33kΩで落ちる電圧が89Vぐらいで、P-K間が139V。最大振幅時の引きのこりが95V。
差動のバランスの点ではカソードは大きくマイナスに引きたいです。
マイナス側の電圧は最低でも95Vで、余裕を見て120Vぐらいでしょうか。
120Vとすると、(120-8)÷(2.7×2)=20.7kΩ
なんとなくもっともらしい数値が出ました。(ホント??)
電力も電流も規格に収まります。12AU7 でもだいじょうぶなぐらいです。
そのまま1段目もひととおり計算しておきます。
1段目と2段目は直結にはしません。全体ではDCは帰還されませんから、大げさな回路で補正しないかぎりDCは不安定になります。ミュラード型のように片側だけ前段から引っ張る回路も見ますが、これではどのみち低域に時定数ができますし、グリッド電流の問題やインピーダンス的に不均衡が出ます。潔く両方ともCを入れる方が安心な気がします。最近は容量が大きくて特性の良いコンデンサが安く使えます。電源電圧の利用という点でも、この方が楽です。(注:ミュラード型の原型は直結では無いらしいです。)
2段目のグリッドの抵抗を330kΩとして、1段目のプレート抵抗はその1/3の100KΩにして見ます。
使用予定の 12AT7 は μ=60です。
電圧を180Vとすると、増幅度は約15倍。なんとなく、このゲインは低すぎる感じ。
そのまま計算を続けると、バイアスは3.2Vぐらいでしょうか。電流は0.7mAぐらい。この値は変!
最大振ることは無いですが。P-Kの残りが40Vぐらいでちっょと足りない感じ。
カソードを-90Vから引くとして、カソード抵抗は62kΩ。
ここで全体のゲインを見ておきます。仕上がりゲインは手もとの他のアンプと同程度とするつもりです。仕上がりで約25倍。そうなると裸で100倍ぐらいは欲しいです。
出力段は、P-P=40Vの入力で 16Ωに30Wですから、P-Pで60Vぐらいの出力。意外とゲインがあります。さすがに5極管。
1.5×6×15÷2で、全体では67倍ぐらい。このままではNF量がほんのちょっぴりしかありません。
これは略算ですから、実際はもっと高いとは思いますが、もう少しゲインが必要です。
それよりも、どっか見落としや勘違いがありそうな気もします。
しばらくは頭の体操です。
2013年10月21日月曜日
6CA7 PP : 回路の検討1
命題は、一次側で30W、P-P間で6KΩの負荷。
この条件に合うのは、300Vで200mA(交流)。
プレートの引きのこりを見込むと、電源は375Vは必要。もう少し余裕が欲しいです。
B級のクロスオーバーを40mmA(片側)とすると、最大で240mAぐらい。もう少し少なくても良いかしら。
SG電圧+250Vぐらいでちょうど良い電流になりそうです。
この電圧で、バイアス40mmAぐらいになるグリッド電圧は-20~22Vぐらい。
案外いい具合になりそうです。
電源トランスはプレートが280~290V, G2が190~200V ぐらいでしょうか。
SGはチョークを通すとして、プレートは整流しっぱなしで済まそうと思います。
この電圧なら、コンデンサの耐圧が楽になります。
とりあえず、回路を図にしてみました |
ドライブ段のプレートはSG電圧からR通して取るとして、220V以下でしょう。
6CA7のグリッド抵抗は、安全を考えて100kΩとします。
そこで、プレート抵抗は余裕を見てその1/3以下として、33kΩ。
管に6CG7を使うとして、μ=20 ですから、負荷33kΩは良い値でしょう。
これを略算式に入れて見ると・・・
出力電圧は、実効値で約31V。P-Pで86Vですから、2倍の余裕を見ても何とかなりそう。
もう少しきちんと計算してみなければいけないようです。
2013年10月10日木曜日
6CA7 PP : トランスとシャシー 比較検討
MQ60は今では保守が難しいアンプですが、単純な不良品というのではなく、解体ジャンクのような物がけっこう出回っているようです。使える部品を共食いしたり、他のアンプの保守用に部品取りされたり。うちに来たのはそんな残りもののようです。
使用されている真空管は50C-A10。6C-A10のヒータ違いです。大出力の3極管で、感度が高くてプッシュプルで30Wが得られるのがウリだったようです。しかしその型番のとおり、日本独自の管であり、開発元のNECが製造をやめてしまうと供給が途絶えてしまいました。相当管や類似管はありません。同じ国産大出力3極管でも東芝の6G-A4が単純な3極管の拡大版なのに対して、この管の中身は、見た感じでは晩期のテレビの偏向管用ビーム管とたいへん良く似ています。テレビの偏向管の設計を転用して(内部で3結にして)オーディオ用に仕立て直したのてはないでしょうか。当然、各部の見直しはされたと思うのですが、現役当時から弱い(無理が利かない、劣化が早い)玉と見られていました。
50C-A10は50V点火です。2本直列にしてACで直接点火すればヒーター巻き線が不要になります。これで電源トランスの容量を小さく済ませているのですが、他の管で代用するような改造をしようとするとこれが支障になってしまいます。 3結にして代わりに使えそうなGT管はいくつかありますが、ヒーターだけ別に供給するのでなければ電源トランスの載せ替えが必要になります。
使用出力トランスのOY-15は、現代では故障が多いという評のようです。詳細なスペックは判りませんが、どうやら本来は30W級のトランスのようですし、サイズもコンパクトに作られていて余裕がありそうには見えません。その後同じOY-15でも巻き線を変更した大出力用が開発されて、A3600やMQ70などに使用されています。ここから考えると、A3500のように6CA7で40W程度を得る使い方はおそらく定格ぎりぎりでしょう。無理がかかってトランスが不良となったアンプが増えれば、管の方の事情で保守不能のアンプのトランスが移植用に取られるのは自然でしょう。そして解体ジャンクが残る。
インピーダンスブリッジで測定 |
2次側にダミーの抵抗を付けて、1次側のインピーダンスを測ります。巻き線の片側づつと両プレート間、2個ともほとんど同じ値です。1kHzで約6KΩ、50Hzでは少し低下して5.7kΩぐらいです。
ついでに、外した電源のブロックコンを測ってみました。B電圧側の大きなコンデンサはちゃんと容量がありましたが、バイアス回路用?の小さいコンデンサは容量が抜けていました。原因は謎。まあ、プロックコンはすべて買い直すつもりですが。
この事から、使用シャーシーの元のアンプの故障については、上記とは全然別のシナリオが考えられます。最終的には片側出力トランスの異常発熱による焼損に至った思われますが、残った部品 の中で酷い過熱跡が目立ったのは出力トランスの高域安定用の抵抗でした。バイアス回路のコンデンサが完全に容量抜け (前述)していた事から考えて、[バイアス回路の異常]→[出力段の異常動作]→[異常発振]という具合ではなかったでしょうか。
2013年10月9日水曜日
6CA7 PP : 電源トランス
一般的な現行のトランスでは都合の良さそうな物は見あたりませんでした。そのかわり、比較的簡単に特注で作ってもらえそうな所を見つけました。特注といってもイージーオーダー程度の感じです。規格品よりも少し高いぐらいの価格です。まあ、真空管用の電源トランスなんて、今どきは規格品でも工場のラインでガンガン作っていてる訳はありませんから、注文に合わせて巻き数とか加減しても製造工程自体はあまり違わないはずです。都合の良い品が無くて逡巡するよりも、最適な物が得られるとなればそれだけでいくらかは需要に繋がるはずですから、これはたいへんうまい着想点のように思います。
少し電流の大きなトランスの電圧を低めにして、巻き線の途中にタップを出してもらえばOK。大きさの点でもなんとか(ネシ穴はあけなおしですが)シャシーに載ります。 プレートとG2とプラスの電圧が2つ。バイアスと差動段を下に引くのにマイナスをひとつ。ドライバ段はスクリーンの電圧から取れます。電源部の概要が決まりつつあります。プレート側は抵抗が高くてプシュプルで打ち消されますから、多少リップルがあってもあまり支障無いでしょう。対してスクリーンはリップルの影響が出ます。電流の変動も大きいので、こちらはチョークを通した方が良さそうです。電流が小さいので大きなチョークで無くても済むのが有りがたいですが・・・見栄えの良さそうな物はやはり高価です。微妙に悩ましい。
6SN7-GT |
ドライブ段は6FQ7/6CG7で行けそうです。テレビの水平発振の管で、6SN7のMT版です。6SN7は特性の素直な管で、アンプの出力段に使ったところ(出力は取れませんが)ずいぶん良い音がしました。損失が大きいので電圧を上げても余裕があります。前段は今のところ12AT7で行く予定でいます。μが60ですが不足することは無いでしょう。
2013年10月6日日曜日
6CA7 PP : 出力段の設計
普通は管の定格と特性から動作点を求めてトランスを決めます。昔のアンプの製作では出力が大事。真空管メーカーの動作例もこの方向で書かれています。昔の雑誌などの製作記事を見ると、とにかくどれだけ出せるかが関心だった事が判ります。それも、できれば簡単で安い回路で。
6BM8 と雑誌の製作記事 |
決定事項から逆に計算してみることにしました
今回はトランスが決まっているので、ここから逆に真空管の動作を決めてゆくことにします。6KΩのトランスで入力30Wですから、素直に計算すると、振幅300Vで200mAです。引き残りを2割ぐらい見込むとB電圧は375Vぐらいになります。グリッドをフルスイングさせずに-5Vぐらいまでとすると、SGが250VでIpが150mAぐらいになります。クロスオーバーを50mAとすると、案外いい感じかもしれません。もう少し電流を小さくしても歪みは大差無さそうです。6CA7にとってはずいぶん軽い動作てすね。ちなみに、このまま電圧を上げて(SGも上げる)6CA7の定格いっぱいの動作になるように計算して見ると、ちゃんと45W以上出ます。例のMQ70の動作点がこれなんでしょうね。6CA7で45W出すだけならば、負荷抵抗を小さく取って電流を流せばもっと低い電圧で済みます。アマチュアやコストに厳しい電器メーカーはこちらを選ぶでしょうが、トランスも製造している高級オーディオメーカーとしてはコストとは違うメリットを感じたのでしょう。
以上から、電源トランスは、B電圧として350Vぐらい、SG用に250Vぐらいが必要です。電流は、フルパワーを考えると300mA以上要りますが、いわゆるミュージックパワーで考えると200mAぐらいでしょう。SGの電圧は変動を嫌うのでB電圧から抵抗で落とすのでは具合が悪いです。やはり別のタップから取る必要がありそうです。具合の良い電源トランスがあれば良いのですが・・・
2013年10月5日土曜日
6CA7 PP : 部品配置の確認
トランスとかシャシーとか、いずれもなりゆきで決まってしまっています。このまま何か出物とかひょこっとあればそれが追い風になるのですが、電気屋街とか出歩くこともなくなっているのでその可能性は低そうです。
トランスを横向きにしてみると |
配線用の線材とかネジとかけっこう買わなきゃいけない物がありそうです。元のシャシーに使ってあったネジは鉄ネジで、メッキが良くなかったらしくかなりサビが浮いています。今日は自宅の買い置きの箱をチェックしました。明日は実家の物置の箱の中を探す予定。ラグ板とか使えそうな物があったはず。
2013年10月4日金曜日
6CA7 PP : 出力段の確認
行き先は決まったものの、進路が定まってません
とりあえず、古い本を引っ張り出して、頭のリフレッシュ。真空管の回路なんて、ずいぶん長く遠ざかっていますから、すっかり忘れています。面倒な計算無しで済ませたいけど、今回はちょっと面倒そうだし・・・
ネットで入手できる真空管の資料 |
併せてMQ60の事を調べていると、同じラックスのMQ70というアンプの情報が出てきました。 どうやら、A3700のシャーシーを流用して新規設計のトランスを載せた物のようです。6CA7プッシュで45Wを出しています。出力トランスを見ると、A3700はA3500と同じ5KΩですが、このMQ70はさらに高い6.5kΩです。電源電圧が微妙に高いとかK-NF付きとか多少違いはありますが、なんとも奇妙。
そこで、6CA7の特性図をじっくりと眺めます。この管、どう見ても肩の特性が酷いです。普通なら肩を避けて歪みを下げるように負荷を小さく(電圧の低い所まで使わない)するのでしょう。玉の損失が増えますが、出力も取れます。メーカー推奨の負荷抵抗はこの値に近いです。一方、グリッド特性から見ると、B電圧にかかわらずバイアスが浅くなると急に特性が悪くなっている事が判りました。見方を変えると、入力をフルスイングさせずにバイアスの深い所だけ使えば、意外と直線性が良いことになりそうです。試しに-5Vまで振るとして計算してみると、出力もけっこう取れています。このあたり、オーディオメーカーならではの着想点なのでしょうか。この動作点では、特性が寝て電流は小さくなっていますが、 それでもけっこう大きいです。プレート電圧をいくらか低く取っても、30Wのトランス(本来7591用とすると、あまり電流を流せないかもしれない)には負担が重そうです。やはり、SGの電圧を少し下げて電流を抑えるのが良さそうです。
元の電源トランスの取り付け穴の大きさ |
ドライブ段についても少しづつ検討を進めています。内部の部品配置を考えると、あまり凝ったことはできません。差動段のマイナス電圧が電源トランスの巻き線とも関係して来ますが、妙な事は考えずに素直に差動2段をC結合というのが無難そうです。
2013年10月2日水曜日
6CA7 PP : 出力トランスのチェック
譲り受けた時に巻き線の抵抗と絶縁は確認しているのですが、それからしばらく経ってます。計画を進めた後で"使えない"って事になると悲しいです。
トランスの動作確認 背中合わせにして信号を通す |
この合間に届いたアンプのジャンクを解体。重量のバランスと美観を第一にトランスを配置した事がわかります。 内部の配線の取り回しはかなり無理やりという感じがしました。新しい回路では、どう部品を盛りつけて、どう配線を引き回すのが良いのか、けっこう悩まされそうです。
内部の抵抗のいくつかに焼けたような跡がありしまた。どうやら故障の第一原因は出力トランスの異常だったようです。片側のトランスの付近にワックスのような物が滲みたようになっていました。MQ60に使用されていたトランスはOY-15で、優れた音質に加えてコンパクトで高出力で有名な物でしたが、どうやら経年とともに故障が多発する傾向があったようです。
SW-30は OY-15より少し大きい |
左右はぎりぎり載りましたが、電源部のブロックコンデンサの穴にひっかかりました。この部分は何か見苦しくないような手当が必要そうです。ドライバ段のソケットはぎりぎりクリアしています。こうして見ると、このアンプがかなりコンパクトな事が判ります。
左右はぎりぎり載りますが・・・ |
SW-30はやや背が低いのに対して6CA7は背が高いです。玉の頭の方がトランスよりも高いというのはあまり良くないです。少しシャシー内に沈められれば理想的なのですが、この加工は簡単では済みません。微妙に悩ましいです。
※ 取り外した 6C-A10用のソケットは使用しません。欲しい方にお譲りします。
6CA7 PP : 出力トランスに関して
まずは概要の確認。しばらくぶりに書棚から真空管規格表を出してみました。やはり記憶があいまいになっていました。6CA7の代表的動作例を見ると、普通の動作については負荷抵抗が3.5kΩとかかなり低いのです。あれれ? 現物はサンスイのSW-30-6です。インピーダンスが6kΩ。3結ならばちょうど良さそうですが、3結は悔しい。ラックスのA3500がOY-15-5載せているのは何? 特性図から6kΩの負荷で使う場合の動作を引くことができるだろうか。そうなると、トランスの定格が気になります。
SW-30-6 トランスの規格を確認する |
この動作を強引に6CA7に当てはめてみると、バイアスの深い所だけ使うかたちになって、出力は小さくなりそうです。高い負荷抵抗に見合うように電流を小さくするには、SGの電圧を下げる方法があります。特性図は250Vの場合しか見つかりませんでしたが、3結の特性から類推すると200Vぐらいまで下げると良さそうです。
SG電圧をB電圧の半分にできれば(B電圧がSG電圧の2倍で良ければ)、整流回路を倍電圧整流にするという手があります。
このように電流を抑えた動作にすると、トランスの負担が軽くなりますし、電源トランスも小さくて済みます。管の損失もかなり小さくなりますから、寿命の点でも好ましいです。本来のオーディオ管としての6CA7の特性とはかなり異なってしまいますが、高電圧動作をそのまま1/3に抑えたような風でもあります。なお、カソード電流がかなり小さくなりますから、ヒーター電圧も少し下げて良いような気がします。6CA7のヒーターは1.5Aですから4本で38Wもの発熱にもなります。
少し行き先が見えて来た気がします。
2013年10月1日火曜日
6CA7 PP : 懸案の検討開始
長年というには長い長い期間がたって・・・ぼちぼち懸案のアンプを作ろうかと。
私室では普段は真空管のアンプを使っています。BGMとかパソの音声とかテレビの音とか、いろんな音がここから出て来ます。大音量は不要ですが、それなりに聞きやすい音質が望ましい。ずいぶん前に、ふとした気の迷いで作ったアンプですが、けっこう長時間働きっぱなしなのに意外と長持ちしています。
12BH7の片側づつを使ったプッシュプルで、ドライブ段含めてMT9ピンの4球。大飯喰らいというほどではないけど、夏の暑い時期は休憩という事にして、トランジスタアンプに繋ぎ換えていました。そろそろ涼しくなって来たので、これをまた元に戻して・・・・と。
そのついでにと、作ったもののほとんど出番の無い「ミニアンプ」に繋ぎ換えて数日間鳴らしていました。ひとつは12BH7のパラシングル、もうひとつは6Z-P1のシングル。どちらもそれなりの音が出ますが、正直、全然良い音では無い。直線性に問題のある3極管と、インピーダンスが高くて電流もとれない5極管。
アンプの違いを再認識したあと、押入を片づけていると電気工作の半端部品の中に、買い置きの真空管ソケットとか見つけてしまいました。そういえば・・・いつかそのうちにアンプを作るつもりだったなあ。
最終目標は6CA7のプッシュプルアンプです。その前に手持ちの玉でも使って何か作るというのもおもしろそうです。6AQ5とか6AR5とか無線少年っぽい管もあったはずだし。
いくつかプランを考えましたが、そうなると部品の調達が問題になって来ます。大阪市内まで電車で行ける場所に住んでいますが、すでに大阪日本橋でも抵抗やコンデンサといった部品はなかなか揃わなくなって来ています。 大物で規格がはっきりしているような物ならネット通販という手もありますが、良さそうな物を探すのが難しいです。意外と難物らしいのがシャシーのようです。襷にも短いのが少しと帯にも長すぎるのがいろいろと。
軟弱プランを考えてみました
適当なキットとかあれば、これをベースに使って部品調達で楽できないかしら。うまく行けば、シャシー加工もサボれるかもしれません。昔はラックスのA3500かA3700とかありました。適当な価格も物があれば、これらの中古か故障品とか使えるかもしれません。
なんとなく情報収集かたがたネットを見ていると、 ラックスのMQ60の抜け殻という風のが出ていました。使用の真空管はとっくの昔に入手困難になっていて、出力トランスも元から故障が多い品。故障機から使える部品だけ取ったのでしょうか、玉とトランス類は全部ありませんが、スイッチや端子などはそのまま使えます。未加工のシャシー買うよりも安いので、そのまま購入してしまいしまた。心配なのは、必要な電流を取れる電源トランスが収まるかという事。(6CA7使用だとヒーターの分だけでも容量が大きくなりますから)
元の出力トランスはOY-15型です。手持ちのSW-30はこれより少し大きいですが、何とか取り付けられるでしょう。チョークコイルや電源のコンデンサの穴は加工が必要かもしれません。出力管はソケットを交換すればそのままの位置に付きます。元のドライブ段は左右にMT9ピンが2本づつ。基本プランの差動2段回路には具合が良さそうです。
という具合で、永年塩漬けになっていた6CA7アンプ作りが急に動き出すことになりました。電源トランス探しする前に、まずは回路の検討。
6CA7 PP : 計画の概要
構想や計画の進み具合のメモがわりに、ブログに書いてゆくことにします。
現状とここに至る経緯のメモ
6CA7 松下製 |
1 真空管 6CA7 でアンプを作る
これは小学生時代からの懸案。いつかはこの格好良くて力強そうな管でアンプを作るって。
6BM8や6AR5と比べると、ふたまわり以上強力。当時の知人のお兄さんがこの6CA7のシングルアンプを作ったというので、僕はそのうちにプッシュプルで、と。
中学校時代の学校放送のアンプの出力管は6CA7でした。毎日平然と学校中に大きな音を届けるって、すごくプロっぽく感じました。だから余計に6CA7が凄く感じられました。ここが重要なポイント。だから、作るアンプはEL34じゃなくて6CA7。
その後、なりゆきで中古の6CA7を入手。回路の案をいくつか考えましたが、そのまま停滞。
2 出力トランスを譲られてしまった
ある時当時の知り合いに「そのうちに6CA7でアンプを作りたい」という話をしたら、そのつもりで入手したトランスがあると言われ、なりゆきで譲られてしまいました。トランスは中古の山水のSW-30-6でした。K巻き線もSGタップも無い素のプッシュプル用。これを使うとなると、純5結か3結になります。6KΩというのがちょっとひっかかったのですが、ラックスのA3500がOY-15-5を使っているのでこの程度なら使えるんじゃないかと思いました。
3 アンプの規模を考えてみた
6CA7は高圧動作すればぎりぎり100Wに届くかという玉。学生時代に作っていたなら、きっとぎりぎりの大パワーを目指していたでしょう。しかし、そんな大出力は使い道がありません。せっかく作るなら、時々は鳴らして楽しめる物が良いです。
トランジスタやハイブリッドICを使って数十ワット級のアンプをいくつか作って、出力が大きいからと言って満足感が増す訳で無いことは実感済み。部屋での主用アンプ(当時)は6BX7のプッシュですが力不足を感じることは無いです。全体の発熱量や大きさ(重さ)も考えると、ほど良い規模の物の方が活用できるでしょう。 真空管やトランス類の寿命も考えると、ある程度余裕をみた動作の方が安心です。
4 で、一応は回路を考えてみた
居間の主用アンプも私室の常用アンプも純3極管のプッシュです。トランジスタSEPPアンプもあり、小ネタ用の真空管シングルのミニアンプがあります。こうなると、やはり素直に5極管として使うしか無さそう。動作的にはK-NFをやって見たかったけど、譲られたトランスを使うと、K-NFもUL接続も無しになります。ちょっと悩ましいです。
なりゆきでこうなったのですが、家にある真空管プッシュプルアンプはすべて初段が5極のPK分割です。 せっかくだからもうひと工夫したい。どうせなら、定電流素子を含めてアクティブな半導体素子は使わずに、単純な真空管の回路で済ませたい。なるべくなら使用中の再調整無しに長く使えるようにしたい。候補のひとつが2段差動回路。双3極管で構成すると、ドライブ部が4球になります。デザイン的には収まりが良さそう。
5 全体をまとめると、
出力段の6CA7はほぼ決定。これを常識的なC結合の固定バイアスでプッシュプル。ドライブ段が差動2段の場合、手持ちの本数を考えると、トップが12AX7か12AT7で2段目が12AU7か6FQ7あたり。ゲインとドライブ電圧について検討が必要でしょう。大出力は考えないし、NFもそれほど深くするつもりはありませんから、電圧配分以外は難しく無さそうです。
初段のグリッドをグランドに取るとカソードはマイナスに引く必要がありますが、どうせ終段のバイアスのマイナスが要りますから問題は少ないでしょう。初段と2段目の結合をどうするかが悩みどころ。最終的にはDCの負帰還がかけられないので、両側とも直結にすると長期的には不安定要素になります。片側のみ直結で他方はC結合という手もありますし、潔く両側ともC結合にするのも良さそうですし。
・・・・というあたりまでで、何年も放置したままになっていました。